日本初のバーチャルオンリー株主総会、成功の秘訣は? ユーグレナ社の事例から読み解く基本から解説!

ユーグレナ等の微細藻類に関する研究開発、関連商品の製造・販売などを行っているユーグレナ社が、2021年8月に日本初のバーチャルオンリー株主総会を実施した。562人の株主がオンライン出席し、開催後のアンケートでは99.5%が「評価する」と回答したという。不慣れな環境下で、どのように成功をつかんだのか? 同社のバーチャルオンリー株主総会を支えたJストリームのウェビナーから探る。

» 2022年03月17日 10時00分 公開
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 2021年6月16日、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」(改正産業競争力強化法)によって、インターネットなどの手段を用いて遠隔地からでも出席できる「場所の定めのない株主総会」、いわゆるバーチャルオンリー株主総会の開催を可能とする特例が設けられた。

 新型コロナウイルスの感染拡大がまだ止まらない状況で、今年の株主総会をどのように開催すべきか悩みながら検討している担当者も多いことだろう。感染対策だけでなく、多くの株主が出席機会を得られ、コスト面でも有効だというバーチャル株主総会の導入には今、多くの企業の注目が集まっているが、法律面、開催面で気になる部分は多い。

※形態により、バーチャルオンリー株主総会含めて3種類あり。以下にて解説

photo 2月24日に開催されたJストリームのウェビナー「『バーチャル株主総会』実施のポイントと動向」より

 そこで、バーチャル株主総会をはじめインターネットにおける動画配信サービス全般を手がけるJストリームは、22年2月24日にウェビナーを開催。21年8月に、同社のソリューションを介して日本初のバーチャルオンリー株主総会を開催したユーグレナ社の薗田玲子氏(管理部 euglee課 課長)、バーチャル株主総会のプラットフォームを提供し、Jストリームと共にユーグレナ社を支えたICJの砂金宏氏(エンゲージメントソリューション部 統括マネージャー)、Jストリームの小室賢一氏(マーケティング部 部長)が登壇し、バーチャル株主総会開催にあたっての留意点などを語った。

 今回は、ウェビナー後に砂金氏とJストリームの今鉾悠史氏(エンタープライズビジネス部 金融ソリューション課 課長)に取材する機会を得たので、バーチャル株主総会の現状や利点、課題点など、ウェビナーの内容を振り返りつつ紹介したい。

そもそもバーチャル株主総会とは? 世界と日本の現在地

 日本におけるバーチャル株主総会は、経済産業省実施ガイドによって「バーチャルオンリー型」「ハイブリッド出席型」「ハイブリッド参加型」の3種類が定義されている。

 「バーチャルオンリー型」とは、リアル株主総会を開催することなく、取締役や株主等が、インターネット等の手段を用いて株主総会に会社法上の「出席」をする株主総会のことをいう。

 そして「ハイブリッド型」は2種類に分かれる。1つは、リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の開催場所に存在しない株主が、株主総会への法律上の「出席」を伴わずにインターネット等の手段を用いて審議等を確認・傍聴することができる「ハイブリッド参加型」。もう1つは、リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の場所に存在しない株主が、インターネット等の手段を用いて株主総会に会社法上の「出席」をすることができる「ハイブリッド出席型」である。

ウェビナーでは、アメリカにおけるバーチャル株主総会の歴史にも触れられた。00年にデラウェア州で法律が改正されて解禁になり、01年に世界初のバーチャル株主総会が行われている(提供:ICJ作成オンラインセミナー資料より)

 海外に目を向けると、バーチャル株主総会の普及が進んでいるのはアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアが中心だというが、20年、新型コロナウイルスのまん延をきっかけに世界規模に拡大。日本では、21年に30社強がバーチャルオンリー型、ハイブリッド出席型で株主総会を開催している。ウェビナーでは、砂金氏により「最近、海外では名義株主だけでなく、機関投資家など実質株主のバーチャル株主総会参加を認める流れになっており、ICJでも導入に向けて調査・研究を進めている」という解説がなされた。

バーチャルオンリー型開催に向けて、必要な法的手続きは?

 日本で現在、バーチャルオンリー型を開催できるのは、株主名簿に記載または記録されている株主の数が100人以上の上場企業が、経済産業大臣および法務大臣の「確認」を受けた場合に限られる。必要な準備としてまず挙げられるのは、両大臣の「確認」だ。「確認」を受けるためには、バーチャルオンリー型を配信する際の通信環境の構築が必須となる。具体的には、通信関連の責任者を決め、万が一通信障害が起こったときの対策、方針のほか、ITリテラシーの低い株主に対する配慮などが含まれている。

 なお、改正産業競争力強化法の施行から2年間は経過措置によって経済産業大臣と法務大臣の「確認」を条件に、定款を変更しなくてもバーチャルオンリー型の株主総会は開催できる。しかし、施行から2年後となる23年6月中旬以降、バーチャルオンリー型を開催する場合は定款変更が必須であることは忘れてはいけない。

