フリオ社長に聞く バイエル薬品が目指す社会と患者の治療に変革をもたらすイノベーティブな取り組み“すべての人に健康を、飢餓をゼロに”

「Health for all, Hunger for none」というビジョンを掲げ、病気の治療にとどまらず重度の病気からの回復をもたらす開発パイプラインと革新的なデジタル技術を推進しているバイエル薬品。本記事では、2021年に代表取締役社長へ就任したフリオ・トリアナ氏へのインタビューを通し、同社の国内での活動状況やこれからの挑戦についてお届けしていく。

» 2022年06月30日 10時00分 公開
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――本日はお時間をいただき、ありがとうございます。まずはバイエルがどのような企業なのか、ご紹介いただけないでしょうか。

フリオ・トリアナ社長

フリオ・トリアナ社長(以下、フリオ社長): バイエルはヘルスケアと農業関連の領域を中核事業とするライフサイエンス企業です。「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」というビジョンを掲げています。簡単なことではありませんが、この意欲的なビジョンの実現に向け、事業を展開する全ての国で全力をもって取り組んでいます。

 バイエルが取り組む課題は、単なる病気の治療だけにとどまるものではありません。私たちの目的 “Science for a better life” に沿って新たなソリューションを開発し続けることで、効果的な病気の予防と治療、また重度の病気からの回復や日常的な健康改善、そして増え続ける人口への食糧供給支援に取り組んでいます。

バイエル薬品資料より

――社長に就任されてから、間もなく1年が経過します。フリオ社長のこれまでの経歴をご紹介いただけないでしょうか。

フリオ社長: 私は南米のコロンビア・ボゴタで生まれ、米国で育ちました。ヒューストン大学(米国テキサス州)で化学と生物を学び、バイエルでのキャリアは20年前に母国コロンビアでスタートしています。

 直近では、ドイツ・バイエル社の医療用製品部門トランスフォーメーション責任者を務め、医療用製品事業部門の最高財務責任者も経験しました。そして2021年9月にバイエル薬品の代表取締役社長に着任すると同時に、ドイツ・バイエル社医療用製品部門経営委員会委員、日本アジアパシフィック代表に就任しています。22年1月からはバイエルホールディングの代表取締役社長も兼務しています。

上位3製品の売り上げが堅調 日本市場での成長をけん引

――あらためて、就任初年度である21年度の業績を振り返っていただけないでしょうか。

フリオ社長: 昨年は、売り上げ・利益とともに目標を達成できました。

 中でも「循環器・腎臓領域」「眼科領域」「婦人科領域」という3つの領域が大きく成長に寄与しています。また、循環器・腎臓領域およびオンコロジー領域*1で複数の革新的な新製品の提供を開始するなど、複数のマイルストーンを達成することができました。22年も、こうした「アンメット・メディカル・ニーズ*2」の高い領域において、新製品の提供などに向けた準備を進めています。

*1:がんや肉腫など腫瘍に関する研究領域

*2:アンメット・メディカル・ニーズ:いまだ有効な治療法が見つかっていない、満たされていない医療ニーズ

――業績が堅調な中、日本市場のポテンシャルをどのようにご覧になっていますか?

 日本の医薬品市場規模は世界第3位*3、新薬市場に限ると第2位*4です。非常に優れた研究開発力、イノベーション力は、世界に誇るべきものだと考えています。また世界的に見ても高齢化が進んでおり、健康寿命を延ばす対策が強く求められているため、革新的な製品に対するニーズが高まっている領域だといえるでしょう。

*3:IQVIA「The Global Use of Medicines 2022 Outlook to 2026

*4:IQVIA「Seizing Opportunities in Japan, the Second Largest Innovation-Driven Pharmaceutical Market

 こうした背景から、バイエルにとって日本は重要な市場であり、当社の持つ革新的な製品を、日本の患者さんに速やかに届け、健康維持・増進に貢献したいと考えています。

 中でも今後も患者数の増加が予測される心不全領域において、21年に新たな慢性心不全治療剤の提供を開始しました。オンコロジー領域でも、今後のバイエルの成長を担うと考えている前立腺がん治療剤などがあります。

 アンメット・メディカル・ニーズが依然として存在するこれらの治療分野において、当社の製品が重要な選択肢の一つとして患者さんの治療に貢献できると考えています。

――お話を伺っていると、多様な製品を提供されているように感じます。研究開発などに当たっては、どういったことを念頭に置かれていますか?

