顧客満足度調査は「1問」で十分 売り上げに直結するCXの改善方法とは「満足」だけでは不十分?

多くの企業が顧客満足度に関連するCX(顧客体験)の重要性に気付き、調査などを導入している。一方で、顧客が満足しているという結果が出ているにもかかわらず解約をしたりリピートしてくれなかったり、「満足度が売り上げに結び付いていない」点に悩むケースも多い。そうした顧客のCX向上に対する課題を解決する糸口になる、たった「1問」で算出できる指標がNPSだ。

» 2022年03月28日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
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 CS(顧客満足度)の調査を行っている企業は多いが、定性的なことから売り上げなどの結果になかなか結び付かず、悩んでいるケースも多い。例えば、アンケートでは多くの顧客が「満足している」と回答したのに、翌月の解約率が高くなることもある。「満足している顧客」が必ずしも「リピートする顧客」とは限らないのだ。

 顧客の中にはリピート購入するだけでなく、よい口コミを広げたり、競合を避ける行動を取ったりする人がいる。こうしたロイヤルティが高い顧客を増やすことが業績を向上させることにつながる。このロイヤルティの高い顧客を見つけるために使われる指標が「Net Promoter Score(NPS)」だ。

※Net Promoter ScoreおよびNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、ナイス・システムズ(旧サトメトリックス・システムズ)の登録商標です

 NPSは顧客ロイヤルティの度合いを測る指標で、今まで計測するのが難しかった企業やブランドへのロイヤルティを定量化・数値化できる。これまでのCSなどと違い、業績との連動性が高いのが特徴だという。

 例えば、あるネット銀行企業はNPSをコアのKPIとして設定して、NPSをベースに改善施策を打っている。その結果、NPSが高くなるごとに企業利益や口座数も連動して伸び、業績に大きな貢献を果たしている。また、ある生命保険企業でも、NPSの改善・向上に伴い、保有契約年換算保険料が大幅に向上している。

 このような事例を基に考えると、NPSは単なる「顧客ロイヤルティ指標」ではなく、「KPIとして製品・サービスおよびコミュニケーション改善のPDCAサイクルを回していく経営改革手法」として捉えることができる。

 こうした従来のCSとは大きく異なる効果を生み出すNPSとは、具体的にどういうものなのか。NPSを活用して顧客のロイヤルティを向上させるにはどうしたらいいのか。本記事では、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(以下、「NTTコム オンライン」)が3月10日に開催したオンラインセミナーからNPS活用のカギをひもといていく。

NPSに必要なのは「わずか1問」

 顧客ロイヤルティを高める上で重要なCXは顧客と企業が接するところで発生する。Webやコールセンターへの問い合わせ、店舗に行く、イベントに参加する――こうしたさまざまな接点で、よいCXを積み重ねると顧客ロイヤルティが醸成される。

 「よいCXの積み重ねが顧客ロイヤルティを醸成し、最終的には高い業績へとつながります」と話すのは、NTTコム オンラインの剣持真氏(マーケティング・アナリティクス部 シニアコンサルタント)。

 よいCXが積み重なっていくと、顧客はその企業のファンになる(図1)。顧客ロイヤルティが向上すると、リピート購買はもちろん、よい口コミを拡散したり、顧客同士で助け合う行動をしたり、競合を避ける行動を取ったりするという。さらには、製品やサービス開発への助言や協力行動を取ることもあるというから驚きだ。この顧客ロイヤルティを指標として把握できるのがNPSとなる。

図1:NTTコム オンライン資料(以降も同じ)

 これまで、CSを高めれば自動的にロイヤルティが高まるのかといえば、そうではなかった。ロイヤルティを高めるには、どのCXを高めるのが重要なのかを調査・分析して、導き出す必要がある。この点に関して、剣持氏は「これまでのCS調査では、満足度が低い項目を改善して満足度を高めるという方向に走りがちでした」と指摘する。

 「NPSはわずか1問から算出されるシンプルで分かりやすい指標です。たった1問、『この企業あるいは商品・サービスを知人や友人にすすめたいと思いますか』と質問することで算出できます」(剣持氏)

 質問には0から10まで、全11段階で回答してもらう。一般的には中間付近である5や6が「普通」の評価になるが、NPSでは不十分。6以下の評価はむしろ「批判者」としてカテゴライズされ、7〜8という高めの数値でも「中立者」にとどまる。9〜10の水準になってこそ、「推奨者」として認められる。その上で、推奨者の割合から批判者の割合を引くことでNPSを算出できる。最高値が100、最低値が-100となり、もちろんマイナスの数値が出ることもある(図2)。

