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» 2021年03月15日 10時00分 公開

「PPAP問題」の本質とは? 業務改善のプロに聞く、企業の生存戦略に必要なもの

[PR/ITmedia]
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 取引先とのファイル共有にパスワード付きZIPファイルを送り、パスワードを別送する――いわゆるPPAP(Password付きZIPファイルを送ります、Passwordを送ります、An号化、Protocol)に対し、平井デジタル改革担当相が中央省庁での廃止に言及したことで、企業においてもPPAPの廃止に向けた議論が活発化している。

 PPAPはセキュリティ対策としての有効性に疑問が残る一方で、多くの企業では「セキュリティポリシーだから(しょうがない)」という言葉を盾に行われてきた。しかし、こうした古い慣習は「断固やめるべき」と訴えるのが、業務改善のプロフェッショナルとして知られるあまねキャリア工房代表の沢渡あまね氏だ。

 同氏はPPAPに代表される、非効率的で古い慣習を続けることはセキュリティリスク以上の問題をはらんでいると警鐘を鳴らす。2019年には著書『仕事ごっこ〜その“あたりまえ”、いまどき必要ですか?』(技術評論社)の中で、童話形式で「PPAP」の非合理性を訴えている(第7話「白ヤギさんと黒ヤギさん、ふたたび 〜コミュニケーションにいちいち水を差すPPAP」)。

 PPAPの奥にある本質とはなにか。コミュニケーションとコラボレーションが必要な相手が増える一方で、ビジネス環境が急速に変化し、不確実性が増す時代において、企業が生き残るために何をすべきか。同氏に話を聞いた。

あまねキャリア工房代表の沢渡あまね氏

“残念な企業”という烙印を押されてしまう?

 PPAPを廃止するべき具体的な理由は大きく2つあるという。1つはセキュリティリスクだ。「この手の議論で多くのセキュリティ専門家が指摘している通り、同一経路でパスワードを送るPPAPがかえってリスクを高めてしまうケースもあります。例えば、“emotet”のような、PPAPを狙った標的型攻撃も増えてきました。また、メールを誤送信した際のリスクヘッジとしても極めて限定的といえます。ZIPファイルを送る側にとっては、自社のルールだから仕方がないといっても、受け手には関係のないことです。仮にPPAPの脆弱性を突いた攻撃によって、取引先を“悪意のない加害者”にしてしまえば信用問題に関わりますし、そもそも自社のルールで取引先の行動を制限するのは、相手から残念な企業という烙印を押されかねません」(沢渡氏)

 そしてPPAPのもう1つの問題が業務の効率を下げること。「多くの人が経験していると思いますが、この仕組みは受け手の環境を選ぶということです。メールでパスワード付きZIPファイルを受信したのがスマートフォンなら、ファイルを閲覧することができず、わざわざPCを立ち上げなくてはなりませんし、移動中であればすぐに確認できません。受け手の時間を奪う、行動を阻害する行為といえます。単に効率が下がるだけでなく、ITを活用してスピーディーに仕事をしたいと考える人や、移動や出張が多くて忙しい人、多拠点人材などが活躍する邪魔をしたり、従業員のエンゲージメントを下げたりする要因にもなりえます。いまだPPAPのような古い仕組みにとらわれていることに『変われない会社』『古い組織』というイメージを抱き、そのことを顧客や取引先に指摘されれば『自分の会社が情けない』とさえ感じるでしょう」(沢渡氏)

PPAPの問題

 しかし、それ以上に深刻なのは「コラボレーションを阻害すること」にあるという。これはPPAPに限らず、“古い組織”から脱却できない多くの企業に共通する問題だと沢渡氏は指摘する。

問題の本質はコラボレーションの阻害 情シスはどう向き合うか

 テクノロジーの急速な発達に伴い、われわれを取り巻く環境が激変し、さまざまな市場で既存のビジネスモデルが崩壊して“新たな勝者”にとって代わられる――将来の予測が困難な「VUCA」と呼ばれる現代において、企業組織の生き残り戦略に最も必要なのはコラボレーションとイノベーションにあると沢渡氏は説く。

