コロナ禍以降、デジタルシフトの波が急速に押し寄せたこともあり、徐々に導入が進んできたSFA。営業支援ツールとして商談や顧客管理などに用いられているが、その実「ただの日報」「マネージャー層向けの部下管理」ツールにとどまっているケースは少なくない。「SFAにデータ入力している暇があったら、一本でも多く電話をかけたい」そう思われてしまう要因はどこにあるのか? 自社SFAを用いて部門横断、先進的な営業活動をしている、オラクルのセミナーから探る。
日本オラクルは、2022年7月28日、同社の次世代営業支援システム「Oracle Next Gen Sales(以下、NGS)」を紹介するセミナーを行った。
これは同年7月6〜8日に開催されたマーケティングの総合展「JapanマーケティングWeek」における、同社でクラウド・アプリケーション事業統括 CXクラウド事業本部 本部長を務める桑野祐一郎氏の講演「これからの営業スタイル『データドリブン・セールス』とは」をフォローアップするセミナーとして開催されたものとなる。
28日のセミナーでは、「今までの営業とどう変わる? 売上目標を達成に導くSFAとは」というタイトルで、スピーカーに同社CXソリューション・エンジニアリング本部の横山富氏を迎えデータドリブン・セールスを実現するNGSのコンセプトや、デモンストレーションを交えて紹介し、好評のうちに閉幕。ここでは、その内容をあらためて振り返る。
横山氏はまず、「複雑化する企業環境」について言及するところから始めた。従来、顧客との対話は主に対面で行われ、サービスを提供する側が圧倒的に多くの情報を携えて説明をしてきた。しかし、コロナ禍以降、ビデオ会議が浸透し、いまや情報もすでに顧客自らWebで収集できる環境が整っている。また購買やサポートはオンラインでも可能になり、顧客との接点は以前より増えているという変化も起きている。
製品はもはや「売って完了」ではなく、継続的なサブスクリプションモデルも登場し、顧客ニーズの多様化によりサービス自体の細分化が求められている。この複雑化する現代の企業環境は、営業担当者を取り巻く環境の変化にもつながっているといえるだろう。
このような環境の変化に対応するために、企業内で推進されているのが、デジタル技術を使ってビジネスを変革していくDXだ。横山氏は、「営業部門では平均して8つのデジタルツールを使っている」として、そのうちのトップ5であるメール、Web(検索)、電話、ビデオ会議システム、Office製品を挙げる。
このトップ5に、「営業支援システム(SFA)が入っていないのは気がかり」(横山氏)だ。海外では、営業担当者の66%は「SFAにデータ入力するくらいなら歯医者に行った方がマシ」と感じているという調査結果があるといい、SFAが実はあまり活用されていないという現状が見えてくる。日本も似たような状況で、横山氏は「実際にお客さまからも『日報としてしか使っていない』という意見を聞く」と、自身の体験を語った。
なぜSFAは使われないのか。そこには大きく分けて4つの理由があると考えられる。それが、「SFAの操作が複雑で使いにくい」「営業担当者がメリットを感じていない」「利用目的が曖昧で、効果を実感できない」「製品の検討が不十分」だ。
営業担当者の中には、機械やITに苦手意識を持つ人が意外に多い。入力が面倒だったり操作が難しかったりすると、利用率はなかなか上がらない。「日報を登録してもマネージャーが見てくれない」など、営業担当者がメリットを感じないという意見もよく聞くという。逆に、マネージャーが積極的にSFAを利用する部署では利用率が高い。「今のSFA利用はマネージャーの意識に左右されている」と、横山氏は懸念を示す。
また、SFAは導入すればすぐ効果が出るというわけではない。目的を明確にしておかないと、単なる日報ツールになってしまう。さらに、「機能が多すぎて使いこなせない」あるいは逆に「必要な機能がない」という声もある。機能を絞った安価なSFAは、最初は使いやすいが、複数の営業プロセスを扱えないなど機能が不足してくる場合がある。これらの問題点を解決できるのがNGSだ。
