商談の場で、営業担当者はどのようなトークを繰り広げているのか。これまで可視化が難しかったが、商談の質を解析するソリューションが登場した。「CONOOTO(コノート)」だ。サービスを開発した博報堂DYホールディングスの担当者に、メリットを聞いたところ……。
商談の場で、営業担当者はどのようなトークを繰り広げているのか。これまで担当者が作成する日報などで確認するしかなく、可視化が難しかった。だがこのほど、商談の質を可視化するソリューションが誕生した。博報堂DYホールディングスが開発した「CONOOTO(コノート)」だ。
「CONOOTO」は2019年6月にローンチしていて、商談時の対話音声を解析し、効果測定・評価レポートを自動で生成してくれる。「対話音声解析システム」だ。重要なキーワードがしっかり発話されているか、営業の担当者が一方的に言っているのではなく顧客としっかり対話ができているか、対話時の話すスピードが緊張して速くなっていないか、といったことを明らかにし、結果のレポートを出力する。
商談時の会話は、担当者が使っているスマートフォンやタブレット端末にインストールした専用アプリを立ち上げて録音し(現在対応可能デバイスはiOSのみ)、録音データは音声蓄積サーバーに自動転送。サービス利用企業のSFA(営業支援)システムと連携した上で、サーバーに転送された後、解析される。解析結果のレポートは自動生成され、同社のSFAシステムに送られるほか、営業担当者のスマートフォンやタブレットなどにも表示することができる。
「CONOOTO」の開発は16年ころに始まった。開発の経緯は大きく分けて2つある。1つは、得意先の広告宣伝費などを含む販管費全体の最適化を図る。そんなパートナーを目指すという博報堂DYホールディングスのビジネス上の戦略だ。マーケティング・テクノロジー・センターの青木雅人室長は次のように話す。
「広告会社は得意先から広告宣伝費やマーケティング費をいただきますが、これらは販管費の中のほんの一部。単に広告ビジネスだけでなく、販管費全体の最適化を図れるパートナーとなれれば、得意先の広告宣伝部やマーケティング部だけでなく、いままで接点のなかった部署とお付き合いする機会が増え、われわれがご支援できる幅が非常に大きくなります」
もう1つは、データマーケティングの強化。博報堂DYホールディングスはデータマーケティングに注力しており、19年度から始まった新中期経営計画でも「“生活者データ・ドリブン”マーケティング」の高度化の推進を掲げている。これまで、独自に蓄積してきた各種マーケティングデータを統合した国内最大級の「生活者DMP〈データ・マネジメント・プラットフォーム〉」を基盤に、強みであるプランニング力、クリエイティブ力、エグゼキューション力を駆使したマーケティング・ソリューションを提供してきたが、「非構造化データから生活者のリアルを把握することにチャレンジしなければならなくなった」と青木室長は話す。
音声や画像を使って何かできることはないか、と思案していたときに着目したのが、商談を可視化したいという企業のニーズだ。商談時の音声を録音し、解析することができれば、商談内容を評価でき、営業の質を高めることにつながる。それにより広告宣伝費やマーケティング費を含めた販管費の使われ方が最適かどうかの判断もできる。
こうした背景から「CONOOTO」は企画された。当時、音声解析の技術が登場してきたこともあって、使えそうな技術基盤がそろってきたことも大きかった。
「CONOOTO」の全体的な構想は、博報堂DYホールディングスが独自に描き、外部の協力は得ていない。同社にはマーケティングや生活者の課題を日々考える習慣があって、テクノロジーをマーケティングに活用する力がある。だから、生活を豊かにすることができるソリューションを考えられるのではないだろうか。
だが開発の過程で、時間を要したところがあった。技術評価である。核となる音声解析技術を持っている企業はどのくらいあって、各社が保有している技術や解析精度はどのようなものか。さまざまな方面から情報を収集し、まず20社以上リストアップした。その中から精査して、10社ほどに絞り込む。次に、実証実験を行うなかで、各社の特徴やレベルなどを評価するのに1年半ほどの時間を要したという。
