「バケーション」ではないワーケーションを 妙高市が提供する、仕事に役立つワーケーションの形とは?観光でも遊びでもない、新たなワーケーション

昨今注目の「ワーケーション」だが、「観光」「遊び」というイメージも強く、興味はあってもなかなか手を出せない、という人も多いのではないだろうか。そんな中、新潟県妙高市が、「バケーション」ではないワーケーションを提供し始める。いったいどんなプログラムなのだろうか?

» 2020年10月23日 10時00分 公開
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 新型コロナを機にテレワークが広がり、さらには「ワーケーション」という働き方も注目を集め始めている。全国の自治体がワーケーションプログラムを提供し始める一方で、その多くは「観光」の延長線上にあり、「働く」「ビジネス」といった観点からは物足りないと感じるものも多い。

 そんな中、新潟県妙高市が提供し始めるワーケーションプログラムに注目が集まる。同市には国内でも珍しいアウトドアに特化した専門学校があり、専門家が作り上げたプログラムを体験できる。また、チームビルディングや心理的安全性など、これからの時代に生き生きと働くために必要な知識の専門家も携わっており、観光や遊びではない「本当に役に立つワーケーション」が体験できそうだ。

 そこで今回は、妙高市出身でNPO法人の理事長や妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会のワーケーションコーディネーターを務める傍ら、サイボウズでも働きリモートワークやパラレルワークの先駆者である竹内義晴氏に、ワーケーションに関する誤解や真に役立つワーケーションのヒント、そして妙高市が提供するプログラムなどについて話を聞いた。

竹内 義晴(たけうち よしはる):新潟県妙高市出身。特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。コミュニケーションの専門家、ビジネスコーチ、カウンセラー。エンジニア時代に職場の人間関係やコミュニケーションの問題で心が折れそうになった経験から、「どうすれば、楽しくはたらくビジネスパーソンが増えるのか」をテーマに、企業のコミュニケーション研修や講演、コーチング、カウンセリングに従事している。また、サイボウズ株式会社にて、ブランディングやマーケティングにも携わる。「パラレルワーク」や「リモートワーク」など、これからの仕事の在り方や働き方を実践している。

ワーケーションは「観光文脈」で語られてしまっている

 ワーケーション、すなわち“ワーク+バケーション=働きながら遊べる”というイメージを喚起させる、夢のような言葉が世の中に広がりつつある。しかし、周囲を見渡してみても、その醍醐味を享受しているようなビジネスパーソンは、あまり多くないように映る。企業に勤める人のほとんどが、上司や同僚、顧客の目を気にし、人事考課に影響が出るのではないかとおびえ、その一歩を踏み出せないでいる。そもそも、遊びと仕事を両立させる自信も持てない。

 ワーケーションへの本質的理解が進まない、そんな現状に対して、竹内氏は「今回のワーケーションが、“観光文脈”で語られているところに問題がある」と指摘する。

 「もともと、ワーケーションは地方を活性化する2つの手段、すなわち『観光』と『移住』のうち、前者の延長という文脈で捉えられていました。だから、旅行会社が用意するワーケーション向けのパッケージプランには、おいしそうな料理や楽しそうなアクティビティー、行ってみたい観光地情報が盛り込まれている。その充実したスケジュールの中、例えば『8時から9時がテレワーク体験の時間です』といわれたところで、それはもう仕事ではなく観光で良いじゃないかという話になってしまうのです」

 観光が主体となり、おまけのように仕事を加えるものだから、「業務時間内なのか外なのか」「何かあった際に労災が適用できるのか」「旅費交通費はどうなるのか」などさまざまな議論や問題が生じるという。「わざわざワーケーションと言われなくても、仕事への関心が高い人は旅先にでもPCを持参してメールチェックくらいはしますし、そもそも経営者やフリーランスといった、時間と場所の裁量がある人はすでに、そういった働き方を実践しています」と竹内氏は指摘する。

 一方で会社勤めをしている人だと、そうはいかない。表向きは良い顔をするかもしれないが、上司も同僚も顧客も、「遊びに行って仕事をする」というイメージのワーケーションに心から同意する人はほとんどいないだろう。観光目的でリゾート地へ行って、ホテルの部屋で少しだけ仕事をしているようでは、本質的なワーケーションとは呼べない。では、早くも形骸化しつつあるこの魅力的な働き方を、誰もが納得し、現実的なものに変え得る処方箋はないものだろうか。その問いに、竹内氏は明快に答えてくれる。

ワーケーションを分類してみると……

 「まずは、ワーケーションを企業と個人、仕事と休暇といった軸に沿って分類し、その位置付けを明確化する必要があります」(竹内氏)

 例えば“企業×仕事”という軸で考えると、ワーケーションは人材育成の機会として活用できる。昨今注目を集める地方で行う研修など、日常と非日常を行き来することで普段の日常にはない発見ができる「越境学習」の場として、ワーケーションは最適なのだという。また、“仕事×個人”をベースに考えるなら、仕事の集中という文脈で、ストレスを感じやすい在宅勤務の延長として、自分に合った環境のよい場所で仕事をすることでパフォーマンスをあげるという目的にもつながる。

 “企業×休暇”は、まさに社員の“癒し”として、「マインドフルネス」や「健康経営」「ウェルネス」などのキーワードで語られるエリアに合致する。残りのひと枠、“個人×休暇”の部分が、現在、一般的に言われるワーケーションに該当する。竹内氏は「このカテゴライズを企業も受け入れ先も理解してプログラムや環境を用意することで、きちんと仕事と休暇、ワークとバケーションが両立し、誰もが納得できる働き方が実現できる」と指摘する。そして、これらの条件が整っているのが、竹内氏が拠点を置く妙高市なのだという。

ワーケーションの4つの位置付け(提供:竹内氏)

妙高市ならではのワーケーションとは?

