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» 2018年11月19日 10時00分 公開

IFRS16の強制適用まであとわずか! 円滑対応に向けた“3つ”の心得

2019年1月以降の事業開始年度から強制適用が始まるIFRS16。一方、その対応が予定より遅れている企業も少なくない。実際に対応作業を進める企業が直面している課題やその解決方法を参考に、つまずきやすいポイントを解説する。

[PR/ITmedia]
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 国際財務報告基準「IFRS(イファース)」の最新基準であるIFRS16号(IFRS16)の強制適用が、2019年1月以降の事業開始年度から始まる。ただし、その対応が予定より遅れている企業も少なくない。遅れを挽回するには、その原因をできる限り早く把握し、手を打つことが一番の近道だ。

 実際に作業を進める企業のこれまでの取り組みを基に、つまずきやすい作業や対応のポイントについて解説する。

photo (写真提供:ゲッティイメージズ)

想定以上に検討に時間がかかる

 IFRS16の最大のポイントは、原則、全ての借り手リース契約のオンバランス化を適用企業に求めることだ。本基準の適用にあたっては、業務とシステム双方へのインパクトの大きさから、負担がよりいっそう大きなものとなる。

photo プロシップ IFRS推進室 室長の巽俊介氏

 プロシップのIFRS推進室で室長を務める巽俊介氏は「検討すべき項目が多く、それが原因で、IFRS16の適用が目前に迫りながらも、まだ対応方針が確定していない企業も多く、並行してシステム導入に取り掛かっている企業も少なくありません」と現状を説明する。

 そのため、先行検討企業を参考にして、予想される問題を今からでも把握し、できる限り早急に手を打つことが肝要だ。IFRS16対応は一般的に、「対象となる契約の洗い出し」「対象範囲の見極め」「業務の見直し」「システム対応」の順に進む。これらの手順のどこにどんな課題が潜んでいるのか。つまずきやすい作業として巽氏が挙げるのが次のようなものである。

IFRS16を適用する対象範囲

 最も手間取りがちな作業として巽氏が指摘するのが、「対象範囲の見極め」だ。事実、プロシップがIFRS16対応を支援する企業の約半数が現時点でもこの検討に時間がかかっており、決めきれていないという。主な原因は、オンバランス化対象のリース資産が企業ごとに変わることだ。

 IFRS16ではリース資産を「資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する権利」と定義している。これに従えば原則、全ての借り手リース契約をオンバランス化する必要がある。

 だが、併せて「契約期間が1年未満の短期リース」と「少額資産」の2つを対象にした「免除規定」も設けられている。この規定に該当すれば、オンバランス化の対象外となる。また免除規定とは別に重要性の観点より対象外とすることも検討が可能だ。そのため、できる限り多くのリース契約をIFRS16の対象外としたいのが本音であるが、そのためには、当該リース契約をどこまで適用するかについて監査法人の合意を得ることが前提となる。「そのすり合わせ作業で難航するケースが少なくないのです」(巽氏)

 それを回避するため、重要性の判断基準となる自社の固定資産に占めるリースの割合やオンバランス化により利益に与える影響など、監査法人を納得させるだけの材料を事前にそろえておくことが大切だ。対象範囲の決定は、作業全体、さらに対応後の会計処理にも大きな影響を及ぼすだけに、万全を期して臨みたい。

photo IFRS16の適用対象とするリース契約を整理しておく

借り上げ社宅の扱い

 巽氏が慎重に検討する必要があるものとして挙げるのが「借り上げ社宅」だ。借り上げ社宅には、所有者から不動産を借りる「借手契約」と、従業員負担と会社負担に分ける貸手の会計処理が併存するが、IFRS16では原則、双方ともリース会計の対象に該当すると見なされる。

 巽氏によると、適用企業の社宅の扱いについては、どこまで適用をするか、システムで対応する必要があるかの検討が重要であり、重要性の観点から「一切オンバランスしない」ケースや「オンバランス化はするがExcel対応で済ませ、システム対応までは行わない」ケースなどもある。

