DXの第一歩は「開発の手綱を自ら握ること」 内製化によって競争優位性を築く、日本マイクロソフトの「Cloud Native Dojo」

» 2021年04月30日 10時00分 公開
[ITmedia]
PR

 「2025年までに、企業が抱える複雑化・ブラックボックス化した既存のITシステムを刷新し、人材・資金を『維持・保守業務』から『新たなデジタル技術の活用』にシフトさせたい」──経済産業省がそんなシナリオを描いたのは18年のことだ。それから2年以上経過したが、経産省による「DX レポート 2 中間取りまとめ」によれば、9割以上の企業が「DXに全く取り組めていないか、散発的な実施にとどまっている」と回答。まだまだ道半ばといえる状況だ。

 DXが進まない要因は何か。「データとデジタル技術を活用して競争優位性を築くという本質的な取り組みを行っていないからだ」と、日本マイクロソフトの金本泰裕氏(Azureビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー)は指摘する。

 昨今、この競争優位性を築くために開発の内製化を進めている企業が現れている。内製化を進める上でのポイントは何か──。日本マイクロソフトの金本氏と、クラウドサービス「Microsoft Azure」の領域専門家であり「デプロイ王子」の愛称で活躍する廣瀬一海氏(Azureビジネス本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー)に話を聞いた。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

開発を“丸投げ”する日本の企業体質

 国民一人一人がスマートフォンを所有し、ネットにつながり、それに伴ってソフトウェアサービスも世の中に広がってきた。また、昨今ではさまざまなハードウェアとソフトウェアが融合し、優れた顧客体験や従業員体験を提供することが成功のカギとなっていることから、ソフトウェア開発に関する重要性は増すばかりだ。

 そのような状況下で戦える企業は「アジャイルな開発を実践できる企業だ」と金本氏は強調する。「アイデアをMVP(Minimum Viable Product)として形にし、試験的にいち早く市場や現場に投入でき、利用者からのフィードバックを得ながら数日〜数週間のサイクルで改善を繰り返せる。そうして数カ月〜1年たつと、数多くの改善が反映され、利用者から愛されるプロダクトになっている」(金本氏)というわけだ。

 ところが、日本のエンタープライズ企業では、ITを競争力の源泉としてではなく維持コストと考え、IT子会社や外部SIerにアウトソーシングを行い、効率化を図ってきた歴史・背景がある。開発に当たっては業務委託契約に基づく納品物に対しての支払いになることから、要件定義を行い、見積を取り、社内で稟議をかけ、開発し、単体・結合・総合テストを行った上で市場や現場に投入──といった各プロセスで完全性が重視されるため、非常に時間を要する。

 機能を改善するとしても、再び要件定義し、見積を取り……となり、数カ月〜1年といった長期的なサイクルが必要になる。そのため、スピード感のある海外勢に市場競争で負けてしまうのだ。

photo 日本マイクロソフトの金本泰裕氏(Azureビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー)

 問題はこれだけではない。外部SIerへの丸投げでは「社内にノウハウが残らない」と金本氏は続ける。「フィードバックを得ながら改善していく、サイクルを回していく部分のノウハウが社内に蓄積しない。それを担う人材も育たない。そのような課題がDXという言葉とともにようやく認識されてきた」と語る。

 開発を内製化して、DXを推進する動きが見られない根本的な原因は何か。廣瀬氏は「経営層がデジタルを自分ごとと見なしていないからではないか」と分析する。「デジタルがなじんでいないから、単なるコストとしてしか捉えられない。自社の事業に関係ないという姿勢で、アジャイルの思考を経営に取り入れられず、海外勢に押されてしまうのではないか」

 金本氏は「顧客の嗜好の変化が早く、多様化しているが、一度出荷したら変えられないハードウェアでの対応は難しく、ソフトウェアの領域で対応せざるを得ない」と付け加える。「そのようなソフトウェア領域で優れた価値を提供できる仕組みや組織をつくり、人材を育てていくことが企業競争力そのものにつながる」

 とはいえ「いきなり内製化」といってもハードルは高い。必要な人材が社内にいない、育っていないからだ。打開策はあるのだろうか。

全部、自社内で行わなくてもいい

 開発の内製化をためらう理由に、人材不足が挙げられる。金本氏は「これまで開発をアウトソーシングしてきたなか、『内製で開発しよう』といっても、当然ながら困難だろう」と指摘する。

 「社内にノウハウやベストプラクティスがないため、どこから手を付ければいいか分からないし、着手したとしてもそれが正しいのか判断できない。試行錯誤しながら効果を実感するには数年単位の時間はかかるし、その間、当然ながら顧客や競合他社は待ってくれない」

 廣瀬氏は「社内のヒューマンリソースを把握している経営者ほど、内製化をゼロから始めるのはハードルが高いと考えてしまうだろう」とも指摘する。

 では、どのように内製化を進めればいいのだろうか。廣瀬氏は「プロダクトオーナーシップがカギになる」という。「どんなサービスを作り上げ、どのように改善するのか」を事業会社側の人間が責任を持つ、手綱を握るという考え方だ。

