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» 2021年02月15日 10時00分 公開

コロナ禍のコミュニケーションを成功させたサンリオピューロランドのチームマネジメント他部署を巻き込む「ながらコミュニケーション」

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 コロナ禍にいち早く対応し、オンラインによる新規事業を次々と打ち出したサンリオピューロランド。学校への一斉休校要請や1回目の緊急事態宣言以前の2020年2月の段階で、東京・多摩市の屋内型テーマパーク「サンリオピューロランド」の休館を決断。パレードやショーができなくなった中で、次々とオンラインでの新規事業を打ち出すとともに、SNSで積極的な発信をしてファンを拡大した。

 10月から11月にかけて実施した30周年パレードのためのクラウドファンディング(CF)では、目標額を超える1700万円以上を集めている。

phot サンリオピューロランドは休館を決断した一方、パレードやショーができなくなった中で、次々とオンラインでの新規事業を打ち出し、SNSでも積極的な発信をしてファンを拡大した(以下写真は同社提供)

 コロナ禍で新しいことに取り組めた背景には、サンリオピューロランドのマーケティング統括責任者という立場で、社内の異なる部署を巻き込んでチームを立ち上げた志賀優子さんの存在がある。

 志賀さんはサンリオ本社のマーケティング本部のシニアマネージャーと、ピューロランドを運営するサンリオエンターテイメントのマーケティング担当を兼務。社内の若手を抜てきして新規事業のチームを構築した。緊急事態といえる状況の中で、ミドルマネージャーとして社内でどのようにコミュニケーションを図り、新規事業を実現したのかを聞いた。

phot 志賀優子(しが・ゆうこ)サンリオマーケティング本部PR調査分析課シニアマネージャー、サンリオエンターテイメント営業部マーケティング課。デザインプロダクションでディレクター経験を積み、2007年にWebインテグレーターの会社に転職。企業のデジタルプランニング、ディレクションに従事。16年からサンリオエンターテイメントのマーケティング課において広報マーケティング、プロモーショングループを統括。18年4月からサンリオのマーケティング本部でPRと調査分析に転籍し、兼務でピューロランドのマーケティングを担当している

部長クラスの緊急会議に出席し、自ら提言

 「会長がピューロランドを閉めると言っている」――。志賀氏が部長から連絡を受けたのは、2月19日水曜日の午後10時頃。新型コロナウイルス感染症の国内の患者はまだ100人未満だったものの、サンリオの辻信太郎会長はスタッフの安全や安心が大事として、サンリオピューロランドの休館を決断し、社内のマネージャーに連絡が入った。

 しかし、ピューロランドの休館は1990年の開館以来、初めてのことで、どのように進めればいいのか誰にも分からなかった。連絡が入ってすぐに志賀氏は、PR会社のリスク管理チームに集まってほしいと要請。休館のタイミングも決まっていなかったので、上長の取締役部長とすぐに話し合った。

 「週末に3連休を控えていたので、最初は連休明けに休館するという話でした。確かに収益面ではその方がいいのかもしれませんが、たくさん人が来る時期だからこそ早めに閉める必要があるのではとお伝えしました。社長も悩まれたようですが、その週の土曜日、22日から閉めることを決断して、そのための準備を任されました」

 志賀氏は早速、臨時休館のプレスリリースのたたきを作成。翌日木曜日の早朝に部長クラスやリスク管理の担当者が集まる緊急会議が開かれると聞き、上司に願い出る形で出席した。

 「私は本来参加する立場ではありませんが、決まったことを後からひっくり返すのは大変なので、その場で意見を伝えました。クラスターが起きるリスクを回避するためには臨時休館するしかなく、そのために何を優先して進めていくのかを思い切って話しました」

臨時休館によって変化したコミュニケーション

 迅速な準備によって金曜日の昼には発表し、予定通り土曜日には臨時休館に入った。しばらくして社員にもリモートワークの導入が始まる。しかし、同社ではリモートワークはそれまで全く根付いていなかった。環境が整わずに出社している社員も多く、リモート会議にも慣れずに、最初は業務がなかなか進まなかったという。

 「3月末ぐらいまでは社内でもかなりの温度差がありました。『リモートワークといっても休んでいるのだろう』と思っていた人もおそらくいたのではないでしょうか。リモート会議も参加者が一斉に話すので、何を言っているのか分からない状態で、どうすれば話をまとめられるのかに気を使うようになりました」

 状況を改善するため、トップダウンの指示を待つのではなく、ミドルマネージャーである志賀氏が政府発表の資料などをまとめて、必要な情報を上司に伝える役目を担った。

 あわせて、志賀氏自身もコミュニケーションの方法を変えた。それまではメールだけを使っていたが、カメラをオンにしてビデオ会議を実施するほか、LINEや電話も多用するようになったという。