 定款変更は、リアルかハイブリッド型株主総会での決議が必要だ。奇しくも22年9月1日には「株主総会資料の電子提供制度の創設」に関する会社法改正の施行が控えており、今年の株主総会では「会社法改正の定款変更と併せてバーチャルオンリー型を開催可能とする定款変更を検討している企業は多いだろう」と、砂金氏は予想。今後バーチャルオンリー型の開催を見込むのであれば、22年中の株主総会で、電子提供制度とバーチャルオンリー型に関する定款変更の決議を“まとめて”行った方がスムーズであるというのが同氏の見解だ。

バーチャル株主総会はビジネスにどう作用? 利点と課題を説く

 このように、バーチャル株主総会は法的手続きや通信環境の用意など、リアル株主総会にはない準備が必要だが、地方、果ては海外のような遠隔地にいる株主も参加でき、現在は感染予防という面でメリットがある。来場者が減れば大規模な会場は不要となり、コストダウンできる可能性も出てくるが、砂金氏は加えて「株主との対話を促進するメリットがある」点を強調する。

 例えば、リアル株主総会での株主からの質問は、挙手した人のうち議長が指名した人しか質問できない。そのため、他の人がどんな質問・意見を持っているのかを知るには限界がある。しかしバーチャル株主総会では株主がスマートフォンやPCを用いて、テキストで質問や意見を提出できるため、企業側はその全てを確認可能となる。「株主の意見を効率的に聞けるのは、バーチャル株主総会において非常に大きな利点」(砂金氏)だという。

photo Jストリームのエンタープライズビジネス部 金融ソリューション課で課長を務める今鉾悠史氏

 バーチャル株主総会では、プラットフォームを通して株主から事前質問を受け付け、閉会後にはアンケートに回答してもらうこともできる。総会前、総会中、総会後と、さまざまな場面で意見を聞けるのは、確かにリアル株主総会にはなかった利点だろう。また、Jストリームの今鉾氏は、「質問や意見、アンケートデータの集計・分析が楽にできることも従来の株主総会にはない特徴である」と語り、昨今、必要性が叫ばれ続けているDXにもつながる取り組みになると話す。

 もちろん、課題もある。例えば、通常リアル株主総会は総務や法務担当者が運営している企業が多いだろうが、バーチャル総会になるとIT担当の専任者も必要だ。企業によっては、株主総会に関与する担当者の見直し、リソースの補充が必要になる。

 また、「バーチャルオンリー型」「ハイブリッド出席型/参加型」と3種類あるだけに、どれを選ぶのが適切なのか迷いも生じる。砂金氏は、「株主の構成によっては、向き不向きがある。大株主が欠席して定足数が足りず総会が開催できないケースもあり得るので、株主や企業の置かれている状況を考慮して『どの形態で開催するのか』『そもそも開催できるのか』見極めなければならない。自社で決められない場合は、われわれプラットフォーマーや証券代行など外部に相談することで、客観的な判断の下で最適解を見つけられることもあるだろう」と話す。

ユーグレナ社はバーチャルオンリー株主総会をどう実現したか

 では、ユーグレナ社はどのようにして、バーチャルオンリー型の株主総会を成功させたのか。実は同社は、20年12月にハイブリッド出席型で株主総会を行っている。ウェビナー内で、ユーグレナ社の薗田氏は「当初は安全策を採って『参加型』を検討していたが、当時は既に『出席型』を開催する企業も出てきていた。証券代行に相談したところ、ICJとJストリームを推薦され『出席型』での開催を決定した」と話した。

photo ウェビナー内で紹介された、ユーグレナ社のバーチャルオンリー株主総会の採決画面。開催に際し、JストリームとICJが協業して支援にあたった(提供:ICJ作成オンラインセミナー資料より)

 コロナ禍前はリアル株主総会で1500人程度の来場を想定していたという同社だが、ハイブリッド出席型を開催する上では「参加人数は200人くらいだろうと予想していた」と、薗田氏。しかし実際に20年12月に開催したハイブリッド出席型のオンライン出席者は461人。想定の2倍の人が出席したことは、「嬉しい誤算」(薗田氏)となった。

 そのような経緯もあり、21年8月の臨時株主総会も当初はハイブリッド出席型で準備していたという。しかし、6月に改正産業競争力強化法が施行され、7月20日というギリギリのタイミングでバーチャルオンリー型での開催を決定。結果、12月に開催したハイブリッド出席型よりさらに多い562人が出席するなど成功を収めた。

入念なシナリオ作り ユーグレナ社の“本気”が見える舞台裏

 バーチャルオンリー株主総会開催にあたっては、通信障害で開催できなくなったときのための予備日を取締役会で決議し、取締役のスケジュールを確保。同時にJストリーム、ICJ、証券代行それぞれの日程も押さえて、招集通知にも予備日を記載するなどの対応に追われたというユーグレナ社。

 当日は、開催宣言の後にすぐ、通信障害で議事進行ができなくなった場合、「総会の延会または続行を決定する決議を議長に一任する」という決議を採った。これを決めておかないと、通信障害が復旧しない場合、取締役会の招集決議や通知を出すことから再び始めなくてはならないからだ。

 また、「議決権行使システムは生きているけれど映像が流れない場合」「議決権行使システムもビデオ会議システムも利用できない場合」など、通信障害の程度に合わせた複数のシナリオを作り、事前にシステムを切り替える練習も行ったという。

