患者の健康を守るため、人工呼吸器などの精密機器の保守・点検を日々行う専門職「臨床工学技士」。その職能団体「大阪府臨床工学技士会」が、稟議の起票・承認業務にクラウドサービス「パソコン決裁Cloud」を導入。意思決定に要する時間を大きく短縮したという。導入の前後で、業務はどう変わったのだろうか――。
心臓疾患の検査や治療に使われる直径約2ミリの管「カテーテル」、ろ過や排せつ機能を失った腎臓の代わりに血液中の老廃物を除去する透析機器、呼吸不全の患者をサポートする人工呼吸器――。医療の現場では多岐にわたる精密機器が使われ、患者の生命維持に貢献している。
医学・工学の知識を併せ持ち、こうした医療機器の操作や保守・点検などのメンテナンスに習熟した専門職が「臨床工学技士」だ。1988年に施行された「臨床工学技士法」によって誕生した国家資格で、上記のほかにも点滴用ポンプ、除細動器といった機器の管理に精通している。
心臓手術の現場に立ち会い、心臓を止めている間の血液循環を代替する「人工心肺」を操作するなど、命に関わる重大なミッションも数多く担っている。
そんな臨床工学技士たちは、自らのスキルを磨き、患者の健康を守るため、職能団体「臨床工学技士会」を全国各地で運営している。技士会では、外部専門家や有識者を招き、「血液浄化の手法」「内視鏡の洗浄・消毒の方法」――など多岐にわたるテーマに基づいた勉強会やセミナーを定期的に開いている。
大学などの講義と同様、受講者には技士会が認定した単位が与えられる。一定の単位を獲得した後、認定試験に合格すれば、専門性を証明する「透析技術認定士」などの資格が得られるのだ。
資格を持つ臨床工学技士は、自身の専門性を示すことで、より難易度の高い業務に取り組めるほか、転職市場で高く評価されるなどのメリットがある。有資格者を雇用する病院側にも、診療報酬が多く支給される利点がある。
1994年に誕生し、2009年に法人格を取得した大阪府臨床工学技士会は、そんな技士会の中でも歴史の長い団体の一つだ。現在は勉強会の開催のほか、小中学生向けの職業体験会の実施、献血の呼び込み支援なども手掛けている。
同技士会で副会長を務める吉見隆司さんは「臨床工学技士は比較的新しい資格だが、会の活動によって認知度を高めたい。地域医療にも貢献し、社会の役に立ちたい」と意気込む。
吉見さんは勤務先の松原徳洲会病院(大阪府松原市)で患者のケアと後進の指導に励む傍ら、技士会では勉強会の企画・立案、講師のアサイン、予算管理などを日々行っている。技士会での活動では基本的に報酬は発生しないが、「会員の技術力を高めたい」との熱意で活動を続けている。
だが吉見さんによると、技士会の運営体制には課題があった。技士会の役員はそれぞれ異なる病院に務めているため、稟議の申請・承認を行うのが一苦労だったのだ。
「医療職なので、理事の休みのタイミングはバラバラ。毎月1回、土曜日の夕方に集まって会議をしているが、夜勤明けなどで来られないメンバーもいる。そのため、他の理事が稟議申請した勉強会の企画案に対して、『なぜ、関東からわざわざ外部講師を呼ぶの?』『謝礼の金額は妥当なの?』といった疑問を持っても指摘できる機会は少なかった」と吉見さんは明かす。
「会議ができない場合は、電子メールに企画書を添付して理事会メンバーに送信する形で稟議申請を行っていた。この場合、承認者はいったん印刷し、必要事項の追記や印鑑を押した上でスキャンし、PDF化した上で次の理事に回すプロセスを用いていた。手間がかかるため、1案件の処理に1週間ほど要していた」(吉見さん)
こんな悩みを抱えたまま、病院と理事会の“二足のわらじ”で奮闘していた吉見さんは今春、理事会が契約する公認会計士から、とあるクラウドサービスを勧められた。
それが、文具・事務用品の製造・販売を手掛けるシヤチハタ(名古屋市)が開発したクラウドサービス「パソコン決裁Cloud」だ。
クラウドに決裁書類をアップロードすると、ブラウザ上で印影の押印と所定のユーザーに回覧ができるシステム。スマホやタブレット上での閲覧にも対応し、タップ1つで押印できるため、外部環境からでも簡単に情報共有・申請・承認ができる点が特徴だ。
全てのユーザーが承認を終えた後も、電子ファイルはクラウド上に保管される。管理者は印影をクリックするだけで証跡を確認できるため、ログ管理などのセキュリティ面も安心だ。
このシステムを理事会の決裁フローに導入した吉見さんは、「理事が勉強会などの企画を立てて稟議申請すると、企画書・申請書のPDFファイルが、決裁フローに従って理事会メンバーに共有されるようになった」と説明。
「そのおかげで、われわれはスキマ時間にスマホを確認し、書類を読み込み、内容や会計上の不明点があればその場で連絡して解決した上で承認することが可能になった。現在は稟議の承認に要する時間を1〜2日に短縮できている」と成果を強調する。
機能は非常にシンプルで使い勝手も良く、「最新のITツールに対応できるか不安だった理事もすぐに慣れ、使いこなせるようになった。多機能なグループウェアの導入も検討したが、シンプルな『パソコン決裁Cloud』を選んだ意味はここにもある」という。
実は吉見さんは、決裁機能以外に、掲示板やメールなど多岐にわたる機能を持つグループウェアも勧められており、どちらを導入するか悩んでいたという。
だが、グループウェアは機能が充実している一方、導入コストはやや高価だった。吉見さんはこの点を比較・検討し、「高いお金をかけて多機能なシステムを導入しても、年齢層にばらつきのある理事全員が使いこなせるかは分からない」と判断。厳選されたシンプルな機能を持ちつつ、コストパフォーマンスが高い「パソコン決裁Cloud」を使うことを決めたのだ。
また、グループウェアやワークフローシステムの中には、契約を終了すると過去の証跡を閲覧できなくなるものもあるが、「パソコン決裁Cloud」は一定期間電子ファイルを保管し、情報の取り出しと再利用ができる点にも満足しているという。
「医療の発展を目指す技士会は、公益性・透明性の高い団体でなければならないと考えている。『パソコン決裁Cloud』の導入によって開かれた議論が可能になり、その理念に一歩近づくことができた」と吉見さんは自信を見せる。
吉見さんは今後、いまも紙ベースで運用している、勉強会の受講証明書などを「パソコン決裁Cloud」上で発行・送付できる体制づくりに注力していく。他府県の臨床工学技士会とも同サービス上で情報共有できるよう、協議を進めることも検討している。
「パソコン決裁Cloud」はセキュリティが高く、臨床工学技士の氏名や所属先といった個人情報が漏えいする心配がないことも、活用を視野に入れている大きな理由だという。
このように、大阪府臨床工学技士会の課題解決に貢献した「パソコン決裁Cloud」。ビジネス界からの支持も根強いサービスだが、その使い勝手の良さ、コストパフォーマンスの高さ、セキュリティの強固さから医療業界との相性は抜群だ。
もし今後、医師や看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士――といった医療従事者が取り入れた場合でも、その業務フローを大きく改善する可能性を秘めているといえそうだ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年9月20日