 「開示情報書類の作成は四半期に一度であるため、その都度情報を収集しExcelで計算を行ったり、管理を委託している場合は委託会社から情報を入手する企業もあります」(巽氏)

photo 社宅管理における他社事例のパターン

割引率と適用初年度の会計処理

「貸し手割引率」の代わりに「追加借り入れ利子率」を

 対応に手間取る要因の2つ目は「借り手の割引率の決定手法」である。IFRSは時価会計を採用しており、原則的に「貸し手の計算利子率」を基に、割引後の現在価値で計上する必要がある。ただし、貸し手の計算利子率を借り手側が見積もることは難しく、貸し手が借り手に教えてくれるということも考えにくい。

 そこでポイントとなるのが、貸し手の計算利子率の代わりに、同様の経済環境で資金を借り入れるために用いる「追加借入利子率」を利用することが容認されていることだ。グループファイナンスの金利を参考にすることを検討している企業も多い。ただし、不動産利回りそのものの使用は認められていないことには留意しなければならない。

大型リースが多い企業は適用方法に注意

 対応に手間取る要因の3つ目は「IFRS16の適用方法の選択」だ。その手法として、過去から適用されていたようにさかのぼって修正する「完全遡及適用」と、報告年度の期首からIFRS16の会計処理を適用する「修正遡及適用」のいずれかを選択できる。巽氏によると、実務上の便益という利点から、ほとんどの企業が後者を採用しているという。

 修正遡及適用を選択した場合に実務上の便益となるのが、(1)IAS17(現行リース会計基準)上のリース資産・リース負債の金額を使用権資産・リース債務として引き継げること、(2)適用開始日から12カ月以内に終了するリースは使用権資産・リース債務の認識を行わないことが可能なこと、(3)使用権資産の測定にあたり、当初直接コストを測定額に含めないことが可能なこと――の3つだ。

 一方で、修正遡及適用を選択した場合には、開示資料が増えることに留意が必要である。18年度期末時点と19年度期首時点ではリース債務が異なる金額となるため、そのリース債務の変遷を開示しなければならないことに注意が必要だ。

photo IFRS16の適用方法として「完全遡及適用」と「修正遡及適用」のいずれかを選択できる

システム対応が間に合わない場合の“秘策”

 事前に理解を進め、手を打っていたとしても、企業が置かれた状況はさまざまであるため、思わぬ問題が生じることもあり得る。巽氏も「18年度に入ってから影響額を試算し、業務影響を確認した結果、予想以上に影響が大きいことが判明し、急いで対応に取り掛かる企業もあります」と明かす。

 IFRS16は19年度の第1四半期の決算報告から必要となるため、それまでにシステム対応が間に合わないケースも想定される。

 そのような企業を支援するために、プロシップではExcel版の簡易ツール「IFRS新リース会計影響額試算ツール」を用意し、システム対応が間に合わない場合に利用できるツールの提供にも取り組んでいる。

 総合固定資産管理ソリューション「ProPlus」はIFRS16対応のための機能要件を幅広く、しかも高いレベルで満たしている製品として注目されている。IFRS16を任意適用している、またはそれを表明している企業の多くに導入がされており、その過程で培ったノウハウも本ツールの開発に生かしているという。

photo 「IFRS新リース会計影響額試算ツール」の利用シーン

IFRS未適用企業も連結決算手続きには注意

 ここまでは、IFRS16を適用している、もしくは適用を表明している企業を対象に注意点を解説してきた。一方で、未適用企業であっても、海外子会社がIFRSを適応しているケースでは、対応が求められる可能性がある。

 実務対応報告第18号では当面の間、海外子会社の財務諸表が国際財務報告基準や米国基準に準拠して作成されている場合などにおいて、作成された財務諸表を連結決算手続きに利用できると定めている。

 「18年度に入り、この点についての問い合わせが当社にも数多く寄せられるようになりました」と巽氏は話す。日本の親会社がIFRS未適用であっても、海外子会社では対応が必要なケースがあるため、「親会社のリードのもと、早期に現状分析、論点整理、影響シミュレーションを行う必要があり、その上でグローバルポリシーを決めることが肝要です」と巽氏は主張する。

 最終回となる次回は、IFRS16を巡る海外の動向を踏まえて、今後の対応の在り方について解説する。

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提供:株式会社プロシップ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年12月2日