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» 2019年12月27日 10時00分 公開

リーダーシップは誰にでも実践できる:UWC ISAK Japan小林りん代表理事に聞く――「変革を起こすチェンジメーカーの育て方」

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 長野県軽井沢町にある「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」(以下、UWC ISAK)は、日本初の全寮制の国際高校。世界83カ国から集まった、ダイバーシティーに富んだ約200人の生徒が学んでいる。

 掲げているミッションは、社会に変革を起こす「チェンジメーカー」を育てること。国境や分野を問わずに、それぞれが社会に変化を生み出していく――。こうした生徒たちをどのように育てているのかを、小林りん代表理事に聞いた。

photo 小林りん(こばやし・りん)ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事。経団連から全額奨学金をうけて、カナダの全寮制高校に留学中、メキシコで圧倒的な貧困を目の当たりにする。その原体験から、大学では開発経済を学び、UNICEFプログラムオフィサーとしてフィリピンに駐在。ストリートチルドレンの非公式教育に携わるうち、リーダーシップ教育の必要性を痛感する。帰国後、6年の準備期間を経て、2014年に軽井沢で全寮制国際高校を開校。2017年には世界で17校目となるユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC) へ加盟し、現在の校名に改名。同校は80カ国以上から集まる生徒の7割に奨学金を給付している。1998年東京大学経済学部卒。2005年 スタンフォード大学 教育学部修士課程修了。12年 世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」選出。19年 Ernst & Young「EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー 2019ジャパン 大賞」受賞

徹底したダイバーシティーの環境

 浅間山の南麓に広がる別荘地の一角に、自然と調和した校舎や寮が建ち並ぶ。行き交うのは多国籍の生徒たち。校舎に入ると、図書館を併設したオープンスペースが広がり、生徒はPCを開いて、少人数の授業に臨んでいる。

photo 図書館を併設したオープンスペースでは授業も行われる
photo 林の中に建ち並ぶ寮。自然と調和した建築になっている

 この日本とは思えないような雰囲気の高校が、2014年に日本初の全寮制国際高校として長野県軽井沢町に開校したUWC ISAKだ。2017年には世界各国から選抜された高校生を受け入れる民間教育機関「ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)」に、世界17番目の学校として日本で初めて加盟した。

 私立のインターナショナルスクールだが、学校教育法の第一条に基づく正式な日本の高等学校であり、世界中の大学に進学できる国際バカロレア認定校でもある。生徒は2年次と3年次に国際バカロレアのディプロマ・プログラムを履修し、授業は全て英語で行なわれる。

 UWC ISAKは、創立者の小林りん代表理事が、共同創立者の谷家衛氏と共に、社会に変革を起こすチェンジメーカーを育てたいという思いで開校した。そのために特に重視しているのがダイバーシティーだ。

 UWC ISAKでは現在、83カ国から集まった200人の生徒が学んでいる。日本人は約3割で、東京にあるトップレベルの偏差値の中高一貫校を辞めて入学した生徒も複数いるという。学費と寮費を合わせると年間500万円を超えるが、軽井沢町のふるさと納税で寄付金を集めるなどして、約7割の生徒に奨学金を給付している。世界から集まった生徒たちの中には、内戦状態のリビアから来た生徒もいれば、インドのアウトカースト出身の生徒、あるいは先進国の富裕層の生徒もいるなど、育った環境もさまざまだ。

 「海外の規模の大きなインターナショナルスクールの場合、高所得層の家庭の生徒が大多数を占めて、超貧困層出身の生徒がわずかにいるケースが多いです。UWC ISAKはそういった偏りはありません。奨学金は全額給付の生徒もいれば、部分的に300万円や100万円、10万円をもらっているなど、偏りのないスペクトラムで捉えています。国籍だけでなく家庭環境もバラバラな生徒が在籍しているのは、実社会の縮図でありたいと考えているからです」(小林代表理事)

