リビング+:特集 2003/08/01 23:59:00 更新

特集:“放送と通信の融合”を再検証(後編)
ブロードバンドで“TV放送”の可能性

後編ではスカイパーフェクTV!やKDDIのFTTH、BBケーブルTVなどで最近注目を集めている“放送”の分野にフォーカスをあてる。各社のビジネスモデルと配信の仕組みから、ブロードバンドインフラで“何を見ることができるのか”がわかってくる。

 前編では、主にビデオ・オン・デマンド(VoD)に関わる著作権処理の問題を紹介したが、後編ではスカイパーフェクTV!やKDDIのFTTH、BBケーブルTVなどで最近注目を集めている“放送”の分野にフォーカスをあててみたい。各社のビジネスモデルと配信の仕組み、そして法制度を読み解くことで、ブロードバンドインフラで“何を見ることができるのか”がわかるはずだ。

 著作権処理が難しい状況は既に紹介したが、結局のところコンテンツホルダーが許諾を出さなければそのコンテンツを配信することはできない。この許諾を得るにあたり、焦点となるのが不正コピーの可能性だ。しかし、その基準は存在せず、許諾を出すかどうかは、事実上コンテンツホルダーの考え方次第といえる。

 まず敬遠されがちなのは、誰でもアクセスできるインターネット上の配信。受信側がPCであればなおさらだ。さらに、クローズドネットワークであっても、IP網でコンテンツを送信することを頑なに拒むケースも多いという。このため、各社はDRMの導入はもとより、専用のセットトップボックス(STB)をPCの代わりに使うといった手段を講じている。

 例えば、「BBケーブルTV」はクローズドな網内だけの配信にくわえ、専用STBを用意している。このSTBは、マクロビジョンによるコピープロテクションをサポートし、映像出力もアナログに限定。もちろん、HDDなどの録画機能も持っていない。いずれもデジタルコンテンツの違法コピーを防ぐためであり、同時にコンテンツホルダーの理解を得るための方策といえる。

 また、KDDIが計画しているFTTHの動画配信サービスでも、松下電器製のSTBを採用する見込みだ。同社では「単なるVoDではない、放送的なものを数十チャンネル設ける」(KDDI、ブロードバンド・コンシューマ事業本部ブロードバンド企画部の片岡浩一部長)としており、IPベースの放送型コンテンツサービスを提供する考え。

 KDDIの場合も自社のIP網を通じてMPEG-2 TS信号を流すのはBBケーブルTVと同じ。さらにFTTHの広帯域を活かし、ビットレートは4〜6Mbpsとする予定だ。「IP=インターネットではない。技術的にはIPが基盤になるが、基本的にクローズドな構成だ」。

放送と自動公衆送信の違い

 こうした対策によって、両社とも複数のコンテンツホルダーと協力関係を結ぶことに成功している。しかし、衛星放送などと比べ、チャンネル数は、まだまだ少ないのが現状だ。

 その理由は、単なる技術論では済まない部分にある。「現状では“放送でなければ不可”というコンテンツホルダーもいる」(片岡氏)。

 “放送”の解釈には、いくつかの焦点があるが、まずは通信事業者と放送事業者の違いだ。ただしこの点は、2003年1月に施行された電気通信役務利用放送法により、通信衛星や光ファイバーなど電気通信回線を使った放送(有線役務利用放送)が制度化されている。第1号認可事業者はBBケーブルTVのブロードメディア・ティービー企画であり、KDDIなども遠からず申請することになるはずだ。これにより、少なくとも“放送事業者”とは言えるようになった。

 しかし、より大きな障壁は、「著作権法上の分類」だ。片岡氏によると、現在の解釈では同社が提供するサービスは、“自動公衆送信”に分類され、“放送”には当たらないのだという(著作権法第2条)。自動公衆送信とは、送信用のコンピュータ(つまりサーバ)にある情報が、公衆(端末)からのリクエストによって送信されるもの。これに対して、「放送」は情報が常に端末まで送信されているもの、という解釈だ。

