映像AIが人手不足を解消する 製造・小売の現場を変える先端テクノロジー

» 2022年06月09日 10時00分 公開
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 コンピュータの進化の歴史のなかで、過去20年ほどの間に大きく進展したのが映像解析の分野だ。「コンピュータ・ビジョン」(Computer Vision)と呼ばれるこの仕組みでは、リアルタイムで入力された映像の“中身”をコンピュータが自ら解析し、次のアクションへとつなげる流れを確立する。

 コンピュータ自身の処理能力の向上もさることながら、何十年も前から議論されてきた方法論が実用レベルで実装されるようになり、より身近になったことが大きい。近年では、スマートフォンにおける顔認証や、監視カメラ内蔵の行動解析アプリケーションなど、エッジデバイスへの搭載も当たり前になりつつある。かつて「AI」と呼ばれた技術が広く一般に浸透し始めている状況だ。

 こうした映像AIをさまざまな分野に応用し、業務負荷の軽減や、これまで人の目だけではカバーしきれなかった場所に適用することで、サービス向上に役立てていこうという機運が高まっている。

 例えば製造業では、日本における生産労働人口の減少のみならず、『きつい』『危険』といったネガティブなイメージで語られることが多く、深刻な人手不足に拍車を掛けている。こうしたイメージを払拭するには、現場の安全性確保などに力を入れる必要があるが、そもそも人手不足ゆえになかなか手が出せない、という悪循環に陥っている。

 NECで映像AI・生体認証エッジ事業に携わる坂下氏(プラットフォーム販売部門 市場開拓推進統括部)は「製造業に中小企業が多く余力が少ないという背景もありますが、厚生労働省の統計でも『ヒヤリ・ハット』と呼ばれるケースが多い分野でもあり、実際に人命にかかわるような事故もかなり起こっています。現場の安全対策は喫緊の経営課題です」と指摘する。

 安全を確保しながら効率化を実現したいというニーズに対し、テクノロジーをどう活用していくのか。その解決策の1つとして注目されているのが映像AIというわけだ。

 人手不足という根本問題を、人の目に近い認識力を持つ映像AIで代替し、かつ人の目では見逃す可能性もあるミスやトラブルには、コンピュータによる常時モニタリングで補完する――欲張りなようではあるが、映像AIにはこれを両立させる可能性を持つ。

映像AIをどのように活用するのか

 映像AIの活用ケースはどのようなものがあるのだろうか。例えば工場には、扱い方次第で危険につながる場所や装置が多数存在する。高温・高電圧の装置が設置された危険なエリアを立ち入り禁止にしたくても、十分な人員を配置できなかったり、本人の不注意で侵入してしまうこともある。

 そこで、人の代わりに映像AIを活用することで、触れてはいけない場所に手が入ったことを自動検出してアラートを出したり、危険エリアに侵入した人物がいた場合には管理者に通知を行って警告したりと、少ない人員でも安全が確保できる。

 もちろん、安全対策の一環として監視カメラが設置されている工場は少なくない。しかし、人的リソースの不足から巡回の警備員を配置できない状況においては、監視カメラによる記録済み映像を振り返って現場改善に努めるなど、インシデント発生時の分析や検証といった“事後”に利用されるケースがほとんどだ。一方、映像AIであれば今まさに発生している危険な状況を捉え、事故を未然に防ぐことも可能になる。

映像AIが危険エリアへの侵入をリアルタイムで検知

 もう1つ製造業で期待されているのが「熟練者の技術継承」だ。特に中小規模の製造業においては、熟練者と経験が浅い人ではスキルに大きな隔たりがあり、高齢の熟練技術者がいなくなる一方で、新しい技術者がなかなか育たない(もしくはいない)ことを課題と感じている企業も多いだろう。そこで映像AIが熟練技術者の作業姿勢をモニタリングすることで、新しい作業員との動きの違いを比較し、どのように動くとよいかを分析することができる。

 こうした試みでは過去、赤外線や感圧などさまざまなセンサー技術を組み合わせて、作業者の動態を捉える仕組みが構築されてきた。しかし、複数のセンサーやそのデータを同時に処理する必要があるためシステムが複雑化しやすい。一方、映像AIであればシンプルに既存のカメラとローカルに設置されたサーバの組み合わせで実現できるため汎用的で応用範囲が広い。

映像AIで変わる小売業界の今

 製造業以外の分野では、対面接客での応用がある。小売業界は人的リソースへの依存度が高く、今後よりいっそう深刻化する人手不足問題が重石になってのしかかる。ゆえに少ない人員をどれだけ効率的に配置できるかが重要だ。

 例えば小売業の各店舗では、商品の定期的な補充やカゴ/カートの移動、レジを担当するスタッフなどの配分を来客のピーク時間に合わせて増減させ、効率的に混雑をさばこうとしている。しかし、コロナ禍以降は感染防止対策としてカートの消毒や消毒液の補充といった作業項目が増え、現場担当者の負担が増えているのが現状だ。