高校生の時に訪れたメキシコのスラム

 小林代表理事がダイバーシティーを重視しているのは、自身の体験が大きい。高校1年生の時に大学受験中心の指導に疑問を持ち、進学校の東京学芸大附属高校を中退。2年間全額奨学金がもらえることを知り、カナダにあるUWCのピアソン・カレッジに留学した。2年生の時、メキシコ人の友人の実家に遊びに行き、大きな衝撃を受ける。

 「彼女の家はブロック塀を組み合わせてできた小さな建物でした。でも彼女からは『メキシコでは中流階級だよ』と言われました。この夏のメキシコでの経験が忘れられず、冬に再訪した際に彼女の叔父が、スラムに連れて行ってくれました。平日の日中に子どもが学校にも行かずに走りまわり、大人たちは道端に座っている。そんな光景を実際に目の前にした時、『私も向こう側に生まれていたかもしれない』と思いました。自分が恵まれていることを初めて実感し、社会のために何かしなければという強烈な使命感を感じた瞬間でした」

 高校卒業後は日本に戻って、東京大学で途上国の経済を学び、モルガン・スタンレーなどを経て、スタンフォード大学の大学院で教育学修士号を取得。その後、国際児童基金(ユニセフ)でフィリピンのストリートチルドレンの教育支援に携わった。

 貧困層の子どもたちは、働かざるを得ないため、学校に通うことができない。子どもたちが仕事をしていない時間に学校を開いて、基礎的な教育をした。

 ところが、しばらくすると疑問を持ち始めた。ストリートチルドレンは当時フィリピン国内に30万人以上いたが、ユニセフで支援できるのは8000人。この支援自体は必要だけれども、根本的な解決にはならない。社会の仕組みを変えていく人、チェンジメーカーを作る必要があると考えた。そんな時に共同創立者の谷家衛氏と出会ったのだった。

 「私がメキシコでスラムを見た1992年頃は、世界の紛争は国境を巡る争いが多かったと思いますが、いまは貧困や格差、宗教観や歴史観の違いなど、もっと複雑なもので世界は分断され始めています。トランプ政権の誕生や、イギリスのブレグジットを見ると、同じ国の人々が価値観の違いや境遇の差で対立していますよね。

 この溝を埋めていくためには、自分にとっての当たり前が当たり前ではない相手と、一緒に生活したりぶつかったりすることが大事だと思います。自分が育った環境と全く違うところで生きている人に対して、思いを馳(は)せることができるかどうか。そのためにダイバーシティーの環境を作って、生徒にその中を生きてもらおうと考えたのが本校です」(小林代表理事)

photo

寮生活の中で宗教観の違いや格差を学ぶ

 では、ダイバーシティーの環境で、生徒はどんなことを学んでいるのだろうか。教える側の教師も、教員経験に加えて、映画監督やNPOの元職員、世界放浪など、多様なバックグラウンドを持つ。採用倍率は実に50〜100倍。歴史の授業では第二次世界大戦を日本とは違う立場から学び、国際政治の授業では、市民によるデモと警察が衝突している香港情勢などを多面的に考える。一方で、授業以上にダイバーシティーを感じるのが、日々の生活だという。

 ある寮では、4人部屋にマレーシア出身のイスラム教徒の女子生徒がいる。彼女はルームメイトに「お祈りしていい?」と最初に断って、1日に5回お祈りをする。そのうちにルームメイトも気になって、「何でお祈りをしているの?」とイスラム教について率直に質問したり、「お祈りしている間に私が音楽を聴いていたら不謹慎かな?」と一歩踏み込んで尋ねたりするようになる。

 「特に日本人の生徒は、報道で触れるイスラム教徒はISISのことばかりなので、最初はドキドキしながらイスラム教徒の生徒と接していたようです。でも世界中に穏やかなイスラム教徒が大勢いることを知れば、ISISは局地的でごく一部の人たちだと分かります。これは肌で感じることで、なかなか教えられることではありません」

photo イスラム教徒の生徒も学んでいる

 こんな話もある。寮の自治は生徒に任されている。ある男子寮では、夜食をつくって台所を片付けていない生徒がいたら、連帯責任で全員が食器1枚あたり10円を払うルールを決めた。

