顧客接点の多様化に伴い、顧客体験(CX)を重視する企業が増えている。LTV(顧客生涯価値)を高めるには、いまや店舗だけでなく、リアルとオンラインをシームレスに融合した CX の提供が欠かせない。デジタル化で可能となるデータ活用によって、顧客接点を作り出す新サービスも次々と生まれている。
特に、人流データの収集やリアルタイムでのプッシュ広告など、ビッグデータの即時処理が必要な CX サービスでは、Google Cloud を採用するテクノロジー企業は多い。強みである圧倒的なデータ処理能力を生かし、さまざまなパートナー企業との連携が進んでいる。
Google Cloud とのコラボレーションによってどのようなサービスが生まれているのか。実際に Google Cloud を採用してソリューションを提供する、unerry(ウネリー)CEO の内山英俊氏、プレイド取締役の高柳慶太郎氏にメリットなどを語ってもらった。また、unerry をサポートする、グーグル・クラウド・ジャパンの坂本真紀氏、プレイドをサポートする今井寿康氏にも話を聞いた。
Google Cloud にはパートナー プログラムがあり、Google Cloud を基盤としたソリューションを開発し、実績をあげたパートナーを「Build パートナー」として認定している。Build パートナーになれば、無償の技術トレーニングや Google Cloud Marketplace を経由した販売チャネルの開拓、マーケティング活動の連携など、パートナー エコシステムを活用した幅広いメリットを得られる。
Google Cloud の支援を受け、パートナー エコシステムの中でビジネスを推進できる環境は、プログラムに参加していない競合他社との大きな差別化になるだろう。
リアル行動データ プラットフォーム「Beacon Bank」を提供している unerry も Build パートナーの一社だ。
コロナ禍で EC 購買は広がったが、実は消費行動の 9 割以上はまだリアル。現実世界のデータ化はまだ進んでおらず、店の混雑で入店できない、不要なチラシが自宅に届くなどリアル特有の不便さはまだ存在する。
そこで、unerry は月間 300 億件以上の人流ビッグデータを自社プラットフォームに蓄積。AI 解析することで、人々の行動を多面的に可視化・分析し、集客などのマーケティング施策につなげるサービスを提供している。
顧客は小売業だけでなく、メーカー、電鉄、不動産など、実店舗に関連する幅広い業種や業態。例えば、三菱地所と連携し、東京・丸の内エリア一帯において、屋外は GPS を利用、施設内にはフロアごとにビーコンを設置して、勤務者や来訪者の動きがどのような流れになっているかをシームレスに分析し、エリア マネジメントに役立てている。2021 年からは三菱商事と資本業務提携し、海外におけるスマートシティ事業の展開も推進している。
「以前から小売・流通企業では商圏分析が行われていましたが、前提となるデータは 5 年に 1 回実施される国勢調査でした。しかし、コロナ禍では 1 日単位で人流が大きく増減するようになり、リアルタイムでデータを解析できる弊社サービスへのニーズが高まりました。今では環境省と共に CO2 削減のために、自治体の交通手段別の人流データの活用や EBPM(証拠に基づく政策立案)を支援したり、鎌倉市や箱根町の渋滞緩和に取り組んだりと、SDGs の文脈でも採用されています」(内山氏)
人流データの収集・分析にはペタバイト級の膨大なデータ処理が必要だ。さらに、エンドユーザーに対してリアルタイムで行動レコメンドをプッシュするとなると、即時性も求められる。そこで unerry が基盤として採用したのが Google Cloud だ。Google Cloud の強みの一つに「膨大なデータを超高速処理する技術」がある。
「Google Cloud がなかったら unerry も存在していませんでした。17 年から基盤として使い始めたおかげで、われわれのサービスもスケールできたのです。今でも毎年競合比較しますが、われわれのサービスをこのレベルで実現できるのは現在のところ Google Cloud のみです」(内山氏)
データ処理技術だけでなく、手厚い技術支援体制にも信頼を置いている。Google Cloud のエンジニアと密にやりとりし、日常で起きる問題をリアルタイムで解決できているという。社内でも Google Cloud に特化したエンジニアを育成するなど、深い関係性を構築している。
一方、プレイドが提供する CX プラットフォーム「KARTE」は、Web サイトやスマホアプリを通じたオンラインにおけるエンドユーザーの行動をリアルタイムで可視化し、顧客に合わせた 1 to 1 のコミュニケーションを実現するサービスだ。「EC サイトでどの商品を何秒見たか」などの行動を把握し、よりよい CX につながるコミュニケーションを提案する。例えば、「ユーザーが商品のサイズ選びで迷っているとチャットが立ち上がり、スタッフが相談に乗る」といったアクションが可能だ。