 「これまで日本の高度経済成長を支えていた組織の在り方(旧製造業モデル)は統制管理型でした。これはゴールが明確であれば非常に強い組織として機能します。しかし、世の中に答えがない、何が正しいのか分からない、不確実性が増す時代においては、経営者が答えをもっていないこともあります。そこで勝つためには従来のトップダウン型ではなく、組織内の人たち、組織外の人たち、取引先だけでなく場合によっては競合他社も含めて、課題を乗り越えるヒントや能力を持つ人たちと素早くつながり、コミュニケーションやコラボレーションとトライ&エラーを繰り返しながら新たな価値を創出していく必要があります。若者が集まり、まさにコラボレーションしながらスケールアウトしていったGAFAのような企業が分かりやすい例でしょう。日本の企業はこうした大きなパラダイムシフトの過渡期にあり、コラボレーションを加速するオープン型組織へアップデートしなくてはなりません」(沢渡氏)

これからの時代のマネジメント

 こうした視点でみると、PPAPはそもそもメールというレガシーになりつつある通信手段を使っていることにも問題がある。「古いから悪いというわけではありませんが、メールはもはや20年以上前に生まれた仕組みです。最新のビジネスチャットツールやBoxなどを使ってセキュアに情報共有やコラボレーションをしている企業とはコミュニケーションのスピードに大きな差があり、これはつまり企業競争力の格差になります。メールを書くという行為のハードルの高さが、気軽な気付きや『ヒヤリ、ハット』の共有を妨げることに加え、『その人のメールボックスにしかない』という、情報の属人化も生みます。ストック情報としてチーム全体に共有され、いつでも素早く検索でき、コラボレーションを加速する仕組みに変える必要があるのです。PPAPの廃止はそのきっかけにすぎず、コラボレーションを阻害するあらゆる仕組みに目を向けるべきです」(沢渡氏)

 例えば、沢渡氏が知るある食品工場では、これまで検品状況などの報告を紙で行っていたが、iPadとクラウドを連携させたシステムに刷新することで、全ての工程をリアルタイムに俯瞰して把握できるようになり、オペレーション全体での効率化が進んだという。また、ある航空会社の例では、トランシーバーで連絡を取り合っていた機体整備の現場にiPadを導入。これによって、口頭のやりとりによる「言った」「言わない」のようなトラブルが減ったのはもちろん、フロー情報(その場限りの情報)として一対一で行われていたコミュニケーションを俯瞰して把握できるようになり、さらにそのプロセス自体を人材育成や業務改善に生かすためのストック情報として活用できるようになったという。コミュニケーションと情報共有の仕組みをアップデートすることで新しい価値を生んだ好例といえるだろう。

 とはいえ、従来のやり方を抜本的に変えるのは、それが長く続く慣習であればあるほど難しい。そこで大きな役割を果たすのが情報システム部門だと沢渡氏は話す。「これまで多くの企業の業務改善に携わって来ましたが、変化を生むために重要なのは『(これまでのやり方が)慣れた不便だったんだ』と気付かせること。そのために情シスは、自らが率先して新しいツールを体験し、そこで気付いた“慣れた不便”を放置しないことです。その上で、セキュリティと向き合いながら、いかにコラボレーションしやすい環境を整えていくか。新たなツールを通じて社内に成長体験・快感体験を作っていくかが重要です。IT部門が新しいテクノロジーや新しいサービスを使いこなしてコラボすること、その自分の体験が企業の競争力につながるのだということを意識してほしいと思います」(沢渡氏)

組織をコラボレーション型に変える3つの問いかけ

 ただ、慣れ親しんだやり方、当たり前だと思っている仕組みの“不便さ”に気付くのは難しい。そこで、競争力の高い企業に生まれ変わるためのヒントを得るきっかけとして、沢渡氏が提言するのが「半径5メートルの身近なところから始められる3つの問いかけ」だ。

 1つ目は「コラボレーションを阻害する慣習はないか」。例えば、取引先との契約手続きの審査に時間がかかる、押印された書類を書留で送る必要がある、少額の見積もりでも同様の手続きを踏む、といった無駄があれば、これらはITの利活用で代替していくべきだ。