図2

 「一般的には、年に1〜2回のCS調査で顧客の問題点を把握する企業が多いのですが、これだけだと不十分です。現場レベルで対応すべきところはすぐ対応しなければいけません。短いスパンで、タッチポイントごとに顧客が何かしらの体験をした直後にアンケートを実施して、その結果をフィードバックしていくことが、顧客ロイヤルティを高める上で重要なのです。そのための手法がNPSであり、単なる顧客ロイヤルティの指標ではなく、経営改革手法だという認識が適しています」(剣持氏)

CXを高める「3つの戦略」とは

 今回のセミナーでは、通販化粧品企業の8社についてベンチマーク調査を行い、その結果を基にCXを高める3つの戦略が紹介された。調査対象は通販化粧品企業だが、その他の業種にも通用する内容となっている。

【参照】ベンチマークレポートはこちら:NPS業界別ランキング&アワード

 戦略の1つ目が「推奨者獲得戦略」。これは、一度も製品を買ったことがない潜在顧客が初回に購入する際、推奨者になってもらうための戦略だ。

 一般に、顧客は購入する前は対象物に「期待」をしており、この期待の大きさが購買の水準に足りていなければ購買しない。期待が上回れば購買し、評価を行う。評価が期待よりも上回れば満足、下回れば不満足となる。そのため、購買前の期待を実力以上に高めてしまうと、購入後に不満足が生じやすくなるので、期待値のコントロールが必要になるという(図3)。

 購買後の評価は消費者の心理により、修正されることがある。期待のプラス・マイナスで一定の幅があり、下の方は「最低限こうあってほしい」という期待の下限で、上は「このくらいあると望ましい」というラインになる。

 最低限のラインをちょっとでも上回っていると、期待値よりも低いのに大目に見てくれる「同化」と呼ばれる心理が働く。期待を上回っても、望ましいラインを突破しないなら、それも下に修正されて、「だいたい期待通り」となってしまう。

図3

 逆に、最低限のラインを下回ると「対比」の心理が働き、もっと評価が下がってしまい、「実際以上に悪かった」と感じてしまう。同様に、望ましいラインを少しでも越えると「極めて満足」と評価される。

 そのため、購入者に満足してもらうためには期待度をコントロールする必要がある。全ての項目で期待度を高める必要はなく、購買を促進するために有効な項目と推奨者を獲得するために有効な項目を分析して、影響力の高い項目に絞り込んで対策を打てばいいわけだ。

 「相関分析を行うとよく分かります。期待度が低い項目は改善の余地があるものの、相関係数も低ければ、この項目を改善しても総合の期待度はあまり高くなりませんから注意が必要です」(剣持氏)

 では、相関係数の高い項目に注力すればよいのかというと、そもそも期待度が高い項目をさらに改善すると、今度はハードルが高くなって満足度を高めにくい状況になってしまう。そんなときは、期待度と期待度・総合期待度の相関係数をクロスさせたドライバーチャートを用いると改善すべき項目が明らかになる。

 横方向が期待度、縦方向に総合期待度との相関係数を示したドライバーチャートに期待度項目をプロットすると、左上のブロックは総合期待度との相関関係が高いのに期待度が低い状態にあるので、ここを高めると総合期待度が高まり購買につながることが分かる(図4)。

図4

 購入後に推奨度を高めるためには、シンプルに満足度と推奨度との相関係数を見ればいい。相関係数が高い項目の満足度を高めれば、推奨度が高くなる。推奨度が高くなるということはNPSが高まることになる。

【参照】アンケート結果を集計する際のポイント

顧客ロイヤルティを高めるには?

 2つ目が顧客ロイヤルティ向上戦略。何度か購買している既存顧客の批判者を中立者に、そして中立者を推奨者に上げるための戦略だ。この場合はNPSドライバーチャートを使って考えるといい(図5)。

 横軸が満足度、縦軸を推奨度との相関係数にしたドライバーチャートに満足度項目をプロットする。右上の項目は現時点でそれなりに満足している項目なので、今のまま維持していけばいい。NPSを向上させるためには、左上の相関が高いのに満足度が提供できていない項目が改善すべき項目となる。

図5

 批判者が多いので批判者を減らしたいとか、推奨者が少なすぎるのでもっと増やしたい、と企業によって目的が変わるケースがある。その場合は、推奨度を上げるポイントも異なる。これは、決定木分析をすることで、どの項目を高めればいいのかが分かる。

