コロナ禍によってビジネス環境が大きく変化する中、多くの企業は、デジタルシフトによる業務効率化や業務継続力の強化、ニューノーマル時代の働き方を前提とした事業運営体制の構築、顧客ニーズの変化に呼応する新たな価値の創造などを目指し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させている。ITmediaビジネスオンラインで実施したアンケート調査でも、自社でコストを負担してでも実現/改善したいトピックを聞いた設問では、「ビジネスのデジタル化」「データ分析・活用」が2トップとして挙がっており、DXはまさに企業の生き残りをかけた喫緊の課題といっていい。
一方、DXを推進する上で大きなハードルとなっているのが、DX人材の圧倒的な不足だ。特にDX事業において個人単位での成果創出が期待される高度IT人材の領域では、熾烈な争奪戦が繰り広げられている。企業側にとっては業種や職種の垣根を超えた優秀な人材の確保をいかに行うか、また転職検討者にとっても、終身雇用の在り方が問われる中、自身のキャリアをどう設計していくかが重要になっている。
そんな中、人材業界大手のリクルートが前身の「CAREER CARVER」をリブランドする形でこの11月にローンチしたのが「リクルートダイレクトスカウト」だ。ハイキャリア人材を対象にしたいわゆるダイレクトスカウト型のサービスだが、同社がこの分野に注力する理由は何か。リクルートダイレクトスカウトのプロデューサーである藤原暢夫氏に、人材市場のトレンドやサービスローンチの狙いを聞いた。
DXを中核に据えた経営戦略と採用戦略は連動する。もともとコロナ禍以前から「DX」はバズワード化しており、各企業にとってデジタル技術を用いたビジネスや既存ビジネスの進化は課題の1つではあった。
そこに新型コロナの拡大があり、ビジネス環境は大きく変化。それに伴って企業の採用戦略にも変化が現れたが、「ハイキャリア人材の求人数自体に大きな増減はない」と藤原氏は明かす。むしろコロナ禍を機に起きたのは、「募集職種の変化」と「デジタルシフトの加速」だ。
「コロナ禍でオンラインチャネルのビジネスが伸びたことから、マーケティング担当者のニーズが急増しています。また、緩やかにデジタルシフトしていくはずが、コロナ禍で急速な変化が起き、デジタルシフトが喫緊の課題になりました。『コロナ前には戻らない』という認識から、新規事業を創り出す事業開発や事業企画、経営企画職の求人は増加傾向にあります。WebディレクターやエンジニアといったIT人材のニーズも堅調です。各社急ピッチでDX人材の確保を目指しているような状況です」(藤原氏)
また、従来メインでエンジニアを採用してきたIT業界以外でも、医療や物流などの業界にIT人材が入ったり、IT業界で異業界の人材が働いたりと、DXを軸に業種・職種を越境したポジションの人材も求められるようになった。境界を超えた人材の掘り起こしが必要になれば、当然競争は激化する。海外からDX人材を採用するには「日本語の壁」もあるため、必然的に国内で熾烈な獲得競争が繰り広げられることになる。人気ランキング上位の企業でさえ、手を広げて待っているだけでは優秀な人材を採用できない時代に突入した。
そのため、転職検討者向けのオンラインイベントやダイレクトリクルーティング、リファラル採用など、企業には“攻め”の採用活動がより求められるようになった。藤原氏は「これまで積極的に採用活動を行っていたのは、待っているだけでは人を集めづらい、いわばネームバリューが確立されていない企業が主だったが、こうした動きは大企業でも一般化しつつある」と説明する。
こうした動きにあわせて採用コストも上昇。人材確保が厳しいため、「優秀な人材は高いコストを払ってでも接点を持ち続けたい」という企業の切実な思いが見て取れる。採用現場では人事部門のマネジメント層が採用目標を設定し、長期間かけて採用活動を行う流れも生まれている。「企業側は候補者と連絡を取り続け、時間をかけて関係を築いていく人的・時間的コストをいとわなくなってきている」と藤原氏はハイキャリア人材の採用活動についてそう語る。
コロナ禍は採用手法そのものにも影響を及ぼした。オンラインベースの採用活動が増え、特にPCと電話があれば仕事が完結する職種を志望する転職検討者にとっては、地理的な制約がなくなった。
こういった採用市場の変化によって、国内で続々と誕生しているのが、企業から転職検討者に直接アプローチするダイレクトスカウト型の人材採用サービスだ。
