社内の誰もがデータを使えれば、ビジネスに何が起こる? 「データレイク」が企業を変えるデータ活用を「課題」から「チャンス」に

「データ活用が重要なのは分かっているが、どこから手をつけていけばいいのか分からない」――そんな悩みを持っている企業は多い。データ活用を「課題」ではなく「ビジネスを変革する力」にするために必要な環境とはどのようなものだろうか?

» 2017年11月28日 10時00分 公開
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 「データ活用」が企業の急務になっている。2017年のITmedia ビジネスオンライン読者調査でも、「勤め先でお金を払ってでも実現/改善したい課題」という質問への回答として、「データ分析・活用」が初めて1位になった。

 こうした関心の高さは、データ活用が「未解決の課題」になっていることの裏返しだ。データ活用が成功したケースは欧米のものが多く、国内の事例はまだ少ない。重要性は強調されているが、現場の歩みが追い付いていないのが今の日本の実情と言えるだろう。

 データ活用が、解決の難しい課題になってしまうのはどうしてだろう。また、課題解決のため、データをビジネスに活用したいリーダーが打つべき“初手”は何か──。

 データ活用を望む企業のパートナーとして豊富な経験を持つ日本アイ・ビー・エム(以下、IBM) アナリティクス事業部のエキスパート、テクニカル・セールス&ソリューションズ技術統括部長の大塚知彦氏と、データレイクに関する担当者に話を聞いた。

「どこから手をつけていいか分からない」

IBM大塚知彦氏

 「『データ活用が重要なのは分かっているが、どこから手をつけていけばいいのか分からない』という相談が大変増えています。データ活用について、いち早く具体的なビジョンを持てた企業はあらかたスタートを切り終わり、今はより漠然とした『なんとかしなければ』という意識を持った企業がそれに続こうとしている段階と言えるでしょう」

 企業のデジタル変革をサポートし続けてきた大塚氏は、データ活用を巡る企業の課題意識についてこう説明する。

 現在、多くの日本企業にとって、データ活用は「自社を成長させてくれるアクセル」ではなく、「解決すべき困難な課題」になってしまっている。その背景として、大塚氏は重要なポイントを3つ指摘する。

 1つ目は、データ活用の基盤を作るIT部門と、それを活用するユーザー部門との間の認識のずれ、隔たりだ。社内組織の構造上、それぞれの内情を知ることも、ビジョンを共有することもできず、協力体制がうまく作れないままというケースは多いという。

 そして2つ目が、トップやリーダー層の誤解だ。「画期的なツールの導入で、全ての問題を一気に解決する」というアプローチを検討しがちで、昨今は特にAI(人工知能)への期待が高いという。確かに、最先端のツールによって目先のストレスを解消できる場合もあるだろう。だがこのやり方では、実は抜本的な解決にはならないと大塚氏は警告する。

 「トップの号令で、新しいツールが現場に降りてくる。すると新たにそのツールを使いこなす人材を連れてきたり、育てたりしなければいけません。しかしその人が未来永劫会社にとどまり、そのツールを使ってデータの分析や活用をしてくれるとは限らない。テクノロジーの進歩が早く、人材流動性が高い現代において、特定のツールや高度人材にしか扱えないデータというのは、数年後にはまた『活用できないデータ』に成り下がるリスクが高いのです」(大塚氏)

 さらに3つ目の課題として、分析や活用のためにさまざまな種類の大量のデータをためはじめたとしても、必要なデータがどこにあるのか分からない「データスワンプ(沼)にはまるケースが多いという。

 「プロジェクトに合わせた顧客データの摘出・個別管理を繰り返しているうちにデータが二重化してしまった」

 「データ管理者の引き継ぎがうまくいかず古いデータがブラックボックス化してしまった」

 ……といったような、企業にとって最も大切な財産であるデータが、実際には手の付けようがない散漫な情報でしかなくなっていることは多い。

データスワンプ(沼)に陥っているシステムの例

 “情報ビッグバン”とも言われるように、企業を取り巻くデータの数や種類は爆発的に増加している。社内情報に加え、IoTセンサー、モバイル端末、ソーシャルネットワーク(SNS)──など、企業に集まるデータは日々膨大な量に上っている。

 だが、データ活用に適した蓄積方法や管理手段がなければ、こうしたデータは「ただ集まっただけの情報の束」。有用なデータがあるのだとしても、泥やごみがたまっていく沼のように見通しが悪く、どう探し、どう扱っていいのか、社内の誰もが分からなくなっている状態だ。

よどんだ沼から澄んだ「湖」へ

 そこで登場するのが「データレイク」だ。

 データレイクとは、(1)社内外に散在するデータを、(2)サイズや形式を問わず、全て適切な場所に蓄積し、(3)ユーザーが必要に応じて自在にそのデータを扱える環境を実現する──という考え方だ。濁った沼(データスワンプ)から、澄み切った湖(データレイク)へと環境を変化させれば、いつでも澄んだ水(扱いやすいデータ)をくむことができるというわけだ。

 とはいうものの、全てのデータを保管しておくために1つの巨大な保管場所を用意する必要があるかというと、必ずしもそうではないと大塚氏は補足する。それぞれのデータを適切な保管場所におき、適切に管理できる仕組みがあればよいという。

データレイクとは?

