2022年1月に施行された電帳法と、23年10月に施行を控えているインボイス制度。電帳法においては、「電子取引」が義務化となり全企業が「うちは関係ない」とはいえない状況になった。またインボイス制度についても、今まで通り仕入税額控除を受けるためには対応が必須となっている。いまだ未対応企業が多い、両法制度。準備を進めるにあたり、何から着手するのが正解なのか?
改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)とインボイス制度について、「全く聞いたことがない」という企業はほぼないだろう。しかし、「対応が済んでいる」という企業は、まだ少ないという現実がある。
実際に、関連ソリューションを提供する富士フイルムビジネスイノベーションジャパン 菊池史朗氏に話を聞いてみると、「当社では既に複数回、電帳法とインボイス制度セミナーを開催しているが、参加人数は累計2万人を超え、多い回では500人以上の参加者数にのぼるなど高い関心を集めている。しかし、22年4月以降に実施した参加者アンケートでは、8割が電帳法には未対応と回答するなど対応の遅れは顕著だ」という。
また、「両法制度への対応は、同時に実行することが重要なポイント」だと同社は語る。その理由を含め、対応ポイントを聞いた。
原因について菊池氏は、「企業規模によっては、システム投資に対して出足が鈍ってしまうという課題がある。例えば情報システム部門に人数が確保されており、対応方針を検討する体力を持つ企業もあれば、いわゆる“ひとり情シス”により業務を切り盛りしている企業もあり、後者の場合は検討を進める体制は整いづらいだろう」と分析する。
加えて、そもそも電帳法対応はハードルが高いと感じている企業もまだ多い。簡単に内容をおさらいすると、電帳法とは、国税関係帳簿書類を正しく電子保存するための法律である。大きく「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」と3つ区分があり、このうち電子取引については23年12月末まで宥恕(ゆうじょ)期間が設けられているものの、「原則、22年1月より義務化」となっている。
電子取引は、請求書、見積書、契約書、領収書といった取引にまつわる書類を電子で受け取った場合、紙ではなく電子で保存しなければならないというものである。宥恕期間は、あくまで「対応できていなくても大目に見る」期間であり、対応しなくてもよいわけではない点は、注意が必要だ。
また電子取引には保存要件があり、例えば、受け取った請求書のPDFをサーバに格納すればいいだけではない。具体的には、「検索機能の確保」「訂正・削除の防止措置」の対応が必要だ。詳細※は以下に記すが、ここにハードルの高さを感じ、対応が進まない企業は多いだろう。
<検索機能の要件>
- 取引年月日、取引金額、取引先を検索の条件に設定すること
- 日付または金額の記録については、範囲指定をして検索できるようにすること
- 2つ以上の項目を組み合わせて検索できること
<訂正・削除の防止措置>以下のうちどれか一つに対応すること
- タイムスタンプが付された書類を受け取る
- 書類を受け取ったあと、遅滞なくタイムスタンプを付す
- 訂正削除の記録が残る、または訂正削除ができないシステムを利用する
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける
※国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」を参考に抜粋
そしてインボイス制度は、仕入税額控除を受けるための新しい制度を指す。23年10月以降、取引先から「適格請求書(=インボイス)」を受け取らなければ仕入税額控除を受けられないというのが主な内容だ。適格請求書とは、「登録番号」と「適用税率」「消費税額等」が記載されている請求書を指す。登録番号は、適格請求書発行事業者として事前申請の上、発番する必要がある。なお、申請できるのは課税事業者のみであり、申請期間は23年3月31日まで。申請締め切りまでは残り約半年しかない。
電子取引の宥恕期間が終わる23年12月末と、インボイス制度が施行される同年10月は時期が近いこともあり、同時対応が推奨されているが、その必要性について、菊池氏は次のように話す。
「両法制度とも請求・経理業務領域に関係し、対応にはシステム導入または改修が必要になる。そのため、別々に検討を進めるとシームレスなシステム連携ができない、過剰なシステム投資になってしまうといった問題が起こりうる。また、システム導入や改修による業務変更の混乱を抑制することも大切だ。システム投資をし、生産性が下がってしまっては本末転倒である。両法制度への対応要件を踏まえた請求発行〜会計処理にいたる業務設計・システム構築の検討を同時に進めていくことが重要であり、業務への影響を最小限に抑えることができる」
また、適格請求書の発行形態は紙でも電子でもよいが、インボイス対応で販売管理や会計システムを最新化した際、請求書も電子発行に切り替える企業は今後増えることが予想される。そうなれば、受け取る側は電帳法への対応が必須となる。
では、具体的には何から始めるのが正解なのだろうか? 同社が推奨するのはスモールスタートを切ることだ。
「まずは、取引データの電子保存義務化への対応を終わらせることに目を向けたい。つまり、電子取引の保存要件を満たしたシステム選定・導入が必要になる。スキャナ保存の要件緩和を受け、同時に『今ある紙書類の電子化』を進めることを検討する企業も多いが、それでは検討に時間がかかり、システム投資の規模も大きくなる。既存の紙書類の電子化は、業務のデジタル化を推進する上で検討が必要になるケースもあるが、現時点で義務化ではない。そのため、電子取引のあとで“段階的に”必要性を検討し着手することが望ましい」(菊池氏)
インボイス制度への対応については、売り手と買い手、両面から考える必要がある。まずは売り手としての対応として、適格請求書を発行するために事業者登録を完了させ、必要に応じて請求書発行システムの導入・改修を検討したい。事業者登録は23年3月31日までと期限があるため注意が必要だ。買い手としては、会計システムの改修だけでなく、電子で受け取った適格請求書の保存先を検討する必要がある。電帳法改正により、電子で受け取った請求書は、電子取引の要件をクリアしているシステム上で保存する必要があるためだ。
