“データの力”で、世界をよりよい場所にしたい――東芝が描く、デジタルエコノミー推進への道筋とは

» 2022年09月15日 10時00分 公開
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 「人と、地球の、明日のために。」を経営理念に掲げ、1875年の創業から受け継いでいるベンチャースピリットを原点に、「新しい未来を始動させる。」ことに一貫して取り組む東芝。その東芝グループで、デジタル事業をけん引する役割を担っているのが東芝デジタルソリューションズだ。2022年3月に東芝の執行役上席常務・最高デジタル責任者(CDO)および東芝デジタルソリューションズの取締役社長に就任した岡田俊輔氏に、デジタル事業の展望や今後の経営ビジョンなどを聞いた。

東芝 執行役上席常務 CDO、東芝デジタルソリューションズ 取締役社長の岡田俊輔氏(東芝デジタルソリューションズ提供、以下同)

デジタルによる“新しい未来を始動させる。”ために

――22年3月、東芝の代表執行役社長 CEOに就任した島田太郎氏から、東芝デジタルソリューションズの社長を引き継がれました。まずは新社長として、今後の経営の方向性についてお聞かせください。

岡田社長: 目指すところは東芝グループとして共通しています。「人と、地球の、明日のために。」という経営理念のもと、私たちの存在意義(パーパス)は「新しい未来を始動させる。」です。世界をよりよい場所にしたい、そう考えています。

 東芝が経営危機に直面する中、東芝グループの30代の若手を中心に、東芝の存在価値について徹底的に議論を行い、経営層からのフィードバックなども経て、新しい理念体系を作り上げていきました。その中でたどり着いたのは、この“東芝人”として共通する思いなのです。

 では、東芝デジタルソリューションズでそれをどう推進するのか。17年7月から分社体制を採る東芝グループですが、東芝グループがこれまでさまざまな事業を通じて培った知見・技術・お客さまとのつながりは貴重な資産です。当社ではこれらの資産をベースに、「データの力」を最大限に生かし、世界をよりよい場所にしたいと考えています。当社の“デジタル”と、さまざまな事業分野の知見・実績を持つグループ各社の“フィジカル”が連携したサイバー・フィジカルシステム(CPS)テクノロジーによって、データの力を引き出し、さまざまな事業領域のお客さまにデジタルソリューションを提供していきます。

DE、DX、QXが指し示す、デジタル事業の方向性

――東芝では、デジタルエコノミーの発展に向け、DE(Digital Evolution)、DX(Digital Transformation)、QX(Quantum Transformation)という三段階での事業モデルの変革を掲げています。どういった狙いがあるのでしょうか。

岡田社長: 島田が東芝に来てからずっと話している言葉があります。「DXとはプラットフォーマーになることだ」と。しかし、プラットフォームはすぐにはできません。

 まず、プロセス改善やコスト削減など、既存のバリューチェーンをデジタルによって効率化・最適化するなどして業務課題を解決するDEは、東芝オリジナルの言葉です。世の中一般にはこのDEをDXと称して取り組んでいることが多いと感じています。

 DEによる情報のデジタル化と蓄積によりDXへの下地は整えられますが、現実問題として全ての業務についてDXを推進できる、推進すべきとは限りません。利益拡大やコスト削減につながるのなら、DEだけでも企業にとって十分に価値があり、しっかりと支援することがわれわれの責務になります。

 一方で、DEでたまってくるデータ、多様なビジネスモデル。こういったものを集約して、マッチングシステムができるようなプラットフォーム化により、今までにない新しい価値を創出していこう。東芝ではこれをDXと表明をしています。

 DEの成功なくしてDXは実現できません。そこで、まずはDEを「一丁目一番地」として業務改善を確実に支援しつつ、そこから生まれるデータの力を生かしたDXで未来へのさらなる課題解決につなげていく――。その先には量子コンピュータに代表されるような、世の中にパラダイムシフトを引き起こす量子技術によるQXも見え始めています。