 効率的に人員配置を行うならば、混雑時にはレジの増援に人数を回し、残りの時間帯は品出しを担当させるなど、状況に応じた対応が必要だ。従来であればこうした判断は店長などが行っていたが、映像AIを活用すれば店舗のどのエリアで人員が不足しているのかを常にモニタリングし、必要に応じてアラートを出して迅速に判断できるようになる。これにより、店舗内の観察や指示に忙殺されていた店長が、より店舗運営に必要な業務に時間を割けるようになる。

レジ待ち検知により混雑度を把握
混雑度合いに応じてアラートが飛び、他の業務をいったん中断してレジの応援に向かえる

 アラートはスマートフォンへの通知のほか、表示灯や音声通知などさまざまな形で出すことができる。また、コロナ禍では密回避が感染拡大を防ぐための1つのポイントとなっていたが、映像AIでは店舗内の単純なヒートマップだけでなく人数もカウントし、より精密な測定が可能だ。記録したデータはダッシュボードで確認、店舗内の商品配列やレイアウト変更にも活用できる。

収集されたデータはダッシュボードで後の分析が可能

 このほか、映像AIでは骨格検知によりその人物が現在どのようなアクションを行っているのかも認識できるので、介護現場における高齢者の転倒検知や、危険な状況の事前検知といった分野でも活用が期待されている。

介護現場や病院での転倒検知に映像AIを活用
骨格検知により対象人物の状態が把握できるため、危険状況の事前検知が可能

今後数年で映像AIの利用は一気に本格化する

 今回取り上げた映像AIのソリューションは、NECが販売する「NEC Express5800 for MEC」を通じて提供されている。MECとは「Multi-access Edge Computing」の略で、IoTやクラウドの仕組みを利用するサービスの提供において、ネットワークの「エッジ」に配置されるコンピュータシステムのことを指す。

 例えば、ネットワークカメラがあったとして、その解析処理をクラウド上に配置されたアプリケーションで行ったとすると、ネットワークカメラから構内LANや携帯電話回線を経由してインターネットに接続し、インターネット上のどこかにあるクラウド内のサーバにデータが送信され、そこでようやく解析処理が行われる。ただし、伝送距離が長くなるほど遅延が大きくなり、リアルタイムでの処理は難しくなる。

 そのため、低遅延が特徴の5Gネットワークでは、解析処理を行うサーバを単純にクラウド上に配置するのではなく、5Gの通信を収容する携帯キャリアのデータセンター(エッジ)に配置することで反応時間を短くしている。

 一般的にこうした仕組みをMECと呼ぶが、今回の「NEC Express5800 for MEC」はカメラが配置された工場や店舗内にサーバを設置し、映像解析処理をクラウドではなくローカルで完結させることで超低遅延でのリアルタイム解析を実現する。特に映像解析では大量のデータが発生するため、クラウドではなくローカルで処理できることのメリットは大きい。また、サーバはExpress5800と Windows Server で構成されており、実績のあるエッジプラットフォームとして安心して利用できる。

映像AIはサーバとソリューションがセットで提供される

映像AIソリューションの現在と未来

 NECの根本氏(システムプラットフォーム企画部門 製品計画統括部 プロデューサー)によれば、小売店舗では前出のような混雑検知のみならず、棚や特定エリアでの滞留検知を利用したマーケティングへの応用も検討されているという。これまで小売店舗ではPOSの売上データなど比較的粒度の粗いデータの分析が成長を支えてきた面がある。ここに粒度の細かいデータを取得できる映像AIを活用することで、店舗そのものがマーケティングのプラットフォームとして大きな価値になり得るのではないかというのが1つの考えだ。

 こうした取り組みは、個人情報保護や人権・プライバシーへの配慮に留意する必要はあるものの、来客時の行動パターンの解析や滞留データを基にした商材の適切な配置など、小売店舗のみならず、商品を卸すメーカーなどにとっても大きなインサイトを生む可能性がある。製造業においても危険エリアの侵入検知だけでなく、解析により効率的な導線を導きだし、作業へフィードバックすることで大きな効果が期待できると根本氏は期待を込める。

 NECの映像AIの歴史を振り返ると、50年前に研究開発がスタートした指紋認証に端を発し、90年代の顔認証から虹彩認証まで、着実に画像解析の技術を発展させてきた。今日の映像AIにつながる顔認証システムは99年に初めて製品化が行われ、2017年から18年ごろにかけて既存技術の積極活用が進められた結果、現在の形になっている。今は各分野において映像AIの効果が認知され始め、先端技術の1つとして導入の初期段階に至った状態だが、「3年以内に本格的な活用が進む」と根本氏は分析している。

 今後はカメラ映像のみならず、音や重量、触感といった各種センサーで得られる情報を互いに組み合わせることで、より詳細な分析も可能になるだろう。現場の効率化から始まった映像AIソリューションの活用が新たなサービスや市場を作り出し、究極的には社会課題の解決につながっていく――NECが長い歴史の中で培ってきたテクノロジーの目指す未来が垣間見えそうだ。

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提供:日本電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年6月22日

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