楽天テクノロジーコミュニティの魅力が集結 雰囲気は海外のテックイベント「Rakuten Technology Conference 2019」

楽天主催のテクノロジーイベント「Rakuten Technology Conference 2019」が開催された。楽天が注目しているテクノロジーとその活用や戦略の紹介、楽天の働き方などの魅力を発信することがカンファレンスの狙いだ。各セッションは、ほとんどが英語で行われた。その雰囲気はさながら海外のテックイベントだ。楽天の三木谷浩史社長や、CIO&CISO(Chief Information Officer & Chief Information Security Officer)で、テクノロジーディビジョンのトップである平井康文氏、楽天グループ全体のAI、データ、およびR&Dを統括する北川拓也氏などが登壇し、楽天が進める技術面での取り組みが紹介された。

» 2019年12月10日 10時00分 公開
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 2019年11月9日、楽天主催のテクノロジーイベント「Rakuten Technology Conference 2019」が開催された。楽天が注目しているテクノロジーとその活用や戦略の紹介、楽天の働き方などの魅力を発信することがカンファレンスの狙いだ。今年で13回目となる今回も、一方的な発信ではなく、社外の人たちと一緒に学んだり、意見交換をしたりする場となることを目指している。

 同社が取り組むテクノロジー&イノベーションを紹介する各セッションは、ほとんどが英語で行われた。その雰囲気はさながら海外のテックイベント。「電車で行ける海外カンファレンス」といえる。

 今年のテーマは、「Leaders for the Future」だ。会場となった東京・二子玉川の楽天クリムゾンハウスには1500人が集まった。国内外で9カ所のサテライト会場にもビデオ会議でつなぎ、各支社でも独自のコンテンツが開催された。キーノートの様子を中心に紹介する。

 キーノート開始前の挨拶には、副社長執行役員CIO&CISOの平井康文氏が登壇。来場者たちへの“Welcome”、サテライトオフィスへの呼びかけ、そして数カ月に渡り準備を進めてきた同社社員たちへの感謝を伝えた。平井氏は、テクノロジーとの関わり方について「単体ではなく、組み合わせて複合的に取り入れること」と、「後追いではなく、常に先駆けて捉えていくこと」をキーとして伝え、同カンファレンスで開催されるセッションを、新たな可能性につなげてほしいと述べた。

楽天の副社長執行役員CIO&CISOの平井康文氏

グローバル化、ブランド認知、モバイル事業にフォーカスする三木谷浩史社長

 基調講演の1人目として登壇したのは、楽天の三木谷浩史社長。同社のビジョンやビジネス構想を語る中で、ポイントとなったのは、グローバル化、ブランド認知、モバイル事業への展望だ。

楽天の三木谷浩史社長

 三木谷氏は、97年の楽天設立時、わずか13店舗からのスタートだった『楽天市場』の当時のエピソードに触れた後、「楽天は今では重要なインターネットエコシステムの1つとなった」と力強く切り出した。

 18年度のグローバルの流通総額が15.4兆円、国内ECの流通総額が3.4兆円、グループサービス利用者が世界約13億人に達するなど、国内外で順調に成長している数値を示した。特にeコマース、クレジットカード、銀行、ポイントプログラム、トラベルなどのカテゴリーで急成長を果たしていると説明した。

 続いて、同社のグローバル化に焦点をあて、「楽天は単にグローバル企業を目指すのではない。日本の良い文化を維持したグローバル企業でありたい。“ジャパニーズ・グローバル・カンパニー”であることが重要」だとした。また、現在進める携帯キャリア事業へのチャレンジについても、「不可能といわれていた基地局仮想化を18カ月で果たすことができたのは、楽天がまさにグローバルな組織だからだ」と強調した。

 現在、世界30カ国・地域において事業を展開している。また研究開発拠点を東京、パリ、シンガポールなど5か国に配置。エンジニアとリサーチャーの人数はグローバルで3500人以上に及ぶ。

 「AI、IoT、5Gと多くのイノベーションにより、かつてない程の社会的変革に直面し、世界は劇的な変化を遂げている。1つの国だけに留まっていてはついていけない。外国人を雇用するというだけではなく、同じチームとして同じ言語で話すことが必要。70カ国に上る人たちと一緒に入り混じってやっている」

 三木谷氏が英語公用化を宣言したのは2010年。当初526点だった社員のTOEIC平均点は830点となった。英語公用語化への取り組みによって、国内のエンジニアやリサーチャーの雇用についても日本人にこだわる必要はなくなった。現在、国内におけるエンジニアの新規雇⽤は約80%が外国籍の⼈材だ。

 「英語公用化に続き、全社員向けにAIやブロックチェーンといった現代テクノロジーの基礎知識を身に付けてもらうための、社員研修プランを考えている」とも語った。

グローバル規模での楽天のブランディング

 次に触れたのは、楽天ブランドの統一化についてだ。「楽天が目指すのは、ショッピング、トラベル、カードなど単体としてではなく、総合的なサービスによって、お客さまにより大きな付加価値を提供していくこと。そのためには、グローバル規模で楽天というブランドをどう認知してもらうかが勝負」と見ている。

