老舗旅館「陣屋」は週3日休業なのになぜ収益を伸ばしているのか?

無休が当たり前のホテル・旅館業界では画期的と言える週3日休業を実施する老舗旅館「元湯 陣屋」。その上、毎年事業収益を着実に伸ばすなど、名実ともに働き方改革、生産性改革を体現しているのだ。その取り組みに迫る。

» 2018年03月05日 10時00分 公開
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 丹沢山地のふもと、神奈川県秦野市にある鶴巻温泉。神奈川県民であればわりと馴染みのある地名ではあるが、県民でも実際に訪れたことのあるという人は少ないかもしれない(神奈川出身の記者もその1人だった)。

 その鶴巻温泉にある老舗旅館「元湯 陣屋」が今、ビジネス界隈で注目されているのをご存じだろうか。無休が当たり前のホテル・旅館業界では画期的と言える週3日休業を実施する一方で、毎年事業収益を着実に伸ばすなど、名実ともに働き方改革、生産性改革を体現している企業なのだ。

 現在、20室(5月から18部屋になる予定)ある客室の稼働率は80%前後、売上高は旅館単体で5億6000万円。これは2009年比で約2倍という成長率である。

 今でこそ勢いに乗っている陣屋だが、10年ほど前には10億円の負債を抱え、倒産寸前の危機だった。従業員のモチベーションは低く、組織もギスギスしていた。そこからどうやって復活劇を遂げたのだろうか。そしてまた、いかにして成長の軌道に乗せたのだろうか。

創業100年の歴史がある「元湯 陣屋」 創業100年の歴史がある「元湯 陣屋」

一気にすべてを変えないと会社がつぶれる!

 陣屋は大正7年(1918年)から続く老舗旅館で、将棋や囲碁の対局が行われることで知られている。これまでのタイトル戦は実に300対局以上。将棋棋士・羽生善治氏の王位戦なども行われている。

 かつては鶴巻温泉もにぎわいを見せていたが、バブル崩壊あたりから厳しい状況に陥っていく。1軒、また1軒と旅館や温泉宿が廃業となり、現在は陣屋を入れてたった3軒しか残っていない。

 陣屋自身も景気低迷のあおりをもろに受けた。加えて、消費者のトレンドが団体利用から個人利用へとシフトしていく流れにも乗れず、適切なメニューやプランを打ち出せないでいた。当然のように客数は減っていくので、何とか稼働率を維持しようと安売りしてしまう始末。今でこそ1泊3万5000円以上を取っているが、当時は9800円の投売りだった。

 そうした状況にもかかわらず、従業員の数は必要以上に存在している。その人員コストが大きな重荷となって、赤字が膨らんでいった。ついには10億円の借金を背負うまでになったのだ。

 こんな危機的状況のさなか、2009年から経営のかじ取りをすることになったのが、4代目社長である宮崎富夫さんと、その妻で女将を務める宮崎知子さんである。それまで富夫さんは本田技術研究所のエンジニアとして働き、知子さんも大手メーカー勤務と、ともに旅館業はおろか、接客業の経験すらなかった。しかし目の前にある問題はそうした言い訳をしている余裕すらないほど深刻だった。

 「何から手をつけるべきかという、『選択と集中』をするような次元ではなく、あらゆるやり方や仕組みを一気に変えないと、すぐに会社がつぶれるというありさまでした」と知子さんは振り返る。

 一体どのような“惨状”だったのだろうか。

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