「企業でDX人材のニーズが高まっている今、自ら積極的に情報を取りに行こうとはしない転職検討者とどう接点を持つかが重要です。例えば、リクルートが提供するものも含む求人広告サイトでの全体的なトレンドとして、求職者の自発的な検索経由の応募よりも、メルマガやダイレクトメッセージなどプッシュ型のアプローチをきっかけにした転職が急速に増加しています。転職検討者は現職の仕事をやりながら、自分のキャリア観に合った求人がプッシュ型で届くのを待つ、こういった転職検討の在り方が確実に広がっているのを感じています」(藤原氏)
企業側の積極的なアプローチが必須となり、それでもなお人材確保に難儀する今、人事課題の解決策として生まれたのが「リクルートダイレクトスカウト」だ。サービスローンチに先駆けて以前から展開していた「CAREER CARVER」に企業からのダイレクトスカウト機能を追加、この11月には「リクルートダイレクトスカウト」へと名称を変更している。
「世界ではスカウト型採用が広がりつつあり、もともと『来たるべき将来』に備える新規事業として『CAREER CARVER』を展開していましたが、そこにきてコロナ禍により急速にダイレクトスカウトが選択肢として有望視されるようになり、経営含めて向こう10年のサービスの在り方を本気で考えた結果、このタイミングでスカウトサービスに注力することを決めました」(藤原氏)
リクルートがダイレクトスカウト型のサービスを提供することで、「ユーザーと企業双方にメリットがある」と藤原氏は胸を張る。転職検討者であるユーザーに対しては、積み上げてきた企業接点の多さが武器だ。
「数十年間かけて築いてきた企業との関係が当社の強みです。われわれだから預けていただける案件もあるので、提供できる案件や職種のバリエーションの多さは群を抜いていると思います。転職検討者にとって多くのスカウトのチャンスがあるのが大きなメリットです」(藤原氏)
また、スカウトを受け取るだけでなく、提携している経験豊富なエージェントやキャリアコンサルタントに相談することもできる。選択肢の多さと、相談のしやすさを両立させたサービスが、リクルートダイレクトスカウトなのだ。
コロナ禍以降、人材採用競争が激化する中で、企業からは求人を出すだけでなく、自分たちからも求職者と接点を持ちに行きたいというニーズが高まっていると藤原氏は話す。
「企業が積極的な採用活動を始めるなか、『リクルートもスカウトサービスを提供してほしい』という声を多数いただいていました。そこで、リブランディングに先立ち、企業からのスカウト機能を8月にリリースしました」(藤原氏)
タイミング的には11月の名称変更にあわせて機能を搭載することもできたはずだが、藤原氏は「『自分たちの都合になっていないか』という自問自答は常にしている」と口元を引き締める。
「リリースをきっかけにより多くの機能を伝えたい気持ちはありますが、それがあろうとなかろうと、いま困っている顧客に対してどのように応えていくかを大切にしています。資料上でいくら美しいスケジュールができたとしても、それが自分たちの都合では意味がないと思っています」(藤原氏)
リクルートダイレクトスカウトで実現したいのは、企業と転職検討者の“両思い”だ。「転職を目的化せず、両思いで転職するためにはスカウトが有力」と藤原氏は語る。個人は前向きにキャリアを切り開いていくために転職を検討し、企業は時代の変化に応じて適材適所で柔軟なオファーをする。それがニューノーマル時代の転職だ。
「両思いの総量を増やすためには多様なニーズに応える必要があります。その点で、当社はこれまで多くの事業を展開してきたことから企業との接点も多く、“リクルート”の看板を生かせるリクルートダイレクトスカウトは選択肢の多さが強みとなります」(藤原氏)
VUCAと呼ばれる未来予測が難しい時代に、生産年齢人口の減少も加わり、今や「組織でどんな人に働いてもらうか」は企業の将来をも左右する重要なファクターとなっている。日本企業のDX推進には、DXを実現する人材の確保が必要だ。経営戦略に採用戦略は不可欠であり、戦略的な人事が求められている一方、実際のところは急激な変化に対応するのは難しい側面もある。そこで、すでに巨大な人材ネットワークを持つリクルートが作ったダイレクトスカウト型サービスが果たす役割は大きい。
転職検討者にとっても、どう働き、どんなキャリアを形成するか判断が難しい時代になってきている。まずはどんな選択肢があるか知り、その選択肢を前向きに楽しみながら企業との接点を持つ。そうすれば、働く時間をよりよいものにしていくことができるだろう。
「リクルートダイレクトスカウトは、企業と転職検討者双方のニーズに応えられるサービスです。双方の頼りになるポジションを目指し、パートナーツールとして常にそばに寄り添えるような存在に進化させていきます。無料でさまざまな機能を利用できるので、まずは気軽な気持ちで使っていただければと思います」(藤原氏)
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