 2つ目は「相手の時間を奪っていないか」。自社の手続きに合わせて取引先にも紙の書類の提出を求めれば、その手間を相手に押し付けることになる。例えば、PPAPを効率化するために、メールの添付ファイルを自動で圧縮し、自動でパスワードを付与して相手に送信するITシステムを導入している企業もあるが、送り手だけがラクをして受け手の手間は変わらない。沢渡氏は「相手のことを考えない効率の追求は、身勝手な行為として見直すべき」と話す。

 3つ目は「社外の同じ職種、競合他社にいる同じ職種の人たちがどんなやり方で業務を行っているかを知っているか」。特にいわゆるバックオフィス(管理部門)は、従来のやり方やルールを踏襲する、あるいは管理業務や事務手続きを増やす傾向にあり、結果、事業部門がスピーディーに外とコラボレーションできない。それが企業競争力の格差を生む土壌になっていると沢渡氏は指摘する。

 「事業部門が素早くコラボレーションを行い、価値を生み出していくためには、全社に共通する業務を担うバックオフィスほどクラウドを活用してオープンになっていく必要があります。例えば、経理や法務のワークフローをどこでも回すことができるようにする、社内外との情報共有基盤を整え、事業部門が自由に、滑らかに動ける環境を作っていくことは、優先すべき経営課題です。企業競争力の土台になるバックオフィスが井の中の蛙ではだめなのです」(沢渡氏)

事業部門とバックオフィスの目指す姿

デジタルワークのための7つの神器

 それでは具体的に何から手を付けるべきだろうか。沢渡氏は「社内の共有業務をデジタル化していくこと」がはじめの一歩になると話す。特にコラボレーションの視点では、ビジネスチャットやオンラインミーティングツールに加えて、セキュアでスピーディーに情報を共有し、その後の活用までドキュメントのライフサイクル全般をカバーするBoxのような仕組みが重要だという。

 「もちろん、既存のやり方が全てダメとは言いません。コストの関係で優先するツールも変わるでしょう。ただ、コラボレーションの視点で従来の業務をデジタルシフトしていくこと、これが最初のステップになると思います」

デジタルワーク7つの神器

 最後に沢渡氏は、「さまざまなテクノロジーを活用して、いわばイケてる会社、イケてる組織にアップデートすることは、企業のブランド価値を上げる行為そのものだ」と断言する。

 「ブランディングは自社のファンを作る取り組み、いわば“選ばれる力”を高めることです。そして新しいテクノロジーによってコラボレーションを加速し、新しい価値を創出できる企業になれば、『この会社に入社したい』『この会社と一緒に仕事をしたい』『この会社に投資したい』『この会社の商品やサービスを利用したい』と考えるファンを増やすことにつながります。また、社員にとっても『この会社で働いていてよかった』と従業員エンゲージメントに好影響を与えるでしょう。つまり、企業ブランディングは各部門が抱えている業務課題を全方位で解決できるのです。そのためにも、まずは社内の共通業務や、社内外を含めたコミュニケーション・コラボレーションを円滑化するBoxのようなITツールを活用し、強い企業・組織に生まれ変わるための立体的な議論をしていってほしいと思います」(沢渡氏)

沢渡氏オンライントークライブ、4月9日(金)開催決定!

「仕事の景色を変える!リーダーが考えるべき新時代のコラボレーション」

 時が進むにつれ、組織の在り方やコラボレーションの形も同様に変化することは歴史が物語っています。しかしこの1年で起きたことは過去の変化のスピードの比ではありません。MicrosoftのCEOサテア・ナデラ氏も「2カ月間で2年分のデジタルトランスフォーメーショが進んだ」という程の変化が現在も起きています。政府のデジタル庁創設、脱PPAP宣言もその一端といえるかもしれません。

 企業や組織のリーダーがこの変化を正確に理解し、自分自身やチームを適応させ、継続成長するためのキーポイントは何か? 歯に衣着せぬ、かつ何から始めるかといった具体策についてもディスカッションします。

・日時:2021年4月9日(金) 13:30〜14:45

・会場:オンライン(Zoomウェビナー)

・参加費:無料(事前登録制)

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