デジタル化×パンデミックによる“大退職時代” 従業員エンゲージメントを高め「変化に強い」組織をつくるには今求められる組織づくり

» 2022年06月20日 10時00分 公開
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photo 朝岡絵里子(あさおか・えりこ)。アトラシアン マーケティング統括マネージャー。日本生まれの米国育ち。外資系ソフトウェア企業4社でSE、プロダクトマーケティング、ビジネスディベロップメント、パートナー営業等を経て現職

 コロナ禍により、デジタルを活用した新しい働き方が広がった。同時に、人々の仕事に対する考え方が変わり、より良い環境を求めて会社を辞める“大退職時代”と呼ばれる動きが欧米を中心に活発になった。日本でも転職の動きは欧米ほど顕著ではないものの、若年層で転職を考えている人は増えている。企業内外の変化や価値観の多様化に対応するためには、従業員のエンゲージメントを高める取り組みが求められているのではないだろうか。

 ITmedia ビジネスオンラインでは、2022年5〜6月にかけ、「バックオフィスが目指すべき『越境』と『体験価値』」をテーマとしたオンラインセミナー「Digital Back Office Week 2022夏」を開催した。スポンサーセッションでは、組織を横断したコミュニケーションをITツールで支援するアトラシアンの朝岡絵里子マーケティング統括マネージャーが講演。『大退職時代をチャンスに変える! ハイブリッド型組織で従業員体験を再創造』と題して、従業員のエンゲージメントを高めるための具体的な方策を語った。講演の模様をお伝えする。

デジタル化で仕事の“当たり前”が激変 「大退職時代」到来へ

 「あなたの企業はデジタル化できていますか」と聞かれたら、皆さんはどのようにお答えになるでしょうか。そもそも22年現在、「デジタルな企業」とはどういうことなのでしょうか。最初に、デジタル化の意味について共通の認識を持ちたいと思います。

 デジタル化には2つの意味があります。1つ目は、従来は人が行っていた業務をデジタル技術を活用したやり方に変えることです。英語では「デジタイゼーション」と呼ばれます。デジタル化と聞くと、多くの人はこの定義を想像するのではないでしょうか。契約書や請求書などが具体的な例で、業務の効率化やコスト削減などが実現できます。

 2つ目は、デジタル技術を活用して、新たなビジネスモデルを創り出すことです。これは「デジタライゼーション」と呼ばれます。DVDやCDのレンタルが、動画や映画のストリーミングサービスに変わるなど、既存のビジネスモデルからこれまでにないビジネスモデルを実現することで、新しい利益や価値を生み出します。

 もう1つ、デジタルと関わりが深く、時代を象徴するキーワードがあります。それは「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。04年に初めて提唱された概念で、ITの浸透が人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させることを指します。

ALTALT 似て非なる「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」そして「DX」。DXとは、デジタルを活用して組織や制度、文化までも含めて“企業を丸ごと”変えていくことを指す(以下、朝岡氏の資料より)

 経済産業省が18年に定義したガイドラインには、DXのポイントが記載されています。1つ目はデータとデジタル技術を活用した取り組み。2つ目は、製品やサービス、ビジネスモデルだけでなく、企業風土や文化も変革すること。3つ目は“目的”で、ビジネス環境の激しい変化に対応するために、競争上の優位性を確立することです。

 デジタル化やDXを一気に加速したのが、新型コロナウイルスのまん延による世界的なパンデミックです。外出の抑制などによって、これまでデジタル化が進まなかった領域でもデジタルの活用が広がり、新しい生活や働き方を経験することになりました。その結果、人々の仕事に対する考え方が大きく変わり、より良い環境を求めて会社を辞める人が急増する“大退職時代”と呼ばれる動きが、欧米を中心に広がっています。

 日本では転職の動きは欧米ほど活発ではないものの、若年層で転職を考えている人は増加傾向にあります。コロナ禍で新しい働き方を経験した人々が、自分にとってより良い職場を求めて動き出しているのです。これは企業にとっては憂慮すべき点です。

求められる従業員エンゲージメントを高める環境づくり

 デジタル化とパンデミックで起きた社内外の変化や価値観の多様化に対応して、企業活動を維持し発展させていくためにはどうするべきでしょうか。その鍵として注目されているのが「従業員エンゲージメント」です。簡単に表現すると、従業員の会社への共感や、自律的な貢献意欲のことです。従業員が組織の中で働くことで得られる、あらゆる体験からつくられます。

photo 組織の中で得られる、あらゆる体験(従業員エクスペリエンス)が従業員エンゲージメントを高める。上は、優れた従業員エクスペリエンスを実現するために必要な、3つの要素

 速いスピードで変化が起きている中で、組織のリーダーに求められることも変わってきました。従業員エンゲージメントを高めるには、ビジョンや答えを持って人々を引っ張っていくことよりも、さまざまな人がコラボレーションして一緒に未来をつくるための環境を用意することや、イノベーティブな課題解決をサポートする企業文化を整備することが重要になっています。