 ここ数年、楽天は国際的なブランディングプロジェクトを大きく展開している。欧州のストリーミングサービスは「Rakuten TV」へ、メッセージングアプリのViberは「Rakuten Viber」へ、キャッシュバックサイト米Ebatesは「Rakuten」へと名称を変更してきた。その結果、欧州では約70%、米国では約50%までに「Rakuten」のロゴに対する認知度は向上した。このあと年末にかけてのネット商戦を経て、米国では70%までに上がってくるのではないかと三木谷氏は見ている。

 プロスポーツのサポートもブランディングに貢献している。東北楽天ゴールデンイーグルス、ヴィッセル神戸をはじめ、米NBAのゴールデンステート・ウォリアーズやサッカーのヨーロッパ強豪チームであるFCバルセロナを招集した「Rakuten CUP」など、次々と国際的なスポーツ展開を進める。「親近感を持ってもらい、社会に根付いた形で楽天ブランドを覚えてもらうことを意識している」(三木谷氏)という狙いだ。

携帯キャリア事業への参入のポイントは「エンドツーエンドの完全仮想化クラウドネットワーク」

 後半は、楽天モバイルの携帯キャリア事業への参入について、特に業界でも注目を集める「エンドツーエンドの完全仮想化クラウドネットワーク」実現に向けて熱く語った。

 現在、国内の携帯キャリア3社が提供するサービスは、基地局に設備を設置するハードウェア依存のものとなっている。三木谷氏は「この20年間、ハードウェア依存の環境は何一つ変化をしてこなかった。“モバイル通信ネットワークの完全仮想化”を実現することで、サービス提供のため必要とされる数百種のハードウェアSKUを10種以下へと大幅に削減し、大きなブレークスルーをもたらすことになる」と意気込む。

 ハードウェアに依存しない環境では、メンテナンスの際の時間、人件費などが掛からず、コスト削減につながる。また、4G LTEから5Gへの移行もソフトウェア書き換えで対応可能だ。コスト削減によって、顧客へのサービスを低価格で提供できる。

 一方で、昨今の通信基地局整備の遅れについては、「理由は技術的なものではなく物理的な問題」と説明。「強いパッションを持って、急ピッチで進めている。特徴的なのは、楽天内の知識や技術を用いて取り組んでいること。古い価値観をぶち破り、モバイル業界に大きな変革を起こしたい」と力強く述べた。

 最後に、楽天のタグラインとなる“Walk Together“について語った。「多くの課題に直面する時代にあって、社会の持続可能性を考えながら取り組んでいく必要性がある。楽天は、これらの課題に取り組み、パートナー、クライアント、顧客の皆さんと協力し、よりよい社会の場づくりにも臨んでいく。楽天には、その準備ができている」と締めくくった。

人工知能開発のスタートアップ 平野未来氏が語るAIの今

 続いて、人工知能開発のスタートアップのシナモン代表の平野未来氏が登壇し、AIリサーチャーのモチベーション維持について語った。

人工知能スタートアップのシナモン代表の平野未来氏

 連続起業家としても知られる平野氏だが、手掛けたビジネスが常に成功続きだったわけではなかったと振り返る。平野氏が学生時代に仲間と起業に至った理由は「社会にインパクトを与えたいと思ったから」。

 06年当時、東京大学大学院で複雑系ネットワークの研究に携わっていた平野氏は、Google創業者たちがそのアルゴリズムを活用していたことを知り、自身も世界を目指したい、技術でインパクトを与える何かを作り出したいと強く思ったという。

 当時、早くもAIを取り入れたソリューションを提供しようとするも、「誰も欲しがらなかった。まだ時代が早すぎた」と結果は出なかった。試行錯誤や失敗を繰り返しながらモバイルアプリなどにも取り組み、起業したビジネスをmixiに売却。12年にはシンガポールでシナモンを起業した。実は、このシナモンでも破産寸前の危機があり、従業員を解雇しなければならない状況に陥ったという。たった2年前のことだ。その後、エンジェル投資家らの支援を得ると順調に成長し、現在は資金調達の総額が16億円になった。

 シナモンのメインプロダクトとなっているのはAI-OCR「Flax Scanner」。日常業務で使われている請求書や注文書などさまざまなフォーマットの書類を、AIが自動で読み取り、必要な情報を抽出してデジタルデータ化、整理し、管理システムに入力までしてくれるというシステムだ。手書きにも対応している。また音声AI認識エンジン「Rossa Voice」の開発も手掛けており、コールセンター業務においては電話時のFAQ提示やリコメンデーションを行い、会議においては議事録内容の話録やその要約などを実現するという。

 すでに大手自動車メーカーなどの製造業や、生命保険会社をはじめとする金融業界などが顧客として名を連ねている。シナモンが目指すのは究極の事務作業の効率化だ。平野氏は「世界中のすべての反復的な作業をなくすことで、人々をハッピーにすること」を目指しているという。