 東芝グループで実施している、デジタルに関するeラーニング研修では、昨年度から島田がDEとDX、QXの違いやそれぞれの意義を説く動画などを新たに追加しています。また、社員の意識改革の一環として、DE、DXの「自分ごと化」にも早々に着手しています。

 DE、DX、QXという変革ビジョンを全社員に浸透させることで「新しい未来を始動させる。」ことができる、という信念のもと事業を主導している最中です。

デジタルエコノミーの発展、事業環境の変化を捉え、データの力を生かす東芝のデジタル戦略

DEからDXへ、サービスを進化させたソリューション

――DXの「自分ごと化」とはどういった取り組みでしょうか。

岡田社長: DXによる具体的なゴールが描けず、DXを“他人ごと”と捉えてしまうことが多いのではないかと感じており、これでは残念ながらデジタルによる変革という発想は出てきにくい。

 とはいえ、当社も同様でした。そこでDXの「自分ごと化」を醸成するため、「みんなのDX」という社内ピッチ大会を実施し、工場や保守・メンテナンスなどの現場を含めたあらゆるグループ社員から、デジタルを使った業務改善のアイデアを募る活動を展開してきました。すでに5回目を数えますが、勝手を知っている業務だからこそ、見直しに知恵を絞ることで実践的な勘も養えます。このピッチ大会での優れたアイデアには実行予算が付くこともあり、今ではDEからDXに移るプロセスまで盛り込まれるほど内容が磨かれています。その中で、デジタルへの理解も十分なレベルまで向上しています。

――そのように蓄積した取り組みを足掛かりに、現状では、どのようにDE、DXのサービス提供に取り組まれていますか。

岡田社長: 戦略調達ソリューション「Meister SRM」と、本年度中に提供開始を予定しているMeister SRMの新サービス、サプライヤポータルをご紹介します。

 Meister SRMは、東芝自身の調達業務の高度化を実現するために生まれた、ベンダー選定や見積の取得、評価など紙ベースの業務をデジタル化したDEツールです。約15年前に開発し、社内の評価も非常に高かったことから、サービスとして外販しました。すると、部材コストやサプライヤ情報などを一元管理し、効率的に活用できる点が高く評価され、今では調達プロセスが類似する電機・電子のほか、自動車、消費財などの幅広い製造業のお客さまに高い評価を頂いています。つまり、自社のDEの横展開でお客さまのDEを後押しできているわけです。

 また、サービス化に向けて取り組んでいるサプライヤポータルは、ある気付きから生まれたDXサービスです。Meister SRMでは運用の結果、調達のビッグデータが生成されます。そのデータの視点を変えたり、あるいは輸送手段などの情報を付加したりして分析すると、これまで想定していなかったBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)やサプライヤ同士のマッチング、サプライチェーン全体のGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出量の把握などに応用でき、社会課題の解決に活用できるようになります。これこそデータから新たな価値を生む、DEからDXへの進化の典型例でしょう。それぞれの企業が持つ経験とノウハウを、ネットワークを介してサービスとして共有して、フィードバックするという具合です。

東芝の技術から生まれるDXの種と育み方

岡田社長: 一方で、研究開発によってDXの種が登場するケースもあります。代表的な例が、プライベートブロックチェーン「DNCWARE Blockchain+」です。このサービスは、高度なセキュリティを担保するブロックチェーンを独自開発したことに端を発しています。

 東芝のCDOも兼務する立場から語弊を恐れずに言えば、デジタルは道具でしかなく、大切なのはそれをどう使いこなすかにあります。その点を踏まえ、DNCWARE Blockchain+ではデータ保護の信頼性はもちろん、ユーザー向け開発ツールも事前に用意するなど、使いやすさにも大いにこだわりました。その結果、自治体における契約事務のデジタル化の実証実験をはじめ、相続手続きのオンライン支援や物流トレーサビリティーのサービス基盤として採用いただけるなど、ユースケースの開拓も着々と進んでいます。

 DX時代のビジネスでは、企業間を結ぶ、あるいは仲介する「プラットフォーム」が鍵を握ります。Meister SRMのように圧倒的な市場シェアを持つ実績があれば独自でビジネスモデルを形成することも可能ですが、そんな事業はなかなかありません。そこで自らの技術と東芝では持ち合わせない技術を掛け合わせて創り出すエコシステムの形成に注力しています。