 廣瀬氏は一例として、東京証券取引所がETF(上場投資信託)市場の機関投資家向けに、新しい取引プラットフォーム「CONNEQTOR」を開発したケースを挙げる。これまで電話による取引がメインだったが、意欲的な機関投資家は、スムーズで透明性が高い電子化された取引の仕組みを求めていた。そうした背景から、CONNEQTORをスピード開発した(参考記事)。

 「それまでユーザー企業(開発をアウトソーシングし、納品物を利用していた事業会社)だった東京証券取引所が、開発チームに2人の課長をプロジェクトへ参加させ、事前にアジャイル開発の一手法であるスクラムを学ぶ機会を与えていた。その結果、開発がアジャイルになったし、同社がプロダクトオーナーシップを握るようになった。

 エンジニアを擁し、実際に手を動かす企業(アウトソーシングされる側)は、それまでは受託契約で関わってきたが、新たな契約形態ではチームとして開発に携わった。このように、エンジニアが社内にいなくても内製化は可能だ。何でも社内で完結させる必要はない」(廣瀬氏)

photo 日本マイクロソフトの廣瀬一海氏(Azureビジネス本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー)

 プロダクトに責任を持つ社内メンバーとエンジニアである外部メンバーが1つのチームとして、互いにコミュニケーションをしながらアジャイルに開発をしていった。「プロダクト開発を丸投げするわけでもなく、コーディングから全部自社でやるわけでもない」と廣瀬氏は説明する。

 つまり、エンジニアが社内にいなくても、プロダクトオーナーシップを持ち、開発の手綱を握る社内の人が開発チームに参加することが“内製化の第一歩”といえるわけだ。これなら、内製化がぐっと身近なものになるのではないだろうか。

 しかし、ここで「並走してくれるパートナー企業を見つける」という壁が待ち受けている。どのようにすれば、優れたパートナーと出会えるのだろうか。

協働しながらノウハウを学べる「Cloud Native Dojo」

 その答えが、日本マイクロソフトが提供している実践開発型人材育成プログラム「Cloud Native Dojo」(クラウドネイティブドージョー)だ。人材育成プログラムというと研修のような印象を受けるかもしれないが、そうではない。

 その仕組みは次のようなものだ。内製でのプロダクト開発に取り組みたい企業の開発チームに、アジャイル/スクラムやクラウドネイティブなサービスを利用しての開発の知見を持つパートナー企業のエンジニアが加わり、協働しながら開発していく。この際、パートナー企業はトレーナーとしての役割も担う。アジャイル/スクラムでの開発経験がない。クラウドネイティブなサービスの知見を持っていない、といったユーザー側だった企業でも、開発手法を学べる。

 これは、前述の東京証券取引所の例とよく似ている。プロダクトに責任を持つ社内メンバーとエンジニアである外部メンバーが1つのチームとして、互いにコミュニケーションしながらアジャイルに開発をしていく。開発を通して、アジャイル/スクラムでの開発手法、クラウドネイティブなサービス群の使い方を身につけられるのだ。

photo

 Cloud Native Dojoに参加している企業は、アークウェイ、エーピーコミュニケーションズ、エムティーアイ、クリエーションライン、ネクストスケープ、日立ソリューションズ、ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング、フェンリルの8社。それぞれがアジャイル/スクラムでの開発に長けており、Azureのクラウドネイティブサービスの知見を有するが、得意とする領域が異なるため、さまざまな要望に柔軟に応じられるという。

photo

 同プログラムにかかる期間と費用はパートナー企業によって異なるが、期間は基本的には数カ月以上、費用は数百万〜数千万円となっている。委託・受託といったこれまでのアウトソーシング型でも同程度の期間と費用がかかるが、納品物を受け取った後には“納品物以外に残るものがない”。

 しかし、Cloud Native Dojoプログラムを通じてパートナー企業と協働すれば、これまでユーザー側だった企業でも、プロダクトオーナーシップを握れるし、開発ノウハウを蓄えられる。開発中に市場環境に変化があれば、柔軟に対応することも可能だ。同じ費用と時間を投じても、アウトソーシングと、パートナー企業とチームを組む内製化では、得られるものが異なるのだ。

 「この取り組みを始めると2021年2月に発表した際に、一部からは既存の業界の構造を壊すことにつながるのではないかといった声もあったが、そうではない」と金本氏。「むしろ、ユーザー企業(事業会社)とSIer(開発会社)との新しい在り方、関係性を作り出し、共に成長できる取り組みだ」と自負する。

 「新しいことを始めるときには、『やりきれるだろうか』『目指す場所はどこだろうか』などのように不安がつきまとう。日本マイクロソフトは、やりきるための知見があり、客観的なアドバイスができる。パートナー企業と日本マイクロソフトは、DXというゴールに向け、一緒に走る“並走者”になれる」(廣瀬氏)

 「IT人材を育成するのには時間がかかり、それを待っていたら競争力が失われてしまう。ならば、スキルのある人たちと協働すればいい。協働すれば、不必要な試行錯誤を省いて、自社に必要なスキルやノウハウを短時間で身につけられる」と金本氏は自信を見せる。

 「これまでの業界構造に対して一石を投じる取り組みではあるが、こうした動きは、遅かれ早かれ広がっていくはず。Cloud Native Dojoを通じて、真の意味でDXに取り組む企業を支援していきたい、というのが我々の想いだ」(金本氏)

photo
photo

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2021年5月20日

関連リンク