新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの企業がテレワークの導入に踏み切る一方、オフィスで業務を行うことが前提になっていた従来のワークスタイルとの違いからさまざまな課題が浮き彫りになっている。在宅勤務形態によるコミュニケーション不足や紙ベースのワークフローなどが原因で「テレワークによって生産性が落ちてしまった」という声も聞く。
これまでDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んできた大企業であればともかく、緊急避難的にテレワークを始めた中小企業のなかには、前述の課題が足かせとなって「ウチではテレワークは無理」と判断し、緊急事態宣言解除以降、元の働き方に戻ってしまっている企業も少なくない。
とはいえ、急激な社会環境の変化によって引き起こされたニューノーマル(新常態)への対応は、事業継続性の点のみならず、企業の競争力を高め、新しい価値を生み、さらなる成長を目指すための喫緊の経営課題といえる。
いかに生産性を落とさずに仕事ができる環境を作っていくか――こうした問題に悩む中小企業の大きなヒントになりそうなのがディスカバリーズの事例だ。同社代表取締役社長の島田祐一朗氏に話を聞いた。
同社は2009年の創業当初から10年以上、テレワークを前提としたワークスタイルを実践してきたが、新型コロナウイルスの影響が本格化した20年2月に在宅勤務へ切り替え、原則的に出社禁止を継続している。そうした環境下においても「むしろ生産性は向上している」と島田氏は語る。
「ディスカバリーズは社員40名弱の会社で、オフィスはもともとフリーアドレス制になっており、テレワークが当たり前の文化でもあったのですが、完全在宅勤務は初めての経験です。そうした状況でも、基準期を100として20年4月から6月の業務時間と時間当たりの営業利益を比較したところ、働く時間は減った一方で利益が伸びていることが分かりました」
テレワークの課題としてまず挙げられるのがコミュニケーションの難しさだと島田氏は指摘する。これまでのようにチームのみんなが同じオフィスに出社して働く環境であれば、隣の席の人に声をかけてプロジェクトの進捗を確認したり、ちょっとした思い付きを共有したりといったことがしやすい。また、“同じ場にいる”ということそれ自体が、チーム全体の状況を感覚的に把握する手助けになる。一方、チームメンバーが別の場所にいるテレワーク環境下ではこうした“感覚的な共有”が困難だ。
同社ではチーム間のコラボレーションを円滑化するためのツールとしてMicrosoft Teamsを活用している。Microsoft TeamsではビジネスチャットツールやOneDriveを介したファイル共有、Web会議、Officeをはじめとする他アプリケーションとの連携機能を備えているのが特徴だ。
「従来のメールなどではカバーしづらい、頻繁に発生する粒度の細かいコミュニケーションもビジネスチャットであれば気軽にできますし、チーム間のファイル管理も容易です。テレワークでは、創発的なアイデアを生む抽象的な議論がしづらいという指摘もありますが、当社での業務内容の傾向を見ると、ビジネスチャットの使用頻度が急速に伸びる一方、全体として深夜や休日などの時間外での作業が大幅に減っています。在宅勤務になってむしろコラボレーションが加速している印象です」
粒度の細かいアドホックな情報(フロー情報)の伝達にビジネスチャットは有用なツールだが、その一方で、全社的に周知したい情報やノウハウを蓄積することで価値を持つ情報もある。「そうしたストック情報の共有にはMicrosoft 365ベースの社内ポータルを活用しています」と島田氏。
「InSite(インサイト)という名称で当社が商品化している製品で、例えば、始業時にここにアクセスすることで“会社の現在”が分かるポータルになっています。当社では管理部門からのお知らせだけでなく、新入社員のインタビューや社員同士の座談会レポートなどもInSiteに投稿しています。もちろん、ポータルサイトとして社内で使用されている文書などを管理したり、チャットボットを使ったヘルプデスクの効率化を図る機能もあり、『社内で誰かが知っているはずだけど、それが誰だか分からない』といった情報でも素早く探し出すことができます」
「また、(在宅勤務形態では)自宅で一人で作業をしていると孤独を感じたり、社内でのつながりが希薄になりがちで、いわゆるエンゲージメントが下がりやすくなるため、会社への帰属意識を高めるような工夫が求められます。こうした問題を解決するには社員の経験やノウハウを自ら発信する、いわば“社内SNS的”なアプローチが有効です。当社が開発したengauge.works(エンゲージドットワークス)がまさにそれで、自分の属性や保有スキルを登録して社内に公開するだけでなく、ちょっとした気付きを投稿して、それに対して他の社員から『いいね』やコメントが付き、貢献度に応じてインセンティブが発生するといった流れができています。テレワークによるエンゲージメントの低下を懸念されている経営者の方は参考にしてほしいですね」
