リビング+:ニュース 2003/05/21 22:18:00 更新


「FTTH放送」はスカパーを黒字化に導くか?

会社設立以来、赤字を重ねてきたスカパーだが、ようやく単年度黒字を狙えるところまでこぎつけた。初の通期黒字を目指す今年度、新事業の柱の1つは、FTTHを利用した映像配信事業だというが……

 スカイパーフェクト・コミュニケーションズは5月21日、2002年度の決算説明を行うとともに、2003年度の事業計画を発表した。会場では、現副社長の重村一(はじめ)氏が、新社長に昇格する見込みであることが発表されたほか、今秋からサービス開始予定の、FTTHを利用した映像配信事業などの説明が行われた。

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 新社長に就任する見込みの重村氏(6月27日の株主総会の承認により、正式決定する予定)

 同社の2002年度の連結業績は、営業利益ベースで約183億円の赤字、経常利益で約190億円の赤字を計上。当期純損失は、約189億円に上った。

 ただし、日韓ワールドカップの影響などもあって、5月の個人契約新規受け付けでは、過去最高の月間11万7822人を記録。懸念された、ワールドカップ直後の大量解約もなく、通期で38万件の個人加入者増を達成した。同社は以前から、「個人の登録件数が累計で300万件」を損益分岐点としていたが、今年4月に、これを達成している。

 業績で見ても、第1四半期こそ、ワールドカップ向けのマーケティング費用で190億円以上の純損失を計上したが、その後第2四半期では、会社設立以来初となる四半期黒字を計上。第3四半期は、約17億円の純損失だったが、第4四半期には14億超の純利益を計上するなど、徐々に“黒字基調”となりつつある。

 「(1997年以来)6年かかって、ようやくマーケットを創出できた。今年度は30億円の当期純利益を目指す」(重村氏)。

 同社はまた、資本準備金を約615億円取り崩し、さらに資本を減少して、1200億円以上の累積損失一掃をはかると発表。これにより、明確に“先行投資の段階から、利益創出のステージに移行する”とうたっている。今回、現副社長の重村一を社長に昇格させ、現社長の細田泰氏が会長に就任して経営陣を一新する人事を発表したのも、新しいフェーズには新しい経営陣で、との考え方からきたものだという。

新事業の柱の1つは“FTTH”

 2003年度の事業計画では、サッカー「UEFAチャンピオンズリーグ」の放送権獲得、および日本代表も出場する「FIFAコンフェデレーションズカップ フランス 2003」の衛星独占放送権獲得などを活かし、市場拡大を狙う。また、ゴルフの全米・全英オープン放送や、ディズニー・チャンネル放送なども収益性の向上に寄与するという。

 通信関連では、FTTHを利用した映像配信事業を秋から、開始する予定。これは、1芯の光ファイバーに光波長を多重し、SDTV換算で最大500チャンネル分の映像を配信し、かつ上り下り100Mbpsのインターネット接続サービスを提供するサービスだ。

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 サービスの提供イメージ。光配信の場合は、64QAM対応のSTBで受信する(クリックで拡大)

 STBは、従来のサービスで使用していた端末に手を加えたものを、リースで提供する。データ伝送時に、利用する変調方式をQPSKから64QAMに変更するだけであり、さほど手はかからないという。

 「(従来の端末は1万5000円程度だが)値段は、それほど変わらない。現在、端末の後ろでQPSK/64QAMを切り替えられるような製品を考えており、DTH(CS放送)とFTTHで共用できるようなら、大量生産によって廉価にできる」。

 将来的には、端末側で自動識別して、シームレスに変調方式を変えられるようにしたいという。ユーザーからすれば、アンテナを設置せずに済むぶん、かえって手間はかからないとした。

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 FTTHとDTHの、ビジネスモデル比較図(クリックで拡大)

 FTTHサービスでは、100Mbpsの高速な上り回線を利用できる点も魅力。これをどう活用するかも、注目されるところ。もっとも、重村氏は「いろいろ考えられるが、当面は逆に、映像配信をベースにする」と慎重な姿勢でいる。

 とはいえ、いわゆる“放送と通信の融合”には期待している様子もうかがえる。「これまでは、通信と放送では各家庭に引き込まれる回線が別々だった。しかし今回は、家に1本(光ファイバーを)引き込めばすむ。通信と放送の融合は、これからだろう」と話した。

 今後、FTTHサービスでどれだけのユーザーを集めるかについて、重村氏は明言を避ける。しかし、1つの目標値として「2007年度に、110度CSデジタル放送とFTTHを合わせた数字が加入者数の3分の1」とのコメントを出した。

スカパーコクーンは「時代を変える」

 このほか、重村氏は記者団の質問を受けて、先ごろ発表になった“スカパー対応コクーン”こと「コクーン チャンネルサーバー CSV-P500」にも言及。「我々も発表前に見たが……時代を変えるな、との印象」と好感を示す。

 「画面で、地上波、BS、CSの違いを気にすることなく予約録画が可能になっている。IRD(Integrated Receiver & Decoder:放送用受信機)の中に、PVR(Personal Video Recorder)が入ってくる、その前段階だ」。

 今後は、前述のFTTHサービスのように、地上波放送とCS放送を一体化して配信するケースも出てくる。このため、各放送事業の境目はますますなくなるだろう、と予想。業界全体で協調しながら、事業を加速させたいと話した。

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関連リンク
▼スカイパーフェクト・コミュニケーションズ

[杉浦正武,ITmedia]



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