テクノロジーを活用できない中堅・中小企業は生き残れない 元IT政策官僚の岸氏が語る「未来の働き方」に必要なもの生き残るのは「変化に適応する者」

» 2020年03月25日 10時00分 公開
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 2020年4月、いよいよ働き方改革関連法の対象が中小企業にも及ぶ。これまでは大企業のみの適用だったが、残業時間の罰則付き規制などへの対応が中小企業でも求められる。しかし、大企業と違い人員が少なく、リソースも不足する傾向にある中堅・中小企業において、日々の業務の中で改革を成し遂げるのは大変だ。

 こうした状況を、元経済産業省官僚で政府の「IT戦略本部」にもかかわった、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の岸博幸教授は「だからこそチャンス」と話す。なぜ、こうした一種「ピンチ」にも見える状況が中堅・中小企業にとってチャンスなのか。また、リソースが限られる中でも働き方改革を成し遂げるには、どういった点に気を付けてどのような策を講じればよいのだろうか。話を聞いた。

中堅・中小企業の働き方改革について、岸教授に聞く

――働き方改革に関してお伺いする前に、そもそも日本企業はいま、どういった課題に直面しているのでしょうか。

: さまざまな要因がありますし、企業によって濃淡はありますが、まず間違いなくいえることはこれから先、かなり厳しい状況が待っているということです。2020年には東京で世界的なスポーツイベントがありますが、これが終わった後には「景気がいい」という状況はしばらく来ないと考えています。つまり、国内市場の成長率はさらに縮小していくことは明白です。そのため、国内市場をメインにしている企業は厳しい状況に置かれるでしょう。

 さらに、社会保障の問題もあります。社会保障制度は改革こそ行われていますが、当時描いていた青写真とは異なった形で推移してしまっています。つまり、「取りやすいところから保険料を徴収する」という形になってしまっており、このままでは高齢者の保険料負担などを企業年金から補填する、といった形にもなりかねません。企業にしわ寄せがいってしまうのです。

 また、日本企業はさまざまな「構造変化」にも直面しています。言うまでもなくグローバル化に対応しないといけませんし、デジタル化にも対応する必要があります。環境問題、少子高齢化による人口減少など本当に枚挙にいとまがありません。こうしたことを踏まえると、経営者にとっては非常に厳しい状況だといえるでしょう。

日本企業はさまざまな「構造変化」に直面していると語る岸教授

――最近では、新型コロナウィルスの問題も企業を悩ませています。

: 新型コロナウィルスの件では、いくつかの企業が率先して在宅勤務など従業員のテレワークを後押しする動きを見せました。このような突発的な事態には、東日本大震災の経験もあり、先ほど述べた「構造変化」と比較すると日本企業はそれなりに対処できる傾向にあるのかなと考えています。

 ただ、テレワークを率先して導入した企業を見てみると、やはり大企業が多い。中堅・中小企業と比較して大企業は制度や仕組みがしっかりしている傾向にあるので、危機対応もしっかりとできている。一方、中堅・中小企業では難しいところもあるのかなと感じています。

――そんな中堅・中小企業にも20年4月からは働き方改革の波が押し寄せます。一方で、働き方改革は単なる「時短」という点だけに焦点が当てられているようにも思えます。このことをどのようにお考えでしょうか

: 働き方改革の中堅・中小企業への影響は、計り知れないくらい大きいものになるでしょう。ただ、前提として私は現在の働き方改革には違和感を持っています。なぜなら、現在多くの企業では「働き方改革」ではなく「休み方改革」になってしまっているからです。

 もちろん、過重労働の是正は必要です。ただ、働き方改革は何のためにするのかを考えると、まず1つは人口減少という労働市場の構造変化へ対応するためです。もう1つは、企業の生産性を高め、イノベーションなど付加価値を高めるためです。

多くの企業で「働き方改革」が「休み方改革」になっていると警鐘を鳴らす

 休みが増えたり残業が減ったり、一見すると働き手にとってメリットがあるように見える働き方改革の現状ですが、実はそうでもありません。例えば物流業界ではドライバーが不足しているのは周知の事実ですよね。ドライバー側は、もっと働きたいと思っている人も数多くいます。それなのに、法律などで働く時間が制限されてしまう。物流だけでなく、飲食業や工場などの現場でも、「働きたいのに働けない」という、ある種「異常」ともいえる状況が続いてしまっています。

――残業規制などへ過度に焦点が当たることで、そうした影響が出てきているんですね。そもそものことをお聞きしたいのですが、本来の意味で「働き方改革」ができれば、経営者にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。