NGSは直感的で洗練された使い勝手を実現した、「営業担当者のためのSFA」(横山氏)だ。一般的なSFAはマネージャーが部下の活動をチェックし、管理する傾向が強いが、NGSは営業担当者にとっての使いやすさ、営業担当者が商談を成功させ、目標を達成することを重視した仕組みになっている。機能を豊富にそろえており、スモールスタートから事業部をまたがる案件にも対応できるという。
NGSの特徴的な機能は、「実行型営業ダッシュボード」「Oracle Redwood UX」「会話形式のアクションバー」「AIや機械学習」「包括的な顧客エンゲージメント」だ。
従来のデータ分析型ダッシュボードに対し、NGSのダッシュボードは、商談を成功させるため次に何をすればいいのかが分かる、行動を促すダッシュボードとなる。ポイントは「案件を受注するために、何をするべきか考えられる」こと、そして「すぐに実行できる」ことだ。商談、パイプライン情報、タスクリストが並び、例えば「商談」をクリックするとNGSから離れることなくメールを作成できる。画面の切り替えを極力減らしたユーザーインターフェイス(UI)は大きな魅力だ。
商談の進捗(しんちょく)に応じてタスクリストを登録できるほか、「スマート・リスト」には、アクセス頻度が高いものや期限が迫っているものなどからAIがフォーカスすべきと判断した項目を表示。これは、AIや機械学習機能に該当する。
NGSは目標が常に明確に表示されて、それに対する行動が分かる点が、日報管理や情報共有を重視した従来のSFAにないメリットだ。ダッシュボードやスマート・リストでフォーカスすべき顧客、商談、タスクを明確にして、営業計画のToDoを作って訪問し、分析するというPDCAをきちんと動かせる仕組みになっている。
マネージャーが日報を見る、見ないは、あまり関係ない。横山氏は、「大切なのは、ターゲットとする商談に対して何をするのかという営業計画があって、その上で行動すること。自分の手帳として使ってください。出社するとメールや手帳を見ると思いますが、効率のいい営業をかけるために、まずはNGSから1日を始めましょうというのがコンセプトの一つです」と話す。
NGSはBtoBアプリだが、BtoCアプリのような使いやすいUIを重視している。採用されているのは、マニュアルが不要なほどシンプルで直感的なUIを実現する「Oracle Redwood UX」だ。
「Oracle Redwood UX」は、使い手を中心に捉え、直感的に扱える洗練されたデザインになっている。人+データ+インサイトの組み合わせで使い手のモチベーションを引き起こし、コンテキスト、状況、役割を理解し使い手がより少ない労力で多くのことを成し遂げられるという原理で設計されたUIが特徴だ。
PC以外にタブレットやスマートフォンで使うことも想定しており、それぞれの画面サイズに対応する。CTI連携していれば、NGS内で電話をかけ、通話ログも記録できるという。
「スライドビュー」は、選択した項目に関して、画面下段に重要なアクティビティや推奨されるアクション、連絡先、資産、リード(見込み客)などを表示し、横スクロールでスムーズにチェックできるものだ。商談相手の情報が表示される「顧客360度ビュー」では、登録したデータややり取りしたメールなどがアクションリストに自動で追加されていき、SNSのニュースフィードのように時系列で履歴を振り返ることができる。メールの詳細はワンクリックでアクションリスト内に表示され、画面を切り替える必要がない。
また、Webブラウザにある検索バーのような「アクションバー」は、やりたいことを入力すると、関連する操作の候補が表示され、そのまま目的の操作に移行できる。従来は関連する項目の画面に移動し、そこで「作成」「編集」などのボタンをクリックしてから登録するといった流れだったが、アクションバーならこれらの手順を簡略化した上で実行できる。例えば「チーム」と入力すると、「チーム・メンバーの追加」「チーム・メンバーの表示」などと操作の候補が自動で表示され、目的の操作を選ぶと必要な画面がポップアップしてすぐに操作が可能だ。
