リビング+:連載 2003/04/21 18:35:00 更新

連載:enjoy@broadband.home.net
DVD-R/RW付きコクーン「NDR-XR1」、その成長の余地

わずか2日ほどの試用期間ではあるが、DVDレコーダ機能付きのコクーン「NDR-XR1」を試用する機会ができた。ほかのハードディスクDVDレコーダと何が違うのか? 今ひとつわかりにくい面のある同機だが、その使い勝手を検証してみよう

 昨年、参考展示されて以来、「いつ出るのか?」と噂されていたDVDレコーダ機能付きのコクーン「NDR-XR1」も、いよいよ店頭での発売を迎えて1週間が経過した。果たしてその実力は如何ほどのものか? フツーのハードディスクDVDレコーダとは何が違うのか? 本当に使いやすいのか? わずか2日ほどの試用期間ではあるが、その使い勝手を体験してみた。

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DVDレコーダ機能付きのコクーン「NDR-XR1」。148,000円(希望小売価格)で発売中

どんなところがコクーン?

 ソニーはコクーンというブランドを、他社の製品とは異なる新しいAV家電の姿としてイメージされるよう、細心の注意を払ってマーケティング戦略を進めているように見える。最初の作品となったチャンネルサーバー(CSV-E77)にしても、理屈の上ではTiVoライクなパーソナルビデオレコーダ(PVR)とは思いつつも、何か他とは違う期待感を感じさせる商品に仕上がっていたように思う。

 今回のNDR-XR1も、あえて“ハードディスクDVDレコーダ”といったベタな肩書きを避け、デジタルレコーダと名乗っている。非常に広い意味で捕らえられる名称で、チャンネルサーバーという名前とも共通性を感じる曖昧さがある。名前に縛られて機能的に狭い範囲で見られることを避け、あえて曖昧な印象を与える名前を考えているのかもしれない。

 ソニーによると、コクーンとはアップグレード可能で、どんな場所でもネットワークに繋がれ、しかもパーソナライズが可能な、新しいブロードバンド時代のデジタル家電を指すブランドだという。ネットワークを通じ、アップグレードで機能が成長するコクーンだけに、だんだんと機能の幅を広げていく可能性もある。将来多様な機能を統合するようになったとき、肩書きが邪魔になることを嫌っているのだろうか?

 もっとも、CSV-E77に関しては、なるほどと思える部分も多かったが、NDR-XR1のどこがコクーンなのだろう? そう思った人も少なくないと思う。NDR-XR1にはパーソナライズの要素が希薄に感じられ、ほかのハードディスクDVDレコーダと何が違うのか、今ひとつわかりにくい面がある。

 たとえばCSV-E77に搭載されていた、キーワード設定で自動録画する「おまかせ・まる録2」や、ユーザーの好みを学習して自動録画する「おすすめアルゴリズム」といったPVR的な機能は実装されていない。“コクーン”に対して、こうしたインテリジェンスなテレビ番組録画機能を連想している人は、肩すかしの印象を受けるだろう。

 ではNDR-XR1の、どんなところがコクーンなのだろうか? CSV-E77ではパーソナライズの面が強調された仕様になっていたが、本機の場合は“ネットワーク機能”の部分でコクーンであること(その本質はLinuxベースのAV家電と見るが)を主張しているようだ。

 NDR-XR1のハードウェアは、80GバイトのハードディスクとCeleronプロセッサ、DVD-R/RWドライブ、そしてイーサネットポートを持つコンピュータだ。その上に、Linuxベースのアプリケーションを被せたカタチ。起動もハードディスクから行われ、アップデートもメンテナンスモードからネットワーク経由で行うことができる。起動には10数秒かかるが、その代わりに汎用性は高く機能の追加が容易だ。

 また、Webブラウザが搭載され、テレビを使ったWebブラウジングが可能なほか、テレビ番組サイトのテレビ王国に設置されたコクーン専用ページで、電子プログラムガイドからの予約を行うことができる。テレビ王国ではキーワードを指定した番組検索やジャンルごとに分類された番組表、おすすめ番組ガイドなどを参照することもできる。

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リモコンとTVで閲覧できるWebブラウザの画面

電子プログラムガイドは確かに便利だが……

 インターネット経由で電子プログラムガイドを参照できるハードディスクDVDレコーダは、東芝の「RD-XS40/X3」を除けば本機のみ。録画ビデオのタイトルが自動入力されることをはじめ、この機能を持たない機種と比較すれば圧倒的に便利である。この機能ほしさに、本機を選択するという読者もいることだろう。

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1時間ごとの番組表示。各放送局の番組を一覧できる
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番組の詳細を表示
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録画予約画面

