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2003/11/14 23:58:00 更新 |
DICON2003
日本映画界の大御所が話す、韓国「文化開放」の流れ
韓国・ソウルで開催されているデジタルコンテンツの総合展示会「DICON2003」を、日本映画会の大御所が視察し、韓国が進めている、日本文化開放の流れなどについて話した。
韓国・ソウルで開催されているデジタルコンテンツの総合展示会「DICON2003」を、日本映画会の大御所が視察した。
東映の社長、会長を務め、現在は東京商工会議所の情報産業部会長の座に就いている岡田茂氏は11月14日、DICON2003の会場を訪れ、現地にて記者会見を開いた。韓国が進めている、日本文化開放の流れなどについて話した。
東京商工会議所、情報産業部会長の岡田氏
日韓のコンテンツ交流を考えたとき、いまだに溝は完全に埋められていない。韓国は前政権で3次にわたる日本文化開放措置がとられたが、日本の歴史教科書歪曲問題に反発した韓国が、2001年にこれを中断したという経緯があった。現状、韓国内で視聴できる日本大衆文化は、その一部が制限されている。
岡田氏は、冒頭からこの話題に触れて、かつては日本の映画を韓国に輸出しようとしても、実現が困難だったと振り返る。
「昔は韓国によく来たが、なかなか商業的な話にならなかった。当時の韓国政府の文化担当者や、ここにお集まりの皆さんのような有力新聞社が、『日本の映画開放は早すぎる、ダメだ』と言ったからだ」。
当時の岡田氏は、できる限りの交渉を重ねたが、ついにはあきらめざるをえなかったという。
しかし、徐々にではあるが状況は変わってきた。実際、今回岡田氏が韓国を訪れたのも、韓国側から「一つきてくれないか」という誘いがあったからだ。
岡田氏は、“雪解けムード”になってきた背景には、在日韓国人のスターが登場したことが大きいと見る。韓国の俳優では、日本のコンテンツに出演したいと思っても、なかなか難しい部分もあったが「在日なら、出て当たり前だ」(同氏)。こうした流れから、歌謡界で日韓交流が進み、当初は“日本語の歌詞は一切だめ”と頑なだった韓国側も、態度を軟化させてきたという。
日韓合作はいまひとつ?
日韓コンテンツ交流の中で、日韓合作映画なども制作されるようになった。しかし、こうした趣旨の作品は、現状ではまだなかなかヒットしていない。この点について、会場の記者から質問も飛んだ。
岡田氏は、「理由ははっきりしている」と答える。
「合作となると、日本の顔も立てなきゃいけない、韓国の顔も立てなきゃいけない、となる。そうして、テーマのはっきりしない映画を作ったってダメだ」。たとえ合作でなくとも、制作側が真剣に取り組めば、日本でも韓国でもヒットするのであり、妙に話題性を狙う必要はないとした。
「たとえば『シュリ』という韓国映画があったが、これだけは日本でもあたった。あれは、韓国でないと撮れないでしょうが。韓国では南北問題があって、いまだに戦後が続いているんだから。韓国の現実問題が、如実に出ている、だからあたったんだ」。
同氏はまた、映画制作で2国が協力するなら、片方が他方に投資するような関係しかうまくいかないのでは、とも言及。「話し合って作っても、なかなか難しくってダメだね」と話した。
さらなる文化開放へ
いずれにせよ、日韓のコンテンツ交流は進みつつある。今年9月には、韓国政府が第4次の日本大衆文化の全面開放計画を発表した。これにより、映画やゲームなどの業界でさらに制限が撤廃されることになる。
この状況をふまえて、会場からは「東映が韓国に現地法人をつくる考えはあるのか」との質問も飛んだ。岡田氏は、「まだ、そこまで考えていません」と、慎重な言い回しをするにとどめたが、韓国側の文化交流に対する積極的な姿勢が、透けて見える一幕だった。
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[杉浦正武,ITmedia]