 そうして行ったユーグレナ社のバーチャルオンリー株主総会は99%以上の株主が高評価。同社の株主の年代は幅広いというが、「不安を感じなかった」「不安はあったが出席して問題はなかった」という回答が多くを占めたと、薗田氏は振り返る。砂金氏は後日の取材でこれに対し、「今は株もスマートフォンやPCがなくては買えない時代。株主のITリテラシーは向上している」と推察。アプリ操作や通信環境における株主サポートが、大きな障壁にはならなかったユーグレナ社の事例を回想した。

事前準備に当日の撮影、中継、認証システム――タスクが山積するバーチャル株主総会を支援

 必要な手続きや準備は理解できても、バーチャル株主総会の導入は日本においてまだ過渡期。開催に際してノウハウがない企業がほとんどだろう。そこで、まず相談したいのがJストリームである。

photo Jストリームは、もともと動画コンテンツに関する制作・配信・運用のプロ集団。広域負荷分散インフラなど信頼性の高い配信基盤、サービスを生かしバーチャル株主総会の開催を支援する(提供:Jストリーム資料より)

 Jストリームは、バーチャル株主総会を実現するソリューションをワンストップで提供。事前の準備から安全性の確保、リスク対策まで、安心安全な開催を徹底することで、多くの企業のバーチャル株主総会を支えてきた。

 具体的には、「Webサービス」として株主がIDとパスワードを用いてログインする認証システム、視聴ページ、アンケート機能やメッセージ投稿機能などを提供。加えて「ライブ配信サービス」として、現場にクルーを派遣し、セッティング含めて撮影・中継配信まで全体的にサポートするという。

 同社もハイブリッド参加型については、自社でバーチャル株主総会ソリューションを用意しているが、ハイブリッド出席型、バーチャルオンリー型についてはフォローし切れない要件があるため、世界35か国で利用されているLumi社のVSMプラットフォームを有するICJと協業することで、全タイプのバーチャル株主総会支援を可能としていると、今鉾氏は話す。

※Virtual Shareholder Meetingの略で、「バーチャル株主総会を開催するためのプラットフォーム」のことを指す

 バーチャル株主総会ソリューションは他社からも提供されているが、同社の強みはなんといっても動画配信のプロフェッショナルとして熟練したノウハウを持ち、通信環境の事前チェックや構築をサポートできる点。最も心配の声が集まりそうな、通信障害によるトラブルについては、「認証や視聴ページについては、ICJさんのご協力も得ながら大規模なアクセスがきてもトラフィックを分散できるようなネットワーク構成を用意している」(今鉾氏)。

 現場からの映像配信が途切れる、といったトラブルについては、会場に2つのエンコーダ(映像データの変換マシン)を用意してメイン配信のほかバックアップ用の通信環境を確保。配信中は有人監視を行うことで、万一トラブルがあった際は即時、安定した配信に切り替えるという。

photo Jストリームが提供する、中継サービスの冗長構成(提供:Jストリーム資料より)

 なお、要望があれば会場手配など事前準備にかかるコンサルティングも含めて伴走・支援するといい、今鉾氏は「サポート範囲の広さ、現場対応の確実性」に自信を見せる。

 ちなみに今鉾氏いわく、中継会場に回線環境が整っていない場合、工事が必要になるため時期によっては開通までに1〜2カ月ほどの時間がかかるという。ほか、同氏はユーグレナ社が実施した「シナリオ作りは、特にバーチャルオンリー型においては非常に重要である」と説き、その作成期間も考えて、Jストリームでは総会開催の3カ月前までの相談を推奨している。今後、バーチャル株主総会開催を検討している企業が増えることも鑑みて、早めの行動が重要になることは間違いないだろう。

今後の株主総会は、どうあるべきか

 日本の場合、株主総会前日までの事前行使で議案の賛否がほぼ決まっており、株主総会当日の議決権行使が議案の賛否に大きく影響しない傾向がある。また、通信障害等の法的リスクを考慮し、日本のバーチャル株主総会はハイブリッド参加型を選ぶ企業が大半を占めるという。

 それについて砂金氏は、「参加型でも、事前質問、当日のコメント、事後アンケートは可能。それらを組み合わせ、株主の意見を収集して出席型に近いバーチャル株主総会が実現されている。参加型は日本の総会実務に合っている」という認識だ。

 バーチャル株主総会開催を検討してはいるものの、バーチャルオンリー型やハイブリッド出席型はハードルが高いと感じているなら、まずは参加型から挑戦してみるのがいいだろう。今後は、日本独自のバーチャル株主総会が作り上げられ、導入のハードルが低いのに、バーチャルオンリー型のような恩恵を受けられる、そんな「フルスペック化したハイブリッド参加型」も出てくるかもしれない。いずれにしても、バーチャル株主総会は、この先スタンダードになり得る一つの潮流だ。まずはJストリームに、自社に適したバーチャル株主総会の形態は何なのか、相談するところから始めてみてはいかがだろうか。

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提供:株式会社Jストリーム
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年3月30日