日経新聞社のCX戦略実例も 富士ソフトとオラクルが導く「次世代アフターサービス」が企業成長のエンジンにDX時代、「顧客目線」にどう立つか?

IoTの普及やデジタル化に伴い、収集されるデータが加速度的に増加している。現在では、大量のデータをアフターサービスに活用することで、新たな付加価値の提供が比較的容易となった。データを利活用しながらより良い顧客体験を提供し続ければ、売上への貢献、ひいては新たな価値創造につながるはずだ。DX時代に求められるCX向上策とはどのようなものなのか?

» 2022年09月01日 10時00分 公開
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 新型コロナウイルスをきっかけとしたビジネス環境の変化により、DXが加速している。購買行動は対面から非対面へシフトし、顧客体験(CX)がより重視されるようになった。今やB2C企業だけでなく、点検・修理・工事・配送といったフィールドサービス業務を行うB2B企業においても、顧客にパーソナライズした対応が求められている。

 そこで最近、重要度が増しているのが、問い合わせ対応を始めとするアフターサービスだ。日本オラクルと富士ソフトは、2022年6月29日に共催オンラインセミナー「アフターサービスにおける業務改善とは」を開催。ここからは、独立系ITベンダーである富士ソフトと、CXソリューションを提供する日本オラクルが講演で語った、CX向上とアフターサービス変革のポイントを、成功事例を交えながら紹介する。

今こそアフターサービスの強化を――その理由は?

 最初に登壇した富士ソフトの戸谷和貴氏は、まず一般的なアフターサービスといえば、問い合わせ対応、部品や消耗品の交換、無料修繕、点検・巡回、クレーム対応などがあることを説明した。近年アフターサービスが重視されるようになった理由としては、「SDGsの浸透により、大量生産・大量廃棄からの脱却が求められるようになった」点に言及。製品を長く使い続けることがサステナブルであり、そういった姿勢や志向のある企業が市場に受け入れられる時代になってきていると説く。

 だからこそ、アフターサービスの強化は今こそ取り組むべき課題であり、今後企業が価値を提供し続け生き残っていくための戦略の軸になる。例えば、「レクサスはオーナー専用のアフターサービスを開始し、製品の長期的な使用を促しつつ顧客の囲い込みに成功。高い顧客満足度を獲得している」(戸谷氏)といった事例もある。

 そして2つ目の理由には、デジタル化によるアフターサービスの高度化を挙げた。IoTなどにより収集できるデータが倍増したことで、データを活用した能動的なアフターサービスは今、以前より提供が容易だ。成功事例として戸谷氏が紹介した小松製作所では、製品から徹底的に収集したデータを基に、顧客の建設生産プロセス全体を把握しているという。それにより効率化につなげたほか、データを基に測量から検査まで施工全体の最適化を図ることで、問い合わせを待つだけでない能動的な課題解決への転換に成功している。

 しかし、実際にアフターサービス強化を実現するには課題もある。例えば、「アフターサービスに注力するほど業務コストが増加する、現場の作業員が持つ知識が属人化していてナレッジが共有されていない。また、顧客満足度の向上方法が分からない、アフターサービス部門はコストセンターという認識があり投資対象になりづらい」(戸谷氏)などが主な課題例だ。

photo 富士ソフトが考える、アフターサービス強化における課題。画像右端は、講演する同社のシステムインテグレーション事業本部 インフォメーションビジネス事業部 第2技術部 第5技術グループ 戸谷和貴氏(出所:富士ソフト資料より)

 こういった課題を解決するためには、業務効率化に向けた仕組みづくりやナレッジの活用、能動的なトラブル予測やサービス提案、過去の問い合わせデータの有効活用といった施策が必要となる。それらを可能にするのが、オラクルのCXソリューション「Oracle Field Service」と「Oracle Service」だ。

「その作業、いつ始まっていつ終わるの?」 フィールドサービス業務の課題は多数

 Oracle Field Serviceの説明は、日本オラクルの曽我政史氏によるセッション「Oracle CXが変えるフィールドエンジニア業務」で語られた。

 曽我氏はフィールドサービス業務における課題として、紙やスプレッドシート上で行動・進捗(しんちょく)が管理されており、担当エンジニアが外出してしまうとステータス確認が困難である点を指摘。「いつエンジニアが到着するのか」「いつまでかかるのか」が明示されないまま作業工程が延びるなどして、顧客はフラストレーションを溜めていく。これはまさに、CX低下を招く環境だ。