 「妙高市には、仕事に集中できる、そして社員が癒される豊かな自然環境があります。そして人材育成という意味で、地方と都市を行き来する『越境学習』は、現代の不確実性の高い社会を生き抜くために必要不可欠な力を養うともいわれており、実際に2拠点生活を実践している私自身、その効果を実感しています」

ドローンで撮影した、妙高市の風景(提供:妙高市)

 地方がワーケーションで都心部にある企業を誘致しようとしても、都市部とのギャップを際立たせる豊かな自然環境だけでは、他地域との差別化は難しい。しかし、妙高市には何よりも、竹内氏のように多様な働き方を実践する先駆者がいることが強みだ。

 また、妙高市には国内でも珍しいアウトドアに特化した専門学校があり、日本能率協会マネジメントセンターと共創した、リスク含みの自然環境の中で危険予知や危機管理能力を養える、人材育成プログラムもある。

10月15〜16日に実施したモニターツアーの様子(提供:妙高市)

 既に実施したモニターツアーでは、方位磁石を持って未整備の道を歩きながらチームビルディングや心理的安全性について、文字通り“身をもって”学ぶことができるプログラムを提供したという。分かれ道を前にしてどちらの道を選ぶかは、リーダーの一存だけでは決められない。メンバーがそれぞれ話し合い、納得した上で道を選ぶことを通して、リスク含みのビジネスシーンをチームで歩む術を学ぶことができるのだという。

 ただ、モニターツアーで提供したプログラムはあくまで一例で、こうした自然とともに、竹内氏の専門分野であるコミュニケーションやチーム作りのアドバイスを柔軟に取り入れながら、企業に沿ったプログラムを提供できることが妙高市の強みだ。「私が考えるワーケーションの定義は、“働き方と学び方の多様化”です。在宅だけではなく、自分にとって働きやすい環境で働くこと、そして会議室ではなく実務に役立つことを地域の中で学ぶということが、この妙高市で実現できます」と竹内氏は胸を張る。

モニターツアーではネイチャートレッキングのプログラムも実施した(提供:妙高市)

仕事を起点に、地域の「関係人口」を増やしたい

 働き方の多様化は、ビジネスパーソンが地方と都市部を行き来する中で、都心部の人が地方の企業でリモートワークするという、「地域副業」を生むこともできる。逆に、地方の企業で働く人が、都市部にある企業の仕事を引き受けることも可能になるだろう。こうした中で、単に観光で1回限りの接点を持つというだけでない、地方と都市部の人が持続的な関係性を結ぶ「関係人口」を増やしていくことが、妙高市として最終的に目指しているものなのだという。

 「今、言われているワーケーションは、あくまで観光の延長なので、単なる『交流人口』しか生まれません。仕事を通じてつながっていくと、頻繁に往来が生まれ、会話も生まれます。そこから自然に関係性が生まれ、その先に『今度地域の祭りがあるから一緒に行かないか』というような会話が生まれます。そうして緩やかな『関係人口』が出来上がっていくのです」と竹内氏は期待する。

 竹内氏の話を聞いていて、そもそも「ワーケーション」という言葉を用いること自体に疑問が湧いた。率直に質問をすると、次のように竹内氏は答えた。

 「確かに、バケーションという言葉があると、リラックスしに行くというようなイメージが強く残り、違和感を覚える人がいるのかもしれません。一部では、ワーケーションを『ワーク』+『バケーション』ではなく、『ワーク』+『エイション』と受け止める人も増えてきています。英語の動詞にエイション(=“ation”)を付けると、『Education』『Motivation』『Relaxation』など、さまざまな意味を付けることができますよね。ワーケーションを通して、働くということを個々人の多様性に合わせることで、さまざまな働き方、幸せの在り方を表現できる。そういう意味で、私もワーク+エイション=ワーケーションと考えるようにしています」

「遊び」じゃないワーケーションに興味が湧いたら、「ワーケーションEXPO」へ

 妙高市は、自身で提供する「本質的なワーケーション」を、多くの企業や個人にきちんと理解してもらうための機会として、長野県が2020年11月5〜6日の2日間にわたって開催を予定している「ワーケーションEXPO@信州」へのバーチャルブース出展を行う。本イベントは、ワーケーション自治体協議会、日本テレワーク協会と共催し、ワーケーションに関心のある企業と受入地域などをつなぐ場として注目が集まっている。バーチャルブースには妙高市以外にも、軽井沢町や和歌山県など34団体が出展予定だ。

ALT 文字列 妙高市を含め、34団体がバーチャルブースに出展する「ワーケーションEXPO@信州」(クリックでWebサイトへ移動します)

 「とにかく、私どもがやろうとしている取り組みは他とは違うもので、単なるワーケーションではないということをきちんと説明したいと思います」と竹内氏が話すように、妙高市が提供するワーケーションは、単に都心部でやっている仕事を郊外で行う、というものではない。企業や働く人にとって、そして地域にとっても本当に役に立つワーケーションが妙高市を起点に広がっていけば、ワーケーションはもっと身近なものになっていくはずだ。

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提供:新潟県妙高市
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2020年11月22日