 ビデオ再生時、15秒単位で手軽に再生位置が変わるフラッシュ機能など、チャンネルサーバで好評だった機能も実装されている。メニュー構成がシンプルで、システムメニューボタンを押せば、たいていの機能や設定画面にたどり着ける操作性もいい。

 家族で1台のNDR-XR1を共有しようと考えている人は、4個までの任意フォルダを作成し、ユーザーごとに録画場所を変えられる機能を便利に感じるはずだ。フォルダへのアクセスには暗証番号を設定することも可能なため、他の家族に見られたくないビデオを秘密にしておくことも可能だ。

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録画済みビデオの一覧。タイトルやサムネイルも付く

 しかしながら、他のハードディスクDVDレコーダと比べると、どうしても見劣りする部分も少なくない。たとえば、本機のユーゼージモデルをシンプルにしたいという意図があっての措置なのかもしれないが、DVD-RWにおいてVRモードをサポートしておらず、単に消去可能なDVD-Rとしてしか利用できない。追記も不可能だ。

 またビットレートの任意指定やハードディスクからDVDへのダビング時、ビットレートを最適変換し、ピッタリディスクに収めるといった機能もない。たとえばHQモードで録画した2時間番組は、マニュアルで2つのビデオに分割してから書き込む必要がある(つまり自動分割も行えない)。

 DVからHDDへビデオを取り込む際は、DVデッキとシンクロする機能はあるが、あらかじめ巻き戻して、すべてのビデオを自動取り込みするといった芸はない。また撮影の継ぎ目に自動的にチャプターマークを挿入する機能もなく、あらかじめ設定しておいた間隔でチャプターが入るのみ。

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DV入力映像のチャプター表示画面

 DVDへの書き込み時には、きちんとした見栄えのするDVDメニューが作成できるだけに、もったいない。チャプターマークはリモコンから簡単に設定可能で、プレイリストの作成も容易。DVDオーサリングのやりやすさという面では優れた部分もあるだけに残念だ。

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DVDメニューも作成できる。30種のテンプレートを標準装備

 最大の長所である電子プログラムガイドにしても、ジャンル別番組表や番組ガイドから好みの番組詳細を開いても、そこに予約ボタンが出てこないという問題がある。おそらくはサーバ側の問題であるため、テレビ王国のサイトがジャンル別番組表などからも予約できるようにすれば解決する話だが、どこかチグハグな部分が製品の端々から覗く(編集部注:ソニーマーケティングによると、4月24日を目標にサーバ側の対応を進めているという)。

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キーワード設定。スペースで区切り、複数のキーワードを設定することもできる
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「メジャーリーグ」というキーワードで検索した結果
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時刻別検索を使い、今日放送される映画を一覧表示したところ

 ほかにも、DVDの書き込みが遅い(2倍速ドライブだが、その数字以上に時間がかかる)、DVDに録画したビデオをHDDに書き戻せない(つまりDVDにしてからHDD上のビデオファイルを消すと、HDDに戻して再編集できない)。

成長するのがコクーンとするならば

 ソニーがいうように、成長するのがコクーンブランドの製品とするならば、おそらく多数出てくるであろうユーザーの要望に対して、どのように応えていくかが、NDR-XR1の価値を決める要素となるだろう。

 たとえば、本機の再生速度は等倍の上が2倍となり、その次はいきなり10倍速までアップする。音声が聞こえる高速再生モードもなく、少々使いにくさを感じた。チューナーが1系統しかなく、予約録画を行っている最中は、表でハードディスクレコーダとしての機能(タイムシフト再生など)を行えなくなる点などはハードウェア上の制限から改善できないとしても、今後の機能アップが望めなければ80Gバイトハードディスク搭載の製品としては割高な印象が残る。

 またNDR-XR1と従来のチャンネルサーバーが機能的に異なるもので、NDR-XR1にチャンネルサーバー的機能が搭載されないのであれば、CSV-E77などとNDR-XR1の間をイーサネットで接続したいという要求もあるのではないか。つまりDVDレコーダとしてはNDR-XR1を使いつつ、チャンネルサーバーで自動録画したコンテンツを残したいとき、NDR-XR1からチャンネルサーバーのコンテンツにアクセスできれば、どんなにか便利なことだろう。

 別々の目的を持った、機能性が異なる商品ならば、その2つが繋がることで新しい価値を生み出せるはずだ。ネットワークはアップデートやインターネットアクセスだけではなく、機器同士の相互接続にも有用である。そんな期待を持ちながら、コクーンシリーズとは気長に付き合う必要があるのかもしれない。

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関連リンク
▼ニュースリリース(ソニー)
▼コクーンホームページ

[本田雅一,ITmedia]



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