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» 2019年01月28日 10時00分 公開

危機感から生まれた総務省の「働き方改革チーム」

政府の中でも働き方改革に先進的に取り組んできた総務省。オフィスレイアウトの見直しやIT活用を通じた情報共有やペーパーレス化などに先んじて取り組んできた同省は、2018年1月に「総務省働き方改革チーム」を発足させ、その動きを加速させている。果たして改革チームは何に取り組み、どのような成果を上げてきたのか。この1年の取り組みを追った。

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働き方改革をさらに加速させるために

 大企業を中心に、対応に向けた活動が急ピッチで進む「働き方改革」。その動きは民間企業のみならず行政機関にも広がっている。中でも先進的な活動で知られるのが総務省だ。

 取り組みは働き方改革が話題となり始めた2014年ごろにまで遡る。以来、他省庁に先んじて働き方改革を推進。15年1月のオフィスレイアウトの見直しを皮切りに、IT活用を通じた情報共有やペーパーレス化などの職場改革を進めてきた。

 そんな総務省は18年1月、省内の働き方改革をさらに加速させるべく、「総務省働き方改革チーム」を発足させた。背景には、小林史明前政務官をはじめ3人の政務官が抱いた危機感があった。

各種政策立案に悪影響を及ぼす可能性

 総務省働き方改革チームを生んだ危機感とは何か。総務省 大臣官房秘書課 調査官 働き方改革推進室長の山本直樹氏によると、それは働き方改革チームの発足後、最初に実施した職員へのアンケート調査に端的に表れているという。

総務省 大臣官房秘書課 調査官 働き方改革推進室長の山本直樹氏 総務省 大臣官房秘書課 調査官 働き方改革推進室長の山本直樹氏

 少子高齢化が及ぼす影響は、官であれ民であれ、将来的な人材獲得が難しくなる点で変わりはない。その対応の一環として、政府は女性活躍推進を最重要課題の1つに位置付け、公務員女性の採用・登用の拡大を推し進めてきた。

 ただし、それが問題の根本的な解消につながるわけではない。女性は出産時に休職を余儀なくされ、男性も含めて、育児や介護のために職場を離れてしまうことも多いことは周知の通りだ。この状況を克服するには、出産や育児での時間的な制約を受けた職員が引き続き働ける職場環境の整備に加え、他の職員が仕事をカバーできるだけの業務効率化が欠かせない。

 だが、「アンケート結果からは、(これまでの働き方改革では)『業務の効率化は不十分』、『モチベーションを高く保ちにくい』との声が、若手職員ほど多く寄せられました」(山本氏)。それがひいては、国の将来を左右する各種政策の企画立案といった中核業務に悪影響を及ぼしかねないと危惧されていたのである。

メンバーを公募、ボトムアップ型で改革を推進

 総務省では今回の働き方改革チームの組織にあたり、現場の改善はボトムアップで進めた方が望ましいと判断。所属部署を問わず公募し、課長補佐・係長級の若手職員25人の参加を得て、所属部署を問わず公募により選抜し、3政務官を顧問に据え活動を開始した。

 その後の進ちょくを簡単にまとめると以下のようになる。

 改革チームはまず、メンバーの問題意識から、「意識改革班」「業務改革班」「働きやすさをサポートするインフラ整備班」の3班に分かれ、上述のアンケート調査や企業視察などを通じて問題点と改善手法の見極めに取り組む。その過程では、「管理職にもっと危機感を持ってほしい」、「よくある業務について業務フローの見直しと合理化を行い、標準化した具体的なやり方を各部署に提案すべき」「勤務時間を柔軟にしたい」など、多様な要望や指摘が寄せられたという。

 それらを基に、6月には改革の最終目標を提言。総務省職員のありたいと考える働き方は「すべての職員が働きやすく、それぞれの能力を最大限発揮し成長を実感しながら、組織として成果を出す働き方」であるということ、そして、そのためには「多様性を認め、生かす」、「職員個人の能力発揮」、「組織の活性化」が必要であると考えた。併せて、実現に向けた8つの方針と28の具体的な対応策を提示した(下図)。

総務省働き方改革における8つの方針と28の対応策 総務省働き方改革における8つの方針と28の対応策

 このうち、すぐに実行できる「幹部スケジュールの管理」「テレワークの推進」「出先機関のサテライトオフィス化」などの10項目は、18年度のワークライフバランス推進強化月間(7〜8月)から実行に移された。

 残りについても、「1年以内に実施するもの」「モデル化から実施するもの」「具体化に検討を要すもの」に分け、可能なものから省内で順次、展開が進められている最中である。

業務効率化に向け施策に込められた“思い”

