データで実現する“豊かな顧客体験” 電通グループ若手社員が切り拓く「データクリーンルーム」活用、新たな挑戦創り出すDX データで築く、新しい未来

DX支援を注力領域の一つとして掲げる電通グループ。「創り出すDX データで築く、新しい未来」と題し、最新テクノロジーを活用する現場で活躍する若手社員を紹介する。今回は「データクリーンルーム」を活用したデータ分析で経験を積む2人に話を聞いた。

» 2022年10月12日 10時00分 公開
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 データ活用によって顧客の満足度を高め、ファンを増やしたい――。そんな戦略を持ち、デジタルマーケティングに取り組む企業が増えている。デジタル化による顧客接点の多様化に伴い、顧客に楽しさや快適さを体験してもらう機会も増えた。顧客体験(CX)を重視することは、欠かせない視点になっている。

 そういった経営課題に対して、豊富なデータや知見を活用した支援を行っているのが電通グループだ。同グループは広告会社のイメージが強いと思われがちだが、顧客企業のDX推進に向けて、戦略立案やマーケティング基盤開発などの支援にも注力している。

 電通グループのDX支援において、強みの一つといえるのが、プラットフォーム事業者が提供するクラウド環境「データクリーンルーム」を活用したデータ分析だ。データクリーンルームは、プライバシーが保護された環境で、人起点で最適なサービスを提供するための計測や分析ができるデータ基盤。個人が特定されない環境で多角的なデータを扱えることから、Cookie規制をきっかけに注目度が高まっている。

 電通グループでは、アナリストたちがデータクリーンルームを活用してクライアント企業のマーケティング課題に向き合っている。実際に現場でデータを扱う、電通クロスブレイン データソリューション統括部長の萩野泉さん、電通 データマーケティングセンター PDM推進6部 プランナーの齊藤璃紗さんに、データ分析の面白さや仕事のやりがいについて聞いた。

電通クロスブレイン データソリューション統括部長の萩野泉さん(左)、電通 データマーケティングセンター PDM推進6部 プランナーの齊藤璃紗さん

購買データに基づいた多角的分析と施策の実施が可能に

 電通グループでは、2016年からデータクリーンルームの利用を開始。大手プラットフォーム事業者が提供するデータクリーンルームを活用し、顧客の属性データのほか、電通グループの独自データ、外部の調査会社のマーケティングデータなどをセキュアな環境下で組み合わせてプライバシーが保護された環境で分析する。その結果をもとに、最も効果的な施策を打てるように支援している。

 萩野さんと齊藤さんは、顧客の課題に応じたデータの選定、分析の企画設計、分析結果に基づいたマーケティング施策の立案などの業務に携わっている。2人とも、学生時代からデータ分析を活用した研究をしてきた。萩野さん(博士〈保健科学〉・薬剤師)は「狩猟採集民族の子どもの成長」、齊藤さん(修士〈理学〉)は「脳神経疾患の治療に向けた技術開発」と、学生時代の分析分野は全く異なるが、現在はビジネスの分野でデータ分析にやりがいを感じているという。

 萩野さんは、20年に設立された電通クロスブレインに電通から出向し、ディレクター業務を担う。多くのデータを扱う中で、データクリーンルームを活用することが増えている。データクリーンルームの利用が始まる前は、調査会社によるパネルデータなどを分析し、マーケティング施策をプランニングすることが多かった。しかし、分析結果と実際の施策をうまくつなげて効果検証を行うことが難しいと感じていた。

 「以前は、アンケートによる意識・価値観のデータをもとにグルーピングし、マーケティング施策の対象や内容を決めていました。しかし、実際の施策対象者はアンケートに答えた人には限りません。そのため、例えば『育児に関心があるグループ』には、『子どもに関わる商品を検索している人たち』などを疑似的に当てはめてアプローチしていました」(萩野さん)

 その状況が、データクリーンルームで購買データを使えるようになって変わった。意識・価値観だけではなく、購入量の増減や季節ごとの購買の変化など、購買「行動」でグルーピングできるようになったからだ。「プランニングの段階で作ったグルーピングに基づいて、“同じ購買行動を起こしている人たち”にアプローチできるようになりました。プランニング時点でのグルーピングと実際の施策対象の購買行動をできるだけ精緻に一致させることができ、プランニングの知見を施策、検証までロスなくつなげることができています」と萩野さんは説明する。

