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2003/08/01 23:50:00 更新 |
特集:“放送と通信の融合”を再検証
KDDIが模索する光サービスの姿
NTT東西のアクセス系ダークファイバーを使い、年内にもFTTHサービスを開始するKDDI。そのサービスには“フルサービスのIP電話”“数十チャンネルの放送型映像配信”など、魅力的な項目が並ぶ。
自前のアクセス回線敷設から方針を転換し、NTT東西のダークファイバーを使ったFTTHを年内にも開始するKDDI。回線で特色を打ち出せなくなったぶん、コンテンツやサービスには力が入りそうだ。同社が検討中のサービスについて、ブロードバンド・コンシューマ事業本部ブロードバンド企画部の片岡浩一部長を聞いた。
KDDIブロードバンド・コンシューマ事業本部ブロードバンド企画部の片岡浩一部長
KDDIは、昨年まで自社の光ネットワークを敷設するFTTHサービスを計画していた。2002年3月には新宿区と文京区の一部地域を対象とした「FTTHトライアル」を実施。セットトップボックス(STB)をはじめとする多くのネット家電を用い、ホームネットワークの将来像を描き出した(記事参照)。
しかし、その後同社は方針を転換。NTT地域会社のアクセス系ダークファイバーを利用したFTTHサービスを検討している。最大の理由はエリア展開のスピードだ。
ダークファイバーの場合は、NTT局(GC局)までバックボーンを引くだけで当該エリアをカバーできる。「NTTは、これまでに2〜3兆円をかけて光ファイバーを敷設してきた。時間と投資額を考えると、ダークファイバーという選択肢が有効」と判断したという。そのスピードを活かし、2年後には全国をカバーする方針だ。
開始当初のエリアは、東名阪や札幌、仙台、福岡など大都市圏。主に既築の集合住宅への導入を進める。同社は、集合住宅向けにはダークファイバーを使っており、その延長線上にあるサービスといえる。「戸建ての申し込みも受け付けるが、集合住宅と同じ料金設定は難しいだろう」。
一方、自前の回線敷設もあきらめたわけではない。片岡氏は、マンションなどに敷設しているEV-DOのバックボーン(光ファイバー)利用や、FTTHトライアルで検証したE-PON型光サービスの戸建て住宅への展開も引き続き検討していくとしている。「マンションはPON型にしなくてもコスト的には見合うが、戸建ては分岐(による回線シェア)が必要だ。しかし、2004年度以降は戸建て住宅をターゲットにしたE-PON型のサービスも検討していく」。つまり、ダークファイバーでエリア拡大と顧客確保を急ぎ、その後で自前回線も展開する、二段構えの戦略だ。
簡単操作のHGW、フルサービスのIP電話
トライアルでは、日立製作所のSTBや東芝のネット家電などをモニターに貸与するなどアプリケーションの充実に注力したKDDIだが、このうち映像配信やIP電話などは本サービスでも提供する計画だ。しかも、そのリストには“フルサービスのIP電話”“放送型映像配信”など、かなり魅力的な項目が並んでいる。
映像配信のメインは、TVで視聴することを前提とした放送型サービス。4〜6MbpsのMPEG-2 TSをSTB向けに配信。ユーザーは数十のチャンネルから好きなものを選択し、受動的に視聴できる。ほかにも音楽配信やVoD、TV電話、e-ラーニングなどのコンテンツも計画中だ(記事参照)。
5月の「ビジネスシヨウTOKYO 2003」に出典されたSTB。松下電器製
さらに携帯電話事業を持つKDDIならではのモバイル連携サービスも視野に入れている。「例えば暇なときに携帯電話で映画のプロモーションビデオを見る。その場でセットすれば、ネットワーク経由でSTBの“お気に入りリスト”に追加される仕組み。自宅に帰ってすぐに視聴できる」。
一方のフルサービスのIP電話とは、固定電話と変わらない機能を持つIP電話という意味だ。つまり、携帯電話や国際電話はもちろん、緊急電話番号発信も可能。そのうえ、「固定電話で使っている電話番号を継続利用できる“番号ポータビリティ”もサポートする」という。
また、ハードウェア面では、新たにホームゲートウェイ(以下HGW)が用意される。セキュリティ向上のほか、PCやネット家電のセットアップをより簡単にするのが狙いだ。
なかなか魅力的なコンテンツをそろえるKDDIの光サービスだが、残念なのはISPが選択できないこと。将来的には回線卸売りも視野に入れるというが、当初はDIONとのセットになる。「ISPを選択できないことがデメリットになる可能性はある。しかし、これまでの経験から言えば、ユーザーはISPを移ることにあまり抵抗を感じていないようだ」(片岡氏)。
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[芹澤隆徳,ITmedia]