メルカリが「急成長」「ほとんど中途採用」でも、強いチームでいられる理由メルカリ流「企業カルチャーの作り方」

急成長のフェーズにあり、さまざまな背景を持つメンバーばかりなのにも関わらず、強いチームとして知られるメルカリ。チームワークを深めるために必要なものはなんだろうか。

» 2018年06月05日 10時00分 公開
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 フリマアプリ「メルカリ」を展開するメルカリは、強いチームワークと企業文化で知られている。

 組織が小さいうちは社員一人一人が交流でき、強いチームワークを発揮できても、大きくなってくると“壁”にぶつかる企業も多い。また、さまざまなバックグランドを持つ中途採用のメンバーが入社してくることで、会社のカルチャーや雰囲気が変わっていくこともある。

 メルカリは、「毎月数十人が入社する」という急成長のフェーズにあり、なおかつ社員のほとんどが中途採用だ。ベンチャー企業からの20代の転職者もいれば、いわゆる“伝統的な日本企業”からやってきた40代の転職者もいる。その上で、社内のカルチャーは変わらず、強いチームワークを維持しているように見える。

 なぜメルカリは強いチームでいられるのか。社内のカルチャーを浸透させるために必要なものとはなんなのか。People Partnersチーム(HR)の奥田綾乃さんと、同チームでオウンドメディア「mercan(メルカン)」の編集を統括する福岡夏樹さんに聞いた。

企業風土を作る「3つのバリュー」

People Partnersチームの奥田綾乃さん

 メルカリの企業風土を作っているものはなんなのか。奥田さんはズバリ「3つのバリュー」と答える。Go Bold:大胆にやろう。All for One:全ては成功のために。Be Professional:プロフェッショナルであれ――メルカリはこの3つのフレーズを「バリュー」として掲げている。

 「メルカリでは、3つのバリューを重要視しています。選考や社員の評価を行う際にも基準になっていますし、社員は日常的にこの言葉を使っています。メルカリの社員は1日に1回はバリューを口にしていると思いますね」(奥田さん)

 メルカリの社内には、いたるところにこの3つのフレーズが並んでいる。社員のTシャツやPCに貼られたステッカー、会議室の名前、来客用のペットボトルのパッケージにも書いてある。ミーティングや日常会話でも「そのアイデアはGo Boldだね」といったやりとりが行われるほど、社内にバリューが浸透している。評価や採用フォーマットも、バリューをベースに作られている。

 「3つのバリューを作ったのは、13年冬に入社した小泉です(小泉文明さん、17年4月に取締役社長兼COOに就任)。前職での経験から『プロダクトが成長しているときは、社員は同じ方向を向くことができる。ただうまくいかなくなった時に、メンバーがどう行動すべきか迷ってしまうことがある。はっきりしたビジョンがあれば、たとえどんな状況でもどう行動すべきか悩まない』と考えて、3つのバリューを決めたといいます」

 まだ創業して間もない、社員も数十人のころに決まったバリューだが、今でも社内の重要な行動指針となっている。「経営陣は『バリューを伝達するのは社員一人一人』という考えを持っています。社員はこの表現が好きだから、ことあるごとに口に出す。会社のフェーズによってこのバリューが変わる日もくるかもしれませんが、個人的には今のメルカリにはこのバリューが一番合っていると思います」(奥田さん)。

「性善説」「フラット」「オープン」――メルカリのコミュニケーション

オウンドメディア「mercan(メルカン)」の編集を統括する福岡夏樹さん

 その3つのバリューの上で成立しているのが、「ルールの少なさ」だ。18年1月に入社した福岡さんは、まずルールの少なさに驚いたという。「会社の規模が大きくなると、どうしてもルールが増えてくるもの。そこをメルカリはルールを増やさず、性善説で成り立たせている。実際メンバーになってみると、『こんなに信用されているなら頑張らないと……』と思いました(笑)」と話す。

 例えば「立替不要レストラン制度」。メルカリ社員がよく利用するレストランと提携し、会社の請求書払い(ツケ払い)で食事ができる仕組みだ。来客や会食やチームランチの際、アプリを使えば事前申請なしで“会社払い”でランチができる。その他にも、PCは希望のものが支給され、キーボードなどの周辺機器も業務に必要であれば事前申請なしに備品スペースから好きに持っていっていいという仕組みもある。インターン生も対象だ。

 「各メンバーに裁量権が与えられているから、細かいルールを増やさずに済むんですよね。働き方もそう。子どもが熱を出して早く帰るのも、複雑な申請などは必要ないので、気兼ねなくすぐに帰れる。仕事だけに集中できる環境が用意されていると思います」(福岡さん)

 社内のコミュニケーションは、ITツールを活用している。チャットツールでは、「プロジェクトの承認」といった“重い”ものから、「就業時間外の趣味の部活動」などの“軽い”ものまで、さまざまなやりとりが行われている。東京・仙台・福岡の3拠点をつなぐ全社会議もメッセージングサービスで実施する。

 「エンジニアが中心となって文化を作ってきた会社なので、重視するのは効率化と合理性。定例会議をなんとなく設定すると、『この会議、本当に必要ありますか?』と声が上がります(笑)。もちろんトゲトゲした感じではなく、フラットに言い合える雰囲気です」(奥田さん)

 ストック情報は、社内wikiでドキュメントとして残す文化がある。海外出張のレポートや採用活動の成果など、個人情報以外の会社情報がズラリと並ぶ。メルカリで働く上での「マニュアル」がまとまっている状態だ。

