1万人超規模で使いこなす企業向けWiki、“ヤフー流”情報共有とは?

新たなサービスを次々に世に出し、日本のインターネット業界をリードし続けているヤフー株式会社。そこでは、1万人以上の従業員がアトラシアン社の企業向けWiki「Confluence」を活用している。それによって、どのような情報共有の文化が同社に定着しているのか──。システム統括本部 情報システム本部の高橋邦洋氏に話を伺った。

» 2019年03月05日 10時00分 公開
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社内Wikiがなければ仕事がしづらい

 「Yahoo! JAPAN」の月間ページビューは700億を超える――。日本を代表するインターネット企業としてヤフーの名前を知らない人はほぼいないだろう。

 現在さまざまなサービスを提供する同社ではグループ会社を含め1万人を超える従業員がいろいろな部署で働いている。そうした中、同社で仕事を進めていく上で重要なポイントのひとつが「情報共有」だ。

 では、どのように社内の情報共有を図っているのだろうか。ヤフーではアトラシアンの「Confluence」という企業向けWikiの機能を備えた情報共有/コミュニケーションのソフトウェアを活用している。初版のリリースは2004年で、ヤフーはそれから数年後にConfluenceを導入し、以来10数年以上の長きにわたり使い続けている。

ヤフー システム統括本部 情報システム本部の高橋邦洋氏 ヤフー システム統括本部 情報システム本部の高橋邦洋氏

 「私がヤフーに入社したのは2007年ですが、そのころにはすでにConfluenceが導入され、当時社内で乱立していた社内WikiをConfluenceに一本化する作業が進められていました。社内Wikiの環境をConfluenceに集約することで運用管理の工数を削り、かつ、情報へのアクセス制御をしっかりと行うといった狙いがあったようです」と、ヤフーのシステム統括本部 情報システム本部でConfluenceの運用を担っている高橋邦洋氏は振り返る。

 今日では、ヤフーの社内WikiはConfluenceに一本化され、1万人を超える従業員の多くが日常的にConfluenceを活用しているという。

 「企業の基幹業務システムのことを“ミッションクリティカルなシステム”と言いますが、ヤフーの従業員にとってのConfluenceはまさにそれです。Confluenceが使えないと、多くの従業員の仕事に影響が出てしまい、例えば、『今日の夕方から、Confluenceがメンテナンスで使えなくなるようだから、仕事も早仕舞いだね』といったチャットが社内で飛び交うほど、日々の業務に欠かせないツールになっています」(高橋氏)

自然に進む実践知の蓄積・共有・活用

 ではなぜ、ヤフーでConfluenceが当たり前のように使われ続け、重宝されているのか──。理由の一つは、Confluenceのような企業向けWikiでしか成し得ない情報の発信・共有が可能であるからだと、高橋氏は指摘する。

 「例えば、メールは、伝えたい相手に情報を届ける上では便利なツールですが、社内の誰に役立つかが分からないような情報を発信する道具としては使えません。そのような不特定の誰かに向けた情報発信を可能にするのが、Confluenceのような企業向けWikiです。このツールを使って全従業員が、自分の知り得た情報や体験を“気軽に”記録して社内での閲覧を可能にする。それだけで、社内にさまざまな実践知が蓄積されていき、その共有と活用が活発になるんです」(高橋氏)

 実際、Confluenceの全社利用によって築かれた“実践知のデータベース”は、さまざまな場面で活用されているという。

 「例えば、自分のチームで何らかの新しい仕事を始めようとしたときに、まずはConfluenceで検索して、参考情報を得ようとする従業員はかなり多いと思います。また、エンジニアリング上の不具合などの情報を探す際にも、最初に検索をかけるのはConfluenceであるようです。まさにインターネットの検索エンジンと同じで、ちょっとした困りごとや知りたいことをすぐConfluenceで探すのです」(高橋氏)

