残り1年を切った「IFRS16」強制適用! 未適用企業も“無関係ではない”理由とは?

国際財務報告基準「IFRS」の最新基準であるIFRS16号(IFRS16)が、2019年1月から始まる事業年度からいよいよ強制適用となる。その対応は近い将来、IFRS未適用企業にも必要になると見込まれている。どう対応を進めるべきなのか。

» 2018年06月08日 10時00分 公開
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 国際財務報告基準「IFRS(イファース、International Financial Reporting Standards)」の最新基準であるIFRS16号(IFRS16)が、いよいよ2019年1月から始まる事業年度から強制適用となる。

 IFRS16が企業の会計実務に与えるインパクトは非常に大きい。詳細は後述するが、原則全ての借り手リース契約のオンバランス化を要求していることから、「決算開示は2倍、仕訳パターンは4倍以上の増加が見込まれます。加えて、リース契約を把握するための全社的な業務フローの見直しも併せて求められるのです」と説明するのは、プロシップのIFRS推進室で室長を務める巽俊介氏だ。

 その対応は近い将来、IFRS未適用企業にも求められると見込まれている。果たしてどう対応を進めるべきなのか。

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IFRS未適用の企業にもIFRS16は無関係ではない!?

photo プロシップ IFRS推進室 室長の巽俊介氏

 まず巽氏は、「実務対応報告18号の要請のもと、多くの日本企業は、在外子会社の財務諸表をIFRSまたは米国会計基準(USGAAP)に準拠して作成した上で、日本基準の連結財務諸表に取り込んでいました。ただし実態としては、大きな差異がないという理由で、在外子会社の現地基準の財務諸表をそのまま日本基準の連結財務諸表に取り込むケースが多かったと思われます」と指摘する。

 しかしながら、IFRS16適用後は日本基準とIFRSの差が明確かつ重要になるため、IFRS16による仕訳の登録が必要になる可能性が高まることが想定される。従って、重要性が高ければ、海外子会社のIFRS16の適用を親会社がリードして方針を決め、場合によってはシステム導入をすることが想定されるため、注意が必要だ。

 次に、日本基準自体が将来的に改正され、IFRS16と同等の会計処理が必要となる可能性が高まっている。

 背景にあるのは、コンバージェンス(会計基準の共通化)に向けた国内会計制度の継続的かつ迅速な見直しである。「例えば収益認識に関して、IFRS15は18年1月以降に開始する事業年度より適用となりますが、日本国内もコンバージェンスの一環として、企業会計基準委員会から18年3月に『収益認識に関する会計基準』が公表されました。内容はほぼIFRS15丸飲みであり、今後のリースの日本会計基準もIFRS16に集約する方向で改正する検討が進むと想定されます」(巽氏)。そのため、IFRS未適用企業であっても、IFRS16の適用に向けてどのように進めるべきかを知ることは有益となるだろう。

 では、具体的にどう作業を進めればよいのか。ここからは、その中身とともに、取り組みのポイントについて見ていくことにしよう。

手戻り回避のため情報収集は念入りに

 初期フェーズで取り組むべきは、IFRS16への理解を深めたうえで、グループ会社を含めてリースの現状を把握することである。この作業をおろそかにしては、その後の作業で漏れやミスによる手戻りが発生し、時間や労力を大きく無駄にしかねない。

IFRS16における「リース」とは

 まず、IFRS16はリースを、「資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約」と定義している。つまり、一般的な動産のオペレーティングリースだけでなく、従来はリースとして認識されにくかった不動産賃貸契約やSPA(製造小売り)に代表される業務下請け契約、専用データセンターの利用契約など、定義に該当するあらゆる借り手契約がリースに含まれることになる。

 そのうえで、IFRS16では原則、借り手リース契約の全てのオンバランス化を要求している。

 日本基準では従来、動産リースのファイナンスリース以外は経費処理できることが多く、契約管理や支払い処理を現場に任せることが多かった。だが、IFRS16によってリース範囲が大幅に拡大し、しかもオンバランス化に伴い、仕訳自体の処理も支払いリース料仕訳から減価償却費と支払利息に区分した仕訳が必要となり、確実に仕訳のパターンは複雑化することが想定される。そのため、まずは次に挙げる現行調査が重要となる。

photo 新基準適応が必要なリース契約は多岐にわたる

リース調査はその後を踏まえて念入りに

 現状把握の狙いは、リースを洗い出すことを通して、影響範囲を見極めることにある。その意味で、「調査にあたっては動産・不動産を問わず、契約対象の種類や契約件数、管理主管部署、手作業かシステムかといった管理方法なども含めた、網羅的な棚卸作業が必要になります」(巽氏)

 管理方法や管理主管部署などの情報を収集するのも、リースの急増に伴い、管理などで他部署に協力を仰ぐことを見越してのことである。これらにより、管理対象となるリースが明確化されるとともに、対応に伴う財務数値や業務・システムへの影響度を推し量れるようになる。

 「Excelや紙などの手作業での管理では、期中での契約満了や新規契約などのために管理徹底が難しく、また仕訳作業も煩雑となりがちです。流通業など多店舗展開する企業では、テナント料の支払い額が大きい分、手作業によるミスがガバナンスの穴になり得ます。それらの影響度が棚卸によって明らかとなることで、システム化の検討などにもつなげられるわけです」(巽氏)