 企業文化を整備するための要素を掘り下げてみます。まずはコア・バリューです。企業が最も大事だと考える価値観で、社員が日々行動する上での指標として定めるものです。合理性を重視する企業と顧客中心主義を重視する企業では、対応がまるで違ってきます。目指す企業像につながる価値観を定めて、それに基づく行動や意思決定を徹底することで、自走する人や組織をつくることができます。

 次に心理的安全性です。自分の言動が他者に与える影響を強く意識することなく、感じたままの思いを率直に伝えることができる環境や雰囲気のことです。部下からの提案や意見を「何かあったらお前が責任を取れるのか」といってつぶしてしまうのではなく、安心して発言できる環境をつくることで、新しいものを生み出すことが可能になります。

 そのためには、ダイバーシティー&インクルージョンにも取り組まなければなりません。ダイバーシティーは日本ではまだ女性の活躍を示す言葉として使われることが多いですが、本来、多様性とは性別や国籍だけではなく、年齢、経験、文化、価値観など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を採用して活用することを指します。

 インクルージョンは受け入れることです。多様な人材を雇用しただけでは活躍できません。受け入れて、参加できる機会を積極的に創出することで初めて、個々の能力を発揮できる体制が整います。

 特にデジタル時代には、異なる経験や知識のインクルージョンにも目を向けて、デジタルネイティブと呼ばれる世代がビジネスの中心的な議論に入り、意見をいえるような環境を整備することも必要ではないでしょうか。また、リモートなど多様な環境で効率的に仕事を行うためには、リソースを十分に提供することが必須です。平等な情報共有に留意したITツールの活用方法を考えてみましょう。

激変したコミュニケーションは、性質によりツールを使い分ける

 パンデミックによって新しい働き方への移行を余儀なくされた中で、最も大きく変化したのはコミュニケーションスタイルです。

 対面のコミュニケーションが激減し、オンラインが中心になったことで、社内の各部門の方針はもちろんのこと、業務に関する情報が同じタイミングに同じ品質で届くことの重要性が増しています。これまでの上意下達方式でのコミュニケーションが、リモートワーク下でも同様に機能しているのかも確認すべきポイントです。

 リモートワークでのコミュニケーションには、電話やWeb会議、チャットのようなリアルタイム性のある「同期型コミュニケーション」(フロー型:流れていく情報)と、メールのような「非同期型コミュニケーション」(ストック型:保存していく情報)があります。これらは、やりとりされる情報の種類と特徴を理解して使い分けることが推奨されます。

 同期型コミュニケーションが増えすぎると、仕事の時間の大半を、コミュニケーションをするために費やしてしまい、本来の価値を生み出す仕事をする時間がなくなってしまいます。Web会議は録画ができて、チャットは検索できるものの、流れた文脈を後から追って情報を探し出すのは大変な作業です。

photo 活発な非同期コミュニケーションを実現する、アトラシアンの「Confluence」。リモートワーク下で物理的に離れていても、メンション機能などにより周囲を“巻き込んだ”会話を展開できる

 そのため、記録として保存する、もしくは共有すべき情報は、ストック型である非同期コミュニケーションの方が適しています。アトラシアンでは、企画書や議事録などの文書を共有できる自社の「Confluence」を使っています。「スペース」と呼ばれる単位ごとに管理ができて、名前に@をつけメンションすると、自動的にその人に通知が送られて会話に巻き込むことができるなど、非同期コミュニケーションを可能にします。

リモートワーク中の“見えないヘルプ”にどう対応?

 またリモートワークでは、業務上の手続きで分からないことが出てきたとき、オフィスのように近くにいる人に聞くことができません。助けを得やすい仕組みを整えておいた方がいいでしょう。IT部門に支援を依頼するためのヘルプデスクを置いている企業は、今では珍しくはないかもしれません。では、請求書に対する支払いをするときや、法務部門に契約書のレビューを依頼したいときなどはどうでしょうか。

 アトラシアンでは社内外からの問い合わせ対応を管理する「Jira Service Management」を使って、働きやすさを支援しています。Webフォーム以外にメールやチャットでもリクエストを受け付けて、担当者のアサインも自動化できます。過去の問い合わせをナレッジベースにまとめることで、ユーザーによる自己解決を促すことも可能です。

photo 「Jira Service Management」があれば、リモートワーク下であっても社内外の問い合わせ対応を円滑に進めることができる

 社内のあらゆるチームが、「ビジネスをサポートするサービスチーム」だという考え方の下、誰でもどこにいても業務を進めるための支援が受けやすい仕組みを用意することも、優れた従業員体験の創出につながります。

リモート環境下で新入社員を受け入れる工夫とは?

