ニュース 2002年12月2日 03:25 AM 更新

“事前の対策”と“事後の対処”〜DSLの収容条件はどちらが正しい?

総務省情報通信審議会が実施した「DSL回線の収容条件などに関する接続約款変更」公開ヒアリングでは、ビー・ビー・テクノロジーと他社の対立が目立つ結果となった

 総務省情報通信審議会は、NTT東西地域会社が10月に認可申請を行ったDSL回線の収容条件などに関する接続約款変更に関する公開ヒアリングを実施した。会場となった総務省会議室には、NTT東西地域会社をはじめ、アッカ・ネットワークス、イー・アクセス、ビー・ビー・テクノロジーといったDSL事業者の代表に加え、2つの消費者団体の代表が出席。それぞれの立場から意見を述べた。

 議題となったDSL回線の収容条件は、干渉を防ぐため、DSLの伝送方式によって第1グループと第2グループに分けて収容方法を定めたもの。他回線への干渉が予想される第2グループには「ほかの回線と同じカッドには収容しない」「伝送方式ごとに定められた限界線路長を超える線路では使用しない」といった制限が付く(9月の記事を参照)。さらに、NTTに支払う接続料金が月額929円(電話重畳あり)に跳ね上がるため、グループ分けが事業そのものを左右するといえる。その判断基準は、昨年11月にTTCが標準化した「スペクトル管理標準(TTC標準JJ-100.01第1版)」だ。

 この条件に対する考え方は各社さまざま。まず、イー・アクセスは「TTC標準を用いるのは適当である」(同社の千本倖生社長)と約款変更を支持し、議論が停滞しているスペクトル管理標準の早期導入とともに、各方式の情報開示の必要性を訴えた。

 イー・アクセスと同様にTTC標準をベースとするルールの必要性を論じながら、運用を担当する別組織を設けることを提案したのがアッカ・ネットワークスだ。同社の坂田好男社長は「TTCの標準化作業は年に2回であり、(技術革新の早いADSLは)タイムリーな更新は不可能」「多数決では(グループ企業など)多くの会員をTTCに加入させれば、正しくないことでも押し通すことができてしまう」と指摘。標準化作業など「原則の制定」と新技術を検証する組織を分離することを提案した。

 「総務省所轄の研究会を新設し、(DSL方式を)電波や電話番号と同様に行政の役割とする。年に2回ではなく、他の回線に影響がないと判断されればリストに加えればいい」(坂田氏)。

シミュレーションの妥当性

 イー・アクセス、アッカともにTTC標準をベースとする接続約款変更に関してはおおむね賛成の立場だ。中立のNTT東西地域会社をくわえた4社は、スペクトル管理標準本来の目的でもある予防的な“事前の対策”を重視している。

 これらの意見に真っ向から反対の姿勢を見せているのがBBT。同社の孫正義社長は、「DSL普及のために適正なルールが必要という点では賛成だ」と前置きしたうえで、「しかし、問題は“適正”さの部分だ。ルールは消費者利益の確保を最優先とするべき。42万人のユーザーがいるBBTの12Mbpsサービスが干渉を与えたという事例はない」と強調した。

 「事前に規制を加えると技術の進歩はなくなる。例えば、自動車が登場したとき、交通事故の可能性によって規制されていたら、どうなっていただろうか?」(同氏)。

 またBBT側は、グループ分けの基準となるJJ-100.01のシミュレーションは、その方法の妥当性に疑問があると繰り返し主張した(8月の記事を参照)。「TTCのシミュレーション規定は、Annex CがAnnex A.exの0.4ミリ紙巻きケーブル24本に取り囲まれた場合を想定したもの。シミュレーションそのものに反対するわけではないが、非現実的な条件だ」(BBT)。

 この指摘に対しては、NTT西日本の伊東則昭相互接続部長が「地下に敷設されているものを中心に約半分のケーブルが紙絶縁であり、ADSLサービスにおいて遭遇する確率は高い。0.4ミリという太さも電話線としては平均的なもの」と反論。続いて、NTT東日本の成宮憲一技術部長も「ITU-T標準および米ANSI標準も24回線と規定している。さらに、日本のケーブルは2対をより合わせたカッド構造をしているため、同一カッドの1回線から受ける影響がほとんど」と説明を加えた。

“事前対策”と“事後対処”

 今回の議論を突き詰めると、起こり得る干渉の問題に対して、スペクトル管理標準を前提とした“事前対策”で臨むか、BBTの推す“事後対処”のどちらが適当であるか、という点に集約される。問題が発生したときに個別対応するというBBT側のスタンスは、迅速なサービス提供を可能にする一方で「将来に不安も残る」(総務省)。それだけに、ヒアリングの会場でも反論が相次いだ。

 「事後ルールの場合、被害者側が検証を行うことになる。しかし、NTT東西には守秘義務があり、同一のカッドにどこの事業者の回線が入っているかも分からない。調査や対処には膨大なコストがかかるだろう」(アッカの池田佳和副社長)。

 「(干渉が認められた場合)ユーザー本人はもちろん、ADSL事業者やISPなど役割の切り分けが難しい」(NTT東日本の大岡忠男氏)。

 「被害を受けたユーザーは、どうやってそれを証明するのか。コスト面だけではなく、実質的に事後対処は不可能だ」(アッカの坂田好男社長)。

 結果として、今回の公開ヒアリングはBBTと同社以外の対立姿勢ばかりが目立つ結果となった。

 ただ、事業者にとってはビジネスを左右する大きな課題であっても、既に始まっているサービスが対象だけに消費者側は戸惑いを隠せない。ヒアリングに参加した日本生活協同組合連合会の清藤正氏は、「DSL事業者には、消費者の信頼を得られるような積極的な対応を早急に求めたい。それができないのであれば、規制的な措置も必要なのではないか」ときつい調子で語る。また、日本消費者連盟の古賀真子氏は「各事業者が活発な宣伝活動を展開している」ことに懸念を示し、「全体的に消費者不在」と指摘した。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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