フリオ社長: われわれ製薬企業が開発する新しい薬は、科学的・臨床的な革新を基に、医療へ進化をもたらすことが求められます。

 バイエルの研究開発では、循環器・腎臓病領域、オンコロジー領域、婦人科領域など、特にアンメット・メディカル・ニーズが高い病気に注力してイノベーションを提供し、将来の成長に向けた基盤を築いています。さらに細胞・遺伝子治療開発のプラットフォームを構築し、治療が困難とされている領域におけるパイプラインの充実を図っているところです。

 もちろん、イノベーティブな製品の開発以外にも重要なことはたくさんあります。バイエルでは、確かな品質での製造、製品の安定供給を重視しており、特に国内唯一の生産拠点である滋賀工場(滋賀県甲賀市)は、本国であるドイツを含む各国のバイエルグループにおいて「バイエル工場群の中でも有数の工場」として位置付けられ、原料の秤量から製品の包装までを一貫して行っています。

 同工場では患者さんの利便性の観点から、識別性の高い包装、錠剤のユニバーサルデザイン導入にも積極的に取り組んでおり、患者さんの声を基に数々の工夫を重ねることで、保管性や携帯性に優れるような包装の小型化や、使用時や使用後の手間やごみの削減などを実現しました。

バイエル薬品の日本国内の生産拠点である滋賀工場(バイエル薬品資料より)

 私たちは長い歴史を持つ企業ではありますが、企業文化を日々、変革し続けています。それは私たちを取り巻く環境の変化に迅速に対応し、日本だけでなく、世界中の患者さんに革新的な製品を迅速に届けられるようにするためです。これを実現するにはもちろん、デジタル技術の進化にもしっかり対応していく必要があると考えています。

社内外でデジタル活用を推進

――デジタル技術への対応については、具体的にどういった取り組みをなされているのでしょうか。

フリオ社長: 社内に専門のチームを立ち上げ、2つのテーマを柱に取り組みを進めています。

 1つ目は、デジタルツールをしっかりと活用し、ビジネスプロセスを改善するというものです。

 医療関係者が製品の基本情報をオンラインで迅速に検索できる、製品情報検索システム「DIチャットボット」(一部の製品が対象)や、患者さんや医療関係者がオンラインで24時間利用可能な副作用報告デジタルツール「SafeTrack Public」、また文書審査プロセスにおけるAI活用など、関係する方々の利便性の向上とともに大幅な業務の効率化を図っています。

 2つ目は、顧客にフォーカスしたソリューションの提供です。「Beyond the pill」、医薬品の提供にとどまらないソリューションの提供に向け、新たなビジネスモデルを開発し、さまざまな付加価値の提供を目指しています。

 最近ですと、プラスマン社が開発した画像診断支援AIソフトウェアの独占的販売権を取得しました。これによりAIによって人の読影技術や臨床医の経験などのノウハウを補完しながら、医師の決定をサポートするソリューションを提供できるようになりました。具体的には、画像診断専門医がCT画像を確認する際に関心領域を表示できるようになるとともに、関心領域外の部分はAIが重点的に補完することで、肺結節および縦隔・肺門リンパ節の視認性の向上が実現します。プラスマン社との協業をきっかけにAI画像診断事業を拡大させ、放射線科医師ならびに関連する全ての医療関係者の皆さんとともに、患者さんの健康に貢献したいと思っています。

――デジタル技術の活用と並び、イノベーティブな取り組みとしては、次世代に向けた治療法を推進するための3つのプラットフォームを展開されています。その概要を教えてください。

フリオ社長: 1つ目は自社の研究開発です。22年は国内で32件の臨床試験を実施する予定で、オンコロジー、循環器・腎臓領域などニーズの高い病気に継続して取り組んでいきます。