顧客の離脱を防ぐには? 「不満」に関する意外なデータ

 3つ目が顧客離脱防止戦略。年月の経過とともに推奨者が中立者に、中立者が批判者に落ちてしまうような状況を防ぐ戦略だ。そもそも製品やサービスに対して不満を感じた顧客がどういう行動を取るのか、NTTコム オンラインで行った通販化粧品に関する調査結果によると、面白い心理が浮かび上がってくる(図6)。

 購入して不満なしの顧客は、当然だがNPSが-5.8と高く、再購買率も59.2%と高い。不満をもった人のうち82.8%は苦情をいわない。苦情をいわない人のNPSは-41.6で、再購買率は39.4%と想像通りダントツに低くなる。

 苦情をいった人で問題が解決しなかった人も、苦情をいうことですっきりしたのか、何もいわなかった人と比べてNPSが-25.0と大きく改善される。ただし、再購買率は32.1%とさらに低くなる。

 時間はかかったが問題が解決した人はNPSが-10.5、再購買率は47.4%とさらに向上。そして、素早く解決できた場合、NPSが+15.8、再購買率が60.5%と不満がなかった人よりNPSも再購買率も上がるのだ。不満を感じた顧客でも、正しく対応すると今まで以上に関係が改善されることが分かる。

図6

 不満に感じた顧客の行動から、顧客が離脱するのを防止するために重要なポイントが4つ浮かび上がってくる。

 1つ目がそもそも顧客に不満を抱かせないこと。これは、推奨者獲得戦略と顧客ロイヤルティ向上戦略を実施すればいい。

 2つ目が、去ろうとしている顧客を見つけること。苦情をいわずに去られてしまうと、企業としては改善点に気付けない。そこで、RFワーニング表を活用し、去ろうとしている顧客を発見することが重要になる(図7)。顧客の購買頻度と最新購買日を分析し、購買頻度が高かったのに、何カ月も購入していない顧客に対して、直接連絡し、不満を抱えていれば対応を行うなどの対策が考えられる。

図7

 購買頻度をNPSに置き換えた、R-NPSワーニング表も分析するとよい。推奨者なのに、しばらく購入していない人に直接連絡し、不満対応を行うと、去ろうとしている顧客を引き留められるかもしれない。

 3つ目が、顧客の不満を吸い上げる場を作ること。年に1〜2回行われる全社レベルの調査だけではなく、顧客とのタッチポイント単位で苦情をいってもらえるとよい。NPSを導入することは、不満を吸い上げる場をつくることにもつながっている。

 4つ目が、顧客の不満を素早く解決する体制作り。Webやコールセンターの問い合わせや店舗、イベント担当など組織が別だと、その場で出た顧客の不満が組織内で完結してしまい、組織横断的に共有されない。全社の顧客問題解決データベースを作るなど、どの組織でも不満と解決策を共有でき、素早い問題解決につなげる体制構築が求められる。

【参照】CXを高める3つの基本戦略・通販化粧品業界動向レポート

より効果を高めるには外部活用も重要

 とはいえ、こうした対策を今すぐ実現できる企業ばかりではない。そんなときは、外部を活用することもおすすめだという。

 「昨今、NPSを導入する企業が増えていますが、どのタイミングで調査すればいいのか分からない、せっかく調査してもアクションにつながらないなど、NPSが改善しない悩みを抱えるケースがあります。そんなときは外部に相談することでよりよい成果につながることがあります」(剣持氏)

 NTTコム オンラインでは「NPSソリューション」として、アンケートの初期設定、画面の設計、回収率が高くなるためのアンケートの依頼方法やタイミングをコンサルタントが支援するサービスを提供している。また、NPSを導入して複数の調査が走ると、担当者が調査をするだけで手いっぱいになって、本来注力したいアクションに力を注げなくなりがちだ。そこをテクノロジーで支援するため、「NPX Pro」というクラウドサービスも提供している。

 昨今注目度や重要性の高まる顧客満足度の向上。ただ顧客を満足させるだけではなく、いかに自社に協力的になってもらい、売り上げなどの成果につなげるかを考えると、NPSはぜひ経営に取り入れるべき手法だといえるだろう。もし本記事を読んでNPSに興味を持ったなら、NTTコム オンライン公式Webサイト上のNPSソリューションのページ内の、資料ダウンロードページから、「NPS完全ガイド」や「NPS導入を成功させる4つの秘訣」といった資料をダウンロードできるので、ぜひ一読してほしい。

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提供:NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
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