 「メンバーから『家に一人でいるので誰とも話さない』と聞いて、メンバーのメンタル面を心配したのがきっかけですね。ビデオ会議やLINEのビデオ通話で顔を見ると安心するようだったので、いろいろな会議でもなるべく顔を出して、生の声を聞くように切り替えました。

 会社全体はコロナからお客さまと社員を守る考えで一致していましたので、良い方向に変わっていきました。みんなが同じ情報を得られるようになったことで、部門長や役員には情報をもとに判断してもらえて、半年経(た)ってリモートワークも問題なくできるようになりました。社内のコミュニケーションは180度、がらっと変わったと思います」

phot 公式Twitterでリモート会議で使えるバーチャル背景を配布
phot キャラクターとリモート会議しているようなバーチャル背景も配布

配信した動画が1週間で60万回再生

 サンリオピューロランドは7月まで4カ月間休館することになるが、何らかの形で収益を得なければならなかった。サンリオエンターテイメントの小巻亜矢社長から「どんどんチャレンジしていきましょう」と、方法も含めて任された志賀氏は、他部署も巻き込むことを提案した。

 「私だけでは無理ですと伝えました。いろいろな部署を巻き込んで、全社でプロジェクト化しないと、新しいことは進められないと思ったからです。それで仲間を集めて、事業部までにはならないものの、チームを作って新規事業を動かし始めました」

 新規事業はそれまでの集客から、オンラインへとシフトした。3月の時点からオンラインを推進するチーム、SDGs(持続可能な開発目標)を推進するチームなどができて、オンラインショップも立ち上がった。

 大きな変化が生まれたのは、SNSでのコミュニケーションだった。コロナの影響で臨時休館している中で、あえて積極的に情報を発信する道を選んだ。

 「東日本大震災のときも含めて、これまでは有事の際にはSNSを自粛することが多かったので、今回も自粛すべきかどうかを相談していました。そのときに小巻社長から『みんなキャラクターに癒されているから、どんどん投稿したほうがいい』と言われました。

 当社のキャラクターはご存じの通り、かわいいじゃないですか(笑)。ほっこりできる投稿なら共感してもらえるかもしれないと思い、この状況をキャラクターも知っているけど、いつか会える日が来るから希望を持とうね、という気持ちを込めて発信しました。キャラクターを扱う会社として最大限できることを考えましたね」

 大きな反響があったのは3月下旬にYouTubeに配信した、休館中の館内の様子を公開した動画『休んでたって…』だった。がらんとした館内の様子から始まり、続いて掃除をするスタッフや、ショーの練習をするキャラクターたちの姿が映し出される。再生回数は1日で20万回を超え、1週間で60万回を突破した。

phot 3月下旬にYouTubeに配信した、休館中の館内の様子を公開した動画『休んでたって・・・ここにいるよ。』
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 「これだけの反響があったのは初めてでした。見ていただいたみなさんからは『我慢していればいつか会えるよね』『いつか会いにいきます』とコメントをいただきました。『泣けた』というコメントもありました。これは忘れられないですね。コロナ禍ではWebやSNSの発信がどう伝わるのかを、以前よりもすごく考えるようになりました」

 コロナ禍でのSNSの発信は、大企業でも炎上することがある。ピューロランドではSNSの発信に際しては、細やかなチェック体制を構築しているという。

 「投稿するものは『何月何日にこの内容でアップします』と伝えて、さまざまな部署と共有しています。テーマパークが出すべき内容なのかを、広報担当者以外の目線で関連部署にチェックしてもらうのが目的です。不愉快な投稿をしないのはもちろん、情報に間違いがないかをチェックする体制も作っています。著作権を預かる会社でもあるので、チェック機能は会社にも社員にも備わっていますね。

 当社の場合は、星野源さんの動画『うちで踊ろう』とコラボさせていただきました。世の中の時流に乗るときは気を使って、何度も確認して、いろいろな人の意見を聞いた上で発信しています」

30周年のCFで1700万円を集める

 休館していた期間のSNSの発信によって、サンリオピューロランドのインスタグラムのフォロワー数は20年12月末時点で9.8万と、2019年7月の約5万人からほぼ倍増した。Twitterのフォロワーも臨時休館から約3万増やすことができている。このフォロワー数増加の成果ともいえるものが、30周年イベントの支援を募ったクラウドファンディング(CF)の成功だった。

 サンリオのテーマパークは、屋内型のピューロランドが1990年12月に、屋外型のハーモニーランドが91年4月に大分県日出町(ひじまち)にオープンしている。CFは、ハーモニーランドの担当者からの相談から始まったという。

phot サンリオのテーマパーク「ハーモニーランド」

 「30周年で何かやりたくて、お金がないのでCFをやろうと思っているけどどう思いますか、と相談を受けました。せっかくなら、ピューロランドと一緒にやった方が金額も大きく調達できるかもしれないと話をしたのが5月でした。