 総務省 大臣官房企画課 サイバーセキュリティ・情報化推進室 総括係 併任 大臣官房秘書課 働き方改革推進室 係長の飯田美保氏は、今回の取り組みの特徴として、方針や対応策のいずれにも、現場職員の業務効率化に向けた強い思いが込められていることを挙げる。

 例えば、国会対応の合理化策としての「答弁作成の合理化」。省庁では答弁に限らず資料を作成することがあるが、その業務効率化を阻んでいた原因の1つが課長、審議官、局長の資料確認の過程での手戻りだ。

 そこでの生産性を高めるべく、関係者が資料作成の狙いを当初から共有し、不必要な手戻りを生じさせない活動が総務省内ですでに進められている。飯田氏は「従来からのペーパーレス化をさらに推し進め、会議の際にその場で資料を修正・共有するようになったことで、資料作成の手間と時間を格段に削減できています」と話す。

 多忙な幹部との打ち合わせの際には、従来、まず電話にて事前に連絡し、そこからスケジュール調整が必要とされたが、幹部スケジュールをイントラネットで省内に公開し、予約を入れる仕組みを整えたことで、その手間も抜本的に軽減された。

 また、総務省では、部局を問わずさまざまな会議が開催されているが、その会議資料を印刷するのは若手職員の仕事だ。資料の枚数や会議の規模によっては長時間にわたり、直前に差し替えが発生し、また印刷するということもある。この負担を軽減するため、総務省ではペーパーレス会議システムを導入し、会議資料の電子媒体でのアップロードを行う環境を構築することで、若手職員の印刷に伴う業務負担を大きく軽減するだけでなく、印刷のコストカットも図っている。

 これらの対応策は一見すると地味と思われるものも多い。だが、それらは現場の悩みに応え、業務効率化に直接的に貢献するものばかりだ。

幹部社員の「働き方宣言」で変革意識が浸透

 働き方改革を阻む原因としてしばしば挙げられるのが、変革に向けた働く側の意識の不徹底だ。事実、方針を固め、各種施策の整備まではこぎつけたものの、そのことが原因で施策が現場に根付かないケースも数多い。

 改革チームはこの点も当初から対策に織り込んだ。具体的には施策の展開に先駆け、働き方改革への自身の考えや行動指針などを取りまとめた「働き方宣言」を幹部職員に提出させ、イントラネット上で公開したのだ。インパクトは思いのほか大きかった。

 「従来からの仕事のやり方に異を唱えることは勇気のいることです。しかし、働き方改革に後ろ向きと思われていた幹部が、実は意欲的であったことが相次ぎ判明したのです。それにけん引されるかたちで時間を有意義に使うための仕事の在り方について考える土壌が省内全体で醸成されつつあります」(飯田氏)

 働き方改革と対となるテレワークも、セキュリティを担保したノートPCの配布と、省内や出先機関などでの無線LAN環境の整備を通じて急速に広がっている。

 「特に機密性が高い情報を扱う業務でなければ、週に1度程度のテレワークを行っている方もいます」(飯田氏)

役立つかどうか、それが自発的な変革を生む

 働き方改革と一言で言っても、改革すべきことはアイデアの数だけ存在すると言っていい。当然、取り組みが一過性であっては、効率向上もそこで停滞する。その意味で、総務省の働き方改革はまだ緒についたばかりであり、18年11月から働き方改革の2期目に突入した。今後は長時間労働の原因などに向けた調査や改善活動が進められる見通しだ。

 そこで今、総務省が期待を寄せているのが、ツールの見直しを通じたコミュニケーション改革である。総務省では電話やメール、チャット、PC会議などを活用しているが、半面で「ツールごとにテーマ別のやりとりが発生しがちで、全体としてどう話が進んでいるのかが把握しにくくもなっています」(飯田氏)。

 最適なコミュニケーションの在り方は、議論の内容などによって異なるなど、明確な解は存在しない。現場の声を基にした、より望ましいコミュニケーションの在り方の見極めが、今後の知恵の絞りどころとなるはずだ。

 同時に、プロジェクト発足時の狙いである現場視点での自発的な取り組みにも期待を寄せている。その兆候はすでに顕在化している。1期目の施策は改革に意欲的な部署を皮切りに実施された。すると、当該部署と業務でやり取りのあった他部署でも、先行している部署のアドバイスなどを受けながら、同様の活動に取り組むケースが出てきた。

 「これは裏を返せば、見直したい業務がありながらも、やり方が分からず手付かずになっていたということです。総務省の業務は数多く、改善を放置されたものがいくつも残されていると容易に推測されます。そこで、部門を問わず共通して便利なやりかたを発掘することで、草の根の改革につなげられればと考えています」(山本氏)

 働き方改革に向けた総務省の次の一手は、果たしてどのように進められるのだろうか。注目したい。

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