(提供:デル・テクノロジーズ株式会社)
IT業界のみならず、日本の多くの業界で注目され、推進が叫ばれているデジタルトランスフォーメーション(DX)。しかしながら、DX実現の「目的」は企業によりさまざまなのが現状だ。DXの定義が各社で異なることから、新しいテクノロジーを用いて破壊的なビジネスモデルを志向する会社もあれば、「モダナイゼーション」という名の下に、社内システムをクラウドや最新鋭のサーバへ移設するだけの企業もある。
日進月歩のIT業界では、「革新」や「変革」というバズワードを中心に、どんどんと新しいキーワードが出てくる。しかし、キーワードこそ新しくなれど、その本質は大きく変わっていないことも多い。DXと聞いても、2000年前後に巻き起こった「IT革命」と同じような認識を持っている人も多いのではないだろうか。当時、IT革命は「多くの新しいビジネスを創出し、さまざまな情報に関わるサービスを始め広範囲な領域をカバーする。これまでにないテクノロジーをベースに新しい事業が誕生する」などとも語られていた。一瞬DXの定義かと見間違えるほどだ。
システム担当者や経営者たちは、単なる「デジタル化」とDXとの違いが見えづらく、なかなか改革が進まないというケースも散見する。実際、PowerEdgeに代表されるサーバ製品を担当するDell Technologies(デル)インフラストラクチャ・ソリューションズ統括本部データセンターコンピューティング部門が、19年12月に日本企業を対象に実施した「DX動向調査」でも、DXの効果を具体的に実感している企業はわずか14%にとどまっている。
では、00年前後のIT革命と今回のDXとで、違いはどこにあるのだろうか。明らかに異なる点が1つあると指摘するのが、高見俊介氏だ。高見氏は、顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を知るための指標である「NPS(=Net Promoter Score)」に早期から着目し、日本で初期にNPSに関する書籍「ロイヤルティリーダーに学ぶ ソーシャルメディア戦略」を出版した「NPS第一人者」ともいうべき存在だ。高見氏は、IT革命とDXの違いについて、「本質的には大差ないが、大きく違う点が1点だけあり、それは顧客の視点」と話す。
先の「DX動向調査」でも、高見氏の提言を裏付ける結果が出ている。DXにおいて重要だと考える項目として約半数の企業が「CX(=Customer Experience、顧客体験という意味)」と回答した。さらに結果を読み解くと、いわゆる「デジタル後進企業」と、反対にDXのリーダー的な存在である「デジタルリーダー層」では、「顧客の声の分析強化」に関する意識に大きく差が出ている。つまり、具体的に顧客の声をどう分析し、満足度を高められているかが、企業の「デジタル化進捗レベル」に対応しているということだ。
今まで、「顧客満足度」や「顧客の声」というと、どちらかといえばBtoC業界で重要とされている指標であった。しかし、最近ではBtoB業界でもこうした機運が広がり、DXでCX向上を実現する、というトレンドができ始めている。「『モノ』消費から『コト』消費へ」という言葉もあるが、こうした意識変化や、少子化などで市場の競争が激化しつつある中で、顧客との関係性がこれからの時代を生き抜くカギであることは明らかだ。そして、CXを高く保ち、顧客との関係性を良好に維持する企業こそがDXに成功している――。こうした流れを受けて、最近はBtoBでもNPSを導入する企業が多くなってきた。そこで今回、「DX動向調査」を指揮したデル執行役員の清水博氏が、NPSへの知見が深い高見氏にインタビューを実施。企業が生き抜くために必要不可欠な知識であるDXとCXの関係性や、NPSの重要性を読み解く。
緊急IT投資動向で確認できたVUCAの現実化、新しいクラウドとオンプレの関係
緊急テレワーク対応で強制的に「VUCAの時代」らしさを体験した日本企業。2020年5月に実施した調査からは多くの企業がマインドの変化とともに次に向けた施策の検討に入った状況が明らかになった。彼らが次に着手するのは何か。
清水:昨今、DXとして、既存のビジネスから脱却し、新しいデジタル技術を活用することによって新たな価値を生み出すことを、多くのエンタープライズ企業では検討しています。DXによって実現するテーマとして、顧客との関係強化や顧客の声を深く分析したいという結果がわれわれの調査でも出ています。DXとNPSの関係はどのように感じられていますか?
