スポーツを5Gでアップデート ミクシィが取り組む「これまでにない映像配信」の舞台裏ミクシィの事業を支える富士通のローカル5G

スマホゲームだけでなく、昨今ではスポーツビジネスにも精力的に取り組むミクシィ。2021年10月にローカル5Gの免許を取得し、基地局の整備などを経て22年1月にスポーツ領域における商用利用を開始した。事業部門の「これまでにない映像配信をしたい」、かつ短いスケジュール、というオーダーから始まったプロジェクトだが、どのように商用利用開始にこぎつけたのか。また、富士通のサポートはどのようなものだったのか。その全貌に迫る。

» 2022年03月18日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

 SNSやスマートフォン向けゲームのイメージが強いミクシィだが、昨今ではスポーツビジネスへも注力している。同社の強みである技術力、SNSやスマホゲームアプリで培ったエンタメ領域のノウハウを生かし、コミュニケーションを軸としたスポーツ領域の“リノベーション”に取り組んでいる。

 こうした流れの中、同社は、2021年10月にローカル5Gの無線局免許を取得し、22年1月に商用利用を開始した。公営競技領域に関して、高画質な映像や上質なユーザー体験を届けるために導入した格好だ。その裏側には富士通の5Gテクノロジーとサポートがあった。

 そこで本記事では、ミクシィがスポーツビジネスのアップデートにおいてなぜローカル5Gを選んだのか、そして富士通側からどのようなサポートがあったのかといったポイントについて、ミクシィの吉野純平氏(開発本部インフラ室 室長)と市野真一氏(開発本部インフラ室映像技術グループ)に聞いていく。

「コミュニケーション」を軸にスポーツビジネスをリノベーション

 日本におけるSNSの“草分け”として知られるミクシィだが、近年では驚くほど事業の多角化が進んでいる。

 例えば、「モンスターストライク」などゲームアプリを含むデジタルエンターテインメント事業、SNS「mixi」や子どもの写真・動画を家族で共有したり整理したりできるサービス「家族アルバム みてね」など、ユーザーの生活に直結したライフスタイル事業、そしてスポーツ事業と現在は3つの事業領域で展開しているという。特に現在注力するスポーツ事業領域においてはプロスポーツチームの運営のみならず、公営競技関連事業も手掛けている。

 その背景には、同社が重視する「コミュニケーション」がある。従来「公営競技は1人で楽しむもの」というイメージが強いが、他のSNSやゲームアプリと同様、同社が得意とするエンタメやIT技術を駆使することで、ユーザー同士のコミュニケーションを活性化させ、リノベーションしていく狙いだ。

 そうした考えから生まれたのが「TIPSTAR」だ。TIPSTARは主に、競輪やオートレースの車券を購入できるアプリで、全国の競輪場で行われるレースを毎日生配信している。特徴は、競輪やオートレースにベッティングしたことのない初心者でも気軽に参加でき、さらに友人と一緒に観戦できるなど、誰でも気軽にコミュニケーションしながら楽しめる仕組みになっている点だ。

 TIPSTARだけではなく、千葉市が主催する新しい自転車トラックトーナメント「PIST6 Championship」の運営にも、千葉市や関連団体とともに競技運営を手掛けることで携わっている。競輪場を利用するのは高齢の男性が多いが、競技が開催される「TIPSTAR DOME CHIBA」においては、クオリティーの高い音響照明設備や、映像・レーザー照明などを活用した会場演出を行うなど、自転車競技のリノベーションにチャレンジ。演出を含めレースはTIPSTARやYouTubeで生配信するなど、これまで競輪に触れる機会の少なかった若い世代や女性、家族連れも楽しめるようさまざまな工夫を凝らして見事にスポーツエンタメへと昇華させている。

TIPSTAR DOME CHIBA(提供:PIST6)

「これまでにない映像配信を」 たどり着いたのがローカル5G

 こうした取り組みを進める中、PIST6において、事業部門から技術部門に新たなオーダーがあった。それは、「これまでにない臨場感のある映像をユーザーに届けたい」というハードルの高い内容だった。

 開発本部インフラ室に所属する吉野純平氏は、事業部門からオーダーを受けた当時を次のように振り返る。

ミクシィの吉野純平氏(開発本部インフラ室 室長)

 「今までの競技であまり実装されていないような映像を撮りたいとのことで、事業部門から『全ての自転車にカメラを付けて、映像をリアルタイムに配信したい』という相談が21年の4月にありました。しかも、サービス開始は10月で、準備期間が半年しかありませんでした」

 同じく、開発本部インフラ室に所属する市野氏も「国際規格の『ケイリン』は、世界的な大会だと車載カメラを付けてレースをすることもありますが、撮影・放映されるのはあくまで選手の後方からの映像です。われわれとしては、さらに迫力のあるものにするために、選手視点での前方の映像にこだわって構築を進めていました」と述べる。

