MAで終わらない「CRMプラットフォーム」に見る真価 HubSpotに聞く、本当の「顧客視点」に今必要なものとは?

MAやSFA、CRMといった各種ツールを導入する企業が増えている。しかし、セールスのパイプラインを管理するため、または上司に報告する数字を管理するため、などインターナルコミュニケーションのための活用にとどまってはいないだろうか? 顧客体験が重要視され、「売ったら終わり」では生き残れなくなりつつある今、CRMプラットフォームを提供するHubSpotに、CRMを中心とした各種ツールを利活用する際に重要な「顧客視点」と、それによって得られる顧客からの「信頼」の重要性について聞いた。

» 2022年06月20日 10時00分 公開
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 2022年2月、CRMプラットフォームを提供するHubSpotが、「日本の営業に関する意識・実態調査2022」を発表した。その中で印象的だったのが、「購買意思決定において最も重要な要素は『信頼できる企業であること』」というハイライトだ。

 同社の調査によると、ビジネスシーンにおいてどのような企業からサービス・商品を購入したいかという問いに対し、「信頼できる」(33.6%)との回答が1位になったという。「価格に見合う」(3位)、「品質が高い」(2位)という回答を抑えて、なぜ今「信頼」を重視する傾向にあるのか。

“信頼”の正体は? 変化を続ける「企業と顧客」の関係性

 Googleや日本ヒューレット・パッカードなど、大手テクノロジー業界での経験を経て、21年9月HubSpotの代表に就任した廣田達樹氏は、昨今の潮流を踏まえ、「企業と顧客の関係性」を次のように話す。

photo HubSpot Japan 代表 廣田達樹氏。Google、VMware、日本ヒューレット・パッカードなどのテクノロジー業界で26年にわたり営業や戦略、オペレーション部門リーダーとしてインサイドセールスや新規営業組織の立ち上げに従事。21年9月より現職。取材はオンラインで実施した

 「スマートフォンの普及やSNSの台頭、加えてコロナ禍などの影響により、人々の購買手段や購買までのプロセス、ひいては購買や消費についての価値観は大きく変化を続けてきました。顧客は、インターネットを使っていくらでも価格や商品情報を自ら取得できる環境にいます。では、何をもって意思決定をするのか。そう考えたとき、商品やサービスを提供する企業への『信頼』に価値を見いだす人が増えています。

 単純に低価格を追及したり、プロダクトを一方的に訴求したりということではなく、顧客との信頼関係を築くためのメッセージングやコミュニケーションの在り方、購買体験全体を模索することが企業にとって重要になる時代が訪れています」

 さらに表面的な属性だけではなく、顧客のインサイトを深く探り、相手にとって本当に価値あるものを提供することが重要である――廣田氏は、そういった思考を持つことが「今、顧客が求める『信頼』につながる」と語気を強めた。

「受け取る前に、提供する」 インバウンドの思想の神髄

 HubSpotは創業以来、「インバウンド」という思想に基づき事業成長を続けてきた。インバウンドの思想とは、「相手から価値を受け取る前に、こちらから価値を提供する」ことを基本とした考え方である。

 「インバウンドマーケティング」という言葉もあるが、HubSpotがいう「インバウンド」とはマーケティングに限らず、セールス、カスタマーサービスなどあらゆる部門にとって重要な、いわば企業全体の“共通視点”のようなものだ。これはまさに、「信頼」を通して顧客とつながり、双方にとって良好な関係を継続的に築くための土台となる。

個別最適から全体最適へ 各部門がシームレスにつながるために

 HubSpotでは、具体的なインバウンドの手法の説明として「Attract(惹きつける)」「Engage(信頼関係を築く)」「Delight(満足させる)」という3つのキーワードを用いている。有益なコンテンツ配信や対話を通してマーケティングが「惹きつけ」、セールスが「信頼関係を築き」ソリューションを提案、成約率を高め、カスタマーサービスが課題解決や目標達成を支援し「満足させる」。顧客との出会いから購買、購買後のサクセスに至るまで、全ての接点で顧客にとって最適な体験が提供されることで顧客からのロイヤルティが高まる。結果、顧客がその体験を周囲に共有することでまた新たなユーザーが惹きつけられてゆく。HubSpotでは、この循環を基盤としたビジネスモデルを「フライホイール」と定義し、自社のマーケティング、営業活動やプロダクト作りにおいて実践している。

photo HubSpotが提唱・実践するインバウンド手法。「フライホイール」についてはこちらを参照

 ここで重要なのは、「各部門がおのおのに活動をしていては、適したバイヤージャーニーにはつながらない」ということだ。昨今では、急速なデジタルシフトにより、ビジネスをサポートする各種ツールの導入を進める企業が増えている。しかし、マーケティングはMA、セールスはSFAなど工程ごとにツールを使っていては部分最適にしかならない。それでは、企業にとって非効率なだけではなく、何より顧客とのコミュニケーションに一貫性がなくなる。