: 大きなものとしては、人材採用の点でメリットがあるでしょう。特に若い世代では、在宅勤務などのテレワークは常識となりつつあります。外資系などでも、「毎日会社に行かなくても仕事はできる」という認識は広がっています。人手不足の時代において、より優秀な人を採用したいと考えているのであれば、働き方を昭和式のものからアップデートする必要があるでしょう。

 テレワークに関してもっと言えば、グローバル化の中で企業が生き残っていくために必要な、イノベーティブなアイデアも出やすくなるはずです。毎日、朝から満員電車で通勤して、会社に着くころにはくたくたになってしまっている――こんな状況では、イノベーティブな発想なんか出てくるはずがありませんから。

 働きやすさを従業員に提供することで、生産性向上のために必要な従業員のエンゲージメントも高まります。また、いざ何かあったときに、会社にいなくても仕事ができる体制を構築してBCP(事業継続計画)を策定できれば、取引先からの信用にもつながるでしょう。

――本来の意味で改革ができれば、数多くのメリットがあるということですね。このようなメリットがある中でも、さまざまな調査を見てみると働き方改革が浸透しきっているとはいえない状況です。これはどういったことが背景にあるのでしょうか。

: 日本企業のシステムは、そのほとんどが昭和に完成しました。人口がどんどん増えていくという前提で終身雇用制度を構築し、ある程度の残業はあっても仕方がないというスタイルです。残業というと労働者側に負担を強いているかのように聞こえますが、実情はちょっと違います。というのも、残業すれば残業代がもらえますし、かつては「会社こそ自分の所属するコミュニティーだ」と考える人もたくさんいました。お金がもらえて、なおかつ自分の居場所があるという点で、従業員もメリットを享受していたのです。

 経営者の多くも、そうした時代の成功体験に引きずられてしまい、なかなか改革に踏み切ることが難しくなってしまっているんです。「自分が社長を辞めるまでの残り数年なら、なんとか乗り切れるだろう」と考える人も、残念ながら一定数存在します。

 ただ、こうした状況だからこそ1歩でも足を踏み出してみるべきなんです。みんなが横並びだからこそ、ちょっとした工夫で頭1つ抜け、競合企業からリードできるチャンスがある。そう考えると、ちょっとでも心理的なハードルは下がるのではないでしょうか。

困難な状況だからこそ、あえて改革の1歩を踏み出すべきだと強調する

――周りがちゅうちょしているからこそ、あえて何かやってみることが大事なんですね。ただ、先ほどの新型コロナウィルスに関するテレワークのお話でもありましたが、なかなか中堅・中小企業では日々の業務が忙しく、業務にメスを入れるのは難しいというところもあるのではないでしょうか。

: 何も難しいことはなく、会議の時間を短く設定してみたり、これまでだったら営業先から会社に戻ってきて上長へ報告していたのを、レポート提出に切り替えたり。こうしたちょっとした改革でも、一歩リードできるのです。

 また、テレワークなど、技術的なことが必要であれば、何も全てを社内だけで完結させる必要はありません。ケースバイケースで外部の手を借りることも柔軟に考えるべきです。外部から客観的に業務をチェックしてもらうことで、内部からは見えなかった意外な課題が明らかになるケースもあります。

必要に応じて外部の手を借りることも重要だと語る

 働き方改革に失敗する企業の多くは、「お上が『やれ』といっているし、まあ取りあえず残業時間を減らしてみるか」といった受動的なケースです。自らの企業にどんな課題があるか、その点を明確にして的確に改革をしないと、せっかくやったのに無駄足となってしまうことも少なからずあるのです。特に中堅・中小企業ほど、余裕がないがゆえにこうした「誤った改革」をしてしまいがちです。こうした無駄をなくすためにも、外部の手を借りることは有効です。

 それに、大企業と比較して、中堅・中小企業ほど本来は身軽に動けるはずです。ダーウィンの進化論を知っていますか? 地球の歴史をひもとくと、生き残ったのは「強い種」でも「賢い種」でもありません。「環境変化に適応できた種」こそが生き残っているのです。中堅・中小企業であっても、しっかりと働き方改革の波に乗ればこの厳しい時代でも必ず生き残っていけるはずです。

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 岸教授のお話にもありましたが、「働き方改革」は自社だけでなく、第三者の視点や手を借りることも重要です。特に中堅・中小企業にとっては、日々の業務も忙しく、なかなか働き方にメスを入れづらいもの。そんなとき、KDDIまとめてオフィスであれば、「安心」かつ「負担少なく」、働き方改革を実現できます。

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