包括的な顧客エンゲージメントについては、NGSはオラクルのERPと連携し、プロジェクト管理や受注情報、見積もりなどもNGSから見たり作ったりできる点が紹介された。基幹システムとも連動し、NGSからすべての機能を扱える。「営業担当者は営業活動に集中していればいい」(横山氏)だけだ。実際にオラクルでは、見積書の作成も、技術者への社内依頼も、そしてマーケティング部門からの見込み客データ受信も全てSFA上で行うといい、「すでに業務システムとして定着している」と横山氏は話す。
営業マネージャーや管理部門向けには、データ分析が手軽にできる「Oracle Fusion CX Analytics(以下、FAW)」が紹介された。
DXを進めていくと、SNSのデータ、動画や音声などのマルチメディアデータ、カスタマーデータ、各種センサーのデータ、メールといった文書データなど、膨大なデータが溜まっていく。それをうまく活用していくのがデータ・ドリブンだが、実行にまで至らないことも多い。
データを収集するには時間と費用がかかり、分析レポートで見える化しても、IT部門は「何がしたいの?」、現場は「何ができるの?」と意思疎通が難しい。レポートで状況が分かっても、その原因究明をデータサイエンティストにお願いしたり、経験と勘に頼ったりする。
この原因究明に力を発揮するのがFAWだ。従来の分析レポートは見える化をするだけだが、FAWはドリルダウンして以下図のように項目を掘り下げていくことで原因を究明できる。
FAWではデータウェアハウスを構築し、Oracle Fusionのデータや他社のデータも入れて分析可能。マーケティング、セールス、サービス、ERP、HCMを横断した分析ができるツールになっている。データサイエンティストがいなくても原因を究明できるのが魅力だ。
また、横断して分析できると、マーケティングの効果をしっかりと把握できるだけでなく、逆算して、来期に目標の数値を実現するために必要なマーケティング施策を検討できるようになる。FAWを使うと、これらの取り組みが格段に楽になるというわけだ。
経営層にとって重要なのは、営業担当者1件1件の活動よりも来期のプラン構築だ。どの領域、どの製品に何人のリソースをかけ、何%成長させるのか。経営層はプランニングをし、日々の着地点を管理する立場だ。セミナー最後には、そんな経営層向けにオラクルの「Sales Planning Cloud Service(以下、SPCS)」が紹介された。
売上予測管理は毎週、毎月実施するのが一般的だが、「SFAが導入されているのにも関わらず、Excelで管理しているところもある」(横山氏)。NGSと連結するような形でプランニングと着地点の管理をしていけるのがSPCSだ。
目標が高すぎると営業のモチベーションが下がり、逆に目標が低すぎるとコストばかり多くなるが、SPCSは適切な目標を機械学習や統計学を使って予測できる。また、データベースや機械学習で精度の高い売上予測が可能で、適正な人員配置、在庫、マーケティング・プロモーションにもつなげられるという。
NGSはすでに米国では発売されている。日本での発売も、日本語対応をはじめ、段階的に進んでいる状況だ。
NGSはオラクル自身ももちろん利用している。同社の営業担当者のほぼ100%が、「前世代のものを継続使用する」というオプションも用意されている中、このNGSに切り替えたという。使いやすく役立つことが、同社の営業活動にて裏付けされた格好だ。実際に業務効率化に効果を発揮しており、現時点で生産性が25%アップしているというが、横山氏は「営業担当者からの要望で今後も継続して機能を改善していく」と今後の展望を語る。
実績に裏打ちされた次世代SFAのOracle Next Gen Sales。SFAを導入済みの企業も、まだ導入していない企業も、DXを推進しているなら見逃せないサービスだ。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年9月28日