 また、電通のデータマーケティングセンターでデータ集計や分析に従事している齊藤さんは、同社でデータクリーンルームを活用する利点について、選択肢が多いことを挙げる。「電通グループは、各プラットフォーム事業者さまのデータクリーンルームと提携させていただいているため、クライアント企業さまの課題に対して、最適なデータクリーンルームを選ぶことができます。例えば、コンビニが優位な商材に対しては、コンビニの購買データが連携されているデータクリーンルームを選択しています」(齊藤さん)

「健康に配慮したビール」を買うのは誰か?

 では、実際にどのような商品について、データクリーンルームを活用して分析しているのだろうか。齊藤さんは、ビール会社を担当した経験が印象に残っているという。

 「クライアント企業さまが『健康に配慮したビール』を新商品として発売する際に、マーケティング施策の検証を行いました。当初は、スポーツをやっている人や健康食品を買う人など、健康に気を付けている人が主なターゲットになると予想してプランニングしました。しかし、実際の購買データを分析すると、意外な結果が出ました。ラーメンや焼き肉など脂っこい食事が多い人や、昼からお酒を飲めるお店を検索した人などによる購入が多かったのです」(齊藤さん)

 この分析から浮かび上がったターゲット層は、普段から健康に留意している人ではなく、普段は不摂生な習慣があるものの、罪悪感を和らげるために健康に配慮した商品を買おうとする人だ。「言われてみれば納得できますが、当初のプランニングでは出てこなかった層でした。データがもとにあることでクライアント企業さまの納得性も高まりましたし、データに裏付けられた新しい分析結果を導き出す面白さを実感した経験でした」と齊藤さんは振り返る。

 このように、なんとなくイメージしたターゲットではなく、裏付けのある正確なターゲット層が分かれば、マーケティングの方向性も定まってくる。健康に配慮したビールの広告であれば、健康的な食事よりも、脂っこい食事と一緒に商品を見せる方が効果的だという提案につなげることができる。

 齊藤さんは、データ分析で結果を出す仕事についてこう話す。「大学院では基礎研究に携わりましたが、自分たちがやっていることが臨床研究を経て社会に出ていくまで、10年単位の時間がかかります。今の仕事では最後まで自分の目で見ることができます。データクリーンルームを活用することで、データを使ってプランニングし、クリエイティブを考えて、評価するまで、PDCAを短期間で回せます。それがこの仕事の魅力です」(齊藤さん)

 萩野さんも、ある菓子カテゴリの購買データ分析からユーザーの行動や心理について明らかにし、マーケティング施策の提案まで関わった経験がある。「このカテゴリは、これまで季節による影響を受けないとされていました。それでも時期によって買うようになったり買わなくなったりする人がいる。それは他のカテゴリの影響を受けているからだ、と仮説を立てて検証しました。そのカテゴリを買い続ける人、一時的に離脱した人、広くお菓子自体を買わなくなった人など、購買行動をベースにユーザー像を明確にしたうえで、購買データと意識・価値観のパネルデータを掛け合わせてデータを蓄積しました」(萩野さん)

 蓄積したデータを時系列で並べると、その菓子カテゴリをずっと買っている人に共通する意識や、季節によって買わなくなる理由などが分かってきた。例えば、2月は一般にチョコレートの購入が増える。その時期でもチョコレートを買わず対象カテゴリを買い続けたグループ、チョコレートと対象カテゴリのどちらも買ったグループ、そしてチョコレートの購買が増えて対象カテゴリの購買を減らしたグループで、デモグラフィック属性や生活意識がかなり分かれたという。それに基づいて、ユーザーの意識を変えてブランドを手に取ってもらうように働きかけるのか、あるいはユーザーの意識に寄り添ってブランド側の見え方を変えていくのか、マーケティングの方向性を考えることができる。

