ニュース 2002年6月26日 04:09 AM 更新

そのまま持ち込んでもダメ〜韓国コンテンツ

「韓国で成功しているブロードバンドコンテンツをそのまま日本に持ってきても駄目」。ガイアックス戦略企画部の金志芸(Kim Chie)プロジェクトマネジャーはこう指摘する

 「韓国で成功しているブロードバンドコンテンツをそのまま日本に持ってきても駄目」。ガイアックス戦略企画部の金志芸(Kim Chie)プロジェクトマネジャーはこう指摘する。日本市場に韓国の成功例を持ち込み、手っ取り早く利益を上げようとする企業も多いが、金氏によると韓国の成功にはそれまでの「プロセス」があるのだという。

 わずか数年で世界一のブロードバンド大国といわれるようになった韓国。インターネットの世帯普及率は世界第9位だが、増加率は世界第2位だ。アジア・太平洋地域のブロードバンドインターネット全利用者の45%を韓国人が占めている。そして、その約8割がブロードバンドインフラを利用しているという。

 韓国の急成長には、人為的な要素が多分に含まれている。首都圏に人口が集中してインフラの敷設が容易だった点もあるが、「サイバーコリア2001」に代表される政府の積極的関与(昨年8月の記事を参照、企業間の競争と攻撃的なマーケティングによる普及の促進(昨年8月の記事を参照)、そしてマルチメディアコンテンツ市場が早い時期に拡大したことなどが挙げられるだろう。

コンテンツ先行で普及

 日本の場合は、インフラの普及を前提として「コンテンツは後から付いてくる」と期待している部分があるが、韓国では違った。1997〜1998年のIMF通貨危機で失業した人たちが大量にPC房の営業を始め、街のゲームセンターがPC房に取って代わる。1999年には、ネットワーク対戦ゲーム「スタークラフト」が大流行し、同時にコミュニティサイト「DAUM」が爆発的に会員を増やした。


ソウル市内のPC房

 この2つが、現在のブロードバンドアプリケーションの素地になったといっていいが、当時は韓国でもブロードバンドインフラはまださほど普及していない。PC房で親しんだゲームやコミュニティを「家でもやりたい」という要求がインフラ拡大に寄与した。

“カミナリ文化”がビデオチャットを生む

 金氏は、韓国で有名なポータルサイトを3つ挙げた。その1つ、前述の「DAUM」は、もともとテキストチャットをベースにしたコミュニティサイトだったが、現在はビデオチャットに移行して成功を収めている。


会員数2000万人を誇る「DAUM」。メールサービスの「DAUMメール」は、韓国インターネットユーザーのほとんどがアカウントを持っているといわれる

 1999年頃、DAUMのコミュニティを起点として「カミナリ文化」が広がる。カミナリ文化とは、チャットで意気投合した男女が待ち合わせ、その日のうちに逢うというもの。日本のテレクラに近い形だが、ノリとしては女子高生がメール友達と会うのに似ているようだ。

 もちろん、そのデメリットも同じ。「逢ってみて、“えっ?”というケースが多い。そこで、先に顔だけでも見たいというニーズが高まった」(金氏)。もちろん、売春の横行など社会問題も同時に発生しているものの、ビデオチャット隆盛の背景には、そんな事情がある。動機はともかく、シーズ先行の日本市場とは異なる、ニーズ先行の市場形成がうかがえる。

変身願望から自己顕示へ?

 ビデオチャット以外のアプリケーションでも同様のことがいえる。例えば「アバター」を使ったコミュニケーション(昨日の記事を参照)。韓国中央日報の報道によると、自分のアバターを持つ「アバター人口」は既に1000万人を超えているという。最近では、アバターの動作を演出できたり、実物の写真をもとにアバターの顔を作る「実写アバター」なども登場し、チャットだけではなく、電子メールやゲームなど、その応用範囲も広がっている。

 金氏が挙げた2つめの成功例は、このアバターチャットの分野で毎月約1億円の売上をあげているという「Sayclub」だ。


アバターコミュニティサイトNo.1の「Sayclub」。会員数は1200万人

 ここでは、アバターの購入するグッズが現実世界を反映している。たとえば、最近若い男性を中心に人気を集めているのが、アバターに持たせる「VAIOノート」。ナイキのシューズなども人気があり、「最近は発売前のモデルがコミュニティサイト内で販売されていたりする」。

 これは、別に企業機密が漏れているわけではない。企業側が、製品として生産する前にバーチャルワールド内でマーケティング調査を行っているのだ。アバターチャットがマーケティングツールとして利用できるほどの規模を持ち、企業もその価値を承知している。

 一方、ユーザーにしてみれば、自分に似せて作られたアバターは“分身”といえるもの。「現実世界では購入できないような服や靴もコミュニティサイト内であれば簡単に入手できる。“代理満足”とでも言えばよいのか、アバターに自身を映している」

モバイルとの連携?

 日本でも、アバターチャットを手掛けるサイトは数多く存在するが、その多くはアバターが動物であったりと、自身を映す対象には成り難い。もちろん、韓国サイトと同様のシステムを持つサイトも出てきてはいるが、大きくヒットした例はまだない。むしろ、掲示板に代表されるように、日本のコミュニティサイトは匿名性を重視する傾向にある。韓国のように、自分をアピールする方向ではないのが現状だ。

 しかし金氏は、日本でもユーザー層の拡大と時間の経過が状況を変える可能性があるという。「アバターを考案した人は、心理学に詳しい医療関係者だったときいている。彼によると、人はまず自分を隠そうとするが、そのうち自己を表現する欲求、自己顕示欲が出てくるものらしい」。

 また、金氏は、女子高生に人気のあるプリクラ雑誌を例に挙げ、日本でも若年層には自己アピールのニーズがあると指摘した。

 「問題は、そのユーザー層が携帯電話の利用に止まっていること。まずは、携帯とPCが連携できるポータルサイトなどを構築して、PCで何ができるかを示してあげるべきだろう」


金氏が挙げた最後の成功例は「NATE」。韓国の携帯電話大手であるSKテレコムが立ち上げたポータルサイトで、従来は携帯電話やPDA、PCといったプラットフォームごとに持っていたサイトを統合したもの。モバイル系有料コンテンツが充実している。会員数は1200万人

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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