例えば富士フイルムビジネスイノベーションジャパンでは、「10万円からできる電帳法ソリューション」として、「DocuWorks 文書情報エントリー2(以下、DocuWorks)」「Working Folder エビデンス管理オプション(以下、Working Folder)」を用意する。その名の通り、DocuWorksは受け取った電子文書を登録するためのツール。電子文書をドラッグ&ドロップで読み込ませ、プレビューを見ながらマウス操作にて「検索機能の要件」を満たすための属性を設定できる。菊池氏は詳細について「OCR機能を搭載しており、マウス操作だけで自動的に電子文書上の文字を判別し、取引年月日、取引金額、取引先を属性として入力できる。また属性に応じて、自動的に指定フォルダに保存することも可能だ」と話す。
Working Folderは、「訂正・削除の防止措置」に対応したクラウドストレージ。DocuWorks画面からドラッグ&ドロップで簡単にWorking Folderへファイル登録できるほか、DocuWorksで入力した属性はWorking Folder上での検索条件に利用できる。「どちらも当社製品なので親和性が高い」(菊池氏)といい、複数のシステムを行ったり来たりする必要なく、シンプルな操作で電子取引に順守できることも大きな魅力だ。
DocuWorksやWorking Folderは、先に紹介した通り「10万円からできる電帳法ソリューション」として提供されているが、ここまで低コストからスモールスタートできるのには理由がある。
同社はe-文書法※が施行された05年当初より、同法に対応したドキュメントソリューションを提供し続けてきた。このドキュメントソリューションは、電子文書を一元管理できるドキュメント・ハンドリング・ソフトウェアであるDocuWorksや、文書管理・共有のクラウドサービスであるWorking Folderを組み合わせて、法改正に最適化する形で進化を続けてきたという。法対応をはじめ、電子文書管理に関するノウハウを蓄積してきた歴史があり、同時に多くの関連ソリューションを提供し続けてきた同社だからこそ、柔軟な提案、低コストでのサービス提供を実現できているといえそうだ。
※電子文書保存を定めた法律で、国税関係帳簿書類のほか、医療、建築、不動産などその他の法定保存文書も含む。電帳法とはあくまで別の法律だが、密接に関係する
なお、「10万円からできる電帳法ソリューション」の実績としては、ただ法対応を果たせただけではなく、電子化による効率化により月67時間の作業工数削減、加えて月約23万、年約277万円のコスト削減を実現した成功事例などもあるという。
インボイス制度対応ソリューションにおいても、同社が培ってきた法対応への実績が生きる。強みは、現在のシステム環境に応じた提案力だ。具体的な提供ツールは他社製品になるが、実際にインボイス制度へ対応する際、これらをどう選べばいいのか――選定に困る企業に対し、法制度に関する知見を持つ立場としてヒアリングを実施。スムースな導入・運用を見据えたアドバイス〜システム選定を行っているという。
菊池氏は、「現状、どのように請求書を授受しているかをお伺いし、おすすめパターンをご用意している。例えば、請求書はExcelで作成発行、会計システムはレガシーなオンプレミスという場合は、請求機能を持った会計クラウドシステムへの移行を推奨することもあるし、場合によっては今のシステムを生かしオプション追加をするだけで済むケースもある。新しいシステム導入だけを進めるのではなく、あくまで“現状”を基点にコスト、手間が最小限に済む方法を検討することを重視している」と話し、同社の柔軟な対応力に自信を見せる。
インボイス対応を機に、電子での請求も増えてきているという。「月額費用も低コストから始められる会計・請求機能をインクルードしたクラウドサービスや、請求機能に特化したサービスも出てきており、中小企業の導入が進んでいる。そのため、インボイス対応をきっかけに電子での請求発行の検討もお客様へ提案している」(菊池氏)
請求の電子発行による効率化によって、郵送費や作業工数削減も含め年間71万円の削減効果が期待できるケースもあるというから驚きだ。
なお、電帳法、インボイス制度への対応に関しては国も中小企業支援に積極的で、IT導入補助金が用意されている。
「通常枠のほか、デジタル化基盤導入類型が設けられており、前者は電帳法対応策として活用でき、後者は差し迫ったインボイス制度への支援策として22年度に新設された枠になる。通常、このような補助金制度は審査が厳しいが、デジタル化基盤導入類型に関しては現状で採択率90%以上であり、当社としても活用を推奨している」(菊池氏)
IT導入補助金は、「IT導入支援事業者」として登録が済んでいるベンダーが一緒に交付申請を行う必要があるといい、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンはもちろん、その資格を有している一社だ。採択可否はIT導入支援事業者のサポート体制にも左右されるというが、現状、同社が支援している企業の採択率はデジタル化基盤導入類型においてほぼ100%をキープ。同社の支援力が数字として表れているといえるだろう。
菊池氏は最後に、次にように話し締めくくった。
「電帳法やインボイス制度、そしてDX推進など、現在企業が直面している課題は非常に多く、そして複雑だ。何から着手していけばいいのか迷うことも、現場負担を最小限に抑えながら低コストによる対応を目指すことも当然であり、当社としてはそういった個社ごとの事情をしっかりお伺いした上で、ベストプラクティスをご提案したいと考えている。システム選定から補助金支援まで、多角的なご支援ができる用意があるので、ぜひ一度ご相談していただきたい」
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年9月18日