 さらにリモート環境下で注意したいのが、新入社員の受け入れです。一緒に仕事をする人に会ったことがなく、どんな人物なのか分からなければ、頼み方も答え方もビジネスライクになり、新入社員が相談しても親身になってもらえなかったり、+αのアイデアが出てこなかったりするかもしれません。しかし、お互いの雰囲気が分かればそのような課題も解決できます。

 アトラシアンの新入社員は、最初のタスクとして自己紹介ブログを書きます。仕事の経歴や専門性のほか、家族や飼っているペットなど、プライベートなことも共有します。このブログを読めば実際に会えなくてもその人のことを少し理解できて、共通の話題から交流が始まるなど、新入社員がチームになじむ助けになります。

 また上司は、新入社員に慣れてもらうためのオンボーディングプランを用意します。最初の90日間にすべきこと、研修計画や参考にするリソース、入るべきチャットのチャンネルなどをまとめます。このほかにも、些細なことや業務と直接関係ないことなど新入社員が何でも質問できるように、上司以外にバディをつけて1on1やランチの機会を持つことを奨励し、そのための経費計算も可能にしています。

人を動かすのは「感情」 EQ起点で考えるコミュニケーション術

 こうした新入社員を含めた多様な人々とコラボレーションする際に重要なのが、エモーショナル・インテリジェンス(EQ)です。EQは感情をうまく使う能力です。多くの企業では知識やスキルの研修は取り入れてきたと思います。しかし、知識やスキルだけでは人を説得はできても、腹落ちして行動に移してもらうことまではできません。人を突き動かす原動力は「感情」にあります。

 デジタルコミュニケーションにもEQを適用すれば、オンラインで起こりがちな誤解や摩擦を回避できます。メッセージに対して移動中に携帯電話で返信するとき、本人としてはいつもより手短に、簡潔に返信したつもりであっても、受け取った相手側に「怒っているのではないか」と誤解されるケースがあります。誤解を生まないためには、言葉が与える印象に気をつけて、自分の言葉の背景や情報を伝えてみてはいかがでしょうか。絵文字もニュアンスを加えることができるので有効です。

 文字でのやりとりで問題が起こりそうなら、Web会議に切り替えてフォローしましょう。特にネガティブなフィードバックをする際は、ニュアンスが伝わりやすく、相手の反応も見ることができるWeb会議ツールの利用をおすすめします。

働き方だけでなく、組織構造も変えていく

 多様性と変化に対応するためには、働き方だけでなく組織構造も変革が求められます。日本企業の働き方や仕組みは、製造業の現場を効率化する目的に最適化されていて、いまだにアップデートされていません。主流なのは中央集権的な「指揮統制型」です。この方法は外部環境の変化が少なく、求められるニーズがある程度一定で、かつ、明確であれば高い成果を上げることができます。その一方で、従業員の情熱や創造性、主体性は高まりづらく、指示されたこと以外は積極的に取り組まなくなるリスクが考えられます。

 前例がないことに対しては、実験と学習を繰り返して、柔軟に手段を変えていかなければスピードを持って対応できません。組織としての対応を可能にするためには、自律的な判断ができる組織構造と権限が必要です。

 自律的な構造を持った組織の一例が、米海兵隊です。海兵隊は上陸作戦の専門部隊で、陸・海・空の全ての要素を併せ持ち、これらを統合して指揮する組織になっています。陸・海・空の各軍が協力すれば同じことができそうですが、予測不能に変化する現場では3つの軍がそれぞれの思惑を持って調整していては間に合わないだけでなく、判断がぶれてしまいます。そのため海兵隊は統一的な指揮命令系統を持つことで、自己完結的な機動力を実現しています。

 海兵隊の組織を現代の企業に当てはめると、商品やサービスをつくるチームと、その販促に関わるチーム、運用とサポートに関わるチームがコラボレーションした組織になります。顧客からのフィードバックを各機能に反映する流れを高速に回せるようになり、変化にもスピードを持って対応できるのではないでしょうか。

 アトラシアンのJira製品は、自律と統制型のハイブリッドな組織運営をテクノロジーで支援します。既に触れたJira Service Managementのほか、製品やサービスの開発チーム向けの「Jira Software」と、ナレッジワーカー向けの「Jira Work Management」があり、他社製品も含めて相互に連携し、タスクを可視化して進捗管理ができます。担当者は自分に割り当てられたタスクと向き合うだけで、自動的に組織を横断したワークフローが実現できます。

photo 「ツール導入を果たしても、思ったような効果が得られない」そんな課題に対し、アトラシアンでは自社、そして顧客支援から得た経験を基にしたチームコラボレーションのための実践ガイド「Team Playbook」を無料で公開している。Team Playbookには、チームがうまくコラボレーションできる状態になっているかを定期的に評価するための仕組みや、課題解決のための思考を磨く方法、ワークショップ等の実施に関するガイダンスなどが含まれる

 ただ、本当に難しいのは実践することです。ITツールを導入しても、思ったような効果が見られないケースも少なくありません。変化と多様性に立ち向かい、ビジネスの維持と発展を成し遂げるデジタル企業になるためには、デジタルの導入だけではなく、人はもちろん実践方法の習得にも投資をするべきです。

 デジタルトランスフォーメーションは1回で終わりではなく、常に変化を繰り返す終わりのない旅です。技術と市場の変化に適応して、永続的に変化し続けられる企業を目指しましょう。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年6月26日