リビング+:特集 2003/02/19 23:59:00 更新

著作権保護とP2P技術のはざまに
「DRM技術の導入は、非現実的」 〜日本MMO、松田社長

著作権保護を積極的に行わなかったために、著作権侵害の主体者と判断された日本MMO。同社は、これまで著作権にどう取り組み、今後どう付き合っていくつもりなのか

 1月29日の、日本MMOのP2Pサービスに関する中間判決(記事参照)は多くの事業者にインパクトを与えた。もちろん、一番衝撃を受けたのは日本MMOの社長、松田道人その人だろう。同氏は今後、3億6500万円の賠償請求をめぐって係争を続けることになる。

 当事者として、P2Pと著作権保護の正しいあり方はどうあるべきと考えているのか。中間判決から3週間が経過した今、同氏に改めて裁判を振り返ってもらい、意見を求めた。

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 日本MMOの松田社長

 今回の事例では、日本MMO自体はファイル交換の“場”を提供しただけであるにもかかわらず、著作権侵害の主体者であると判断された。しかし仮に、そのファイル交換の場で著作権侵害が一切生じなかったなら、日本MMO側にも権利侵害は認められなかったことになる。

 現実を見ると、自ら囲い込んだ会員の行為によって、サービス提供者の首が絞まった格好だが、こういった展開を松田氏は予想、あるいは意図していたのだろうか。

 「確かに、サービス提供当初は違法なファイル交換が行われることはしかたがないと考えていた。しかしそれは、時間がたつにつれ収束するもの、とも思っていた」(松田氏)。

 同氏の主張は、こうだ。たとえば匿名掲示板サービスでも、誹謗中傷を行うユーザーは出てくるもの。しかしサービスを健全に楽しむユーザーが増えるにつれて、コミュニティも安定してくる――。こうした考え方に基づき、P2Pサービスでも違法なユーザーは自然に排除される、と見ていたようだ。

 「もう少し、(原告側に)待ってほしかった。悪意あるユーザーが淘汰される前で区切られ、判例が確立してしまったことを残念に思う」(同)。

間に合わなかった? 著作権保護の動き

 判決によりP2Pサービス提供者も、なんらかのDRM(Digital Rights Management)技術を導入する必要性が高まっている。実は日本MMO自身、過去に著作権管理技術を導入しようとする動きがあった(その経緯は過去記事参照)。

 しかし、この動きは結局、実現に至らなかった。松田氏はその理由を「裁判関連の準備で忙しかった、というのが正直なところ」と話す。

 「こうした著作権管理のシステムを導入するとして、実際に運用するまでは1年はかかるもの。しかし、昨年1月29日に仮処分申請があってから、4月に仮処分命令が下るまで、わずかな時間しかなかった。しかも仮処分では実質のサービス差し止めが命ぜられ、それ以降はシステム導入の議論は意味がなくなってしまった」。

DRM技術の導入は非現実的

 それでは今後、日本MMOが著作権保護技術を導入した上で、P2Pサービスを展開することはないのだろうか。

 松田氏はまず、システム構築の必要経費を日本MMOが全面的に支払うことに難色を示す。

 「たとえば、著作権者側は一切費用を負担せず、さらに利用許諾を得るための料率の交渉を行う……となると、今回請求されている賠償額と、そう変わらないコストがかかるのではないか」。

 同氏はまた、「実際にシステムを運用できたとしても、それが100%著作権を保護できるとは言い切れない」ことも問題だと話す。

 「著作権保護技術というのは、いくら注意してもどこかにくぐり抜ける穴が見つかるもの。そこで問題が発生したとき、その責任を押し付けられてはビジネスにならない。いくら技術があっても、こわくて事業化できない」。

 同氏が、著作権保護機能の導入を真剣に望んでいるかどうか、外部からは判断がつかない。しかし直接、著作権を持たない事業者がDRM技術の導入を考えた場合、現状では非現実的なモデルしかないというのもまた、一面の真実といえる。

東京地裁に意見書を提出した、苫米地氏のコメント

 ZDNetでは、昨年11月26日に「P2Pサービスを禁止すべきでない」とする旨の意見書を東京地裁に提出した、コグニティブリサーチラボの苫米地英人社長にも、意見を求めた。

 同氏は「今回の判決は、送信可能化権について拡大解釈がある」と指摘する。

 「日本MMOの提供するサーバには、違法なファイルを交換するためのインデックス情報しか提供していないわけで、これをもって“著作権侵害物を送信可能化した”というのは問題がある。それでは極論すれば、東京地裁のサーバを何者かがハッキングして、そのホームページ上に違法ファイルにアクセスできるURLを掲載すれば、東京地裁が著作権侵害の主体者となるのか?」

 同氏は改めて、判決がP2P業界の今後の発展を妨げる可能性を懸念する、とした。

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[杉浦正武,ITmedia]



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