若手社員を子会社社長などのリーダーに抜てきし、次々と新しい事業を生み出していく。それを実現する人材育成や組織づくりで知られているのが、サイバーエージェントだ。経験の浅い若手社員中心のプロジェクトで成果を出せるのはなぜだろうか。
若手社員が率先してリーダーとなり、新しいプロジェクトを生み出していく。そんな風土がある企業がいま、伸びている。その先駆者ともいえるのが、サイバーエージェントだ。社員がアイデアを発信できる環境を整え、スピード感を持って事業化してきた。年間8〜10社の子会社を設立し、現在は約100社のグループとなっている。
積極的に挑戦し、結果を出す社員を育てることができるのはなぜだろうか。取締役人事統括の曽山哲人氏に、人材育成の考え方などについて聞いた。
――サイバーエージェントは、人材育成に関するユニークな取り組みが注目されてきました。若手社員が子会社の社長やリーダーとなり、活躍しています。どのような考え方で取り組んでいるのでしょうか。
例えば、新卒入社の若手社員が子会社の社長になる「新卒社長」に関しては、20代のうちに経験を積めば、将来的に経営判断ができるようになるだろうという考えから任命しています。これまでに、子会社の社長になっている新卒社員は、累計で60人ほどいます。リーダーを育てるためには、リーダーをやらせるしか方法はないのです。私たちの場合は「経営者」を育てたいので、若いうちから経営者をやってもらっています。
――新規事業のアイデアを社員が積極的に発信する機会もあります。
2017年に、社内の新規事業プランコンテスト「スタートアップチャレンジ」という取り組みを始めました。事業化を前提としたコンテストです。17年は約1000件の応募があり、新卒入社1年目の社員が優勝しました。
それ以前にも、事業プランのコンテストはありました。04年に始めた「ジギョつく」です。しかし、15年に実施した、事業や施策を見直すための「捨てる会議」で、やめることを決めました。
――なぜやめてしまったのですか。
ジギョつくからは、事業の成功が生まれなかったからです。このコンテストは、事業立ち上げの経験がない、若い社員が事業プランを考え、それを実際に立ち上げるという仕組みでした。起案者が実行者になるということですが、成功させるのは難しかったのです。新規事業を発掘するというよりは、意欲と目利き力がある優秀な人材を発掘するという機能がメインとなっていました。
一方、新規事業創出には、別の成功パターンが生まれていました。それが「あした会議」です。役員がチームリーダーとなり、社員とチームを組んで新規事業などを考えます。事業の起案者は役員やそのチームメンバーで、実行のための人選も行います。そうすると、ベストの布陣を目指すため、起案者と実行者が異なることも多くなります。成功の確率が高い事業ができやすい仕組みになりました。
――スタートアップチャレンジは、ジギョつくとは違うのでしょうか。
ジギョつくは優勝しても事業化するかどうか分かりませんでしたが、今回は事業化が前提となります。参加者の意欲は明らかに高まっています。また、これまで新規事業を育ててきた経験をもとに、スタートアップをサポートする体制も整っています。アイデアを出すだけでなく、事業化をサポートする体制まで織り込んで考えることができるため、実現性の高いプランが出てきやすくなっています。
17年に優勝したプランは、議論の末、事業化は難しいということになりました。ただ、優勝した入社1年目の社員は、仮想通貨取引事業子会社のサイバーエージェントビットコインの役員に抜てきされ、取引所開設に向け活躍しています。
――新規事業はどのくらい成功しているのでしょうか。また、事業化をサポートする体制とは、どのような取り組みですか。
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