 2つ目は研究協力による外部イノベーションの活用です。ドイツ・バイエル社では、医療や農業における今日の課題解決に向けた投資をリードしており、15年以降の投資先は50社以上、投資額は13億ユーロ以上にも及びます。

 3つ目は新規低分子化合物や細胞・遺伝子治療分野への投資です。これらのイノベーションに対するコミットメントは、今後長年にわたりバイエルの成長の原動力となることを期待しています。

経営陣自らサステナビリティにコミット 国内でもさまざまな取り組み

――先日の記者会見では、サステナビリティへの取り組みについても言及されました。経営陣の報酬体系にも成果のコミットが組み込まれるなど、熱心に注力されている印象です。具体的に、どういった目標を掲げ、どうコミットされていく予定でしょうか。

フリオ社長: 当社では、事業の成長とサステナビリティは両立すべきだと考えています。エコロジカル・フットプリント(環境負荷)の削減や、温室効果ガス排出量の削減目標を設定するだけでなく、30年までに「1億人」を目標として、低中所得国における小規模農家の支援や、日常のヘルスケアサービスへのアクセス、女性には現代的な避妊法へのアクセス提供を目指しています。

 サステナビリティはバイエルのビジネス戦略の重要な要素となっており、サステナビリティに関する目標は、当社の意思決定のプロセスや私を含めた経営陣の報酬体系に組み込んでいます。もちろんサイエンス企業として、単なる漠然とした目標ではなく、測定可能な形で設定しているところも強調させてください。

――日本国内ではどのような取り組みをなさっていますか。

フリオ社長: 最近の取り組みですと、温室効果ガスの削減、また農地や居住地を守ることを目的として、東日本大震災時に発生した津波で消失した千葉県の釣ヶ崎海岸の防災林再生を支援しています。公益社団法人国土緑化推進機構の「緑の募金」に300万円を寄付するとともに、防災林の植樹を社員ボランティア参加の下で行いました。

 その他、社内の推進体制も整備しており、既存のサステナビリティの取り組みに加え、パートナーシップを通じた活動を強化し、健康や食料、ジェンダー平等、気候変動の課題などに対応していく考えです。

日本で積極的に取り組む、ソーシャルエンゲージメント

――社会的な取り組みとして、他にも国内では婦人科領域などの啓発活動も進められていますね。

フリオ社長: 主に婦人科領域や循環器領域で、国内の患者団体、自治体などのコミュニティーと協力しながら活動を進めています。例えば、高校生向けに女性の健康をテーマとした教育プログラム「かがやきスクール」を展開し、避妊や性感染症など、狭義の性教育にとどまらず、ライフプランを見据えた、包括的な女性の健康教育を提供しています。14年のプロジェクト立ち上げ以来、これまでに延べ5万8000人もの学生に受講していただいています。

21年7月16日に実施した「かがやきスクール」埼玉県立南稜高等学校 出張授業の風景(バイエル薬品資料より)

 婦人科領域では他にも、女性の健康に関連する調査研究を科学専門雑誌で発表するなど、積極的な取り組みをおこなっています。また日本医療政策機構などの第三者が主導する研究プロジェクトについても支援をおこなっています。こうした活動を通じ公表された研究結果は、働く女性の支援を目的とした公共政策のディスカッションに活用いただいており、非常にうれしく思っています。

 その他、循環器領域では、北海道庁や横浜市、各地の医療機関と協力しながら活動をしています。脳卒中・心筋梗塞などの循環器病や生活習慣病の発症・重症化予防に向けた啓発活動、心臓リハビリテーションの普及に努めているところです。

――既存領域において、豊富な製品ポートフォリオや高いクオリティーを有するだけでなく、これまでにないデジタル活用や社会貢献に関する取り組みなど、新たな領域にも精力的に活動されていることがよく分かりました。最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

フリオ社長: 冒頭でもお話ししましたが、日本には世界クラスの素晴らしい研究開発能力があり、今後さらなる高齢化が進む中で、革新的な製品に対するニーズは間違いなく高まっていくでしょう。日本に住まわれる方々の健康を守り、健康を増進していくために革新的な品目を届けていく――そこにコミットを続けていく所存です。

――ありがとうございました。

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提供:バイエル薬品株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年7月15日