高見:DXについては、苦労している企業が多いように思います。特に難しいのが、デジタルトランスフォーメーションの中の「トランスフォーメーション」の部分です。つまり、どのように組織を変革するかということです。
00年前後のIT革命と今回のDXとの大きな違いは、「顧客をより認識する」というのが重要であるという点です。しかし、そのイメージが強く、デジタルを活用してCXを向上させることを意識できている一方、肝心のトランスフォーメーションについては、具体的なイメージを描けていない企業が多いのが現状ではないでしょうか。デジタルを活用し、CXやNPSを向上させる一連の取り組みの中で、組織としてどういう変革をするかも考えてみると良いでしょう。体質転換のイメージを持って計画的に取り組まないと、なかなかDXの実現は難しいはずです。
清水:DX先進企業としてデジタル化の戦略が社内に組み込まれていると自認している企業の多くは、さまざまな人事施策を強化しています。1on1ミーティングをしてお互いの考えを十分に尊重し、「目立たないけど普段から頑張っている従業員」の表彰制度を実施するなど、組織変革の前にまず、個人がモチベーションを高く保ち、イノベーションを産み出す風土に近づけようとしている状況であることが、最近のわれわれの調査から分かってきました。
高見:DXに関する取り組みとして、しっかり練り上げたロードマップが重要です。洗練された取り組みを行っている企業は、偶発的や結果的に洗練されたのではなく、その裏に洗練されたロードマップがあるはずです。粛々と実行を積み重ねる姿勢が重要だと考えられます。
マフィア型組織がDX実現に向いている? 〜ティール組織考から
DXが進む企業の組織運営スタイルを調べてみると、興味深い傾向が明らかになった。ティール組織における5段階の組織モデルとの関係から、今、DX推進に必要なフォーメーションを考えていく。
清水:NPSというとこれまでBtoCで使われがちでしたが、ここ数年ではBtoB分野でもNPSを適用する企業が多くなってきたと思われます。現に、Dellでも多くのお客さまからお問い合わせを受けるようになりました。BtoB分野でのNPSに関する注目度の動きをどのように見ていますか?
高見:非常に活発になってきていると感じています。現在は、ビジネスモデルサイドのイノベーションが起きています。例えば、テック系企業でも注目されている「サブスクリプションビジネス」はその1つです。サブスクリプションビジネスはSaaS(Software as a Service)の形でBtoBでも広がっています。これに連動する形で、「カスタマーサクセス」というキーワードも出てきました。サブスクリプションは、必要な初期投資が高く、損益分岐点を超えるまで継続的にユーザーを離さないことが重要です。つまり、BtoBでも、顧客満足度を高く維持する必要が高まってきているんです。こうした背景が、BtoB分野でもNPSへ注目が集まっている理由だと思います。
清水:DX動向調査で、さまざまな人事施策とDX進捗についての相関関係を調べました。中でも、「顧客満足度調査」を実施している会社は、DX進捗も大きい傾向にあることが分かりました。顧客満足度自体の高さや低さよりも、DXへの影響が強かったのです。
高見:最近では、CX向上の前段として、EX(=Employee Experience、従業員体験)が重要だと認識されています。しかし、このEX向上のために必要なのが、CXなのです。CX向上の前にEXの向上が欠かせないなのですが、実はそのEX向上のためにCXが……というように、考え始めると、無限に循環してしまいます(笑)。
整理すると、自分が顧客にしっかりと価値提供できている。あるいは、自社や自ブランドが顧客に価値提供できている。その価値提供ができていることに対して、顧客からのフィードバックが実際にそれを裏付ける。これがEXの最大の加速要因になると考えています。
清水:お客さまの声を聞けることでモチベーションが高まるという効果は、社内でも感じているところです。
