リビング+:特集 |
2003/08/01 23:57:00 更新 |
特集:“放送と通信の融合”を再検証
地上デジタル放送はブロードバンドで見られるか?
年末には開始される地上デジタル放送。もともと放送を手がけていたCATV局はもちろん、ADSLやFTTHの事業者も地上デジタル放送の同時再送信を新しいコンテンツとして注目しはじめている。しかし、今のところ地上デジタル放送を視聴できるインフラと、できないインフラは、はっきりと区別されることになりそうだ。
年末にサービスが開始される地上デジタル放送。もともと放送を手がけていたCATV局はもちろんのこと、ADSLやFTTHの事業者も地上デジタル放送の“同時再送信”に注目している。例えば、スカイパーフェクTV!は、FTTH放送を2003年の秋から冬にかけて開始するが、このタイミングは「地上デジタル放送の開始に合わせることが目標」(同社)。ただし、現在の状況では、地上デジタル放送を視聴できるインフラと、できないインフラは、はっきりと区別されることになりそうだ。
TV放送を提供するには、該当する放送局と「同時再送信同意書」を交わす必要がある。ただ、地上放送の場合は、直接電波が届く(はずの)エリアで行うことが前提となっており、本来の放送地域から外れた場所で番組を放送する「区域外再送信」は過去に例がない(記事参照)。
しかし、地上デジタル放送は視聴地域の点で難しい問題を抱えている。アナログ放送との干渉問題により、特に東京エリアは送信出力を上げられず、放送開始当初は極めて限られた地域でしか放送を受信できない。アナ・アナ変換が一段落するまで、キー局が従来の放送エリアさえカバーできない状況が続くわけだ。
そこで放送局側は、アナログ放送の電波が届くエリアにあるCATV局などに限り、地上デジタル放送の同時再送信を許可する方向で調整を進めている。先週開催された「ケーブルテレビ 2003」でも、民放とNHKが共同ブースを構え、地上デジタル放送をCATVで同時再送信する方法などを紹介。説明員は、「現在の放送と同じエリアにあるCATVには再送信が認められるだろう」と見通しを語っていた。
一方、ADSLやFTTHで再送信するとなれば、サービスエリアは大幅に拡大する。しかしそれは、放送局側にとっては都合が悪い。というのも、各地域には系列のローカル放送局があるからだ。テレビ東京のように系列局は持たないケースでも、アニメや人気番組を地方局に個別販売していることもあり、仮に全国を網羅するブロードバンド事業者がキー局の放送を同時再送信することになれば、放送業界全体のビジネスモデルが一気に崩れてしまう。
IP網経由の同時再送信は……?
では、スカイパーフェクTV!が予定しているFTTH放送はどうなるのか。結論からいえばCATVと同じ扱いで、再送信は可能になる見込みだ。
問題となりそうな地方局との兼ね合いについては、スカパー!側が配慮する。「地域ごとにあるNTT局にヘッドエンドを置き、ローカル配信を行う。そのNTT局に“ぶらさがる”集合住宅に対しては、その地域の番組を送出する」(同社)。
一方、著作権法上は“放送”に分類されない(別記事を参照)IPベースのサービスはどうか。テレビ東京の担当者は、「同時再送信を認めるのは、あくまでも“放送”に関して」と再送信は認めない方針を示唆した。
放送コンテンツを巡る状況は刻々と変化しているため、将来にわたって不可能だとはいいきれない。しかし、地上デジタル放送を目当てにブロードバンドインフラを選択する場合は、その配信形態を知っておく必要がありそうだ。
関連記事
ブロードバンドで“TV放送”の可能性
動画配信にメジャー作品が少ない理由
|
特集:“放送と通信の融合”を再検証 5/5 |
|
[芹澤隆徳,ITmedia]