 「マーケティング活動一つとっても、ただ惹きつけるだけではなく、信頼関係を築くことが必要になるときもあれば、満足してもらうためのアクションが必要になることもあります。これはセールスも、カスタマーサービスも同様です。

 分断の上に、適したバイヤージャーニーは構築できない。そのことは、HubSpot自身が一事業者として、時には痛みを伴いながら体験してきました。各部門がシームレスに連携しつつ、フライホイールを回すにはどうすればいいのか。出した結論が、CRMを中核に据えてマーケティング、セールス、カスタマーサービス活動などを行う『CRMプラットフォーム』の構築でした」(廣田氏)

なぜ今「CRM」なのか? 顧客情報が持つ価値とは

 HubSpotは、マーケティングソフトウェア会社として06年にその歩みをスタートした。同年にローンチした「Marketing Hub」はMAツールとして世界中で利用されており、HubSpot=MAという認識を持つ人も少なくないかもしれない。しかし、先述した通り企業と顧客の接点には、マーケティング、セールス、カスタマーサービスなど全てのフロントオフィスが該当する。そのサポートをするために「MAだけではなくCRM、SFA、CMSなどプロダクトをリッチに進化させてきた」と廣田氏は振り返る。

photo HubSpotを利用する企業の多くは最初の入口としてMA(Marketing Hub)を選ぶというが、マーケティング活動をより効果的にセールス活動につなげるため「Sales Hub」を、その後のサポート体制強化により顧客体験を向上するため「Service Hub」を――と段階的に機能拡張を行い、CRMプラットフォームを構築するケースが多いという

 同社がHubSpotのサービスを「CRMプラットフォーム」と定義したのは20年9月。それまでも各種ツール提供を通し、包括的なビジネス支援を行ってきたが、あらためて自社プロダクト群の全体像を定義し直した形だ。

 なぜCRMが中核にあるべきなのか。あらためてそう問うと、「CRM(顧客関係管理)に蓄積される情報は、企業の財産となる」――廣田氏はそのように話す。

 「顧客にとって本当に価値のある活動を続けていくためには、しっかりと管理された顧客情報からインサイトを見つけ、顧客やマーケットにアプローチしていくことが重要です。そういう意味で、CRMに蓄積される顧客情報や顧客の活動記録などのファーストパーティデータは企業成長を促すための財産であるとわれわれは考えています」

 顧客が大量の情報を自ら取得できるとはいえ、“求められていない情報を一方的に”発信する手法は時代遅れになりつつある。それは、22年4月に施行された改正個人情報保護法、それによるサードパーティCookieの利用制限といった流れからも明らかだろう。

 「法改正に伴うCookie規制により、サードパーティデータを用いた活動は先行きが不透明になりました。ファーストパーティデータをどうビジネスに生かしていくのか、CRMをコアと捉えて戦略を検討することは非常に重要です」(廣田氏) 

HubSpot「CRMプラットフォーム」が実現する“分断のない”世界

 HubSpotのプロダクト群を整理すると、MAに該当する「Marketing Hub」、SFAに該当する「Sales Hub」のほか、「Service Hub」「CMS Hub」「Operations Hub」などが用意されている。これらが、「HubSpot CRM」を中心とし機能することで、CRMプラットフォームが構築される形だ。

 先述したように、マーケティングはMA、セールスはSFAなど部分最適化されたツールを利用している場合、蓄積される顧客情報もおのずとバラバラに管理されることになり、部門間でシステムのサイロ化が起きやすい。かといって、情報を統合するために新たな機能を用意すれば、その分、オペレーションは複雑化してしまう。

 HubSpotのCRMプラットフォームでは、中核にあるCRM情報を各部門(で使うツール)が拾いにいくような構図になる。そのため、「例えばマーケティング活動において顧客が興味を示した内容を、セールスが理解した上で営業活動にあたることができる。または、顧客とマーケティング、顧客とセールスとの間にこれまでにどのようなやりとりやコミュニケーションがあったのか把握した上でカスタマーサービスが問い合わせに対応できるようになる――このような世界を構築できます。一つのCRMで顧客情報を一元管理することは、業務効率化を図れるだけではなく、顧客体験の向上に大きく寄与します」(廣田氏)

photo HubSpotが提供する、CRMプラットフォームの全体像

 CRMプラットフォーム上にあるプロダクト群は、「全て自社開発にこだわっている」(廣田氏)ことも魅力だ。昨今では、一つのベンダーから提供されているプロダクト群であっても、実はその一部はM&Aにより獲得・統合されたツールである、という例も散見される。それ自体が良いか悪いかということではないが、非統一なUIは利用の過程で摩擦が生じやすい。