 また、当社では、IoTの仕組みをノンプログラミングで構築できる共創型IoTプラットフォーム「ifLink」などの提供を通じて、エコシステムの形成に取り組んでいます。ifLinkでは仕組みの全てをオープンにするという制約のない使いやすさが高く評価されています。ifLinkを軸として、共創イベントやアイデア発想を行う「ifLinkオープンコミュニティ」には現在130社以上が参加しています。そこでの活発な議論は、新たなイノベーションやifLink上でのサービス創出につながっています。

 技術は使ってもらって初めて価値を発揮します。その点まで織り込み、自社だけでなくお客さまのビジネスの高度化に取り組むというのが、有効なアプローチになります。

量子技術で目指す、新たな国内産業の創出

――QXの領域についてはいかがでしょうか。

岡田社長: 東芝は20年以上前から量子技術の研究開発に取り組んできました。量子技術の社会実装の本格化は早くても30年ごろからといわれており、まだまだ先の技術である一方、実用レベルに達しつつあるものも一部で存在します。22年4月より英国通信大手のBTとの協業で商用サービスの提供を開始した「量子暗号通信」や、量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+」が代表です。

 私たちは、量子技術の発展が、複雑化する社会課題解決に大きく貢献できると確信しています。SQBM+は、正確には量子コンピュータではなく、東芝独自のアルゴリズムにより、一般的なコンピュータで量子コンピュータの挙動を再現することができる疑似量子計算機で、「組合せ最適化問題」を高速に解くことを得意とします。現在、創薬スタートアップと組み、SQBM+を適用した計算創薬による新薬の探索に取り組んでいます。新薬開発の社会的意義はあらためて説明するまでもないでしょう。

 新産業の創出の面でも見逃せません。21年9月には日本の量子技術の産業応用を促進する「量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)」も発足しましたが、現在、私が実行委員長を務めさせて頂いています。こうした活動を通じ、日本の量子技術の国際的なプレゼンス向上に少しでも寄与していければと考えています。

量子技術が拓く新たな世界

新たな成長軌道に乗せるために

――経営の現状について、どう評価していますか。

岡田社長: 当社の足元の業績は非常に堅調で、先行投資による好循環がうまく回っているというのが率直な印象です。それをさらに加速させることが、社長を任された私にとっての使命と責任だと思っています。

――デジタル事業の成長を加速させるために、今後どのようなことに取り組んでいきますか。

岡田社長: DXを当社の社員全員が自分ごととして捉え、サステナブルな社会を目指し果敢にチャレンジしていきます。そこでの成果を社会、つまりお客さまに最適な形で提案することが事業拡大には欠かせません。

 これからより重要になるのは、私たちと同じベンチャースピリットを持つパートナーとの連携強化による、真のDXを社会に展開できるプラットフォームの形成です。デジタルでビジネスモデルがこれほど高度化する中、自社単独で全てを手掛けることはもはや現実的ではありません。

 自分で言うのも何ですが、東芝グループの社員は真面目で、お客さまの課題に向き合うことは非常に得意です。しかし、プラットフォームづくりは、それとはまた違うセンスが求められます。より多くのお客さまの理解が得られるよう、知恵を絞らなければなりません。

 また、忘れてはならないのが、社会課題の解決のために欠かせない技術開発への注力です。今後も新しい技術がどんどん生まれてくるでしょう。これは当事者として純粋に楽しいという面もあります。量子関連技術などはグローバルでビジネスが立ち上がりつつあり、将来の成果に大いに期待しているところです。

 私たち一人一人がパーパスである「新しい未来を始動させる。」という熱い思いを持って取り組めれば、さまざまな困難な状況も乗り越え、純粋に楽しいと思える働き方によって、大きな成果を創出できると思っています。私たちの取り組みの全ては「人と、地球の、明日のために。」ですからね。

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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提供:東芝デジタルソリューションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年12月20日