 IFRS16では1年以内の短期リースや規模が小さな少額リース契約について、オンバランスの免除規定が定められている。ただし、契約によっては社宅など、リース資産に含めるべきかで判断に迷うものもあるだろう。「この段階から監査法人を巻き込み作業を進めることが対応への近道です」(巽氏)

業務フローの変更はシステム対応と一体で

 導入フェーズでは、棚卸したリース資産を基に、「グループとして会計/開示方針の決定」「業務・システム対応方針の検討」「業務プロセスの見直しとシステム改修」と順を追って進めることになる。それらの過程では本社経理が主体となり、各部署と本社経理とのリソースやリテラシーを踏まえて役割分担を見極め、状況に応じてワークシートの展開やシステム対応なども含めつつ、具体的な対応策を検討することになる。

決算業務の作業に注意が必要な理由

 まず、会計方針の決定に伴い必要になるのが、「決算業務での『開示資料作成』と『減損処理判定』」「月次業務での『仕訳起票』『リース契約条件兼変更』」などの4つだ。このうち、特に注意すべきとして巽氏が挙げるのが最初の決算業務に関する作業である。

 「オンバランスの免除規定を適用したリースは、従来は開示対象外でしたが、IFRS16では決算時にそれらを開示する義務があり、管理対象から外すことはできません。また、減損対象にもなるため、減損テストにおいてグルーピングのひも付けを行う必要があり、それだけ手間と時間がかかることを押さえておくべきです」(巽氏)

 また、IFRS16では冒頭に説明した通り、管理と仕訳の両面で煩雑な業務が新たに発生する。そのための柱となる作業が業務フローの見直しだ。ただし、初めての経験だけに取り組みは一筋縄ではいかないはず。例えば、今後は不動産リースは契約締結、賃料改定、満了などの各処理をダイレクトに会計処理に反映させなければならず、本社経理だけで登録が困難な場合、現場に協力を仰ぐことが現実的な策となるが、今度はそれをどう実現するかが課題となる。それらへの対応に向けた作業のもう一方の柱が、新たな業務フローを支えるためのシステム改修である。

photo 新基準適用によって業務フローを見直す必要がある

IFRS対応に向けたシステム要件

 会計システムの製品選定の基本要件として挙げられるのが、IFRSと日本基準の双方の管理を可能とする複数帳簿対応の仕組みである。日本基準はしばらく現行のまま残るため、例えば不動産リースの場合、日本基準はオフバランスだがIFRS上はオンバランスの会計処理が必要となる。さらに、人手を介すことなく自動かつ正確にリース取引を判定するための「自動判定」機能があれば、管理負荷軽減につながる。

 また、不動産などの長期的なリースでは、オーナーとの交渉により契約内容の変更もしばしばあるが、IFRS16ではその際に、変更後の契約条件に合わせた帳簿価格の修正と、変更日から残りの契約期間での償却計算、利息計算の実施が求められる。1契約に対して複数回の変更がある場合など、相当煩雑な作業になると想定され、そうしたリースを多数抱えているのであれば、対応した機能も外せないだろう。

 すでに述べた紙やExcelでの管理に起因するリスク対応の手法も、システム化の検討の一環として問題になってくる。

 「作業を自動化できるシステムであれば、手作業による処理ミスを一掃できます。また、変更履歴を残せるため、登録ミスなどへの迅速な対処も可能で、内部統制も強化できます。Webベースのシステムであれば他部門との情報共有も容易で、登録作業で現場から協力を得られやすくなります」(巽氏)

 これらのメリットとコストを天秤にかけつつ、現行のリソースや社員のスキルを踏まえ、会社ごとにシステム要件を詳細に詰めていくことになる。そこでは、新たに発生する仕訳パターンを監査法人と協議して決定し、それらをシステムに反映させるといった作業も必要となる。

適用初年度は多くが「修正遡及適用」の見込み

 ここまでの取り組みにより「業務」と「システム」の新たな仕組みが整備できれば、あとはIFRS16適用初年度の会計処理方法の検討となる。その方法は2つの選択肢があり、IFRS16を過去にさかのぼって適用する「完全遡及適用」と、報告年度の期首からIFRS16の会計処理を適用する「修正遡及適用」である。このうち、巽氏が対応を支援してきた企業のほとんどは、実務上の負荷が大幅に軽減できる点から修正遡及を採用しているという。

photo IFRS16適用には、「完全遡及適用」と「修正遡及適用」の2つのアプローチがある

 もっとも、修正遡及適用であっても対応範囲は極めて広範であり、ステップを踏んで適切に作業を進めても、完了には相応の時間を要するはずである。その短縮のためにもシステム選定には力を入れるべきだ。製品が優れていれば、システム改修の手間と時間をそれだけ削減でき、かつ使い勝手がよいものであれば、リース管理において現場から協力を得やすくなる。なお、システム選定のポイントとして要件をいくつか挙げたが、それらの全てを満たしている製品が、プロシップが提供する総合固定資産管理ソリューション「ProPlus」だ。

 次回は、今回紹介したIFRS16の対応方法を基に、システム対応で活用を見込める機能をProPlusを中心に解説する。

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提供:株式会社プロシップ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年6月27日

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