結果、音声解析技術についてはナイスジャパンのシステムを採用することにした。決め手は、何だったのか。最大の理由は、高い技術力を持っていただけでなく、使い勝手の面でも水準が高かったからだ。青木室長は、ナイスジャパンの技術を採用することにした理由をこう明かす。
「音声解析する際、どうするのか。基本的にテキスト化しなければいけません。ただ、その解析評価に時間がかかってしまって、『今日の商談はどうだったの?』『結果を知りたい』と思っても、1週間後にレポートが出てくるといったケースがありました。今日あったこと、さっきやったことを知りたいのに、『1週間後に……』と言われると、PDCAを回すのが難しくなるんですよね。
日々、営業活動を行っているなかで、商談をすぐに評価できるシステムはないのか。そうした技術を持っているところはないのか。実証実験の結果、ナイスジャパンさんのシステムは、かなりレベルが高いものであることが分かってきました。当社が考えている方向性とうまく合致することができたので、すぐに結果を知ることができるナイスジャパンさんのシステムを採用することにしました」
また、あらかじめ登録した重要キーワードのチェックについても、ナイスジャパンの技術は検出精度が高い。例えば、専用のマイクを使用してキーワードをチェックするとなると、実際の商談で使うことは難しい。しかし、ナイスジャパンの場合、タブレット端末やスマートフォンを使って、非常に高い精度でキーワードを検出することができる。そこも高く評価し、CONOOTOに採用した。
技術評価を経てシステムを構成した後、実証実験に取りかかった。まず、協力してくれる業界の選定からスタート。録音が義務付けられている、あるいは、録音すべきというスタンスのところはどこか。加えて、商談以外のマーケティングデータも得られそうなところを絞り込んだ結果、製薬業界にたどり着く。
早速、博報堂DYグループで取引のある製薬会社と実証実験を行うこととなった。実験はMR(Medical Representative:医薬情報担当者)の模擬商談で使うことになったが、青木室長は心配だったという。用意されたトークスクリプトを覚えて臨む模擬商談は、重要なキーワードを発して、資料を見せるタイミングが決まっている。MRによって大きな差が出るとは思えなかったからだ。
しかし、結果は違った。トークスクリプトが用意されているにもかかわらず、一方的に話をしていたり、重要なキーワードを説明していなかったり、資料の提示が遅くなっていたりしていた。模擬商談でも顕著な差が生じることが分かったことから、青木室長は「CONOOTOはイケる!」と確信した。
「CONOOTOはイケる!」と思っても、実際に使っている人が「使いにくいなあ」「分かりにくい」と感じれば、利用シーンの広がりは見込みにくい。しかし、このサービスは違う。パッと見ただけで、営業担当者の良い事例と悪い事例が分かるのだ。
下の録音データを解析したサンプルを見ていただきたい。青色が顧客で、赤色が営業担当者。両者の会話のやりとりが示されていて、良い事例では顧客の反応が定期的に引き出されているが、悪い事例では営業担当者が一方的に説明していることがうかがえる。
また、商談時に重要キーワードを抽出し、音声周波数変化データなどを合成することで、顧客の関心領域を推定することもできる。このように商談履歴を可視化することで、営業担当者の活動を振り返ることもできるのだ。
「CONOOTO」発表後は引き合いが多く、企業からの関心も高い。営業支援ツールのデジタル化がトレンドとなっている現在、そのようなソリューションを提供している企業と一緒になって、営業の効率化を提案できる機会が増えていくことも考えられる。博報堂DYホールディングスは「CONOOTO」の実導入も進めながら、製薬会社以外での実証実験などさまざまな形の検証を実施していくという。
商談時、営業担当者の現場に課題を感じている会社も多いはず。どこに問題があるのかを可視化するために、「CONOOTO」の導入を検討してみてはいかがだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:ナイスジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2019年9月17日