統合そしてサービス化、Windows 10は企業のビジネス基盤をどう変えるのか最後のOSバージョンに?

新バージョンを発表するたびにPCの活用領域を開拓してきたマイクロソフトの「Windows」。その最新版である「Windows 10」が2015年7月にリリースされた。日本マイクロソフトが開催したイベント「2015 Microsoft Premium Day Windows 10&Surface」では、「Windows as a Service」といったフレーズなどとともにWindowsの新たな姿が力強く語られた。

» 2015年07月29日 00時00分 公開
[ITmedia]
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企業変革を先導してきたWindowsの向かう先

 「Windows 10が目指すところ。それはPCやタブレット、モバイルなど、あらゆるデバイスのプラットフォームを統合したUniversal Windows Platform(UWP)の実現にほかならない」

 日本マイクロソフトが6月30日に開催したセミナーイベント「2015 Microsoft Premium Day Windows 10&Surface」のオープニングキーノートで、同社 Windows本部の三上智子本部長はこう強調した。(本イベントでは併せてSurfaceの製品戦略などについても言及された。そちらについては関連記事を参照されたい

日本マイクロソフト Windows本部の三上智子本部長 日本マイクロソフト Windows本部の三上智子本部長

 世にWindowsが登場して20年。その間、コンシューマーはもとより、企業においても多様な業務を支援し続けてきた。一方で、用途に応じて複数のWindowsが存在していた。そうした中、満を持してリリースされたのが新OS「Windows 10」だ。

 「それらを統合し、“One Windows”によってアプケーション開発やデバイス管理などの重複業務を一掃するとともに、インタフェースの共通化による利便性の抜本的な向上」(三上氏)がWindows 10の狙いの1つ。キーボードの接続の有無を自動認識し、従来型のデスクトップ画面とModern UIの画面の切り替えを実現したのも、多様なデバイスを使うユーザーの利便性向上のためにほかならない。

 また、三上氏は「Windows 10は最後のメジャーバージョンアップ。今後は“Windows as a Service(WaaS)”という考えを基に、数十年先の利用にも対応する」ことを併せて紹介。これにより、システム管理側はバージョンアップによる煩雑な作業から解放されるとともに、ユーザー側も従来と変わらない使い勝手が今後、維持されることとなる。

生体認証でセキュリティが強固に

 では、Windows 10により、具体的にどのようなメリットを得られるのか。その点について日本マイクロソフト Windows本部 シニアマネジャーの西野道子氏は、「認証とデータ保護、クライアント管理の3点が機能強化の目玉と位置付けられます」と力を込める。

 まず、1つ目の認証について、Windows 10では新たに、生体認証機能「Windows Hello」と、各種アプリやWebサービスなどへのログインをWindows Helloと連携して行う「Microsoft Passport」が実装される。PCやタブレット、スマートフォンなどでのWindows 10の起動時には、ユーザー特有の顔、虹彩、指紋で認証が行われるので、認証強度が格段に高まる。

 2つ目のデータ保護では、Windows 10からはハードディスクドライブ(HDD)や各種メディアを丸ごと暗号化することが可能となり、「端末紛失時のデータ漏えいリスクが大幅に低減される」(西野氏)。

 とはいえ、セキュリティ対策をどれほど強化したとしても、ユーザーの故意や過失による情報漏えいを完璧に防ぐことは困難である。

 「そこで、Windows 10では“Pro”と“Enterprise”の両エディションにおいて、個人利用と企業利用の観点からアプリを分類し、企業利用のアプリから個人利用のものへのデータコピーを防止する機能を追加しました。その利用を通じ、社員によるSNSなどからの社内データの漏えいリスクを抜本的に低減することが可能になります。加えて、単に一律に禁止するだけでなく、理由を入力することでペーストを許可する“ソフトブロックオプション”を用意するなど、ユーザー側の利便性も高いレベルで確保されます」(西野氏)

BYODをより加速する仕掛け

 3つ目のクライアント管理で西野氏が挙げた強化ポイントが、クラウドサービス「Microsoft Azure」との連携による「Azure Active Directory(AAD)」である。Windowsでは長らく、システム認証基盤としてADが利用されてきたが、AADではモバイルデバイス管理を視野に、クラウド版Officeアプリケーション「Office 365」や業務アプリケーション「Microsoft Dynamics」、そのほかのクラウドサービスのシングルサインオン(SSO)まで実現する。