「魔法の箱」ではない……数字を扱う難しさ

 一方で、萩野さんも齊藤さんも「データクリーンルームは“魔法の箱”ではない」と口をそろえる。

 萩野さんは「一般的にデータクリーンルームであっても、単一のブランド単位ではサンプル数が十分に確保できないケースもあります」と話す。広告の効果を検証するには十分ながら、提案時より出現数が少なくなることもある。検証に用いる対象者数が足りない場合は、検証に足る出現者数を確保できるように事前分析の方法をチューニングしなおすこともある。全てがうまくいくケースばかりではない。

 齊藤さんも、数字を扱う難しさを実感している。「これぐらいリフトする(広告に接したユーザーの商品認知度などが高まる)と想定していたのに、差が思ったほど大きくないこともあります。そんなときこそ、どこに課題があるのかを考えぬき、クライアント企業さまに説明することが必要です」(齊藤さん)

 また、複数のデータクリーンルームを同時に分析する上で、それぞれ仕様が異なるデータクリーンルームを複数取りまわす工数も大きく、また母集団の異なるデータクリーンルームから出てくる結果を単純に比較できないという課題もあるという。

 この課題に対しては、電通と電通デジタルが開発したシステム基盤「TOBIRAS(トビラス)」が一つの解になる。トビラスは、複数のデータクリーンルームに対して一括でデータ転送が可能なシステム基盤で、各データクリーンルームの分析結果に対して補正ロジックを用いることで、広告のリーチや広告接触によるリフトを統一指標として横並びで比較・評価できる仕組みだ。

 データクリーンルームには課題や運用の難しさはあるものの、これまで電通グループが蓄積してきた実績をもとに、システム化、汎用化を通じて、データビジネスの利便性を高め、可能性を広げることができる。

新領域の開拓を目指す

 萩野さんも齊藤さんも今後、さらにデータ分析の経験を重ね、新しいことに挑戦していきたいという。萩野さんは、マーケティング施策提案の一歩先を目指したいと意気込む。それは、新事業や新商品の開発までつながる提案ができるようになることだ。

 「データ分析によって、マーケティングコミュニケーションの領域を超えた提案ができたらと考えています。その一例が新商品開発です。プランナーチームと一緒に、商品開発のヒントを提供できないか検討しています。他にも、新サービス開発などをクライアント企業のみなさまと一緒に考えていきたいです」(萩野さん)

 一方、齊藤さんは、これまでとは異なる領域でデータ分析に取り組んでみたいという。食品などの日用消費財にとどまらず、「昔からスポーツが好きなので、データとスポーツを掛け合わせた取り組みに挑戦してみたい」と意気込む。

 スポーツの試合やイベントでは、たくさんの人が入場し、観戦したり、イベントに参加したり、飲食をしたり、グッズを購入したりと、さまざまな行動をしている。これらの行動をデータにひもづけて分析することで、スポーツに関わる企業の事業拡大や、ファンの育成などにつながる提案をしていきたいという。「サッカーや野球などのメジャースポーツではすでに一部でマーケティングに力を入れていますが、集客に苦戦するマイナー競技でも、最適なファン体験の提供を通して盛り上げに貢献できたらいいなと思います」(齊藤さん)

 2人が実践しているように、データ分析の経験を積み、新たな目標に向かって取り組める環境があるのが電通グループだ。萩野さんは、扱えるデータの多さだけでなく、人材の豊富さの面でもやりやすい環境にあると話す。

 「データ分析の正しさを評価することはとても難しいと考えています。ご提案の時点で分析内容が正しいのかを確かめる方法はなく、ご提案に至るまでの分析設計から集計作業、読み解きなどのプロセスを一つ一つ追いながら、プロセスを間違っていた箇所はなかったか、と自分たちで確認するしかないのです。そんなときに頼りになるのが、信頼できる同僚たちです。データ分析の領域では後輩に教えてもらうことも日常茶飯事です。私が所属する電通クロスブレインはもちろん、社内では若手データサイエンティストたちがたくさん育っていて、彼らと一緒に、自信をもって提案できるデータ分析を追求して研鑽を積んでいます」(萩野さん)

 電通グループが提供する、データクリーンルームを活用した一気通貫のソリューションが、戦略的なマーケティングを力強くサポートする。そして、そのソリューションは、経験豊富でチャレンジングなデータサイエンティストたちが支えている。

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提供:株式会社電通グループ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年11月1日