 大枠のプランを小巻社長に見せたのですが、30周年のイベントの実施を検討している時期でもあったので、その時点では明確な許可が出ませんでした。それが2カ月後くらいに『どんどんやっていいよ』といわれて、プロジェクトがスタートしました」

 小巻社長からは進め方についての指示があったものの、主要な部分は現場のメンバーと決めていった。計画したのは30周年のパレード。コロナの影響で予算は大きく絞られていたので、パレードの衣装も作れない状況だった。そこで、現場担当者から、あとどれぐらいの予算があれば実現できるかヒアリングし、目標額を1500万円に設定した。

 「社内では正直なところ、達成できないと思われていました。それでも、3年前にイベントのPRのためにCFで200万円を調達した経験があったので、その知見を生かしました。1500万円の目標数字は、これくらいの人数のファンがいるので、1人がこれくらいは払ってくれるだろうと計算して出しています。コロナ禍で前回よりは集まるだろうと思っていたものの、目標を達成できるかどうかまでは確信が持てませんでした」

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 CFの締め切り3日前の時点で、集まった金額は1300万円。目標額には足りていなかった。しかし、ここから予想だにしない展開が起きる。

 「ファンの方同士で『そろそろCFが終わっちゃうよ。みんなやった?』という声かけがTwitter上で始まりました。その声かけが広がって、翌日くらいには一気に1500万円を達成して、最終的には1700万円を超えました。ファンの方に支えてもらっている会社だと実感しましたね。胸が熱くなったと話すスタッフもいました。

 CFが成功したのは、臨時休館中にSNSの取り組みをしていたことも大きかったと思います。前回は200人くらいだった支援者が、2100人を超えるまでに増えたことがうれしかったです」

他部署を巻き込む「ながらコミュニケーション」

 コロナ禍で始めたオンラインでの新規事業や、30周年パレードのCF成功の陰には、他部署も巻き込みながらチームを構築した志賀氏によるマネジメントがある。

 マーケティングを統括する志賀氏は、いわばミドルマネージャーの立場。社長や役員、部長クラスなどの上司と現場をつなぐために、上司の指示はアレンジして現場に伝えているという。

 「物事を進めるときに、『社長が言っているから』と言うのは一番良くないと思っています。現場からすれば、絶対に社長が言う通りにしなければならないと思ってしまいますよね。

 もちろん社長は当然やった方が良いことを話していますが、それは一旦横に置きます。やり方は担当である私たちがアレンジして、メンバーには『こういうふうにやっていかない? どう思う?』と違う言い方で伝えます。メンバーからも意見を出してもらって、よりよい方法を探りながら進めていますね」

 また、新たなチームを作るときには、志賀氏がメンバーをいろいろな部署から選んで、それぞれの上司にチームへの参加の許可をお願いする。上司同士で調整してもらって、必要であれば人事にまで志賀氏が話をすることもある。しかし、そのためには普段から社員の考えなどを把握しておく必要があるはずだ。その秘訣を聞くと、志賀氏の答えは「歩きながらのコミュニケーション」だった。

 「私は中途入社して5年目です。ピューロランドは中途入社の社員は全体の1割いるかどうかなので、顔を覚えてもらうためにいろいろな部署をずっと歩きまわっています。本当に用事はないんですけど、部屋が分かれている部署にふらっと入って、一人ずつ全員に声をかけます。『髪切った?』とか、『メガネ変えた?』とか。あやしい人みたいな感じですよね(笑)。

 そうすると、向こうから『相談したいことがある』と言われたり、私たちの取り組みに『実はこう思っている』と意見を話してくれたりすることがあります。いろいろな話を聞くことで、その人がやりたいことも分かってきます。5年かけて“ながらコミュニケーション”をしてきたことが、生きているのかもしれません。暇さえあればうろうろして、ピューロランドの中を1日1万5000歩以上歩いています」

 オンラインを推進するチームを作る際には、趣味でYouTuberをしている営業の担当者がいると聞き、YouTubeの担当者になってもらう。その部署の部長からしてみれば「何でこのメンバーを」と思う人を抜てきすることもある。他部署を巻き込むときには、持っている情報や直接聞いた話から、その人に適した仕事を割り振るように意識しているという。

phot リニューアルしたYouTubeチャンネルではオンラインメンバーがアイデアを出し合ってコンテンツを運営している

 「今はもう昭和ではなくて、令和の時代です。『これをやれ』と上司から言われても、やれないし、やらないのではないでしょうか。私も一方的に言われただけではやりたくないですね。前職のときにも、お互いの人となりを理解できていないまま進めたプロジェクトでは、あまり良いものが生まれない経験をしました。

 この仕事を喜んでやってくれそうなメンバーや、このプロジェクトを一緒にできるメンバーを見つけることは、他部署を巻き込むためには大事なことです。うろうろして話しかけるだけでも、一緒に働く仲間になれますし、あとで何かいいことにつながるかもしれない。だから、とにかくコミュニケーションをとることが私の役目だと思っています」

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