 これまでにない映像配信を実現するため、まずは特殊なアンテナを用意した。Wi-Fiを用いて映像を配信することを考えたのだ。「周辺に電波が飛び散らないように、わざと弱い電波のアンテナを使っていましたが、思った以上に電波が弱く、通信ができませんでした。次に考えたのは、Wi-Fiでハンドオーバーすることでしたが、これも単体ではなかなか満足できる成果が出ませんでした」(吉野氏)

 そこで、プライベートLTEを構築できるsXGPというサービス規格に着目。これまでの方法と違い、実用するところまでは行ったが、それでも思い描く到達点まではたどり着けなかったという。

 「手詰まり感はありましたが、一応の運用はできてはいました。しかし安定した映像を提供するには技術的に足らない部分があったので、それを何とかしたいと検討を続けた結果、『ローカル5Gならできるだろう』という考えに至りました」(吉野氏)

ローカル5Gの強みとは

 そもそも、ローカル5Gとは何なのか。今回のミクシィにおけるローカル5G活用のサポートを担った富士通の担当者は次のように説明する。

 「5Gには『超高速・大容量』『超低遅延』『多数同時接続』という3つの特徴があります。

 その中で、携帯電話向けの回線として使われているものが、広く全ての人が共用で利用する『パブリック』であるのに対し、ローカル5Gはその名が示すように、『ある地域だけで使える』ようにしたもののことを指します。企業や自治体などが自己の建物や敷地内において回線自体を占有して使えるため、通信エリアやサービス形態などを柔軟に構築できることが特徴です」

 21年度からローカル5Gを活用した各種の実証実験が国内で活発化しているというが、中でも超高速で大容量という特徴を生かして高精細な映像をリアルタイムに活用するケースが増えているという。

 「複数のデバイスを同時に高速に、しかも移動している中で、低遅延で利用できるという点が革新的な技術だと思っています。これまでは1台のものを動かしたり、有線ケーブルを使ってネットワークをつないだりということはできましたが、ローカル5Gではそれらを全て無線環境で提供できる点に大きな違いがあります。

 また今までは、エンドポイントであるデバイス側に制御機能を持たせ、デバイスが高コストになっていましたが、通信ネットワークが高度化したことにより、デバイス側の機能をサーバ側で実施することが可能になりました。このことによって、デバイスが安価になるとともに、複数台のデバイスを一度に動かすことができます」(富士通担当者)

富士通だからこそできた「圧倒的なスピードと手厚いサポート」

 ローカル5Gサービスを提供する会社は複数あるが、ミクシィがその中から富士通をパートナーとして選んだ理由は「圧倒的なスピード感と手厚いサポートがあったから」(吉野氏)だという。

 「提案段階から細かいスケジュール案をいただいていたのは富士通さんだけでした。今回はスケジュールがタイトだったのでスピード感を重視していました。もし導入するまでの時間が長ければ実行するのは難しかったと思います」(吉野氏)

 事業部門から4月に話があり、さまざまな試行錯誤を経て、ローカル5Gの検討を具体的に開始したのが8月頃。実際に一部端末において映像伝送を開始したのが22年1月だというから、かなりスピーディーな対応だったといえる。

 スピード感だけでなく、充実したサポート体制もポイントだと市野氏は話す。

ミクシィの市野真一氏(開発本部インフラ室映像技術グループ)

 「ローカル5Gの利用には免許が必要です。当然、初めてのことなので分からないことばかりでした。そんな中、富士通さんから適宜サポートをいただいたことにより、かなり短い期間で免許を取得できました。基地局の工事に関しても、ワンストップで対応いただき素早く構築できましたし、商用利用の開始までスムーズに運んでいただけました」(市野氏)

 富士通は、このローカル5Gシステムの構築・運用に関して、さまざまなサービスを展開している。中でもミクシィ社に提供した「プライベートワイヤレスマネージドサービス」は導入支援から設計・構築支援、そして運用支援まで含まれているものだ。

 「ローカル5Gは富士通社内においても、非常に重要な位置付けとなっています。当社はAIやIoT、スーパーコンピュータなどのソリューションも提供していますが、それらを支える基盤としての5Gネットワークという捉え方をしており、AI/IoTソリューションと、それを活用いただくためのローカル5G、いずれも先進テクノロジーを活用したソリューションをお客さまに提供できるのが強みです」(富士通担当者)