高見:顧客全体での総合評価も重要ですが、まずは特定の1人でもいいので、ポジティブなフィードバックをしっかりと大切にして、従業員側にポジティブな声を届けていくことが優先事項です。それによって、自分達がやっていることの正しさを実感して、自信をつけていくことができます。そして、顧客の範囲を徐々に広げていき、EX向上からCX向上のループが生まれてくるのです。EX向上のために、一部でもいいのでポジティブなCXを拾っていき、活動の質を高めていくことが重要だと思います。
今回は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を語る上でたびたび登場する「ディスラプター」(破壊的イノベーター)の由来についての閑話です。というのも、GAFAやTech系の秀才たちは「子どものころにSFの名著『スターキング』を読んでいた方が多いのでは」と思えるからです。
清水:Dellはグローバルレベルで積極的にNPSを活用しています。当初はコンシューマー分野から導入しましたが、BtoB分野でのサーバ製品でもお客さまからの有益な声を聞くことができるようになりました。
高見:NPSは、もともとカスタマーサーベイに対するイノベーションの要素があります。一般的に、市場調査などは質問もボリュームがありますが、その分回答者にも負荷がかかります。NPSは設問が少なく、回答者の負担も減らしつつ、究極的には顧客との対話のツールに変えていくというところを実現しています。ある意味で、調査やサーベイの概念を変えたとも言えます。顧客からの「生の声」というフィードバックを得られるのが強みでしょう。
清水:また、Dellのサーバをお使いのお客さまには追跡調査を実施して、NPSの評価のみならず、スコアの背景にある理由を探っていくことも実施しています。
高見:BtoB分野、特にカスタマーサクセスの要素がある場合では、時間的な尺度を加味して考える必要があります。つまり、顧客が製品へ最初に触れて、トライアルをして、ある程度初期段階でそこに対して価値を見いだして、「これは素晴らしい製品・サービスだ!」と認識に至るプロセスの中で「プル・プッシュ」ともに「プロセス」としてアプローチしていくことです。そのためには、単にタッチポイントの総和ではなく、価値を育む時間軸の要素を掛け合わせて、3D的発想を心掛ける必要があります。
清水:NPSを深堀りすることにより、お客さまの声をより多く聞くことができるようになりました。Dellは、米Dellが米EMCと統合して、米Dell Technologiesが誕生して以降、幅広い製品をワンストップでお客さまへお届けできるようになっています。国内サポートの拠点もどんどんと充実してきています。今後は本日の高見さんの話をさらに活用していきたいと考えています。ありがとうございました!
最近は中堅・中小企業や大企業子会社の“ひとり情シス”の人でも、業務の守備範囲が広がってきている。こうしたセグメントに属する人は、ITのみならず「経営参謀」としての役割も期待されている時代になりつつある。そこで、Dellでは、NPSで取得した「お客さまの声」において「有用な情報発信」の要望が多いことから、社会人の「学び直しの場」としてのリカレント教育を実施している。その他、興味のある共通のテーマでのコミュニティー活動も実施している。
今後Dellでは、高見氏を招聘し、企業のDX担当者やIT部門担当者を対象として、DXを推進するために必要なリカレント教育の講座としてセミナー・ワークショップを開催していく。受講希望の方は下記のアンケートに回答することで、申し込みができる。
PoCで停滞してしまうのはなぜ? DX最新動向調査から見えた課題と対策
従業員1000人以上の企業を対象にしたDX調査によると、44%の企業がPoCの段階にある一方、64%がそのまま停滞に陥る「PoC貧乏」の状態にあるという。これを回避し、DXを進捗させている企業はどんな施策を行っているのか、具体的に解説する。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2020年6月5日
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