 シナモンは、日本、ベトナム、台湾、米国の4か国にオフィス6拠点を持ち、200人を雇用。うち100人はAIリサーチャーと称される人たちだ。「シナモンでは、AIエンジニアとAIリサーチャーを明確に区別し、特にAIリサーチャーの雇用については独自のステップを用いている」という。

 「人材不足の日本と異なり、ベトナムや台湾では、各国トップティアの大学のコンピューターサイエンス専攻の学生たちからの応募数が年間600件に及ぶ。彼らに難易度の高い数学のテストを課し、満点通過者に対して6カ月のトレーニングを実施する。そのような採用スキームで優秀な人材を抽出、トップインターンのみを最終的にAIリサーチャーとして雇用している」

 今でこそ100人のリサーチャーを抱えるシナモンだが、昨年までは20人程だった。しかも「デッドラインに追われる」「調査時間がない」「ビジョンがない」などリサーチャーたちからは不平不満が多発、退職希望者が増えていったという。この危機を脱するためには「時間を忘れるくらい楽しくのめり込めること」「意味のある仕事であること」「メンバーたちとの心地よい関係性」と3つが大切であるという答えに気づき、業務改善に積極的に取り組んだ。

 評価システムについては、「リサーチャーにとって、人材マネージメントとビジネス理解の2つのスキルが重要だと考えている。そこで、この2つのスキルどちらからでもグレードが上がっていけるキャリアパスを設けた。さらにメンター制度や独自のレポートシステムなどを用意している」と説明する。優秀な人材の確保だけではなく、リサーチャーたちが意味を持ってチャレンジし続けられる環境づくりが、シナモンの成長を加速させているのだろう。

 2人の子どもの出産後、仕事の意味や次の時代に何を残せるのかといったことを考えるようになったという平野氏。何度失敗しても気負いなくチャレンジし続けるパワーと、シナモンのAI技術によって「次の時代の働き方を劇的に変えていく」という強いパッションが感じられる講演内容だった。

AIにフォーカスする楽天

 楽天テクノロジーディビジョンCDOの北川氏が率いるAI、データ関連のセッションが、キーノートの後に行われた。

 北川氏は、ハーバード大学で物理博士号を取得、『Science』『Nature Physics』『Physical Review Letters』など、著名な学術誌に20以上の論文を発表しており、現在は、楽天グループ全体のAI、データ、およびR&Dを統括する。

楽天グループ全体のAI、データ、およびR&Dを統括するCDOの北川拓也氏

 北川氏は、楽天のAI、データ戦略におけるビジョンについて、「10年以内に世界中のあらゆるサービスと製品は、AIを介して顧客の嗜好(しこう)やライフスタイル、およびライフステージ別にパーソナライズされる」と説明した。

 AIによるサービス展開の具体例としては、「AI商品カタログ」や映画や音楽のエンターテインメントをレコメンドする「AIショッピング」など、身近で想像しやすい内容のものから、AIを活用したガン克服への挑戦などについても語った。

 楽天グループの海外開発拠点Rakuten Indiaで、データサイエンスエンジニアリングのバイスプレジデントを務めるシェイカー・カレ氏は、「楽天でのデータサイエンスの民主化」について語った。データサイエンスとは、データを用いて新たな科学的及び社会に有益な知見を引き出そうとするアプローチのことだ。AIの民主化によって、楽天のすべての従業員と企業がデータサイエンスを利用できるようにすることを目的としている。

海外支社Rakuten Indiaでデータサイエンスエンジニアリングのバイスプレジデントを務めるシェイカー・カレ氏

 ビッグデータ部門の鈴木ダン氏は、プラットフォームエンジニアリングに注力しており、開発チームの開発を加速させる効率的なインフラサービスを提供するという役割を担っている。

 例えば、楽天市場の「楽天スーパーセール」では、膨大な数のクエリを記録する。その膨大なデータを収集し、さまざまな機能を利用可能にするフレームワークやツールを開発した。講演では、データ収集インフラストラクチャ、データ利用のためのアプリケーションなどについて説明した。

ビッグデータ部門の鈴木ダン氏

親子で参加するメンバーも ロボットに親しめるキッズスペース

 カンファレンスの会場には、キッズパークが設けられ、楽天のロボットクラブをはじめ、企業やインターナショナルスクールの中高生のロボットなど、さまざまなロボットが集合。プログラミング体験もでき、親子連れで参加したメンバーの憩いの場となっていた。

さまざまなロボットに夢中になる子どもたち

 また、楽天が先進的なテクノロジーにより社会にイノベーションをもたらした個人、組織を表彰する「楽天テクノロジー&イノベーションアワード」の発表会も行われた。

 金賞は、水質を分析するディープラーニング技術「DeepLiquid」を開発したAnyTechが受賞。銀賞は、「AIの民主化」を標榜する非営利組織(NPO)のMachine Learning Tokyoが受賞した。また「Leadership賞」には、品質保証コミュニティのリーダーでありAIテストツール「Magic Pod」の開発者でもある伊藤望氏、「Future Technology賞」には、ライフサイエンスおよび医学研究における画像解析、処理技術をけん引するエルピクセルが輝いた。

各賞の受賞者たち

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提供:楽天株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2019年12月23日