テレワークによって上司が部下の働きぶりを把握しづらい、チーム全体の動きが見えづらいといった問題もある。こうした課題に対してディスカバリーズは、Microsoft 365の利用時間を元に具体的な作業内容を可視化するIntelliReport(インテリレポート)を開発した。
「部下の仕事の状況は、同じオフィスにいるのであれば、例えば『最近残業が多いようだ』など肌で感じることもできますが、在宅勤務はそうした部分に気付きづらい環境になります。これに対して、上司が事細かく報告を求めるのはナンセンスですし、過度な干渉が部下のパフォーマンスを落としてしまう要因にもなりかねません。実際にどんな働き方をしているのかを具体的にデータで見ることができれば、無駄な会議を減らしたり、リソースを再配分するなど適切な改善策や処置をとることができます。テレワークでは、ある程度の裁量を与えながら、チーム全体の業務内容をきちんと把握できる仕組みが非常に重要です」
IntelliReportには、誰が誰と頻繁に連絡を取っているかなど、コミュニケーションネットワークを可視化する機能も持っており、個人だけでなく組織の改善にも役立つという。「当社の例になりますが、ある特定の人にコミュニケーションが集中していてその内容を調べたところ、その人の本来の業務の前段階にある問い合わせに応答するフローがなかったために、全ての問い合わせがその社員に集中してしまっていることが分かりました。このように、これまで職場の“雰囲気”のような感覚的に判断していたものを可視化することで、フローの見直しやリソースの再配置を適切に行えるのが利点です」
テレワークが当たり前の働き方として浸透する一方、経理や法務などの管理部門では、稟議・決裁、経費申請などいまだ紙ベースのワークフローが足かせになっているケースも少なくない。「はんこを押すためだけに出社」はその最たる例だろう。
ディスカバリーズでは、前述したInSiteにマイクロソフトのPower Automate(旧Microsoft Flow)とMicrosoft 365のFormsを組み込んで、各種ワークフローをオンライン化しているという。「もともと当社は『紙の業務をペーパーレス化する』のではなく、そもそも『紙を使う業務を作らない』という方針のため、オフィスにはコピー機もありません。もちろん、契約業務の一部で押印が必要なケースはあるので、現時点で完全にペーパーレスとはいきませんが、それはごくわずかです。一方、交通費や休暇の申請でさえ紙での提出が必要になってしまうと、非常に多くの従業員の時間が無駄になってしまいます。こうした部分は生産性を上げていくために改善すべきポイントでしょう」
中小企業がコロナ以前の働き方に後戻りせず、テレワークでさらに生産性を高め、成長を持続させるためには、経営層自らが率先してDXを推進する意志を表明することが何よりも大事だと島田氏は語る。
「これまでのワークスタイルや業務プロセスを大きく変えるとなると、やはり『慣れている方法がよい』と反発する力が働きます。実は“慣れていること”は無駄が多いのですが、問題はそこに気付けないことです。私がよく例に出すのは、未来から来た人が今の働き方を見れば、非常に非効率に映るということ。仮に電話とFAXしか使えなかったら今の仕事は成り立つでしょうか。経験しないと気付けないという前提に立って、経営者は常に最新のテクノロジーに触れること、そして例えば、Microsoft Power Platformに代表されるローコードツールを活用し、現場が自らアプリを開発して業務を改善していけるような、新しい体験ができる環境を整えるべきなのです」
なお、ディスカバリーズでは全社員に「ThinkPad X1 Carbon」または「Microsoft Surface」を支給し、どこでも機動性を持って仕事ができる環境を用意しているという。「ビジネス環境が目まぐるしく変化する今、ハードもソフトも常に最新のテクノロジーを活用することが大事です。逆に変化のスピードが速い今だからこそ、トップの意思がストレートに従業員へ伝わり、小回りがきく中小企業に大きなチャンスがあると思っています」
今回紹介したディスカバリーズの事例はまさに“テレワークの理想型”ともいえるものだが、それは企業のDX支援コンサル事業も手掛ける同社ならではともいえる。多くの中小企業で一足飛びに同じ環境を実現するのはなかなか難しいかもしれない。
そこで紹介したいのが、Lenovoの薄型軽量モバイルノートPC「ThinkPad X1 Carbon」と、Microsoftが中小企業向けに提供している「Microsoft リモートワーク スターター プラン」を組み合わせたパッケージだ。「まずは遠隔コミュニケーションを円滑にしたい」「Web会議を始めたい」といったテレワークの最初に一歩を踏み出すのにぴったりの内容になっている。
もちろん、今回の事例で紹介したように、社内の情報共有や従業員エンゲージメントを高めるためのMicrosoft 365 と連携したクラウドサービスも追加できる。将来的に業務プロセスをさらに効率化していきたいと考えているなら検討してみてはいかがだろうか。
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