リビング+:特集 2003/05/30 22:31:00 更新

特集:IP電話を徹底解剖する
モバイルIP電話の可能性を探る (1/2)

最終回のテーマは、モバイルIP電話だ。ユーザーの期待は高いが、実現にはインタフェース、電力消費、サービスエリアなどに課題を抱える。それでも実現は可能なのか?

 特集「IP電話を徹底解剖する」、最終回のテーマは、モバイルIP電話だ。“IP電話の未来”を語る上で、これ以上の素材は見あたらないといえる。

 IP電話はこれまで、加入者電話より大幅に低額な通話料を提示して、ユーザーの支持を得てきた。これがさらに無線LANなどを利用してモバイルIP電話となり、街中で高品質なVoIP通話を低価格で楽しめるようになれば、ユーザーの支持を集めるだろうことは、想像に難くない。

 もっとも、ここで注意してほしいのは、前提条件となる「高品質なVoIP通話を」定額で楽しめるなら……という部分。単にモバイルIP電話サービスを提供するだけなら、現状でも十分可能なのだが、商用化に堪える“サービスのクオリティ”を実現するには、まだまだ課題が多いのだ。今日は、そのあたりを検証してみたい。

インタフェースをどうする?

 モバイルIP電話の実現を考える上で、まず最初の課題になるのがユーザーインタフェース。具体的には、VoIP端末に何を使うのか? という問題だ。

 現状、各事業者が展開しているモバイルVoIPトライアルで主流なのは、PDAをVoIP端末に利用するパターン。NTT-MEはPocket PC 2002搭載端末/日立製「NPD-10JWL」を、シャープとソフトフロントはLinuxザウルスを、NTT-BPはPocket PC 2002搭載端末を、それぞれVoIPトライアル向け端末として採用した。

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 NTT-MEのトライアルでは、Pocket PC 2002搭載端末などをVoIP端末として利用した

 確かに、PDAをVoIP端末に使えば、各種ソフトウェアとの連携も容易で、スタイラスを利用してのテキストチャットとVoIPを組み合わせることもできる。既にVoIPソフトウェアも開発されており、事業者としては一番サービス開始に近い方法ではあるだろう。

 もっとも、ユーザーインタフェースとしてのPDAには、課題も多い。NTT-MEのサービスイノベーション本部、高内利政課長は同社のトライアル実施にあたり、「(PDAは)マイクとスピーカーの位置が近すぎて、ノイズが入りやすい」と認めている。「実際に通話する際は、ヘッドフォンやイヤホンマイクの使用が必須だろう」(同)。イヤホンマイクを使う、というスタンスは、ほかのトライアルでも同様だが、これがユーザーに受け容れられるかどうかは微妙だ(記事参照)。

 この点に配慮して、アイピートークと三菱電機が発表したIP電話「モバイルIP Talk」のように、携帯電話に近い独自端末を利用することも考えられる。

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 アイピートークと三菱電機の「モバイルIP Talk」

 この場合は、当然のことながらコストが問題になってくる。事業者にすれば、独自端末を開発する開発コストが必要になるし、当初は量産が難しいことから、端末を競争力ある価格で提供できないという懸念もある。“通話料を安く抑える”ことがモバイルIP電話のウリであることから、端末提供価格を値下げするといっても限界があるだろう。

 VoIP端末ということで見ると、インタフェース以外にももう1つの課題がある。

電池の持ちは大丈夫?

 端末に関連した課題としては、電池の持ちが挙げられる。たとえば、「無線LAN倶楽部」でVoIPトライアルを実施するNTT-BPの広報によると、通常のPDAでVoIP通話を行った場合、「1時間ほどで電池が切れるだろう」という。

 もちろん実際のサービスでは待ち受け時間を確保しなければならないから、条件はさらに厳しい。携帯電話のような、待ち受け時間200〜300時間を実現するには、先が長いと見るのが妥当だろう。

 そもそも無線LANの規格自体が、省電力を考えて設計されていないという問題もある。通信総合研究所の横須賀無線通信研究センター、森川博之氏は、「無線LANの弱点は電力消費。無線LANで1ビットを10〜100メートル送信するのに必要な電力消費は、数千〜数百万命令の電力消費に匹敵する」と指摘する。

 「この点は、(無線LANに関わる業界全体で)しっかりまじめに考えていかないといけない。無線LANだけでは低消費電力を実現できないというなら、無線LANとZigBee(記事参照)を組み合わせるなどして、全体として消費電力を下げていかなければ」(同)。

 NTT-BP広報も、「待ち受け状態では無線LANカードがスリープモードになるなど、工夫が必要だろう」とコメントする。こうした取り組みが進まなければ、モバイルIP電話サービスの実現は難しいだろう。

通話エリアはどうなる?

 さらに根本的な問題として、通話エリアがどうなるかという疑問がある。

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[杉浦正武,ITmedia]



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