家業を継いだ老舗の魚屋で「バックオフィスDX」? 「出水田鮮魚」の挑戦

» 2020年11月27日 10時00分 公開
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 中小小売業では、消費者ニーズや購買プロセスの変化、慢性的な人手不足といったさまざまな経営課題に対応するため、ITを活用したデジタルシフトが求められている。事業継続のためにはもはや「待ったなし」という状況だ。

 鹿児島県で魚屋「出水田鮮魚」を営む株式会社イズミダもそんな中小企業の1つ。創業者の孫にあたる三代目の出水田一生氏が事業を継続し、業務改善の取り組みや事業拡大を進めるなかで“デジタル改革”を進めてきたという。同氏に話を聞いた。

魚屋「出水田鮮魚」の3代目として株式会社イズミダを継ぐ出水田一生氏

本当は魚屋を継ぎたくなかった3代目

 イズミダのルーツは戦後、自転車の荷台に魚を積んで販売を行っていた創業者の出水田潤一氏にさかのぼる。会社としての創業は1974、出水田物産(74年)から出水田鮮魚(81年)、そして現在のイズミダ(2018年)と商号を変更するなかで、息子の勇光氏、孫の一生氏へと引き継がれてきた。

 一生氏はもともと大学院で生物学の研究をしており、「正直なところ、魚屋を継ぎたくなかった」という。「食卓には必ず魚が並んでいて、子どものころは、肉が食べたいなといつも思っていました(笑)。今考えれば毎日本当においしい魚を食べさせてもらっていて、舌が覚えているというか、店を継いだ今はとても感謝していますが、当時は魚屋になる気持ちはありませんでした」

 地元から離れるように福岡の大学に進み、学問の道を選んだ一生氏に転機が訪れたのは10年ほど前。父親が病気に倒れ、働けない父親を手伝う形で大学を休学。当時、魚の目利きが必要な仕入れなどをする代わりに、主に経理などを担当したところ、実家の経営状態に驚いたという。

 「地元で長年商売していましたし、大学院まで行かせてもらって漠然と『もうかってるのかなー』くらいに思っていたのですが、売り上げをみたらめまいがするような状況で(笑)。父は自分の代で会社をたたむつもりだったようですが、商売をすること自体に興味が出て大学のビジネススクールに1年間通い、本格的に事業に関わるようになりました」

不安だらけのなかで取り組んだ改革の第一歩

 それまで大学で研究しかしてこなかった一生氏にとって魚屋は未知の領域。魚の種類も知らなければ捌いたこともない、目利きはもちろんできず、魚市場で父親の知り合いに会えば「大学院まで行って魚屋になるなんて」といわれる始末。父親やベテランスタッフに魚屋のイロハを教えてもらいながら「不安だらけの毎日」を過ごしていたという。

 しかし、魚屋としてはいわば半人前の一生氏でも「これまでと同じ『おいしい魚を売るだけ』のやり方では店は立ち行かなくなる」と感じていた。とはいえ、一生氏が会社を手伝うようになって最初に直面したのが「休みが全くない」こと。「最初はがむしゃらに働いて、空いている時間で魚の勉強をしたり、人に会ったりと、とにかく自分の時間がなかった」と一生氏は振り返る。なかでも多くの時間を取られていたのが経理などの事務作業だったという。

 会社を存続させるために新しいことを始める必要性は理解していても、そのために割く時間がない――そこで一生氏がまず手を付けたのが、会計業務を効率化して時間を確保することだった。

クラウド会計の導入で「休みの日に会社に行くことがなくなった」

 株式会社イズミダの前身である「出水田鮮魚」時代、税理士とのやりとりは全て紙ベースだったという。「日々の発注書も請求書も全部紙。現場が忙しいとそちらに手を取られて、山のようにたまった業務を休日にこなす、というのが当たり前でした。家業を継ぐために実家に戻ってExcelで管理するようにはしましたが、決算前は山のように積もった領収書を仕分けして、転記してと、自分の時間は全くない状況でした」と一生氏は話す。

マネーフォワード クラウドを操作している一生氏

 その状況を一変させたのがクラウド会計ソフト「マネーフォワード クラウド」だ。「いろいろな事業者の方に(マネーフォワード クラウドの)話は聞いていて、便利そうだなとは思っていました。18年に株式会社イズミダになったタイミングで税理士を変える際にクラウド会計ソフトを使ってみたいと相談しました。税理士の方も初めてだったのですが、一カ月の無償トライアル版を実際に使ってみて『これなら大丈夫そうだね』と、導入を決めました」

 現在、マネーフォワード クラウドを使って日々の経費精算や請求書の処理をしている一生氏。銀行口座やSquare POSレジの決済とも連携させている。「経費精算は従業員がスマホで撮影した登録データを、手が空いた時間にパソコンでぽんぽんと仕分けしていくだけなので、深夜や休日にやることはなくなりました。Excelで作成していた請求書もクラウドに移行し、印鑑を押したりPDF化したりといった手間もありません。そのぶん、新しい事業のアイデアを考えたりと、本来やるべきことに割ける時間が増えたのは大きいです。会計処理を手伝ってもらっていた母も『最近休みの日に会社に行くことがなくなったわ』と言ってますね(笑)」