 単に情報を検索するだけでなく、ユーザーがその情報を蓄積することも重要だ。ヤフーでは、日々の発見や体験をConfluenceに記録することも習慣化されているという。

 「当社の従業員の中には、『日々の記録は、Confluenceに残すもの』という意識が根付いている者も少なくありません。そのような従業員は、仕事の中で、ちょっとした発見があっても、すぐにConfluenceに記録していきます。実のところ、記録に残す時点では、その発見を誰かの役に立てようとか、誰かと共有しようという意識はあまりないかもしれません。ただし、Confluenceに記録を残すことは、自動的に他者との情報共有へとつながっていきます。そうした自然な情報発信と共有の積み重ねが、組織全体の知識レベルの向上につながっていると考えています。レポートラインを縦の情報共有とすれば、Confluenceは横の情報共有を支える基盤です。ここに情報を出しておけば、社内の誰かが勝手に見つけて仕事に役立ててくれる。そんな情報共有がConfluenceによって実現されています」(高橋氏)

 Confluenceには、特定のページやユーザーを「お気に入り」に登録し、更新情報の通知を受け取れるようにする機能もある。この機能を使うことで、例えば、他部署/他チームが進めている案件の中で、気になるものの動きをトレースすることも可能だ。

 「チームが仕掛かり中の案件情報を、他のチーム、あるいは全社的に共有することには一長一短があるかもしれません。ただし、チームの垣根を越えた情報/アイデアの共有化を推し進めることは、チーム間のコラボレーションにもつながり、プラスの効果のほうが大きいと考えています。Confluenceは、そうしたチーム間のオープンなつながりを自然にかたち作る上でも有効なツールと言えます」(高橋氏)

 もちろん、Confluenceを使うことで全従業員への周知を目的にした情報発信も容易に行える。

 「管理部門が従業員全員に周知したい情報を告知する場としても、Confluenceは重宝されています。例えば、インフルエンザ予防接種はどのように受けるかという告知にConfluenceを使うといった具合です。また、各チーム内での情報共有にもConfluenceが当たり前のように使われていますので、新しくチームに加わった人でも、Confluenceを参照すれば、チーム内で何が起きていて、自分が何をすべきかがすぐにつかめるようになっています」(高橋氏)

ツールが文化を変える

 以上のように、ヤフーでは、Confluenceを扱うことが日々の業務プロセスに組み込まれており、Confluenceが使えないと仕事に影響がでてしまうような状態にあるといえる。そのため同社では、Confluenceの使い方を教える初心者向けトレーニングを提供しており、部署によっては新入社員向けの研修にそのトレーニングを組み込んでいるほどだ。

 とはいえ、一般的なWikiソフトウェアに比べて、Confluenceの使い方は平易であり、初心者でもすぐに扱いに慣れると高橋氏は言う。

 「一般的なWikiソフトウェアは独特の記述方法を用いるので、エンジニアのような方でないと使い方をマスターするまでに相応の時間を要します。それに対して、Confluenceは誰でも使えるような工夫が随所に凝らされています。そのため、初心者でもすぐに使い方をマスターできますし、だからこそ、当社内での全社活用が急ピッチで進んだと言えます。現在は、ミーティングの議事録をConfluenceで書いている人もいますし、日報代りにConfluenceのWikiを使っている部署もあります」(高橋氏)

 このように誰でも負担なく情報を記録、発信し、それを別の誰かが必要に応じて能動的に受け取り、仕事に生かしていく──。そんな自然で効率的な情報共有・活用の文化がConfluenceによってヤフーには根づいている。

 「1万人を超える従業員の仕事の進め方を変えるというのは、そう簡単にできることではありません。ただし、Confluenceが、ヤフーの仕事の進め方、情報共有のあり方を大きく変えた一因になったのは確かです。スマートフォンが人の暮らしをガラリと変えたように、Confluenceが、ヤフーにおける情報共有の文化を大きく変えたといっていいでしょう」(高橋氏)

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2019年3月18日