提供:富士通

 今回、ミクシィが求めていたのは、高速で動いている自転車にカメラを取り付けてリアルタイム映像伝送を行うという高度な内容だった。加えて基地局を複数用意し、基地局間でハンドオーバーをすることなど、要件としては非常に難易度の高いものだった。商用利用開始時はミクシィ側の都合もあり、可搬型定点カメラ映像の送出からのスタートとはなったものの、今後開始する車載カメラ映像の送出にも対応できるシステムを構築するという難易度の高いミッションを短期間に達成できたのは、富士通の高い技術力とサポート力によるものといえる。

 「導入期間に関しては、標準よりも非常に早い期間で達成できました。半導体不足によってプロダクトの入手が難しい点が課題としてありましたが、社内で調整して乗り切ることもできました。免許取得にもリードタイムがありますが、その点も前倒しで総務省と事前調整などを行い、素早く取得することができました。ミクシィさまより多大な協力をいただいたおかげで達成できたと思っています」(富士通担当者)

 なお、富士通ではローカル5G向けとして屋内/屋外用のアンテナをそれぞれそろえたソリューション「FUJITSU Network PW300」を提供しており、柔軟なエリア設計に対応するほか、基地局の仮想化も実現している。21年12月にはスモールスタートのニーズに対応した「FUJITSU Network PW300」スターターキットも提供開始した。

 その他、富士通新川崎テクノロジースクエアの「FUJITSU コラボレーションラボ」では、さまざまな企業と連携して実験をしており、パートナー企業との共創を通して技術力を日々ブラッシュアップしている点も強みだといえるだろう。

配信の安定性に明らかな違い 映像の質もアップ

 ローカル5Gの導入に成功したことで、どのような変化があったのか。

 「導入前には、混信による電波消失や遅延が発生するなど不安定な状態で、映像が乱れることがありました。ローカル5Gに切り替えたことで混信がなくなり、安定性が明らかに変わったと感じています。また占有した周波数帯になるので、道路幅が広がったイメージになり、一気に送れるデータ数が増えました。映像の質も上がっていると感じています」(市野氏)

提供:ミクシィ

 とはいえ、ローカル5Gの導入で全ての課題が解決されたわけではない。

 「今回の商用利用は、可搬型定点カメラ映像の送出からスタートしましたが、最終的にわれわれがやりたいのは、自転車のハンドル部分にローカル5G対応の小型カメラ端末を付けることです。既存のWi-FiやsXGPには市販の小型カメラが対応していますが、ローカル5Gだとまだ対応端末が限られているため、現在は、後追いで端末の開発を進めています」(市野氏)

 吉野氏も「実際にやってみて、バラ色の世界ではないと感じたことが正直な感想です」と話す。「事業をよりよくするために、これからも開発や最適化をしていく必要があると感じています。そのためにも今、市野の話にあったように端末の開発を頑張っていますが、そういったことも含めて、これからも富士通さんと一緒に歩んで高めていけるといいですね」

 富士通もロードマップとして、さまざまな機能の拡張を計画している。ユーザーのユースケースや要望を集めながらソリューションとしての満足度を高めていきたいという。

 「私たちとしてもぜひ今後ともミクシィさまと歩ませていただき、よりよいソリューションにした上で、広くお客さまの事業を支えていきたいと考えています。特にミクシィさまは社内にエンジニアが多数いらっしゃいます。こうしたエンジニアの皆さまからいただくフィードバックは、われわれにとって非常に貴重なものです。

 当社はソリューションを提供するベンダーの立場にもありますが、われわれだけで検討した企画ではどうしても偏りが出る部分があるので、ミクシィさまをはじめとしたお客さまの生の声をソリューションの企画に活用していきたいと思っています。是非、今後もたくさんのご意見をいただければと思います」(富士通担当者)

 ミクシィのように実証実験を超えた具体的な商用利用ケースが出てきており、これからの期待が膨らむローカル5Gであるが、このような提供企業と利用企業のタッグによって、さらに実用的なサービスへと進化するのは間違いない。両社の今後の動向に注目したい。

「ローカル5G活用」と「DX」に関するアンケートを実施中!<アンケートは終了しました>

現在、本記事をお読みいただいた方に対してアンケートを実施しています。

富士通ではローカル5Gの導入支援に向けたさまざまなサービスを提供しており、読者の皆さまの課題解決やDXの推進に取り組んでいます。本記事をお読みになった方はぜひ、「記事の感想」や「ローカル5Gへの興味関心」「自社のDXが抱えている課題」についてのアンケートにご協力ください。回答はこちらから。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年4月2日

「ローカル5G活用」と「DX」に関するアンケートを実施中!<アンケートは終了しました>

富士通ではローカル5Gの導入支援に向けたさまざまなサービスを提供しており、読者の皆さまの課題解決やDXの推進に取り組んでいます。本記事をお読みになった方はぜひ、「記事の感想」や「ローカル5Gへの興味関心」「自社のDXが抱えている課題」についてのアンケートにご協力ください。