会計業務の効率化が新規事業創出のための原動力に

 こうしてマネーフォワード クラウドの導入により時間を確保した一生氏は、事業を成長させるべくさまざまな取り組みを行っていった。1つはWeb販売や百貨店のギフト商品等での販路拡大。それまでイズミダでは干物などの加工品は取り扱ってこなかったが、全国に向けたネット販売のために日持ちのしやすい新商品として一生氏が開発。現在は無印良品の「諸国良品」(地方物産をセレクトし産地直送で販売する通販サイト)にも並んでいる。鹿児島産の厳選した魚を使用した「季節の干物セット」がイズミダの人気商品だ。

Web販売やギフト用の新商品として開発した自慢の干物

 また、車庫として使っていたガレージを改装し、その日の旬な魚や刺身、総菜などを並べる店舗もオープン。父の代では、売り上げの100%が地元の病院や学校などに向けた卸売になっていたが、その比率を半分に下げ、その穴を埋める形で加工品のネット販売や直接販売で売り上げを立てている。

ガレージを改装し、新店舗をオープン

 「古くから(卸しで)付き合いのある方たちはとても大切なお客さまです。ただ、それだけでは縮小していくだけで、ビジネスが広がっていかないのも事実です。若い世代の“魚離れ”が進んでいって、もしかしたら『生の魚を見たことがない』という子どももいるかもしれません。もちろん、魚のコアバリュー、根本的な魅力は変わりません。ただ、その伝え方や食べさせ方は変えていく必要があります」

 「こうした変化のなかで魚の魅力を伝えるにはどうすればいいかを考えたとき、1つはこれまでイズミダになかった加工品で販路を広げ、多くのお客さまに知っていただくこと、もう1つは地域の方の食卓に並ぶ魚を直接提供すること、この2つが必要だと考えました。とくに店舗のオープンは、近所の人を呼んで魚をふるまっていた“よかもん好き”(良いもの好き)の祖父の姿が心のどこかに残っていて、売り手としても、魚を食べて喜んでくれるお客さまを直接見たいという気持ちがありました」

 ただし、実家に戻って会社を継ぐと言いながら毎日PCの画面に向かっている一生氏に、父親は最初、大きく反発していたという。

 「そもそも会社を継がせる気がなかったというのもあるかもしれません。Webサイトを作ったり財務データを見たりなんて、父からすれば何をしているか分からなかったでしょうし、外に出かけたと思ったら新商品の開発や干物の菌検査を行うために水産試験場に通っていたり(笑)。以前は『魚屋なのに市場で魚を見ないとは何事だ』と叱られましたが、今では理解してくれています」

新しい魚屋を目指して

 マネーフォワード クラウドで会計業務の手間を大幅に削減し、事業の多角化に乗り出したイズミダ。現在は、マネーフォワード クラウドを使って勤怠管理や給与計算との連携も検討しているという。その背景には“新しい魚屋”像がある。

 「一般的に魚屋と聞くと、まだ夜が明ける前に魚市場にセリに行って、午前中に魚を捌いて、といったイメージがあるかと思います。ただ、鹿屋(かのや)の魚市場はちょっと特殊で、大隅半島から港へ魚が集まってくる昼前に市場が立つんです。だから、イズミダで働く従業員のほとんどは午前9時半出社です。そこから発注書を確認して明日の仕込みや発送準備をしつつ、午前11時から午後6時まで店舗用の刺身や総菜を作って店に並べています。従業員にとっても、「きつい・苦しい、昔ながらの魚屋」ではなく、働きやすい環境を目指していて、労務管理の面でもデジタルシフトをしていければと考えています」(一生氏)

 現在イズミダでは、テークアウト需要が高まっているのを受け、若い従業員のアイデアで、海鮮丼をはじめ、魚フライを挟んだパンなどユニークなお弁当の販売も行っているという。また、地元の高校で商品開発の授業を行ったり、若手経営者が地元の高校を回り、高校生に対して授業を行う取り組みも企画している。

 「自分もそうでしたが、若い世代は鹿屋という土地を出て都会に目を向ける人たちが多い。でも、外に目を向けなくても面白い会社があるんだ、と思ってくれればうれしいです。魚の魅力を伝えることを通じて、いろいろなことにチャンレンジしたいと思っています」(一生氏)

 日々の業務に追われ、リソース不足で悩んでいる中小の経営者は「まずは会計業務の効率化を考えるべき」と強調する一生氏。「時間はどうしたって有限です。本来自分がやるべきこと、自分のやりたいことに割く時間を確保することは、事業を継続し、発展させていくための源泉です。クラウド会計ソフトの活用はその第一歩になると思います」

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