 その点HubSpotでは、統一されたUIにより摩擦のない体験を提供している。いうなれば、石畳のような石が“つぎはぎ”につながった道ではなく、塗装された道路のようにつなぎ目を感じることなくCRM上で複数のツールを利活用できるようなイメージだ。廣田氏は「ユーザビリティにおいても一貫性を重視した開発に努めている点は、HubSpotの大きな価値の一つ」と話し、笑顔を見せる。

「永続的に100万件まで無料」 独自のビジネスモデル、その真意は?

 HubSpotのCRMプラットフォームは、そのサービススタイルにも特徴がある。「HubSpot CRM」「Marketing Hub」「Sales Hub」「Service Hub」は豊富な機能を無料で利用可能となっており、「HubSpot CRM」に関しては永続的に100万件までの顧客情報を管理できる。

 これに対し廣田氏は、「HubSpotでは、事業成長を目指している企業を『スケールアップ企業』と定義しています。そしてわれわれのミッションは、CRMプラットフォームで『スケールアップ企業』の成長をご支援することです。スタートアップとして創業間もない時期は、メンバー採用や資金調達などに追われ、その先にビジネスが成長してくればサービス品質の向上を図ることはもちろん、業務オペレーションを見直すタイミングも出てくるでしょう。その成長過程をイチからサポートするため、HubSpotでは充実した無料サービスをご用意し、同時に事業成長にあわせた上位プランのご利用による機能の拡大もご案内できる、そのようなビジネスモデルを採用しています」と説明する。

 実際に、無料版から使い始め、事業の成長に合わせて段階的なアップグレードを選択するスケールアップ企業も多いという。このビジネスモデルはまさに、「相手から価値を受け取る前に、こちらから価値を提供する」という同社のインバウンド思考の表れといえるだろう。

顧客の「成功」「最適解」とは――CRMを軸に考える顧客体験の向上

 公式連携アプリも豊富だ。ERPといった基幹システムはもちろん、メール、カレンダー、ワークフローなどの業務システムまで、その数1090以上(22年5月現在)。廣田氏は、「われわれがご提供するのはフロントオフィスで利用するCRMです。しかし多くのお客さまは既にその他、多様なアプリを活用しており、オペレーションを俯瞰して見たとき、CRMとその他アプリを連携させた上で利用するシーンも想定されます」と説明。そのため、アプリのデベロッパーをはじめ、さまざまな販売パートナーとも協業しながら「HubSpotエコシステム」の強化にも努めているという。

 HubSpotエコシステム強化の中には、HubSpotユーザー同士のコミュニティーや、オンライントレーニング支援(HubSpotアカデミー)も含まれている。コミュニティーやトレーニングも一体となって顧客体験を支えていく。これにより、「ツール導入を目的にしない」CRMプラットフォームの利活用が進んでいく。

 コミュニティー上の声は、HubSpotにとっても大きな財産だ。改善を希望する意見は積極的に吸い上げて、米国本社のプロダクトチームと連携しながら対応策を検討することも少なくない。

 HubSpot Japan設立から約6年。「日本市場に適したサービスを提供できているか、そう考えると正直『まだまだやるべきことがある』」と、廣田氏はいう。今後は国内でニーズの高いアプリとの連携強化を拡充し、日本独自のコミュニティー活動にも注力するなど、日本マーケットに根付いた顧客の成功体験を共創していくことが大きな目標だ。

photo 「マーケティングツールのHubSpot」から、「CRMプラットフォーマー」へ。HubSpot Japanの挑戦は続く

 最後に廣田氏は、HubSpotのカルチャーとして「SFTC(Solve For The Customer)」という言葉を教えてくれた。意味は、「顧客にとっての『最適解』を考える」。そのためには、顧客の目標だけではなく、潜在的な課題やニーズ、顧客側から見た自社との関係性など一貫した「顧客視点」を持つことが重要であり、その基盤こそがCRMプラットフォームとなる。

 冒頭で述べたHubSpotの調査によると、CRMを導入している日本企業は34.8%。これは前年と比較して伸長傾向であり、同社への問い合わせも業種・規模に関係なく増えているという。この先、HubSpotのCRMプラットフォームが日本企業や顧客体験にどう活力を与えていくのか。楽しみに見守りたい。

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提供:HubSpot Japan株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年7月7日