 ところが、週に10枚と罰金が積み上がってくると、現実的には払えない生徒が出てきた。実家の世帯年収が数万円の生徒にとって100円は大金だった。

 生徒たちは「払えないこと」を聞いて、頭では分かっていたはずだったのに本当は理解できていなかった貧困という言葉の意味を理解し、罰金ではなく腕立て伏せをする代替案に切り替えたという。全寮制の中で、あらゆる場面で生徒たちは多様性の意味をこうして学ぶのだという。

 UWC ISAKではチェンジメーカーは座学だけでなく実践での学びを重視しているため、年に2回、課外活動に1週間専念するプロジェクト・ウィークを設定。生徒は思い思いのプロジェクトに挑んでいる。例えば、校内の成績管理や出欠管理などのソフトがバラバラで不便だと感じた生徒はチームを作り、スタートアップの経営者に教えを乞うて、1つのインターフェイスで管理ができるシステムを作りあげた。

 卒業生の9割は、世界各国の大学に進学し、そのうち半分は米国に行く。約2割がカナダで、1割が英国とオーストラリア。日本の大学にも1割程度が進学する。残りの1割はギャップイヤーを過ごす人、起業する人などさまざまだ。

photo 少人数で授業を受ける生徒たち 

チェンジメーカーは一緒にインパクトを起こす人

 このようにUWC ISAKでは、徹底したダイバーシティーの環境を土台にして、社会に変革を起こすチェンジメーカーを育てている。リーダーではなくあえてチェンジメーカーと呼ぶ真意を、小林代表理事は次のように説明する。

 「生徒たちには、多様性を生かす力、問いを立てる力、困難に挑む力、それにまわりの人がこの3つのどれかに取り組んでいる時に、サポートをする力が大事だといつも話しています。

 最初に『この指とまれ』と言った人がいても、サポートする人やフォロワーがいなければ、プロジェクトは成り立たないですよね。みんなで一緒にインパクトを起こすことができる人、『コレクティブインパクト』を出せる人が、私たちがイメージしているリーダーであり、チェンジメーカーです。

 日本語で「リーダー」というと、リードする人だと捉えられやすいですが、私たちの考えるリーダーシップは、肩書やポジションではなくて、自分の生き様や行動のことを指しています。つまり、リーダーシップは誰にでも実践できるということです。生徒には行動を起こす側になってほしいし、いろいろな場面でこの4つの力を実践できるような学校でありたいと思っています」

 一方で小林代表理事は、「コレクティブインパクト」を起こすことは、日本では決して簡単ではないと指摘する。

 「日本の社会には時として、多様な個性を持つ人、奇想天外な問いを立てる人、困難に挑む人を引きずりおろすような風潮を感じてしまいます。これからは、画一的な価値観や減点主義といった考え方も変わっていく必要があるのではないでしょうか。若者たちが独自の問いを立て、知恵を絞って困難に挑み、ダイバーシティーを生かすことを学んだとしても、社会に出た時に評価されなければ萎んでしまいます。

 ご覧のような環境を提供している私たちでさえ、教員ももっと多様であるべきかもしれないし、生徒たちにもっと任せた方がいいかもしれないと考えています。建学の精神に近づくためにもっとできることがないのか、常に自らに問い続けています」

 UWC ISAKは2019年4月に、日本の学校教育の改革や新しい発想で教育事業を立ち上げるアントレプレナーを支援する新規事業を始めた。UWC ISAKが積み重ねてきた経験や人脈を共有して、早く大きく事業が育つように支援したいという。「もっといろいろな学校や教育機会が、子どもたちの個性に合わせてたくさん生まれていってほしい」と話す小林代表理事は、学校の中だけでなく外でも「チェンジメーカー」を育て始めている。

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