リビング+:ニュース 2003/03/14 23:09:00 更新


「ギガビット・アイランド」は次のステージへ

マンションや大学を1Gbpsの光ファイバーで結び、各種アプリケーションを検証する「ギガビット・アイランド」実験が終了。主催した日本テレワーク協会は、報道関係者や学術経験者を集めて報告会を催した

 日本テレワーク協会は3月14日、2002年3月から12カ月間にわたり実施したギガビット・アイランド実験の成果を発表した。これは経済産業省から委託を受けた「高速大容量プラスチック光ファイバー(GI-POF)を用いた実証実験」(ギガハウスタウン・プロジェクト)の一環。慶応義塾大学の小池康博教授が発明したGI-POF(昨年2月の記事を参照)を用いてマンションなどに“ギガビット・アイランド”を構築し、光回線と大容量ストレージが「生活や教育の現場で、その質的向上にどう貢献できるか」を検証した。

 実験には、慶應義塾大学のほか、旭硝子、三菱商事、三井不動産、パワードコムが参加。慶応三田校舎と慶応幼稚舎、西町インターナショナルスクール、そして自由が丘にあるマンション「パークハイム自由が丘2丁目」を100M〜1Gbpsの専用線で結んだ。

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ギガビット・アイランドの構成。クリックで拡大

チャンネルオンデマンドが好評

 40世帯弱が入居しているパークハイム自由が丘2丁目では、駐車場の様子を常時監視するカメラにくわえ、ネットワーク経由で慶応大学の講義を受ける沿革授業、そしてチャンネルオンデマンド実験などが行われた。

 「とくに、チャンネルオンデマンドに関しては、95.7%の人が利用し、“有料であっても引き続き利用したい”という希望も寄せられている」(日本テレワーク協会)。

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実験成果を報告する日本テレワーク協会の柴田郁夫研究員

 チャンネルオンデマンドは、マンション構内に1.2Tバイトの大容量ストレージを設置し、地上波TV局の番組を2週間分、常時蓄積しておくというもの。住民は、GI-POFを使った構内ネットワークを介して自由に番組を閲覧できる。

 住民の評価は高く、「ビデオデッキのセット(予約)がいらないので気を遣わなくてもいい」「見損ねた番組のチェックにありがたい」といった声が聞かれたという。仮に有料サービスとなった場合の支払い限度額を問うアンケートでは、“500円まで”が最も多く53.3%、ついで“1000円まで”の20%となった。日本テレワーク協会では、この種のサービスが「ビジネスとしても有望」と結論付けている。

 ただし、チャンネルオンデマンドの商用化には、採算性や著作権処理といった課題が残されている。この点について三菱商事のギガビット・アイランドプロジェクト担当マネジャー、林俊弘氏は「民放などの著作権者とサービス事業者が、お互いにメリットのある将来を築きたい。(サービスが)認知されれば市場は広がるだろう」と話していた。

 ただし、駐車場の監視カメラを利用した住人は、全体の30.4%にとどまった。日本テレワークでは「監視カメラはPCで閲覧する形だった。いちいちPCを立ち上げる手間が利用率の低さにつながったようだ」と分析している。

 DVTS(DV Transport System)を用いたTV会議実験では、慶応幼稚舎と西町インターナショナルスクールをつないだ英会話授業や、小池教授による「GI-POFの作りかた」(小学6年生向け)などの講義が行われた。児童を対象に行ったアンケート調査では、80%が「興味深い」と回答したという。

配線コストは3割減

 一方、技術面の実証成果として挙げられたのは、GI-POFネットワーク施工技術の確立。石英製光ファイバーに比べて曲げに強く、また“コネクタ付け”が容易なGI-POFは、「既設の建物に銅線と同じ配線経路で敷設できるうえ、工事期間が半減できる」という。

 一般的な石英製光ファイバーでは、コネクタ接続時にファイバー端を研磨する端面処理が欠かせない。光を直進させるには、端面の平面性を確保しなければならないからだ。対してGI-POFの場合は「切ってつなぐ」という簡単な処理でコネクタ付けが可能だという。「石英ファイバーの5分の1程度の時間で終わる」(旭硝子)。

 建物の中に光ファイバーネットワークを敷設する場合、コストの3割から5割は工事にかかる人件費といわれる。このため、施工が簡単なGI-POFであれば、「材料費こそ(従来の石英ファイバーと)変わらないものの、工期は半減。トータルコストでは3割削減できることが確認できた」。事実、今回の実験では、77の端末に至る光ネットワークをわずか10日間で設置したとしている。

“オープンな学校”で実験

 ギガハウスタウン・プロジェクトは、今回のギガビット・アイランド実験の成果を踏まえ、2003年からはコンテンツ面の絞り込みを兼ねた本格的な実証実験を行う。4月には志木市の志気小学校に敷設したGI-POF網を使い、高精細画像によるコミュニケーション実験を行う予定だ。

 昨年12月に改築された同校の校舎は、壁などの仕切りをなくしたうえ、教室にはカメラや大型ディスプレイを設置した“オープンな学校”。公民館や図書館も併設されており、「授業風景を市民が見て、そこから交流につながる」(日本テレワーク)。

 また、このほかにもマンションやオフィス、病院など4〜5カ所にGI-POFの構内ネットワークを敷設する予定だという。

 「今回の実験では、マンションや学校など、多くの人が集まる場所では、GI-POFを敷設した“ギガビットアイランド”を作ることの有効性が証明された。今後は(大容量ネットワークによる)鮮明な画像が持つ訴求力を活かしたビジネスが盛んになるだろう」(日本テレワーク協会)。

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志気小学校のイメージ図。公民館や図書館を併設した複合施設となっている

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関連リンク
▼日本テレワーク協会<
▼慶應義塾大学
▼三井不動産
▼旭硝子
▼三菱商事

[芹澤隆徳,ITmedia]



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