開発の背景には、顧客の要求水準向上がある。今やエンドユーザーにとってはオンラインとオフラインをまたいだ情報取得は当たり前になっており、OMO(Online Merges with Offline)を前提とした CX の提案が求められている。そのため、エンドユーザーの解像度を圧倒的に高め、適切なコミュニケーションをリアルタイムで提供していくことが重要だ。その点、オンライン小売を対象としたビッグデータと即時性を両立するソリューションは珍しく、KARTE ならではの強みとなっている。
「これからの時代は顧客の LTV を高めていくことが重要です。単に商品を売るだけでなく、ロイヤルティの高いユーザーには特別なコミュニケーションを提供するといった戦略が求められています。そのユーザー解析の土台として KARTE をお使いいただくことができます」(高柳氏)
KARTE ではオンラインのユーザーの一挙手一投足を取得するため、Beacon Bank と同様、ビッグデータをリアルタイムで集計し分析する必要がある。そこで、集計・分析処理を超高速で実行可能な Google Cloud のデータ ウェアハウス サービス「BigQuery」を採用し、エンドユーザーの高い要求に応える環境を構築している。
さらに、KARTE は Google Cloud Marketplace に掲載されている。これは Google Cloud のポータル上にあるデジタル カタログのようなもので、SaaS や VM など法人向けのクラウド ソリューションがラインアップされている。掲載されれば、世界中のパートナー エコシステムの中で認知拡大や販売が可能となる。KARTE も Google Cloud Marketplace を通じて、日本企業の海外法人など、世界で利用されるソリューションになりつつある。
「利用する企業側は Google Cloud に請求を一本化でき、海外進出の際には租税の徴収や支払いを Google Cloud に代行してもらえる点が大きなメリットです。会計処理を効率化でき、サードパーティー製ソリューションの調達が容易になるほか、弊社の販売パートナーが再販できるなど、パートナー エコシステムの中でスムーズな協業が実現します」(坂本氏)
22 年 1 月、リアルの行動分析サービスを提供する unerry と、オンラインのリアルタイム解析に強みを持つプレイドは、双方の強みをかけ合わせたコラボレーションを発表した。
unerry の内山氏はスムーズな提携に至った理由に「Google Cloud が背景にある」と明かす。
「双方とも基盤が Google Cloud だったため、データ連携が非常にしやすく、両者の提携につながりました。同じクラウド プラットフォームであれば、サービスの親和性は高くなりシナジー効果を生みやすくなります」(内山氏)
すでに大手小売企業でも導入が決まっており、今後はオンラインとリアル両面からエンドユーザーの行動を収集・解析し商圏の拡大を目指す。
「解析データを『ためて終わり』ではなく、データを利活用してよりよいサービスを提供していくことが、unerry、プレイド、Google Cloud 3 社のコラボレーションによるシナジーだと考えています」(高柳氏)
これだけ 3 社が密になり協力できている理由は、クラウド プラットフォームが同じであるだけでなく、「目指している世界線が同じだから」と内山氏は語る。3 社はいずれも「データを活用したよりよい顧客体験づくり」をベースにした理念を持つ。だからこそ、同じ方向を向いて事業を推進できるという。
グーグル・クラウド・ジャパンの今井氏は「パートナーのソリューションなくしては真の課題解決はできない」と断言する。
「私たちはエコシステムという考え方を大事にしています。Google Cloud とパートナーの 1 対 1 ではなく、エコシステムの中で複数のパートナーがそれぞれの特性を生かし、社会課題を広く深く解決できる環境づくりを目指しています。パートナーと Google Cloud で『ベスト・オブ・ブリード(各分野で最良のハードウェアやソフトウェアを組み合わせたシステム構築)』を確立して、DX や課題解決を支援していきます」(今井氏)
本ソリューションは今後、店舗を持つ企業にとっての OS のようなデファクト スタンダードを目指し、顧客の高い要求水準と期待値を超えながら、よりよい生活体験を届けていくという。Google Cloud の盤石な開発基盤は、今後も社会に貢献する企業やサービスを生み出していくだろう。
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