 地上波にしても、BS/CS、CATVも、TVやSTBまではすべてのチャンネルが常時届き、チューナー側で選択したチャンネルだけがTV画面に表示される仕組みになっている。これに対し、IPベースの放送を行う場合は、エリアごとに設けられる地域ノード(主にはNTT局舎)までは全チャンネルの映像が届くものの、アクセス回線を通ってSTBに至るのはユーザーのリクエストしたチャンネルだけ。帯域幅を無駄にしない効率的な方法ではあるが、全チャンネルがユーザー宅まで届かないのは事実だろう。

 「われわれの方法は、品質的にもコスト的にもメリットが大きい。しかし、一部のコンテンツホルダーには、“STBまで全チャンネルが届いていないでしょう?”と言われることがある」(片岡氏)。

 ユーザーから見れば、配信のカタチはどうあれ、使い勝手はいずれもTVと同じ。まるで一部のコンテンツホルダーが“あげあし”をとっているようにも見えるのが残念だ。もっとも、そのようなコンテンツホルダーは、ネットを新しいコンテンツ流通手段と捉えていないわけで、たとえ制度面の区別がなかったとしても、配信の同意を得ることは難しいのかもしれない。

放送は放送で

 一方、ブロードバンドと放送を以前から両立させているインフラがCATVだ。もともと放送事業者が通信事業に参入したCATVは、1本の同軸ケーブルで放送と通信を伝送可能。物理的には1つのラインでも、通信と放送はそれぞれ使う周波数帯や伝送方式などが異なり、独立した管路といえる。

 そして、ブロードバンドインフラとして誕生したFTTHに、CATVと同等の役割を持たせるのが、スカイパーフェクTV!の発表で一気に注目を集めた“光波長多重”技術だ。

 波長の異なる光信号を3本設け、独立した伝送路とするこの技術は「映像をIP変換する必要がなく、また従来の不正コピー防止方法をそのまま利用できる」(NTT)のがメリット。放送のために通信用の帯域幅が減ることもなく、多チャンネル放送を実現できる。もちろん、全チャンネルの映像信号が端末(ONU)まで届くため、著作権法上の分類も“放送”にあたる。

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 スカイパーフェクTV!は、この光波長多重技術を利用した映像配信事業を「2003年の秋から冬」を目処に開始する計画を明らかにしている。実際の運営は6月に設立した100%子会社「オプティキャスト」が担当し、課金や顧客管理業務をスカイパーフェクTV!に委託する。そして、オプティキャストは、今夏にも電気通信役務利用放送法に基づく役務利用放送事業者(有線)の登録申請を行う予定だ。これでFTTHの放送業務を行う体制が整うことになる。

 残された課題は、各チャンネルの著作権ホルダーとの間に有線放送を前提とした権利処理“ケーブルライツ”を交わすこと。これまで同社は衛星放送のみを手がけていたため、有線放送業務に関わる権利を持っていないからだ。「ほとんどのチャンネルはOKだと考えている」(同社)。

サービスの融合は進む

 スカイパーフェクTV!のFTTH放送は、既存のCATV局と比べてもチャンネル数が格段に多く、また上り下り100Mbpsの通信も導入可能な、極めて競争力の高いサービスとなるだろう。同社は「配信プラットフォームはオープン」と話しており、NTT地域会社だけではなく、インフラさえ整えば他のFTTH事業者やCATV事業者にも提供する可能性があるという。このサービスがトリガーとなり、CATVの光化が促進される可能性も高いだろう。

 ブロードバンドユーザーにとっては、IP網の上であらゆるコンテンツが視聴できるようになれば理想的だが、それにはまだまだ課題が多い。だが、光波長多重技術などを取り込む新しいサービスの登場により、少なくともエンドユーザーが放送と通信の区別を気にする必要のないサービスが増えてきそうだ。“IP通信と放送の融合”にはまだ時間が必要だが、“ブロードバンドサービスと放送サービスの融合”は着実に進む。今のところは、そんな状況といえるだろう。

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[芹澤隆徳,ITmedia]



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