 それでは、なぜデータレイクの構築が必要なのか。キーワードは「誰でも」「簡単に」「迅速に」だ。

 これまではデータを活用したい場合、ビジネス部門の担当者がIT部門に依頼し、データウェアハウスの構築やデータマートの作成を待つ必要があった。しかしそこで発生するのが、まさに前述の1つ目の課題である、IT部門とユーザー部門の間の認識のずれの構図だ。IT部門はデータ提供を通じてビジネスに貢献したいと願っているが、都度の迅速なデータ提供のリクエストには応じきれない。一方ユーザー部門としては待ったなしのデータ活用が求められているのに、肝心のデータが手に入らない。そのままでは現在のビジネスのスピードにはついていけない。

 「データレイクを構築できれば、IT部門が都度データマートを作成しなくとも、あらゆるデータを現場社員が簡単に、迅速に活用できるようになります。そして、意思決定の早さを飛躍的に改善することができます。また、データサイエンティストがさまざまなデータを使って試行錯誤を繰り返して、新しい分析モデルを発見できる環境が生まれます」(担当者)

 マーケティングキャンペーンがどのように売上につながるのか? 製品の品質をどのように向上させるか? 成果をあげるための営業カバレッジモデルをどう構築するか? 人材流出を防ぐには何をすれば良いのか? ――など、昨今のビジネス課題は、因果関係の特定が難しいテーマが多く、既存のBIの考え方やパターン化された分析手法などでは解を出せない。データを使った試行錯誤による新しい法則、新しい分析モデルの発見が非常に重要なのだ。

 「AIには非常に大きな期待が寄せられていますが、データを与えてあげればAIが自動的に答えをだす、というものではありません。データサイエンティストが新しい法則を発見することを効率化する"手段"としてAIや機械学習があり、発見された分析モデルを"知恵"としてAIに与えてあげることで、企業固有のビジネス特性を考慮した"助言"ができる"業務で使えるAI"になるのです」(担当者)

 AIの本領も、データを自由に取り出せるデータレイクがあってこそ発揮できるというわけだ。国内では金融業、製造業をはじめとして、すでに多くの企業がデータレイク構築に乗り出しているという。

ショッピングサイトのような手軽さで、データを扱える未来へ

 データレイクは、IBMが提唱するビジョン「Shop for Data」にもつながる。

 データレイクに蓄積された膨大なデータを、より簡単に参照・活用できるようにするメタデータが「カタログ」だ。しかし従来のカタログは、あくまでIT部門にとっての利便性を重視した作りだった。

 それをさらに進化させ、社内の誰もがネットで買い物をするような自由さでデータを扱えるようになる未来――これが「Shop for Data」だ。「カタログ」の代わりに、ショッピングサイトのような汎用性の高いメタデータを中核に設けることで、IT部門以外の社員でも感覚的に使えるようにする。

IBMが提唱する「Shop for Data」のビジョン

 「Shop for Data」が実現すれば、IT部門の労力や時間が一気に縮小する。「ひいては社員の労働環境改善や、人材育成コストの軽減にもつながっていくのではないか」と大塚氏は期待する。

 「データを活用しよう、という考え方自体は80〜90年代からありました。同様に、現場で発生する問題も実は根底は変わっていません。そろそろ、特定のツールや高度人材だけに頼るのではない、抜本的なソリューションを定着させたいですね。今がそのチャンスではないかと私たちは考えています」(大塚氏)

「変革レベル」に進むために、リーダーが打つべき最初の一手

 各部門がデータを自在に活用し、自分たちの抱えている課題をセルフで解決できている状態のことを、IBMは「変革レベル」に達していると定義する。

 もちろん、全ての企業がこのレベルを目指す必要に迫られているわけではない。しかしIBMの担当者は、この状態にある企業とそうでない企業との差は、業種によっては決定的なものになるだろうと語る。意思決定にかかる時間が大幅に削減されるからだ。

 では、自社を変革したいと考えているビジネスパーソンや、変革の旗振り手を担っているアクションリーダーは、具体的にどんなアクションから始めたらいいのだろうか。

 大塚氏は、データ活用への課題意識が健康や美容へのそれと似ていると指摘した上で、発想の転換が必要だと説明する。

 「健康になりたいとか、痩せたいといった課題意識をお持ちの方は多いでしょう。でもそこには『これさえやれば絶対に大丈夫』という解決策がないため、最初の一歩が踏み出せないままになる人も多い。それと同じで、データ活用にも特効薬はありません」(大塚氏)

 データ活用の「処方箋」は企業によって全く異なる。データ活用についての理想やビジョンをすり合わせてから、それを実現するためのロードマップを個別に設定し並走する――それがIBMの支援の仕方だ。

 「ちょっとした発想の転換で、思っているよりは簡単にアプローチできる問題もあります。今自分が想定しているのとは違う要因、違う解決法があるのかもしれないという発想で、自社の課題を改めてとらえ直してみてください。また、いきなり全社展開することを目標にせずに、例えば『今から取り掛かるプロジェクトの範囲でまずは着手する』『新しいユーザーサービスの開発時に取り組む』などスモールスタートし、少しずつでも成果を確認しながら進めることをおすすめする場合も多いです」(大塚氏)

 IBMでは「Analytics Cafe」という、IBMのエキスパートが企業のデータレイクに関する個別の相談に応じる相談会(完全予約制)や、データレイクに関するセミナーも随時開催しているという。

「このようなイベントやセミナーにご参加いただくのもよいですし、担当営業にお声がけいただくのでも結構です。IBMにぜひご相談ください」(担当者)

 データ活用が、これからのビジネス成長を左右する大きな鍵であることは間違いない。だからこそ、ホットワードに踊らされるのではなく、本質的なデータ活用、そして「データレイク」の重要性を再認識する必要がある。IBMの提唱するビジョンは、その手掛かりになりそうだ。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年3月31日

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