新型コロナウイルスの感染拡大に対して、厚生労働省が発表した基本的対処方針である「3密」対策(密閉空間、密集場所、密接場面を避ける行動)は、ニューノーマルに対応する新しい生活様式として根付きつつある。
とはいえ、テレワークに移行するのが難しく、人との接触が多い業種・業態では、完全に3密を避けるのはなかなか難しい。現在でも医療機関や福祉施設等での集団感染が見受けられる状況だ。特に前者は医療提供体制そのものを危うくしかねない大きな問題でもある。
そこで注目したいのが、横浜市内にある診療所「小谷医院」の取り組みだ。同診療所では、診療待ちの患者であふれた待合室の混雑状況をITの活用により大幅に改善したという。医療機関だけでなく、飲食店やレジャー施設など、対面業務が前提の業種で参考になるはずだ。
横浜市内の住宅街にある小谷医院は、1986年の開院以来、34年にわたって地域を支えてきた診療所だ。内科と小児科があり、2018年に小谷前院長から現在の安崎弘晃院長に引き継いでいる。大学時代を横浜市(金沢区)で過ごした安崎氏にとって、同市は第二の地元。小谷前院長が掲げてきた「地元に根差した医療」という理想に深く共感し、事業承継を決めたという。
安崎氏が医院を引き継いだことでこれまでになかった取り組みも行われた。Webサイトを開設し、各種予防接種や健診開始の告知といった情報発信のチャンネルを広げたのもその1つ。また、平日は仕事で来院しづらい人のために土日も診療を受け付けるようにした。全ては地域の人に貢献したいという思いからだ。
その一方で、診療所の待合室が患者で混雑してしまうという問題も抱えていた。受付で診察券を出してもらい順番が来たタイミングで呼ぶという、小さな診療所では一般的な管理方式だが、待合室には診察待ちの患者だけでなく、会計待ちの人や患者に付き添う人も混在する。PC上の電子カルテを参照している安崎氏からは順番待ちの状況が把握できるものの、来院している人にとってはあとどれくらいで受診できるのか分かりづらい状況だった。実際、「あと何人で受診できるのか」と受付で問われることも多かったという。こうした状況から、看護師が本来の業務に集中できないという連鎖的な問題も生まれていた。
特に風邪やインフルエンザなどの感染症が広がりやすい冬場になると内科は非常に混雑する。前述の通り、同医院では日曜日も診療を行っているが、日によっては患者を3時間半も待合室に待たせてしまうことがあったという。「インフルエンザが流行しているときに長時間待合室にいるのは避けたいという声は以前からありました。そんなときに、整理券を取って待ち時間が分かり、自分が呼ばれるタイミングで再来院いただけるようになるといいなと思っていたんです」と安崎院長は語る。
そこで導入を検討したのが、オンラインによる順番受付やWebで待ち状況を公開できる受付管理アプリ「Airウェイト」だった。iPadとプリンタがあれば利用できる手軽さや使いやすさ、導入コストの低さが決め手になったという。
導入準備を行うなかで、折しも新型コロナウイルス感染症が世界的に流行。入口での消毒やフェースシールドの着用、ビニールカーテンの設置など徹底した対策は行っていたものの、病院ということもあり来院に不安を抱える方は少なくなかったという。安崎氏は「待合室に人がいるか確認される方もいました。極端な例だと、『一人でも待合室で待っている人がいるなら来院しない』というケースもありました」と当時を振り返る。
こうした状況のなか、2020年5月にAirウェイトの利用を開始。オンラインによる受診予約の受付や待ち状況の公開により待合室の混雑を大きく緩和できたという。「患者さんは自分の順番をスマホやPCでリアルタイムに確認できるので、先にオンラインで受付を済ませ、順番が近づいたら来院する、といったように時間をずらして来院いただくことができるようになりました」と安崎氏は語る。
Airウェイトの導入後に小谷医院のWebサイトは閲覧数が約2倍に伸び、現在は初診からオンラインで受付をしている人もいるそうだ。さらに待合室にも順番を知らせるディスプレイを設置。「自分が何番目にいるのか分かるというのは、順番を待つ際のストレス緩和になっている」と安崎院長は感じている。
大きな病院や新規開業のクリニックでは、受付管理のデジタル化は当たり前になりつつあるが、個人が経営する“昔ながらの診療所”ではなかなか導入が進んでいないのも事実。そうしたなか、低コストで簡単に導入できるAirウェイトは福音になりそうだ。安崎氏は「(Airウェイトの)基本設定だけでなく、診療所のホームページで待ち状況を公開するのも直感的に設定でき、私のような(IT)素人でもやろうと思えばけっこう簡単にできました」と語る。
内科が中心の小谷医院では高齢の患者も多く、直接来院して整理券を発行する方法と、オンラインによる受付を並行して行う“ハイブリッド型”の運用が理想だと安崎氏は考えている。小谷医院の2代目として、「便利で何でも相談できる、地域に根差した新しい形のかかりつけ医」を目指す。
「新型コロナのこともあって、より安心して便利に行ける、ということが備わった診療所であることが求められていると思います。病院じゃ聞けないこと、病院にかかっていいのかなと悩んでいる方々が気軽に相談しに来られる診療所にしていきたいと思っています」(安崎氏)
今回、待合室の混雑問題をAirウェイトで解決した小谷医院を紹介したが、列をなして待つということが社会的にNGとなりつつある現在、飲食店や小売店、宿泊施設など、対面接客を伴うさまざまな業態でこの事例は大きな参考になるだろう。
特に喫緊の課題としてニューノーマルへの対応を検討しつつも、コスト面や専任IT担当者の不在で受付管理のデジタル化を諦めてしまっている経営者の方は、是非Airウェイトに注目してほしい。
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提供:株式会社リクルートライフスタイル
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2020年11月23日