 曽我氏は、「サービス提供の運用上のメリットや適したリソース配置、それによるコスト削減だけではなく、サービス領域でいかにCXを向上させて、顧客をつなぎとめるかが重要」だと強調する。変革ポイントは、顧客の要望や状況を適切に把握して、顧客に合わせた対応をすることだ。そうしてCXを向上できれば、継続的なサービス利用のほかアップセル・クロスセルにもつなげることができる。

photo 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 CXクラウド事業本部 第2営業部に所属する曽我政史氏が解説した、業務の変革ポイント(出所:日本オラクル資料より)

 CX向上に寄与するソリューション選びにおいては、費用対効果が高く、実績の多いサービスを選定したいが、その点Oracle Field Serviceは、多くの導入企業が高い成果を上げている。例えば世界で合計6000ものサードパーティ業者を統合管理しているシスコシステムズでは、Oracle Field Serviceによってエンジニアの大規模なリアルタイムディスパッチを実現。加えて、SLAモニタリングを100%向上させ、「顧客の契約情報に合わせたサービス提供ができるようになり、エンジニアのオーバーコミット解消を果たせた」(曽我氏)という。

※Service Level Agreementの略称で、サービス品質保証を指す

 ほかにも、1日あたりに完了する仕事が46%増加した企業、FAQの活用によって不要な訪問を20%削減した企業、そして顧客満足度が98%向上した企業など、Oracle Field Serviceの高い費用対効果は各社で事例として挙がっている。

 Oracle Field Serviceの優位性について曽我氏は、「刻々と変わるフィールドエンジニアのアクティビティをリアルタイムで計測することで、次の作業への影響を最小限に抑えることができる。加えて、各エンジニアの過去作業実績を蓄積、AIによるセルフラーニングにかけることで『最も効率の良いリソース配置』に役立てることも可能だ」と話す。これらの機能により、「作業予測」も実現。各エンジニアがいつ作業を開始〜完了するのか、高精度で予測することで「顧客の期待値コントロール」ができるため、状況が見えないことによる顧客のフラストレーションも解消される。

ALTALT Oracle Field Serviceの優位性(左)と、生み出すメリット(右)。Oracle Field Serviceのメリットは、「サービスレベル向上=CX向上」だけではなく、適切なリソース配置による「従業員の負荷軽減」、そして作業完了数増加、再訪問や移動距離を抑えられることなどによる「関連コスト削減と収益向上」など多数ある(出所:日本オラクル資料より)

 なおOracle Field Serviceは単体でも導入可能だが、コールセンター向けCRM、Oracle Serviceと組み合わせることでより効果を発揮できる。Oracle Field Serviceと併用することで、顧客情報からの問い合わせ受付・管理、そしてディスパッチ、サービス提供までシームレスな流れを作ることができるのだ。

バラバラだった顧客対応システム 日経新聞社コールセンターが抱えていた課題

 曽我氏に続いて登壇した富士ソフトの牛込潤氏は、日本経済新聞社(以下、日経新聞社)の事例紹介にてOracle Serviceの解説をスタート。同社は、富士ソフト協力のもと18年からOracle Serviceを導入し、コールセンター変革を実現、顧客満足度向上を果たしたのだという。

 日経新聞社は、日経新聞宅配版・電子版それぞれにコールセンターを持つが、以前はいくつもの課題を抱えていた。

 もともと、メール、チャット、電話にて問い合わせ対応を行っていたが、新たに宅配版と電子版のコールセンターを設けたことで、業務そのものが分割状態に。ナレッジ共有のほか、Webサイト上のFAQと各コールセンターとの連携もできていない状態だった。また、各コールセンターと他部署間でのナレッジ共有はファイル管理にて行われていたため、タイムラグが発生する。他部署が顧客対応をする際に齟齬(そご)が出てしまう状況が続いていた。

 牛込氏は、「これらの課題を整理した上で、当社にて4つの解決策を提案。それを実現する最適解として挙げられたのがOracle Serviceであり、オラクル社と連携しながら日経新聞社さまの導入支援に乗り出した」と当時を振り返る。

いざOracle Serviceを導入、コールセンターはどう変わった?

