ASEANの地図整備で分かった、道路状態を把握する「必然性」デジタル地図情報技術を活用

デジタル地図データの整備を手掛けるインクリメントPが、路面の劣化状況をスマートフォンで検知する実証実験をタイ・バンコクで行った。実験は、同社が地図整備を目的として保有する調査車両にスマホを搭載し、走行時の振動データと位置情報を取得することで、路面の状態が分かるというもの。ASEAN地域での新たな位置情報サービスの構築につなげることが目的だ。果たしてその結果は――。

» 2017年03月30日 10時00分 公開
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 カーナビゲーション用のデジタル地図データベース整備を中心に、「MapFan」ブランドで展開するコンシューマー向けカーナビアプリや法人向け位置情報ソリューションなど、高品質なデジタル地図データを活用した事業を展開するインクリメントP。従来は日本国内向けが中心であったデジタル地図事業をさらに発展させるため、2015年からASEANに進出し、タイの首都・バンコクに「INCREMENT P ASIA」を設立。ASEAN10か国のデジタル地図データの整備に取り組んでいる。

photo インクリメントP社の事業内容

 ご存じのとおり、ASEAN地域は近年目覚ましい経済成長を遂げつつある。ASEAN経済共同体(AEC)の発足により域内貿易が活発化し、ASEAN全域をカバーするデジタル地図のニーズが高まっている。また、社会問題化している交通渋滞の解消や、インフラ投資など、ニーズも多様化し、求められる品質も高くなっている。インクリメントPはこのような背景を踏まえ、ASEAN地域へ進出したのだ。

 インクリメントPでは、高品質のデジタル地図を整備するため、実際に車で道路を走りながら情報を収集する走行調査を行っている。そこで、同社は、地図整備のみならず、ASEANでの位置情報サービスの構築を視野に入れ、日本国内で既にスマホを用いた道路舗装診断アプリ「道路パトロール支援サービス」を展開している富士通交通・道路データサービスと手を組んだ。そして、調査車両に同アプリを搭載し、タイで道路の凸凹や劣化状況を診断する実証実験を行う事に決めた。

photo 実証実験の概要=プレスリリースより

実証実験の結果は?

 実証実験当日の16年12月7日、タイに赴いたインクリメントP 第二事業本部 事業推進グループ マネージャーの馬場純氏は、調査車両に乗り込み、バンコク市内のサムットプラカーン通りを午前11時から午後2時にかけて走行した。すると、道路のアスファルトが剥がれて地面がむき出しになっていたり、路面に段差ができていたりと、日本ではなかなか見られないような“悪路”にたびたび出くわした。

 「路上駐車を避けて通る必要が生じたり、渋滞に巻き込まれたりと想定外の事態があって、正しいデータを取るために何度も往復することになりました。まるでジェットコースターに乗っているかのような急勾配や、地面の激しい凸凹もありました。実験結果を見返すと、その箇所は路面の舗装状態の最低評価を意味する“真っ赤”になっていました。」(馬場氏)

photo 実証実験を実施した、バンコク市内の通り

 調査車両では、ダッシュボード上にスマホを固定し、スマホアプリ「道路パトロール支援サービス」によって加速度センサーとGPSを継続的に起動。走行時の振動データなどを取得した。また、取得したデータはWi-Fi経由でサーバーに送信し、路面の劣化状況を分析・診断した。

photo 調査車両内の様子

 実験を始める前は、既存の国内向け舗装診断技術のタイでの有用性は未知数だった。だが、実験の結果、実験機器は正常に作動しており、海外でも実用に耐えうることが分かった。また、地図整備のための走行調査で撮影した画像をもとに、劣化箇所の舗装状態を視覚的に把握できるため、診断結果を効率よく確認・分析できることが分かった。

photo 荒れた道路

 「『道路パトロール支援サービス』が海外でも実用できるという結果が得られたことは非常に大きいです。調査結果をASEAN諸国の行政や自治体に提供し、修理など公共事業の判断材料にしてもらうことや、安全なルートのみを選択するサービスを開発し、カーナビ向けはもちろん、精密機器などを取扱う物流会社に提供することなど、さまざまな事業戦略が考えられます」(馬場氏)

 同サービスを提供した富士通交通・道路データサービスの島田孝司社長は、「日本では、国が国道を管轄し、県が県道を管轄するように、管理者が明確に決まっています。そのため、民間企業がインフラに関する調査を大々的に行うことは少なく、道路管理者が主体となって実施する事が多くあります。一方、ASEAN諸国では、計画的・組織的な調査は将来的に実施されていくと考えられており、民間企業もその領域に進出する余地が大きいと考えています。これまで日本国内で使われてきた、レーザーなどを駆使した複雑な測量技術は莫大なコストがかかりますが、今回の実証実験で使ったスマホによる『道路パトロール支援サービス』はそれほどでもありません。コスト面でも『導入してみようか』という自治体や企業が多いのではないでしょうか」と分析する。

photo 実験を担ったインクリメントPの馬場純マネージャー=左、調査システムを提供した富士通交通・道路データサービスの島田孝司社長=右

 同社は現在、タイ以外のASEAN各国においても、地図整備のため、日々走行調査を行っているが、今後は、バンコクのような大都市とは道路事情が異なるエリアでもこの実証実験を行っていく予定だ。取得したデータをもとに、スコールによって道路に水たまりが生じた際の危険度を計測するサービスなど、東南アジアならではのビジネス展開も視野に入れているという。

 「取得したデータと走行画像を連動させ、評価の低い場所をクリックすると現場の写真を表示する機能なども追加したいと考えています。今後も工夫を続けながら、各国で実績を積み重ねていきます」(馬場氏)

 日本だけでなくASEANにも進出し、成長に向けた取り組みを続けるインクリメントP。1台のスマホだけで路面のさまざまな問題点が分かる同サービスを各国が採用すれば、日本のようにきれいに整備された道路が広がる――。そんな光景を見ることができる日は、そう遠くないだろう。

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提供:インクリメント・ピー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2017年4月8日

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