リビング+:特集 2003/05/28 23:59:00 更新

特集:IP電話を徹底解剖する
保存版・キャリア相互接続「相関図」

IP電話を考える上で、ややこしいのがキャリア間の「相互接続」だ。15日のKDDIの発表で、新たな局面を迎えたようだが、その状況を一枚の図にプロットしてみると……

 IP電話を考える上で、ややこしいのがキャリア間の「相互接続」だ。現在どの事業者と、どの事業者が提携関係にあり、どのISPのサービスに申し込むと、どのキャリアのユーザーと無料通話が可能なのか? 次々と新情報が入り、状況が複雑化する中で、頭を悩ませるユーザーも多いだろう(実は、記者もその1人だった)。

 特集「IP電話を徹底解剖する」、第3回目はこの、相互接続状況の検証に挑む。各事業者のサービスを調べた結果、完成した“相関図”は、以下のとおり――(クリックで拡大)。

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 まず、図を閲覧してもらう前に、いくつか確認したい点がある。そもそも、IP電話サービスを主体的に提供する事業者には、VoIP基幹網を提供する事業者と、そのネットワークに自社インフラを接続して、ISP窓口として受け付けを行う事業者がある。

 図では、いくつかの大きな囲みがあるが、これは“基幹網別”にグループ分けを行ったということ。もちろん、同一の基幹網内にあるISP間では、相互接続が済んでいると見ていい。図で目につくと思うが、「NTTコミュニケーションズ(OCN)」「KDDI(DION)」の2つの陣営が大きな存在感を持っていることが分かる。

 左端には、「ぷららネットワークス&NTT-ME」(ぷらら&WAKWAK)の一団があるが、これはNTT東西のフレッツ網を足回りに利用するグループ。一般には、“NTT東西のIP電話サービス”と考えられがちだが、実は同サービスで、NTTは基幹網を提供していない(あくまでアクセス回線+VoIP端末を提供する役割)。基幹網は、ぷららネットワークスとNTT-MEが提供しているのだ。

 このほか注意すべきは、複数の基幹網にまたがって、自社インフラを接続するISPが存在すること。BIGLOBEがそのいい例で、NTT系、OCN系、KDDI系、フュージョン・コミュニケーションズと、実に4陣営で対応サービスを提供している(KDDIは6月2日から提供予定)。

 こう見ると、BIGLOBEに加入すれば、より多くの事業者と接続することになるのか? と思うユーザーがいるかもしれないが、これは間違い。あくまで基幹網が接続しなければ、相互接続したことにはならない。つまり、「BIGLOBE:OCN」ユーザーと「BIGLOBE:KDDI」ユーザーは、相互接続できていないわけだ。同じISPでありながら、妙な話だが、これがIP電話業界の現状である。

足並みが乱れる有力ISP

 IP電話サービスの相互接続は当初、加入者数でほかの事業者に大きく水をあけるYahoo! BBへの対抗措置として、有力ISPが手を組むことで始まった。2002年4月には、BIGLOBE、KDDI、ODN、hi-hoの4ISPが手を組み「メガコンソーシアム」を設立すると発表(関連記事)、この連合体を軸に、IP電話の相互接続が進むと見られていた。

 しかし、@nifty、OCN、So-netといったISPは、この連合に加わることに積極的ではなく、逆にこの3社でもう1つの結集軸を作り出した。2002年11月には、3社でIP電話の相互接続を行うことを発表(記事参照)。3ISPあわせた会員数は、1100万人とうたった。

 これを追いかけるように翌日、メガコンソーシアム内でもIP電話サービスの相互接続を行うと発表したが(記事参照)、その足並みは、完全にそろっていたとはいいがたい。基幹網を提供する事業者が、結果的にKDDIとODNに2本化してしまったのだ。さらに、BIGLOBEとhi-hoは前述のOCN基幹網に接続することを決めたが、KDDIとODNは、これに追随しなかった。

 かくして、OCN基幹網につながるISPばかりが増えていたのだが、今月に入って、新しい動きがあった。5月15日、KDDIが大幅な業務提携拡大を発表したのだ(記事参照)。

KDDIの巻き返し

 それによると、6月中旬をめどに、新たに@niftyがKDDI基幹網に参加することになった。また、懸案だったODNとの相互接続も、6月に行われることが明らかに。さらに、パワードコムとも相互接続を進める予定であることが発表された。

 パワードコムとの相互接続は、大きな意味を持つ。もともとKDDIは、関西電力グループのFTTH事業者、ケイ・オプティコムといち早く相互接続を行っていた(記事参照)。今回、パワードコムとの接続もあって、KDDIグループと電力系新電電(NCC)と距離の近さがより鮮明になった。

 パワードコム広報によれば、電力系NCC間での相互接続が行われるのは、「050番号での着信が可能になる、夏以降」。その頃に、KDDIと電力系NCCとの大掛かりな接続が行われるようなら、この集まりが一大勢力となることは明らかだ。

最終目標は「OCN=KDDI接続」か?

 図を見ると、おのずと相互接続で残された課題が分かる。OCNとKDDIの接続である。これが実現するようなら、メガコンソーシアムとOCN、@nifty、So-netの完全接続が実現する。その先には、当然電力系NCCともつながるだろうから、Yahoo! BBやNTT陣営にとっても気になるところだろう。

 上記の可能性について、各ISPの広報に聞いてみたが、現状ではどのISPも明言を避けた。やはり、こうした交渉は結果が出るまでなんともいえないようだ。もちろん、交渉を進めていることは間違いない。エンドユーザーは、この“相互接続図”がよりシンプルになるよう、願っている状況ではないだろうか。


 さて、IP電話といえばよく指摘されるのが「110番通報ができない」点だ。ZDNetでもたびたびこの問題をとりあげているが、進捗状況はどのようなものか? 明日は、この問題に直接関わる人間に質問をぶつけながら、現状を把握してみたい。

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[杉浦正武,ITmedia]



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