 まず、Oracle ServiceのAI-FAQ機能を生かすことで、ナレッジの蓄積をFAQにフィードバックすることに。これにより、FAQが常に成長していく仕組みを作り出すことに成功した。加えて、宅配版と電子版のコールセンター(オペレーター)を統合することで、お互いに溜めていたナレッジを共有でき、運用コスト削減につなげられたという。

photo 日経新聞社のコールセンター変革例。画像右端は、講演する富士ソフトのシステムインテグレーション事業本部 インフォメーションビジネス事業部 第2技術部 第5技術グループ 牛込潤氏(出所:富士ソフト資料より)

 なお、他部署へのナレッジ共有は社内向けWebサイトに移行したことで、全社で内容を把握しやすくなり、検索性も高まった。現在は、これらを購買センターシステムや読者サービスセンターとデータ連携することで、センターからインシデントを受け取って能動的なクレーム対応も可能となっている。

 その結果、カスタマーの自己解決率は30%上昇、20万件に達していた問い合わせ件数は10万件に半減した。日経IDにログインしてFAQを見られるようにしたため、ユーザーが見たアンサーをコールセンター側で確認できるようになり、パーソナライズされたオペレーター対応も実現している。牛込氏は「入電数が減ったことでコールセンターの人件費削減にもつながった。何より、ナレッジを蓄積→FAQの質が向上→顧客満足度が向上という流れを作ることができたのは大きな成果だ。会員数を減らさない、購読者数を維持するという経営戦略にも寄与する取り組みとなった」と分析する。

システム導入はあくまで次世代アフターサービスの「土台づくり」

 日経新聞社の一連の取り組みは、「2020 CRM ベストプラクティス賞」を受賞するなど、「ITを活用した顧客中心経営」のお手本として高く評価された。しかし牛込氏は、アフターサービスを考えると「システムを導入して終わりではない」と念を押す。その上で、同社が考える「次世代アフターサービス」例を紹介し、コールセンターのさらなる進化に期待を寄せる。

※「一般社団法人CRM協議会」主催。 ITを活用した顧客中心経営に向けて企業が顧客と長期的な関係を築く経営手法(CRM)で成果を上げている企業・組織・団体を表彰するもの

 「日経新聞社さまのように“土台”を作ることができれば、CRMに蓄積されたVOCデータを基にリアルな市場傾向を得られるようになるため、デジタルマーケティングへの活用が期待できる。市場や潜在ニーズを分析し、営業とも連携することで、オペレーターがサービスに関する情報の啓蒙活動をより確度高くできるようになり、見込み客獲得や売上貢献につながるだろう」(牛込氏)

 続いて牛込氏は、Oracle Field Serviceを活用した能動的なアフターサービスの実現にも触れる。IoT機器が障害情報を検知して発したアラートをオペレーターが受け取り、Oracle Field Serviceを経由してフィールドエンジニアに業務を依頼。顧客が障害を問い合わせする前に、エンジニアが現場に行き障害を解消できるようになる。あわせて、Oracle Field Serviceに蓄積されたナレッジはCRM(Oracle Service)を通してFAQにも反映されるため、カスタマーの自己解決率向上にもつながる。

 これまでコールセンターは、売上を生まないコストセンターとして認識されやすく、業務改善への投資がされづらいという側面があった。しかし、CX向上はDXにおける重要な要素であり、コールセンターは利益を生む投資部門になる高いポテンシャルを秘めている。これは、DX時代の新常識といってもいい潮流だろう。国内ではまだ事例が少ない今こそ、クラウドソリューションを活用したCX向上に取り組むには絶好のタイミングといえるかもしれない。

日本オラクルと富士ソフト、両社が生み出すシナジーとは

 富士ソフトは国内企業における取引実績が豊富で、要件定義から導入後の保守までワンストップで対応できることが強みだ。独立系ITベンダーだからこそ持ち得るノウハウを基に、顧客ファーストのパッケージ選定や、先端技術の実用化転換にも積極的である。牛込氏は「これら当社の強みと、データ活用に関する知見を持つ日本オラクルで手を取り合うことで、お客さまにDX・CXの強固な土台づくりをご提供可能になる」と話す。

 最後に牛込氏が「ただ単に今の業務を変えるのではなく、今は一歩先を見据えた新しい仕組みづくりが必要。それによって5年10年と成長していけるシステムをお客さまと一緒に作っていく、その手伝いがしたい」と語ったように、現在は予測不能な時代にあり、アフターサービスの強化による既存顧客の維持、潜在ニーズの獲得は喫緊の課題だ。

 その上で、オラクルのCXソリューションと富士ソフトのコンサルティングの組み合わせは、CXを向上させDXを実現する大きな推進力となることに疑いの余地はない。アフターサービス変革によって生産性を向上させ、新たな価値創造につなげたい企業にとっては頼もしい味方となるはずだ。

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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年9月30日