リビング+:特集 2003/02/18 23:17:00 更新

著作権保護とP2P技術のはざまに
「セキュアP2P」という考え方 〜イーディーコントライブ

ともすれば“著作権侵害の道具”と見られがちなP2P技術。しかし、その可能性は見捨てられるべきではない。著作権者とP2Pが、どう共存すべきか、可能性を探ってみよう

 P2Pは、いまや新たな局面を迎えている。

 先月の、日本MMOのP2Pサービスに関する中間判決(記事参照)を受けて、いよいよ「P2P技術に著作権保護を導入する」ことの重要性が増してきた。各ユーザー、事業者とも“P2P=違法ファイル交換”という頭を捨てて、この技術の正しい方向性、さらには情報社会のあり方について、真剣に探っていく必要がある。

 本日から始まる特集では、著作権保護やP2P技術に関わりの深い事業者、個人にインタビューを行い、問題の本質を探る。第1回は、「セキュアP2Pフォーラム」の設立に関わるイーディーコントライブのMNSプロジェクト取締役、山口征浩氏に話を聞いた。

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 イーディーコントライブの山口取締役

 イーディーコントライブは、情報通信やソフトウェア開発、システムインテグレーションなど多様な事業を手がける企業。P2Pにも早くから注目しており、1995年から「マンダラ型ネットワーク構造」(今でいう、ハイブリッド型P2P)によるサービスを提供している。現在は、IP電話――携帯電話間の匿名通話を実現するP2P型システム「コペルフォン」を提供中だ(記事参照)。

 一方で、CD-ROMの不正コピー防止技術「ProRing」を提供するなど、著作権保護に対する意識も高い。こうした流れから、今年1月27日には安全なP2P環境の構築を考える「セキュアP2Pフォーラム」(下部囲み参照)を設立し、その中心メンバーとして活動を行っている。

 山口氏は、「もはやP2Pによるファイル交換技術は、できあがってしまっている。この流れを止めることはできない」と話す。それなら、ファイル交換されるものをどうプロテクトするのか――。技術的にも、社会的にも研究するというのが、フォーラムの主旨だという。

日本MMOには同情する部分も

 山口氏は、日本MMOの中間判決をどう見るか。セキュリティ重視を打ち出す同氏だが、意外にも、日本MMOに同情的なコメントが聞かれる。

 「(中間判決は)やや、厳しいという印象も受ける。うちがやるとすれば、知的財産権を保護する仕組みを導入するだろうが……。センターでピアを追跡、管理するにしても、実際に問題が起こったら、運営側との責任は切り分けてほしい」。

 同氏は、ファイル交換のスペースを提供することと、違法ファイルを提供することは違う、と強調する。実際、過去にダイヤルQ2サービスが社会問題化した際、NTTグループが批判された例にも触れながら、責任の範囲をガイドラインなどで明確化することが必要だろうとした。

活路はハイブリッド型の「課金サービス」?

 山口氏は、P2Pサービスで問題となるのは、利用者の匿名性が高い点だという。この匿名性は、ともすると危険につながりやすい。不特定多数のユーザーが利用できるシステムであっても、やはり、事業者側が本人を確認して、管理する必要があるという。

 「ピア同士では、相手が誰であるか知っている必要はない。だが、サービスを提供する事業者は、ユーザーを管理する必要があるはず」(同)。

 具体的な管理の方法としては、まず、純粋なP2PネットワークであるGnutella型ではなく、センターサーバを持つハイブリッド型(Napster型ともいわれる)のP2Pシステムを構築する必要がある。その上で、課金インフラを用意して、そのシステムに登録させることで、ユーザー識別の手段を持つことだという。

 同氏は、大手通信事業者の提供するコミュニティサービスなどで、各ユーザーの個人情報を把握していることを例示。P2Pも、同様のスキームでサービスを提供すべきだとした。

 一般に、P2Pのファイル交換ソフトは無償で提供されているケースが多い。ユーザーが“課金されたP2Pサービス”に対して、どういう印象を抱くかは未知数といえる。しかし山口氏は「適切なサービスというものは、課金されなければウソだ」と主張。課金することで、サービスも自然とセキュアなものになる、と話した。

セキュアP2Pフォーラムとは

 2003年1月27日に設立された団体。セキュアという価値をもったP2P技術を普及させるとともに、セキュアP2Pシステムの運営上の基準制定を目指して検討、考案を行う。座長は慶應義塾大学理工学部の岡田謙一教授。

 フォーラムの活動方針は「さまざまな企業に入ってもらい、意見を出し合いたいため、あえて定めていない。」(山口氏)といい、1年で4回程度の研究会を予定している。年間参加費は12万円。

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[杉浦正武,ITmedia]



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