 「入社した時に、『wikiを書いてね!』とものすごく言われました。最初の仕事は、まずwikiに自分の情報を書き込むことでしたね。何か分からないことがあっても、質問する前に社内wikiを見るように言われます」(福岡さん)

 「社内では『アウトプットが正義』。学んだことやプロジェクトで得た知見などを、積極的に社内外でアウトプットするのが当たり前というカルチャーがあります。だからみんなwikiをどんどん更新するし、人のアウトプットにも反応します」(奥田さん)

 大手の日系企業から転職したメンバーの中には、そうしたフラットさやオープンさに最初は戸惑う人もいる。しかし他のメンバーとやりとりするうちに、メルカリ流のコミュニケーションにだんだんと慣れていく。

 「そもそもバリューに沿って採用しているので、悩むのはメルカリでの仕事の進め方というテクニカルな部分だけ。そこが解決すれば文化になじんでいく。たとえ初めは『指摘が怖い』という気持ちを抱いていても、次第にオープンに意見を言うようになっていきます。そうやって変化した人たちが、かつての自分と似た環境にいる新しいメンバーにカルチャーを教えていくこともあります」(奥田さん)

 “若い会社”というイメージがあるメルカリだが、平均年齢は30代前半。「重要なのは、『同じ世代や同じバックグラウンドの人がいること』ではありません。いろいろな世代や違う背景をもった人ともフラットにコミュニケーションができる文化があることです」と奥田さんは語る。

 他方、17年から本格化した新卒採用にも期待を寄せる。「新卒はやはりカルチャーの吸収が早いです。社員の多くは中途採用なメルカリにとって、新卒は自社のカルチャーを体現する人材、カルチャーを守っていく第一人者になるのではないかと思います」(奥田さん)。

“深化”させる「メルカン」

 バリューの上に成り立つ社内文化を“深化”する効果を発揮しているのが、メルカリのオウンドメディア「mercan(メルカン)」だ。HRグループ(当時)の松尾彰大さんなど、人事・広報のメンバーが始めたもの。コンテンツが「Wantedly」などの外部サイトに集約されてるとFlowで流れていってしまう。自社でコンテンツをStockしていくためにオウンドメディアを立ち上げた。

 18年5月で2周年を迎え、現在までに掲載された記事は750本に上る。社員インタビュー、社内イベントレポート、トップからのメッセージなどの記事が並ぶ。「#メルカリな日々」という社内の“ゆるネタ”を集めた広報チームの記事は、平日はほぼ毎日更新している。

メルカリの情報を日々発信しているメルカン

 メルカンは、組織の成長に伴い、社員数が急速に増加することで、働いているメンバーや社内のプロジェクトがお互いに見えづらくなる――という課題の解決にも効果を発揮している。「メディア」という形で掘り下げることで、社員同士の理解を深めているのだ。

 企業が採用力強化やブランディング強化のためにオウンドメディアを立ち上げるケースは増えている。しかし壁にぶつかっている企業は少なくないのが実情ではないだろうか。

 「メルカンを立ち上げた松尾は、よく『経営メンバーや社内の理解がないんだったら、やらないほうがいい。社内で自社メディアを盛り上げる姿勢ができてこそやるべき』だと言います。メルカリでは、社員がよく『メルカンのネタにこれはどうですか?』と声をかけてくれます。仲間がいないとこの仕事はできないと日々痛感しています」

 “あるある”なのは、「採用力強化のために自社メディアを作ったはいいが、記事がほとんど更新されない」という状態。けれどメルカリにはもともと社員が自主的に勉強会やミートアップイベントなどを行う風土があり、常に“新しいネタ”がある状態だ。「採用ブランディングのためには、自社メディアが『常に動いている』雰囲気があることが非常に重要です」と福岡さんは話す。

 ただし、社内のネタをなんでも載せるわけではない。福岡さんが意識しているのは「第三者視点」だという。

 「記事にする時は『外部の人やその仕事を知らない人でも面白いか』という部分を追求します。また、社内メンバーは当事者だからこそ、自分の仕事の面白さをうまく説明できなかったり、自分の強みが見えていなかったりすることもあります。メルカンの編集者としての仕事は、社内のアンテナになること。社内の面白さを見つける“媒介”になるようにしたいですね」(福岡さん)

 メルカンは、採用ブランディングにプラスの影響を及ぼしている。「志望者はメルカンを読み込んでいるので、ビジョンや社内の雰囲気の共有が面接する前からできています。『いろいろな企業の中でもメルカリに入社したい』という志望度を後押しするような効果も感じますね。また、『あの記事に出ていた○○さんだ!』と入社後のコミュニケーションのきっかけにもなっています」(奥田さん)という。

 「メルカリのバリューやカルチャーに合った人との出会いを増やしていきたいと思っています。一般的な新卒採用は『たくさんエントリーしていただいた中で、面接を重ねて優秀な人材を選ぶ』というもの。でもメルカリでは、『10人面接したら10人とも採用できる』状態を目指したい。バリューやカルチャーを伝える上で、メルカンは重要な役割を果たしています」(奥田さん)

 奥田さんが「この会社の数年後は想像できない。だからこそ面白いんです」と語るように、メルカリはグローバル展開や、金融事業の新会社メルペイの立ち上げなど、ますます事業と組織を大きくしていく予定だ。その成長を間違いなく支えているのは、オープンでフラットな企業文化――そして全社員にその文化を浸透させるツールやメディアの力だ。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年6月27日