日本マイクロソフト Windows本部 シニアマネジャーの西野道子氏 日本マイクロソフト Windows本部 シニアマネジャーの西野道子氏

 西野氏は、「これまでBYOD(私的デバイス活用)を実践するには、管理者による端末登録やポリシー設定などが必要でした。しかし、AADではウィザードに従って操作することで、ユーザーのセルフサービスによる端末登録が可能なほか、端末へのポリシー配布によって、カメラなどの機能制限もエージェントを用いることなく容易に実施できます。その結果、モバイル環境における端末管理の負荷が大幅に削減されるとともに、ユーザー側もSSOによって、アプリごとの認証の手間から解放されるわけです」と解説する。

 なお、Windows 10では既存環境を維持しつつ、効率良くアプリケーションの社内展開を可能とする「インプレースアップグレード」や、プロビジョニングの強化を通じて、セキュリティポリシーやWiFi設定、内蔵デバイスの初期設定の自動化も実現しているという。

 Windows ストアでのアプリ購入も、Windows 10ではAADのIDで利用可能なWebベースのストア ポータルから行えるようになり、従来からのクレジットカード決済に加え、請求書での決済にも対応するという。企業ユーザーにとって、こうした細かな配慮も見逃せないだろう。

ユーザーは常に最新のテクノロジーを享受

 一方で、WaaS、つまりWindowsの「サービス化」とは果たして何か。その点について、「従来はマイクロソフト社内でアップデート作業を走らせ、2〜3ほど完了した時点でユーザー公開に踏み切っていました。サービス化によって、この社内に“貯める”プロセスがなくなり、ユーザーは常に最新の機能やセキュリティパッチを利用できるようになります」と、日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部 エバンジェリストの高添修氏は説明する。新技術の早い取り込みや、セキュリティリスクなどの新たな脅威への迅速な対応、モバイルデバイスの円滑なアップデートなどが、マイクロソフトがサービス化に舵を切った狙いである。

日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部 エバンジェリストの高添修氏 日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部 エバンジェリストの高添修氏

 その実践のために、同社ではアップデートのリリースプロセスを大幅に見直すという。具体的には、リリース前に数万人の社員を対象にしたβテストの実施と、そこで得たフィードバックを基に改善する作業までは同じだが、以降、まずはコンシューマー向けのアップデートを正式公開。その後、数億人のユーザーによる4カ月間の検証の後に、改めて企業ユーザー向けのアップデートをリリースするのだという。なお、セキュリティのアップデートはいずれのユーザーに対しても随時実施する。

 「企業システムの中には、航空系や医療系、金融系など、そのミッションクリティカルさ故にアップデートを行いにくいものも存在します。それらに対しては、早期評価モデルなどの新たな仕組みで対応を図る考えです」(高添氏)

 UWPのコンセプトの下、Windows 10からはアプリの提供形態も刷新される。AndroidやiOS向けのアプリをWindows ストアから入手できるようになることが代表的だが、これも「市場にあるアプリを集約して提供することで、ユーザーと多様なデバイスとの“架け橋”になるから」(高添氏)だ。

 Windows 10ではブラウザも「Internet Explorer」と、インターネット標準を全面的に取り入れた「Windows Edge」の2種類を提供。前者はシステムとの互換性、後者は新技術への対応にそれぞれ重きが置かれており、両者の使い分けによって、従来からのWebアプリケーションの使い勝手と、最新技術による高い利便性が両立できる。

企業システム開発のあり方が変わる

 高添氏によると、Windows 10によって企業システムの開発のあり方も大きく変わることになりそうだ。企業システムは、安定性や信頼性に重きが置かれ、長ければ10年の運用を経て、次世代のシステムに処理を引き継ぐことが一般的であった。だが、「確かに安定性は重要なものの、開発生産性の観点からすれば、Webアプリによるアジャイル開発のメリットも見過ごすことはできません」(高添氏)。さまざまな知見がより迅速にシステムへ反映され、業務の高度化が図られる。より多くのプロジェクトを経験することでシステム部門の“腕”も磨かれることとなる。

 高添氏は最後に、Windows 10のユーザーごとの利用モデルとして次の3つを提示した。まず、最新技術の利用を指向する一般ユーザーでは、Windows 10の利用が最適解となる。次に、デバイスやアプリケーションなどの制御を必要とする企業ユーザーでは、AADなどの利用を通じ、グループ単位での細かな制御が実現できる。最後に、システムの固定化を指向するユーザーに対しては、前述した早期評価プログラムなどの提供を通じてWindows 10の利用を支援する。

 「モバイルは進化が著しく、今や活用の度合いが競争力を左右するまでになっています。そうした中、Windows 10への移行を好機ととらえ、新たなチャレンジへの足掛かりにしてほしい。ひいては、それが新たな価値創造につながるはずなのです」(高添氏)

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2015年8月16日